肺の関連(YSミニ辞典)

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COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)
    慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)。
    たばこや大気汚染により気管支、細気管支、肺胞の広い範囲に治りにくい慢性の炎症が起こり、
    空気の出し入れが障害され(気流障害)、肺胞が壊れ、酸素の取り入れ、
    二酸化炭素の排出(ガス交換)が障害される病気である。前者は従来、慢性気管支炎、
    後者は肺気腫(はいきしゅ)とそれぞれ分けて呼ばれてきが、発症の原因は両方に共通であり、
    また治療法も区別する必要がないことから近年では一括して「COPD」と簡単に呼ばれるようになった。
    COPDは症状が自覚できにくく、息切れ、セキ、タンといった代表的な症状も「年齢のせい」とか
    「単なる風邪だろう」と見過ごされがちで、気がついたときには呼吸器の病気が
    かなり進行していることも珍しくない。そのため、同性・同年代と比べて自分の肺の健康状態を
    把握するためのバロメーターとして、日本呼吸器学会によって「肺年齢」が提言された。
    COPDの患者は喫煙のほか、風邪インンフルエンザが大敵で、栄養のあるバランスのとれた食事と
    十分な睡眠を取り、人ごみを避け、帰宅したら、手洗いとうがいのほか、
    インフルエンザのワクチンも忘れずに接種しましょう。
    厚生労働省の統計によると、COPDと診断されて治療を受けている人は約21万人である。     
  1秒率= 1秒間の肺活量
  %1秒量=    1秒間の肺活量     
1秒間の肺活量の平均値
最大の肺活量
    (注)%1秒量の分母は健康な人の、年齢などが同じとした場合。
    症状 : 咳(せき)、痰(たん)、息切れが主な症状で、「寒くなってからいつまでも咳、痰が続く」
     「かぜがなかなかすっきりしない」「冷たい空気をすったら喘鳴(ぜんめい)、息切れが強くなってきた」
     などがCOPDにはみられる。しかし、これらの多くは喫煙者にはありがちな症状であるし、
     息切れなどは年のせいと思いがちだが、これまでになかったような息切れは病気のせいと考えよう。
     重くなると風邪でも死亡の恐れがある呼吸不全になることもある。
    原因 : タバコが起こす生活習慣病で、COPDは別名「タバコ病」や「肺の生活習慣病」とも
     呼ばれるように、20年間以上にわたる大量の喫煙がその最大の原因である。
     COPDの患者の95%に喫煙歴があるが、他方、喫煙者の全体からみると
     約15%がCOPDになるといわれている。タバコをきっぱりやめて適切な治療を受ければ、
     病気の進行を遅らせ、症状を楽にすることができる。    
COPDと気管支喘息の比較(木田厚瑞・日本医大教授のまとめから)
症状等 COPD 気管支喘息
喫煙暦 95%以上該当 可能性あり
慢性のせき・たん 多い 少ない
息切れ 常にあって症状がひどくなる 発作的に起きる
夜間・夜明けの呼吸困難など 少ない 多い
合併症 動脈硬化症肺癌胃潰瘍
骨粗鬆症など
骨粗鬆症(ステロイド剤による)、
糖尿病など
    呼吸リハビリテーションのメニュー
     ●症状に合わせた、毎日15〜30分のウォーキングなどの運動
     ●呼吸体操などの筋肉の強化
     ●食事・栄養の管理
     ●薬の服用・吸入の管理
    参 : スパイロメーター喫煙と健康被害SpiNet(COPDの総合情報サイト)
ウイルス性肺炎(ういるすせいはいえん) : 感染性肺炎の一つで、
    一般に感冒・上気道炎後の続発性肺炎は細菌性肺炎であるが、
    時にウイルスそのものによる肺臓炎・間質性肺炎をきたすことがある。
    インフルエンザウイルス肺炎、麻疹肺炎など。下気道感染をおこすウイルスとしては、
    インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、
    ライノウイルス、エンテロウイルス、麻疹(ましん)ウイルス、サイトメガロウイルスなどがある。
    ウイルス感染はおもに上気道感染で、成人ではめったに肺炎になることはないが、
    小児では肺炎となる。ことにRSウイルスとアデノウイルスが、小児のウイルス肺炎をおこす
    おもなウイルスである。ウイルス肺炎は寒冷地に多く、ときに爆発的な流行をみることがある。
