蛙関連(YSミニ辞典)

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雨蛙(tree frog)あまがえる : 広義には両生綱無尾目アマガエル科に属するカエルの総称。
    狭義にはニホンアマガエルの通称で、樹上性で緑色の小さなカエルである。
    ニホンアマガエル(Hyla japonica)は北海道から九州まで分布し、朝鮮半島、中国北部にもいる。
    体表は緑色であるが、周囲の色彩に反応して顕著な体色変化を示し、灰白色となることもある。
    背面に大形の黒斑(こくはん)が現れる場合が多い。腹面は白色。指先に吸盤があり、
    雄ののどの下に褐色の鳴嚢(めいのう)がある。体長3〜4cmで、低地、山地の草むらや樹上で生活し、
    繁殖期に水田などに集まる。鳴き声は多数の音節からなり、きわめて長い。
    繁殖期以外にも湿度が高くなると鳴くため、雨の予報になるといわれる。抱接した雌雄は
    水面を移動しながら数個ずつ産卵するため、卵塊は小さく不定形。総卵数は500個内外。
    [季語]夏−動物。
    
    ニホンアマガエル
    
    弾けて綿が表れた綿花の実に乗るニホンアマガエル(鳥取の錦織梨園の錦織さん提供)
牛蛙(an edible frog、a bullfrog、American Bullfrog)うしがえる : 学名は「Rana catesbeiana」。
    カエル目(無尾目) アカガエル科アカガエル属のカエル。
    日本(北海道、本州、四国、九州、徳之島、沖縄本島、石垣島)、大韓民国、台湾、
    アメリカ合衆国(プエルトリコ)、イタリア、オランダ、キューバ、ジャマイカ、ドミニカ共和国、ハイチ、
    フランスに移入。アメリカ合衆国東部、カナダ南東部、メキシコ北東部に自然分布。
    体長11〜18cm、体重500〜600gグラムほど。アカガエル属の特徴でもある
    背側線(はいそくせん)が無い。オスの背面は暗緑色で、淡黒色の斑紋がまばらにある。
    メスの背面は褐色で、斑紋がオスよりも多い。雌雄ともに腹面は白いが、オスでは喉の部分が
    少々黄色みがかる。鼓膜は非常に大きく、メスでも眼の直径にほぼ等しく雄ではその倍近くある。
    水草の繁茂する流れの緩やかな河川、池沼、湖、湿地などに生息する。警戒心が強く、
    外敵が近づくと跳躍して逃げる。鳴き声は「ブオー、ブオー」というウシに似たもので、
    和名の由来にもなっている。声は非常に大きく数キロメートル離れていても聞こえることもあり、
    時に騒音として問題になるほどである。食性は肉食性で昆虫類、節足動物、甲殻類、魚類、両生類、
    小型爬虫類、鳥類、小型哺乳類さえも捕食し、食糧が不足すると共食いをすることもある。
    繁殖形態は卵生で、日本では5〜9月に寒天質に包まれた1〜2万個の卵を産む。
    幼生の状態で越冬し、翌年の夏に変態し幼体になる。幼体は水場をつたい他の水場へと移動する。
    食用として養殖された個体が逃げ出し、日本各地のみならず世界中に定着してしまっている。
    大型かつ貪欲で、環境の変化に強い本種は在来種を捕食してしまうことが懸念され
    2006年外来生物法により特定外来生物に指定されており、飼育や運搬が規制されている。
    そのため現在本種の日本国内での流通はない。世界の侵略的外来種ワースト100にも指定されている。
    食用とされることから「食用ガエル」という別名を持つ。ただし食用蛙という語は、
    食用にされるさまざまなカエルの総称としても使われ得るので、注意が必要。
    皮を剥いた後ろ足を食用とし、世界各地で養殖されている。
    味は鶏肉、特にササミに似る。肉は脂がほとんど無いため、炒め物やフライとして食べることが多い。
    ただしフランス料理店や中華料理店を除くと、現在の日本ではいわゆる
    「下手物料理」を出す居酒屋くらいでしか見られない。乱獲や生息環境の変化で
    個体数が減少したニホンヒキガエルに代わり、実験用のカエルとして流通していた。
    日本には1918年に、東京帝国大学の教授であった動物学者の渡瀬庄三郎が食用として
    アメリカ合衆国(ルイジアナ州ニューオリンズ)から十数匹を導入した。またアメリカザリガニが本種の
    養殖用の餌として輸入された。また、おたまじゃくしを寿司のタネとした「おたま寿司」も存在する。
    「食用蛙供養塔」が東京都江戸川区の浄土宗法龍寺にある。
    