気管支喘息(きかんしぜんそく) :  多くはアレルギー反応などによる気道炎症が原因で、
    気管支の平滑筋が痙攣(けいれん)をおこし細くなるため、発作的に呼吸困難をおこす病気のこと。
    慢性的炎症で気管支が狭くなり、空気が通りにくくなって発症する。
    ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音が出る。COPDとは違い、
    症状には良かったり悪かったりの波があり、夜中や明け方だけに症状が出る場合もある。
間質性肺炎(かんしつせいはいえん) : 肺炎が肺胞の壁(間質)や支持組織の部分に炎症がおきる病気の
    総称をいう。放射線・薬剤・ウイルスによるものや、免疫機能の低下で起こるカリニ肺炎などがある。
    「間質性肺炎」は何らかの原因(関節リウマチ、皮膚筋炎、全身性強皮症などの膠原病
    なんらかの物質の吸入、薬剤など)で肺胞の壁の中や周辺に「炎症」が起こり、
    細胞やコラーゲンなどが増加し壁が厚くなる病気なので、
    そのため咳が出たり、酸素がうまく取り込めなくなり息苦しくなる。
    一過性の場合もあるが、炎症が治った後も傷が残りが固くなる場合があり、
    更に不可逆的に増悪し、肺がどんどん固くなり膨らみにくくなり、呼吸が維持出来なくなる場合もある。
    肺炎と言えば、普通は何らかの微生物による感染であり、抗生物質などの治療で軽快するが、
    抗生物質の効きにくい肺炎や胸のレントゲン検査で左右にわたって
    病気の影があるような場合は間質性肺炎も疑う必要がある。
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん) : 食べ物や唾液などを飲み込み損ね、気管に吸い込むことが
    きっかけで起きる肺炎のことで、食べ物などと一緒に肺や気管支に入った細菌が、肺炎を引き起こす。
    特に高齢者や脳梗塞・脳卒中などの後遺症で、ものを飲み込む力が弱い人で多くみられる。
    病気の原因になる菌は人によって違うが、健康な人の口の中に普通にいる細菌で、
    一般的には、嫌気性細菌など2種以上の菌が肺に入ると起きることが多いようである。
    普通の肺炎と見分けることは難しいが、発熱やせき、たんなどが食後に出る場合が多い。
    症状 : 肺炎は一般に、発熱、咳、痰、呼吸困難、胸痛などを主な症状とするが、
     高齢者の場合、これらの訴えがはっきりしない。肺炎は、一般的に38℃以上の高熱を起こすが、
     高齢者の場合、体温の上昇をみないか、あっても微熱程度のものが少なくない。
     それに対して、呼吸数は増え、皮膚や舌の乾燥、すなわち脱水状態にあることが多いといわれている。
     「何となく元気がない」「食欲がない」場合でも肺炎を疑って検査を進める必要がある。
    治療 : 肺炎は抗生物質などで治療し、その後のケアでは、飲み込む力をよくする薬もあるが
     特効薬はない。病院で専門医からのどや舌の運動など、リハビリ指導を受けましょう。
     嚥下障害のひどい場合、胃カメラを使った手術で専用の管を腹部から胃に差し込んで、
     「胃ろう」をつくり、栄養剤や流動食を注入することもある。
    予防法 : 食事中は腰を安定させて首をリラックスさせ、あごを引く。動かせるベッドなどでは、
     体を30度以上起こす。一口ずつゆっくり食べ、テレビを見ながらの食事は我慢する。
     食べ物にとろみをつけ、むせにくくする工夫は有効で、食後は1時間以上姿勢を保つとよい。
     口内の清潔を保ち、入れ歯もきれいにする。毎食後の歯磨き、うがいが大事である。
細菌性肺炎(さいきんせいはいえん) : 感染性肺炎の一つで、
    細菌を原因とした肺の急性炎症であり、そのほとんどは肺胞性肺炎である。
    一肺葉以上のものを大葉性肺炎、一肺区域以下のものを気管支肺炎(または巣状肺炎)と大別されるが、
    第二次世界大戦後、化学療法の発達により、このような病理解剖学的な分類よりも起炎菌の検索を
    重視し、起炎菌名を冠した分類が一般に行われている。すなわち、ブドウ球菌性肺炎、
    大腸菌性肺炎のようによばれるが、グラム陽性球菌性肺炎とグラム陰性桿菌(かんきん)性肺炎とに
    大別することもある。健康成人に原発性におこる肺炎は、主としてグラム陽性球菌性肺炎と
    マイコプラズマ肺炎であり、入院患者あるいは基礎疾患をもっている患者におこる肺炎は、
    圧倒的にグラム陰性桿菌性肺炎が多い。
    細菌性肺炎の発症はほとんどが急性で、悪寒、戦慄(せんりつ)、発熱、咳(せき)、痰(たん)、胸痛、
    呼吸困難などの自覚症状がある。痰の多くは膿(のう)性で、ときに血痰、銹(さび)色痰が認められる。
    発熱は39〜40℃となるが、高齢者では発熱の程度がかならずしも重症度を示さないので
    注意が必要である。チアノーゼや意識混濁も多い。細菌性肺炎では化学療法前に
    喀痰(かくたん)あるいは血液培養によって起炎菌の検出を試みることが必要である。
    血沈は亢進(こうしん)し、白血球増加が認められる。治療の根本は化学療法である。
    起炎菌が決定されたときは、その起炎菌が感受性を示す抗生物質を選択するが、
    通常は起炎菌が未定で推定しながら化学療法を行う。肺炎はインフルエンザの流行に一致して
    急増することが多く、また基礎疾患として心疾患や肺疾患を合併することが多い。
じん肺(じんぱい) : 鉱山や炭鉱掘削で始まり、現在はトンネル工事、造船所などのさまざまな作業現場で
    発生していて、大量に吸い込んだ粉塵(ふんじん)に付着し、呼吸機能が低下する職業病の一つ。
    これまでは鉱物性粉塵(無機粉塵)によるじん肺が重視されていたが、
    最近では綿ぼこりや線香の原料(木の皮や葉)等の有機粉塵によるじん肺も注目されて来ている。
    即ち、水に溶けないあるいは溶け難い粉塵はすべてじん肺を起こす。体全体が酸素不足の状態に陥り、
    肺結核や気管支炎などの合併症を引き起こしやすく、根本的な治療法はないとされる。
    ある程度の粉塵であれば、鼻毛で濾過されるし、気管支まで入っても気管支の壁にある
    細かい毛(繊毛)が粉じんを外に送り出したり、痰と一緒に外に出したりするが、
    そのような防衛反応が追いつかなくなると粉じんはどんどん肺の中に入っていく。
    粉じんが小さければ小さいほど、量が多ければ多いほど肺の中へ入りやすくなる。
    また年をとった人ほどじん肺になりやすいと言える。
    大きな粉じんは、のどや気管支の壁を刺激して気管支炎や喘息の原因となり、
    肺の奥深くまで入った粉塵は肺胞や細気管支(枝分かれして一番細くなった気管支)、
    リンパ節等に作用する。あるものは肺胞を埋め尽くしてしまったり、
    あるものは炎症を起こしたりしながら肺は繊維状の組織で固められていく。
    更に進行すると肺の壁がやられて風船のように大きく膨らんだり、
    破裂したりして肺胞の働きをなさなくなる。これを「肺気腫」と言う。
    このように気管支や肺胞が障害されていくと、
    当然肺の本来の働き即ち呼吸する力が弱まっていき、これを「肺機能障害」と言う。
    こうなるとガス交換が充分に行えなくなるわけで、次第に身体が酸素不足の状態になっていく。
    また重症になると肺と密接な関係になる心臓にも悪影響を及ぼして
    「肺性心」という心不全の状態になることもある。
    このようにして肺は徐々に冒されていき、このような病変はもとに戻らないどころか、
    粉じんを吸わなくなっても進行していく。これがじん肺の恐ろしさであり予防が最も重視される所以である。
    自覚症状
      多くのじん肺では、軽いうちはあまり自覚症状はでないが、風邪をひきやすい、
      ひくと治りにくい等ということがしばしばある。じん肺が進んでくると咳や痰がでる、胸が重苦しい、
      息切れがする、胸の中でゼーゼー・ヒューヒュー音がする、呼吸困難がある等の症状が出てくる。
      息切れも最初は坂道や階段の昇り降りだけだったのが、平地を歩いていても出るようになり、
      更には人と話をしていても息が切れるようになる。
      しかし、粉じんによってはアスベスト(石綿)やクロムのように
      初期から自覚症状が出やすいものもあるが、自覚症状がないからとは安心できず、
      早期発見のためにも健康診断が不可欠となる。
    治療
      じん肺になり、線維増殖性変化を起こした肺を
     元の正常な肺に戻す治療法は現在のところないのでじん肺を根治することはできない。
     しかし、合併症の治療は充分にできるので、日常生活上の注意(禁煙、風邪をひかない等)を
     守ることによってじん肺の進行を遅らせることは可能である。
     軽症の人については、粉じんのでない作業への配置転換も重要な治療のひとつで、
     いづれにしても、予防と健康診断などでの早期発見が最も重要であることは言うまでもない。