    ウシガエル
(frog、tord)かえる、かわず : @脊椎動物亜門・両生綱・カエル目(無尾目)に属する動物の総称。
     両生類のなかでもっとも繁栄しているグループである。南極大陸と北極圏を除く全世界に
     約3000種が生息し、体長は1〜20cmほどである。
     成体の頭は三角形で、目は上に飛び出している。胴体は丸っこく、尾はない。
     発達した後ろ足とやや小さい前足とをもち、後ろ足に5本、前足に4本の指がある。
     後ろ足でジャンプすることで、敵から逃げたり、エサを捕まえたりする。
     後ろ足の指の間に水掻きがあるものが多く、これを使ってよく泳ぐ。ほとんどの種で肋骨がない。
     前肢は人間の腕に似た形状をしているが、ジャンプからの着地の際に身体への衝撃を和らげるのが
     主な役目である。餌となる小昆虫やクモなどの小動物に飛びついて両肢で押さえつけたり、
     冬眠などのために土砂を掘ったり、汚れ落としのために片肢で顔を拭いたりする動作も可能である。
     アオガエル科やアマガエル科などの樹上生活をする種の多くでは指先に吸盤が発達し、
     その補助で細い枝などに掴まることはできるが、人間やサルのように物を片肢ないし両肢で
     掴み取ることはできない。水辺にすむものが多いが、草むらや樹上にすむ種類もある。
     幼生はオタマジャクシ(お玉杓子)と呼ばれ、四肢がなく、泳ぐためのひれのついた尾をもち、
     えら呼吸を行うので水中にすむが、2〜3週間で変態し、四肢が生え、尾が消失して肺呼吸をし、
     四肢をもった幼体(仔ガエル)となって陸上にあがる。食用になる種もある。
     トノサマガエル・ヒキガエル・アマガエル・ウシガエルなど種類が多い。
     (例)蛙の合唱。[季語]春−動物。
    Aカジカガエルの別名。
    B能楽の面の一つ。「善知鳥(うとう)」「阿漕(あこぎ)」などに用いる。
カエル・ツボカビ症 → ツボカビ症
蛙の行列(かえるのぎょうれつ) : 蛙が後足で立つと、目が後ろ向きになって前が見えないところから、
    向こう見ずなこと。また、そのような人々の集まりのこと。【類語】●かわずの行列
蛙の子は蛙(かえるのこはかえる) : 何事も子供は親に似るものだということ。
    また、凡人の子はやはり凡人だというときにも使う。
    【類語】●瓜の蔓に茄子はならぬ●親が親なら子も子
        ●Like father,like son.(この父にしてこの子あり)【反対語】■鳶が鷹を生む
蛙の面に水(かえるのつらにみず) : 蛙の面へ水。蛙の顔に水を掛けてもまったく平気なことから、
    どんなことをされても平気でいること。何をされても応(こた)えないこと。
    【類語】●蛙の面に小便●水を以って石に投ず
蛙の目借り時(かえるのめかりどき・めかるどき) : 蛙の目借時。
    蛙が鳴きたてる苗代の頃の陽気で眠くて堪らないほどの時節のこと。
    蛙に目を借りられるため、眠気を催すからとも、蛙が雌を求める「妻狩(めか)り」から転じたものともいう。
    [季語]春−時候。【類語】●かわずの目借り時●かえるどき●目借る時
蛙は口から呑まるる(かえるはくちからのまるる) : 蛙は口ゆえ蛇に呑まるる。蛙は口から蛇に呑まるる。
    蛙は鳴くから居場所が分かって蛇に呑まれるということから、余計なことを言って、
    自ら、禍(わざわい)を招くこと。黙っていればよいのに、つまらぬことを言ったために
    身を滅ぼすことのたとえ。【類語】●藪を突付いて蛇を出す●物は言い残せ菜は食い残せ
食用蛙(bullfrog)しょくようがえる : 日本ではウシガエル(Rana catesbeiana)の別名となっているが、
    世界各国でカエルは食用とされ、トラフガエル(Rana tigrina)などとともに、
    アカガエル科の大形種がおもな対象となる。カエルの肉はタンパク質が主成分で、
    鳥肉や魚肉に似て柔らかく栄養価も劣らない。おもに大腿部(だいたいぶ)をから揚げや
    スープにして賞味される。また、小動物を捕食する習性を利用して、農作物の害虫駆除に用いられる。
    オオヒキガエル(Bufo marinus)は捕食量が多く乾燥にも耐えるため、熱帯地域に多く導入されている。
ダーウィンハナガエル(Darwin’s Frog) : 学名は「Rhinoderma darwinii」。
    チリ南部やアルゼンチン南部に分布する地上性、昼行性のカエルで、
    自然科学者として有名なチャールズ・ダーウィンが発見したカエルである。
    また、このカエルは鳴き声が牛追いのカーボーイの口笛に似ていることから、
    地元では「カーボーイ・ガエル」とも呼ばれている。
    体長は2.5〜3.5cmで、体色は茶色か緑色。目から口にかけては尖っている。
    細い足を持ち、手足の指先は長く、水かきがある。体の皮膚はなめからだが、少しだけイボがある。
    ダーウィンハナガエルは昼行性だが、オスは夜間にも鳴き声をあげる。
    座って獲物を待つタイプの捕食者であり、このカエルは獲物が来るまでひたすら待ち続ける。
    また、ほかの天敵に襲われたときは、動かずに死んだフリをするという。
    繁殖の時期は一年中である。メスは40個ほどの卵を湿った土壌の上に産む。
    卵が動き始めると、オスは産卵された卵のうちの15個ほどの卵を飲み込んで、
    鳴のうの部分に入れておく。鳴のうの中で卵は孵化して、8日ほどでオタマジャクシになる。
    オタマジャクシは鳴のうの中で、オスの皮膚から栄養分を吸収しながら成長していく。
    オタマジャクシは変態を終えて小ガエルになると、オスが口から1〜5匹ずつほど吐き出す。
    