スパイロメーター(spirometer) : スピロメーター。肺機能検査装置。
    肺活量、肺気量(肺内に入るガス量)など、肺の換気機能を検査するための医療機器である。
    肺活量、一秒間に吐き出す空気の量(一秒率)、全肺気量その他を測定する。
    COPD(慢性閉塞性肺疾患)、気管支喘息、肺気腫、肺線維症など、
    肺の呼吸機能を損ねる疾病の、簡単な呼吸機能検査(スパイロ検査)に用いられる。
    1秒間で吐き出せる空気の量(1秒量)を最大の肺活量で割った「1秒率」などを計算し、
    気道が狭まったり、呼吸運動がうまくできなくなったりしている状態を調べる。
     「慢性閉塞性肺疾患のグローバルイニシアチブ」の診断基準では
    1秒率が70%未満の場合をCOPDと定義はている。
     スパイロメーターは流量計・マイクロコンピュータ・プリンター・液晶ディスプレイなどを搭載した本体と、
    マウスピース、チューブから構成される。被検者はまず息を深く吸い込んで、
    そのあとできる限り強く息をチューブに吐き出す。吸気や呼気の容積、
    呼吸に要した時間は流量計からの出力信号を変換したのちマイクロコンピュータに入力され、演算される。
     熱線式の流量計では、マウスピースとチューブでつながる本体に搭載された流量計に、
    一定の温度に熱せられた白金線があり、被験者が呼吸したときの気流で冷やされて抵抗値が変化し、
    それにつれて電流も変化するので、出力電流の変化量を変換したのちマイクロコンピューターによって
    呼気と吸気の流量が演算される。流量を時間積分すれば容積が判るので、
    残気など肺機能の低下を詳しく調べることができる。
中皮腫(Mesothelioma)ちゅうひしゅ : 心臓、胃腸などの臓器を覆っている胸膜や腹膜は、
    「中皮」とよばれる薄い皮で包まれている。その中皮という膜組織に発生した腫瘍(癌の一種)をいう。
    腫瘍が一カ所に固まって発生する「限局型」と、
    胸膜や腹膜に沿って広くしみ込むように拡がっていく「びまん型」とがある。
    「限局型」には、良性(他の臓器へ転移したり、周囲の臓器へ浸潤したりしない)と、
    悪性(他への転移や浸潤がある)とがあるが、「びまん型」は、すべてが悪性腫瘍である。
    中皮腫はかなり稀な腫瘍で、例えば悪性胸膜中皮腫は肺癌と比べ、
    その発生率は1%程度といわれている。中皮腫のなかでは、悪性胸膜中皮腫が最も多くなっている。
    とくに肺臓の周りの中皮にできることが多く、その原因の多くはアスベスト(石綿)を吸い込むことに
    あるとされている。数種類あるアスベストのなかでも、とくに飛び散りやすい「青色石綿」が
    原因となるのが一般的。アスベストの繊維は直径が髪の毛の5000分の1と細く、
    肺の奥まで入り込みやすいうえに、熱や酸に強いという特徴をもっている。
    そのため一度吸い込むと長い間体内にとどまり、潜伏期間が長く、吸い込んでから30〜50年たってから
    発症することも多いことから、過去のアスベスト大量使用の影響で今後、患者の急増が懸念される。
    初期症状は軽い息切れと運動能力の低下程度だが、しだいに呼吸が苦しくなり、
    やがては呼吸不全を引き起こす。決め手となる治療法は現在のところはなく、
    切除手術や放射線療法、抗がん剤投与などが実施される。
    胸部X線では見つけにくく、早期発見は困難だが、発症後の進行は早い。
    厚生労働省によると中皮腫の死亡者は統計のある1995年以降、年々増え続けていて累計約6000人。
    1998年までは年間500人台で推移したが、2003年は878人と1995年の1.7倍となっている。
    症状
      良性の中皮腫は、他の臓器へ転移したり、
      周囲の臓器へ浸潤(しんじゅん:がんが周囲へ拡がること)するような進み方をすることはない。
      したがって、あまり症状がなく、検診の胸部単純X線写真でたまたま見つかったりすることがある。
      まれには巨大なかたまりとなり、胸痛・咳がおこったり肺や心臓を圧迫して呼吸困難を伴うこともある。
      また、腹膜の良性中皮腫もたまたま手術の際に見つかったりすることがある。
      一方、悪性の中皮腫は限局性のものもあるが、
      一般にはびまん性に胸膜あるいは腹膜などにそって広範に拡がっていく。
      胸膜のびまん性悪性中皮腫では、大量の胸水貯留による呼吸困難や胸痛がおこる。
      胸壁のしこりを触れるようになることもまれにある。