    ダーウィンハナガエル
ツボカビ症(ツボカビしょう)
    真菌(カビ)の一種であるツボカビの仲間(真菌のBatrachochytrium dendrobatidis)が、
    カエルやサンショウウオなどの両生類に引き起こす新興感染症である。
    ツボカビ症は、1990年代に豪州でカエルの激減を招いた病気として、1998年に初めて報告された。
    以後、米国や中南米、アフリカ、欧州などで相次いで流行が確認された。
    食物連鎖を通じて、確実に生態系に打撃を与えていると考えられている。
    ツボカビ類は土壌や淡水中に生息し、分解菌あるいは腐生菌としてキチン、
    セルロース、蛋白質の一種のケラチンといった分解しにくい物質を栄養としている。
    このため、カエルでは皮膚、オタマジャクシでは口に感染する。
    感染したカエルは皮膚がはがれ落ち、皮膚呼吸や浸透圧調整などの機能を奪われ、
    死ぬと考えられる。ただ、カエルの種類によっては症状が出ない場合もあり、
    発症の仕組みには、わかっていないことが多い。
    生活様式は腐生性と寄生性(条件的寄生性あるいは偏性寄生性)である。
    B.dendrobatidisが利用するのはケラチンであり、両生類の皮膚に寄生する。
    B.dendrobatidisの生活環は、人間の精子のような形をした遊走子と、遊走子嚢からなっており、
    遊走子嚢は表面平滑な球形から長球形で、乳頭状の放出管があり、そこから遊走子を放出する。
    ツボカビは真菌の中で唯一その生活環に鞭毛を有する遊走子があり、それによって水中を遊走する。
    特徴は、宿主がいなくても水中で最大7週間生き延びられることで、
     宿主が死ぬと、遊走子が水中を泳いで新たな宿主に寄生し、生き延びるらしい。
     また、温度が30度を超えると死滅するが、低温には比較的強いので、
     渓流が多い日本の環境はツボカビに好都合だとされる。
    両生類に対するツボカビの影響 : 世界の両生類5,743種のうち、120種が1980年以降に
     絶滅したと推測され、さらに1,856種(32%)は絶滅のおそれがあるとされている。
     このような急激な絶滅を加速させている原因の一つに、ツボカビ症があげられている。
     現在、ツボカビはIUCN(国際自然保護連合)による外来生物ワースト100にもリストされ、
     世界的な監視が必要とされている。両生類のツボカビ症は、致死率が高く(90%以上)、
     伝播力が強いために世界中で猛威をふるい、すでにオーストラリアや中米の両生類が
     壊滅的な打撃を受けている。パナマでは、ツボカビが侵入してから2カ月の間に
     生息群が全滅したという報告もある。毎年28kmのもの拡散がみられ、
     ファウナの71%にあたる48種の感染が確認されている。
     野外における防除方法は確立されていないため、野外遺棄が起こると、根絶は不可能である。
     オーストラリアでは輸出入検疫を強化し、国をあげて対策に取り組んでいる。
    カエル「死の病」日本にも上陸asahi.comより部分引用)
 世界各地でカエルなどの両生類に壊滅的な打撃を与えてきた
 カエル・ツボカビ症が、日本でも見つかった。アジアでは初の確認だ。
 人間などには感染しないが、野外に広がると根絶できず、
 生態系に深刻な影響を及ぼす恐れがある。
 日本野生動物医学会(HP)、日本爬虫両棲類学会(HP)、
 世界自然保護基金(WWF)ジャパン(HP)などは
 2006年1月12日に、検疫の強化や販売・流通の
 監視などを訴える緊急事態宣言を共同で出した。
  宇根有美・麻布大助教授(獣医学)は「飼っているカエルに
 少しでも異状を感じたら、獣医師に相談してほしい。
 消毒法や治療法があり、人にはうつらない。
 飼育を放棄して、屋外に放すことだけはしないで」と言う。
 死んだカエルを土に埋めてもツボカビは根絶できない。