      腹膜の悪性中皮腫では腹水貯留による腹部膨満などがおこる。
(the lungs)はい : 肺臓のことで、両生類以上の脊椎動物の空気呼吸を行うための器官をいう。
    胸腔に左右一対ある。中に無数の肺胞があり、肺胞とこれをとりまく毛細血管との間で
    炭酸ガスと吸気からの酸素とのガス交換(外呼吸)が行われる。右の肺は、3つからできている。
    それぞれを葉っぱにたとえて、上葉、中葉と下葉という名前がついている。
    左の肺は、2つからできていて上葉と下葉である。重さは左右それぞれ300〜350グラムと推定される。
    右の肺と左の肺との体積の割り合いは5:4ぐらいと推測される。
    魚類の鰾(うきぶくろ) と相同の器官である。
肺炎(pneumonia)はいえん : の炎症性疾患の総称で、肺炎球菌などの細菌
    マイコプラズマ・ウイルスなどの感染により、空気を取り込む肺の肺胞に起きる炎症をいう。
    発熱・咳・喀痰・胸痛・呼吸困難などを呈する。化学物質やアレルギーによって起こる場合もある。
    肺間質に病変のあるものは「間質性肺炎」または「肺臓炎(pneumonitis)」という。
    一般的には肺の急性感染症として理解されている。
    細菌性肺炎マイコプラズマ肺炎ウイルス性肺炎などにより原発性または続発性にくることが多いが、
    真菌、寄生虫、原虫によるもの、物理的、化学的あるいは原因不明のものもある。
    リケッチアによる肺炎としては、Q熱による肺炎、ロッキー山紅斑(こうはん)熱、つつが虫病による
    肺炎があり、原虫によるニューモシスチス・カリニ(pneumocystis carinii)肺炎もある。そのほか、
    アレルギー性肺炎、リポイド肺炎、放射線性肺炎、薬物性肺炎、嚥下(えんげ)性肺炎などがある。
    高齢者の肺炎 : 肺炎は高齢者に多く起こりしかも重症化しやすいため
     生命に係わる事態に至ることが多く、や心疾患、脳卒中に次いで高齢者の死因の
     4番目に多い病気であり、肺炎で亡くなる方の95%は65才以上の高齢者である。
     65歳以上の高齢者が呼吸器疾患で入院する場合、その原因の一番が肺炎で、
     この年代の男性に限ってみると肺炎は死亡原因の3番目になっている。
     高齢者の場合は発熱や咳、痰、呼吸苦といった肺炎の典型的な症状が
     現れにくいケースが多々あり、かなり重症になるまで気づかれないことも少なくない。
     さらに高齢者は、慢性心疾患や呼吸器疾患、脳血管障害、糖尿病等を有していることが多く、
     それらが肺炎を起こしやすい原因となるとともに重症化すると、
     これらの持病の悪化により致命的となることも少なくない。
     このように高齢者にとって肺炎は恐ろしい病気で、
     これにかからないために、日頃から注意することが大切である。
     一般的に肺炎は、肺炎レンサ球菌や黄色ブドウ球菌などの細菌感染により起こる。
     肺炎にかかり易くなる要因には,カゼなどのウイルス感染、喫煙、
     心臓疾患や糖尿病などの持病の存在、老齢化そのものによる衰弱や免疫力の低下、
     また脳梗塞などによる意識レベルの低下や食物がうまく呑み込めない嚥下障害などが含まれる。
     免疫力が極度に低下する悪性腫瘍の治療中の人や重症糖尿病などの人は、
     もっと病原性の弱い細菌やウイルスによっても、治りにくい難治性の肺炎にかかる場合がある。
     高齢者で一番多い肺炎は、インフルエンザや普通のカゼが悪化してウイルスそのものや
     細菌の二次感染によって起こる肺炎と、嚥下障害によって起こる誤嚥性肺炎の2つである。
     誤嚥とは唾や食べ物を飲み込む時、誤って気道や気管支の方に吸い込んでしまうことで、
     正常では、のどの反射運動で食べ物を呑み込む時、気管支の方に吸い込むことはない。
     仮に吸い込んでも、すぐに咳をして吐き出し大事には至らない。
     しかし高齢者では、こののどの嚥下反射や咳の反射が鈍くなっている。
     65歳以上の高齢者では睡眠中に多少とも唾液を気管支に吸い込むことは非常に多いと言われている。
    高齢者肺炎の特徴
     @老化による生理機能の低下のため、咳・痰・発熱などの典型的な臨床症状を欠くことが多く、
      このため肺炎の発見の遅れにつながる可能性がある。
     A高齢者は様々な基礎疾患(成り立ちの大もとの病気)を持つことが多く、肺炎が重症化しやすくなる。
     B老化による薬物代謝・排泄機能の低下のため、治療薬の副作用が生じやすくなる。