殿様蛙(pond frog)とのさまがえる : 学名は「Rana nigromaculata」。
    両生綱カエル目(無尾目)アカガエル科に分類されるカエルの一種。
    本州(関東平野から仙台平野にかけてを除く)、四国、九州のほか、
    中国大陸、朝鮮半島、ロシア沿海州に分布する。また、北海道の一部にも人為分布する。
    成熟した雌雄は著しく色彩・斑紋(はんもん)が異なり、
    雌は白色の地に不規則に連続した大形黒斑をもつのに対し、雄は一様な黄褐色を呈する。
    背面に淡色の背中線、両側に淡色の背側隆条がある。未成熟個体では緑色がかることが多い。
    背面には多数の細長い縦隆起があり、腹面は平滑で白色。雄は口角部に1対の鳴嚢(めいのう)を備え、
    繁殖期には前肢第1指に暗色の婚姻瘤(こんいんりゅう)が発達する。
    体長6〜9cmで雌は大形。低地、山間部の水田に生息し、4〜6月に産卵する。
    卵径1.8mm、卵数約2000個、卵塊は球状で水底に沈む。
    
    トノサマガエル
    東瀬戸内海沿岸から東海地方、信越地方にかけて、近縁のダルマガエル、トウキョウダルマガエルと
    混生している。これらの地域では繁殖場所、繁殖期、鳴き声などの違いによって両者は隔離されているが、
    この隔離は不完全で各地に自然雑種が発見されている。
    関東平野、仙台平野とその周辺にはトウキョウダルマガエルのみ分布し、トノサマガエルはいない。
    ダルマガエルは小形で体長約5cm。褐色で背中線、縦隆起はなく、大形黒斑が散在する。
    トウキョウダルマガエルはその亜種で、体長、鳴き声、背面斑などの点でトノサマガエルと
    ダルマガエルの中間的な特徴をもつため、過去の交雑によって生じた雑種起源のカエルとみなされる。
    トノサマガエルの腹部は、ほとんど白であるのに対し、ダルマガエルでは網目状の斑紋が入る。
    また、トウキョウダルマガエルは、ダルマガエルとトノサマガエルの中間くらいで明瞭な斑紋は持たない。
    背面の小隆条が、トノサマガエルでは発達するのに対し、
    ダルマガエルやトウキョウダルマガエルではあまり発達しない。























































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