     Cその原因として誤嚥(ごえん:異物を誤って飲み込むこと)の関与が大きい、
      つまり口の中にいつもいる常在菌をほんのわずか誤嚥して下気道に吸入することによって
      肺炎を引き起こすわけで、肺炎も再発しやすい。
    肺炎の予防
     @高齢者は、総じて免疫力が低下しているため、風邪がきっかけで肺炎を引き起こしやすく、
      風邪にかかったら早めに医師に受診すること。
     Aインフルエンザ流行期には外出を避け,厳重な予防をする。
     B歯磨きを含め、口の中は常に清潔にすること。就寝前は口の中をすすぎ、ブラッシングをしましょう。
     C夜中の排尿時には、ついでに必ずうがいも励行すること。
     D体を起こして食事をし、食後30分〜1時間程度は寝たりしないで起きたままでいましょう。
      また、食事は一口ずつゆっくり食べましょう。
     E辛い食べ物はのどを刺激し、のどや気管の機能を改善する効果が認められている。
      食事の中に、ときには唐辛子などの辛いものを入れることも良いでしょう。
     F十分な休養と睡眠をとり、適度な運動をする。散歩などの運動は、心身機能や脳の活動を高める。
     Gインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種する。
    参 : 間質性肺炎
肺炎球菌(はいえんきゅうきん) : 肺炎双球菌。口や耳、鼻の中などに存在し、
    体力が落ちている時やお年寄りになって免疫力が弱くなってくると病気を引き起こす
    細菌(グラム陽性の小球菌)の中の一つで、通常対をなし莢膜(きようまく)に包まれている。
    肺炎球菌には80種類以上の型があり、引き起こす主な病気としては、
    肺炎、気管支炎、化膿性炎症などの呼吸器感染症や副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎などがある。
    65歳以上の高齢者では、肺炎による死亡率は、がん心臓病脳卒中に次いで高く、また、
    ペニシリンなどの抗生物質に対する耐性菌が増えているため、治療が困難になってきている。
    献血時の検査対象は、エイズウイルスや肝炎ウイルスなど6種類に限られ、肺炎球菌は対象外。
肺炎球菌ワクチン(はいえんきゅうきんワクチン) : 肺炎球菌は常在菌の一つで、健康な人の鼻の奥や
    のどなどにいるが、この菌を持っているすべての人が肺炎を引き起こす訳ではない。
    しかし高齢者や呼吸器の病気を持つ人などが風邪インフルエンザの感染をきっかけとして
    この肺炎を発症することがある。最近は耐性ができて抗生物質が効きにくい肺炎球菌が増えていること、
    また肺炎球菌感染の肺炎は他の肺炎と比べると重症化しやすく、命に関わることがあるため、
    ワクチンによる感染の予防がとても重要となる。
    接種対象者 : ●高齢者(特に65歳以上)の方、●心臓や呼吸器に慢性疾患のある方、
     ●腎不全・肝機能障害・糖尿病脾臓摘出などで脾機能不全のある方などが、接種を推奨されている。
    肺炎球菌ワクチンの有効率は約60〜80%で、その効果は人によって異なりるが、
    約5〜8年間継続すると言われている。海外データによると、喘息などの慢性肺疾患を持つ高齢者に、
    肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの両方を接種することにより、
    入院を63%、死亡を81%減少させたとの報告がある。
    副作用はそのほとんどが注射部位の痛みで、その他、悪寒、頭痛、フシブシの痛みといった
    インフルエンザ様の症状で、その多くが3日以内に消失する軽いものである。
    接種回数は、日本では原則として1回しか認められていない。それは再接種時の
    副作用(主に注射部位の腫れなど)が、初回時より強く現われることがあるためである。
    ワクチン接種を行う場合の費用(保険適用外)の目安は、
    初診料とワクチン接種料で7500円くらいである。
肺癌(はいがん) = 肺癌(がん関連へ別掲)
肺年齢(はいねんれい) : 肺の健康を示すバロメーターで、肺の老化度の判定指標である。
    潜在患者が多い呼吸器疾患(主にCOPD)に対する予防と自覚を「年齢」という
    身近な指標を用いて意識を高め、多くの方に肺の健康の理解と呼吸器疾患に対する
    予防と治療に役立つコンセプトが肺年齢であり、20歳代をピークに加齢とともに減少する。
    一般の人には理解しにくい呼吸機能検査を、「肺年齢」という表現で置き換えることによって、
    自覚症状がまだでてない早期の呼吸器疾患(主にCOPD)患者に自覚を促し、
    肺疾患を予防、特に禁煙指導の向上を図るのが目的である。
    肺年齢は、年齢、性別、身長、体重で規定される予測1秒量(1秒間に吐ける息の量)の計算式をもとに
    算出された予測1秒量から、「何歳の人の肺機能のレベルと同じか」を測定する指標であり、
    肺の健康指導(疾患啓発、禁煙指導を含む)における目安として利用できる。
    現在、肺年齢が表示される肺年齢対応のスパイロメーターが開発されている。
    検査は簡単で、プラスチック製の筒をくわえて鼻栓をし、2〜3回、ゆっくり呼吸をしてから、
    医師の指示によって胸いっぱい息を吸い込み、10秒ほど思いきり息を吐き続けて終わりで、
    機器のボタンを押すと、「肺年齢75歳」などと結果が印刷された紙が出てくる。
    肺胞が弾力性を失っていたり、炎症などで気道が狭まっていたりすると検査値が低くなる。
    この検査には医療保険が適用されるのに、機器を置いているのは
    開業医で1割以下とも言われるほど少なく、ほとんどが病院での検査となる。
マイコプラズマ肺炎(マイコプラズマはいえん) : 感染性肺炎の一つで、
    肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumonise)よって起こる原発性異型肺炎(非定型肺炎 )の一種。
    マイコプラズマ・ニューモニア(mycoplasma pneumoniae)は細胞壁を欠いた細菌で、呼吸器系と
    泌尿生殖器系のものがある。肺炎マイコプラズマは呼吸器系のもので唯一ヒトに対して病原性がある。
    ヒトから分離されるマイコプラズマには数種類あるが、呼吸器感染をおこすものは
    肺炎マイコプラズマだけで、マイコプラズマ肺炎は全肺炎の15〜20%を占め、
    ときに散発的な流行がある。この流行は4〜5年周期でおこるといわれている。
    このマイコプラズマの感染は、咽頭炎・気管支炎・肺炎などをおこすことがある。
    マイコプラズマに対する抗体検査によって、マイコプラズマの感染の実態が明らかになりつつある。
    マイコプラズマ肺炎は、飛沫感染などによる濃厚感染であり、学校、幼稚園、保育所、家庭などの
    比較的閉鎖的な環境で、地域的に流行する。季節的には初秋から冬に多発する傾向がみられる。
    好発年齢は、幼児から学童、若年成人が中心で、特に5〜12歳に多くみられるが、
    1才以下には比較的少ない。多くは不顕性感染または軽症で、潜伏期は6〜32日である。
    マイコプラズマ肺炎がだんだんと認識された出したのは1930年代からのことで、
    当時よく見られた肺炎球菌による肺炎とは、明らかに違った種類の肺炎であるということから、
    非定型肺炎(atypical pneumonia)や異型肺炎とも呼ばれた。
    肺炎球菌による肺炎が主に老人たちに見られたのに対し、
    非定型肺炎は寮制の学校の寄宿生や軍隊の新兵たちといった若い人たちで多く見られた。
    症状 : マイコプラズマ肺炎の潜伏期間はおよそ7〜14日で、肺炎球菌性肺炎の突発的な
     発症にくらべると、マイコプラズマ肺炎はゆっくりと発症し、しだいに症状が悪化していく。
     呼吸器の症状が出る前に1〜3日早くに頭痛、咽頭痛や倦怠(けんたい)をもって始まり、
     発熱や咳(せき)がある。咳は必発の症状で、乾性〜湿性の咳が頑固にしかも長期にわたって続き、
     発作性のように夜間や早朝に強くなる特徴がある。次に悪感や戦慄を伴う39度以上の高熱と、
     激しい咳などの症状が続く。このため夜も眠れない、咳に伴う胸部の筋肉痛などの症状がみられる。
     ほかには、発熱、激しい咳、痰、のどの痛み、鼻症状、胸痛、頭痛、下痢、嘔吐、発疹、
     全身倦怠感などもみられるが、肺炎にしては元気で一般状態も悪くなく、
     そのため診断が遅れることがある。胸部X線所見は、肺門部および下肺野にベール状の陰影が多い。
     一般に重症にならず、症状および陰影は1〜3週間で改善することが多い。
     具体的な症状としては、まず、発熱や頭痛を伴った気分不快が3〜4日続く。
     その間に咳がだんだんひどくなって来る。最初は乾いた咳で痰もすくないが、
     だんだんと痰も出るようになる。痰に血液が混ざってくることもある。発熱や他の症状が消えても、
     咳はひどくなってくる。咳は、なかなか改善を見せず、4週間も長引く。
     咳が1番ひどいのは2週目である。ただし、マイコプラズマ肺炎の症状にはかなり個人差があり、
     2〜3日で治ってしまう人もいれば、治るのに1カ月以上かかる人もいる。     
     回復期の寒冷凝集価が急性期の4倍以上に上昇したり、マイコプラズマ抗体価も上昇することが多い。
     重症になれば、中耳炎や脳炎などの合併症を起こす。
    合併症 : 経過中に発熱が続き、嘔吐、頭痛等がみられる場合は髄膜炎になっている可能性が
     高いので、すぐ医療機関を受診する。溶血性貧血、中耳炎、心筋炎、心嚢炎、ギラン・バレー症候群、
     スチーブンス・ジョンソン症候群など多くの合併症が報告されている。死亡例もあるので注意が必要。
    診断 : 周辺地域での流行状況と好発年齢や頑固に続く咳を参考にする。
     胸部X線では、均等で淡いび漫性陰影が特徴といわれているが、気管支肺炎や間質性肺炎像の
     パターンも少なくない。咽頭(いんとう)拭い液を培養して肺炎マイコプラズマを検出すれば、
     診断は確実となるが、結果を得るまでに通常1〜4週間を要す。
     補体結合反応(CF)抗体価64倍以上を陽性とするが、通常は感染してから2週間以後でないと
     上昇しない。寒冷凝集反応は、早期に短期間で結果が得られるが、非特異反応が問題である。
     PCR法、DNAプローブ法による抗原検出法が開発されているが、それ相応の技術と設備が
     必要となる。鑑別診断が必要な疾患には、クラミジア肺炎、オウム病、肺結核などがある。
    治療 : マイコプラズマ肺炎の治療は全身の脱力感が強いので十分な安静を保つことが大切で、
     高熱が続くので冷却もする。また、水分摂取によって脱水状態を避けるように配慮し、
     必要に応じて輸液を行う。他の治療としては、解熱鎮痛剤を服用する、
     激しい咳による胸痛や不眠には、鎮咳剤と湿布でやわらげる、低酸素血痕や呼吸困難に対しては、
     過呼吸による低炭酸ガス血痕の改善をするために酸素投与を行う。
     ペニシリンが効かないのも特徴であるが、マイコプラズマ肺炎と診断がつけば、エリスロマイシン、
     ジョサマイシン等のマクロライド系またぱテトラサイクリン系、クロラムフェニコール系の抗生物質や、
     ニューキノロン系抗菌剤が症状の期間を短縮し、治るのを早める効果が期待される。
     呼吸不全を呈する重症例では、抗菌剤併用のもと、副腎皮質ステロイド剤の投薬が有用なことがある。
     最近ではマクロライド系に耐性を示すマイコプラズマが増加している。
     乳幼児へのテトラサイクリン投与は歯の黄染に注意する。
    予防 : マイコプラズマ肺炎に対するワクチン(予防接種)は今のところないので、
     流行期には、人ごみはできるだけ避け、うがいと手洗いを励行する。
     鼻をほじくる時は手を洗ってからにする。汚染した指を鼻の中に入れることにより、
     鼻の粘膜まで病原体を運んでしまう可能性がある。
     鼻をほじくるよりは、鼻をかんだ方が良い。鼻をかんだ後のティッシュなどは、
     すぐにきちんと自分で始末する。また、鼻をかんだ後にも手を洗う。
     マイコプラズマ肺炎の患者と同じ部屋で眠るのは控える。
     他の人に向けて咳をするのは、やめましょう。

    原因はマイコプラズマか=天皇陛下の気管支肺炎jijibomより)
     宮内庁の金沢一郎皇室医務主管は2011年11月18日夜、
    東大病院に入院された天皇陛下について、「気管支炎に軽度の肺炎を伴っている気管支肺炎」で、
    原因が細菌の一種であるマイコプラズマの可能性が高いと発表した。
    抗生物質の投与で一時39度近くあった熱は16日から低下傾向にあり、
    平熱近くまで下がったが、せきはまだ残っており、投与を数日続けるという。
     金沢医務主管によると、陛下は熱が再び上がった11日以降、一度レントゲンを撮った際には問題が
    なかったが、17日朝、レントゲン検査で左肺の上葉部のわずかな部分に炎症とみられる影があった。
     皇太子ご夫妻の長女愛子さま(9)も今月初め、東大病院に入院し、
    マイコプラズマ肺炎の可能性が高いと診断されている。






















































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