核関連(YSミニ辞典)

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ABCC(Atmic Bomb Casualty Commission) : 原爆傷害調査委員会。
    原子爆弾投下による放射線が人体に及ぼす影響を長期的に調査するために、
     トルーマン米国大統領の命で、1947(昭和22)年に設立された研究機関のこと。
    研究所は広島市の比治山の山頂に作られたカマボコ型の建物で、長崎にも作られた。
    大規模な面接調査で被爆場所と建物構造から被爆者の浴びた放射線量を推定した。
    被曝線量限度の国際的な基準を定めるうえでも重要な役割を果たした。
    一方で「調査研究の対象にはするが、治療はしてくれない」ことが明らかになった一時期、
    被爆者などによる旧ABCCの撤去運動が行われたことがある。
    また、この時代に収集・解析された膨大な資料の大部分は、アメリカに持ち帰られたといわれている。
    1975(昭和50年からは、米国エネルギー省と日本の厚生省が費用を折半する
    財団法人の放射線影響研究所(放影研)が調査を引き継いでいる。
    12万人規模の寿命調査をはじめ、成人健康調査(2万人規模)、胎内被爆者調査(3千人規模)、
    被爆2世調査(8万人規模)など、規模や期間いずれにおいても世界最大規模の調査を続けている。
     被爆者はABCCに診察を強要され、全裸にされてさまざまな検査をされた。
    第2次性徴期の少女まで何度も全裸で検査され、身体や体毛の発育の状況を記録されたりしたという。
    多くの被爆者が検査を受けたが治療は一切されなかった。
    そして被爆者が亡くなった場合家族は検屍解剖を強制的に承認させられたのである。
    また、1960年代に、被爆者が死ぬとその遺体をくれないかと遺族のところへ来たという話もある。
    被爆者は最後の最後まで人間として扱われる事がなかったのである。
B53(B53 nuclear bomb) : アメリカ合衆国が配備していた核爆弾(水素爆弾)である。
    メガトン級の核出力を有する戦略目的の核爆弾であり、W53核弾頭も同等の弾頭を使用している。
    キューバ危機により米ソの対立が深まった時期に生産され、冷戦の象徴とも称された。
    開発は1955(昭和30)年にロスアラモス国立研究所で開始された。
    1962年から1965年まで生産が行われ、350発が生産された。搭載航空機は
    アメリカ空軍のB−47、B−52、B−58爆撃機の大型爆撃機であり、各機種とも1発を搭載できた。
    投下に際しては、三段階のパラシュート展開により、レイダウン投下が可能となっていた。
    プライマリー部にはプルトニウムを用いず、高濃縮ウランを用いていた。
    核融合燃料はリチウム6同位体を用いた重水素化リチウムであった。
    最大威力が9メガトンと大きく、1997年にB61Mod11地中貫通爆弾に更新されるまでは、
    地下施設破壊用に配備されていた。これは、地表面での核爆発による衝撃波で、
    地下施設を破壊するものである。冷戦期のロシア(旧ソ連)では、ツァーリ・ボンバと呼ばれる
    50メガトン(本来100メガトンの設計だが実験は50メガトンで行った)もの恐るべき水爆も作られていた。
    
    B53の背面(国立アメリカ空軍博物館所蔵)

    米最大級の核爆弾「B53」最後の一発解体完了
     米エネルギー省の核安全保障局(NNSA)は2011年10月25日、冷戦期のソ連との核開発競争を
    象徴する大型核爆弾で、キューバ危機で米ソが対立を深めた1962(昭和37)年に配備が始まった
    「B53」の最後の一発をテキサス州アマリロの核施設で解体したと発表した。
     NNSAは「核兵器なき世界を目指すオバマ大統領の方針に一致する画期的な節目」であると
    意義を述べている。B53はミニバンほどの大きさの水素爆弾。重さは4.5トンと、
    米国が保有する最大級の核爆弾だった。威力は広島に投下された原爆の600倍とされる。
     新型ミサイルなどの台頭で用を足さなくなったから廃棄処分にしただけなのに、
    それを「“核なき世界”の実現に向けた重要な一歩」などと言ってほしくない。
    それにしても広島に投下された原爆の600倍の大型水爆を本気でソ連の都市を爆撃するつもりで
    いたのだろうか。ソ連は「B53」の5倍以上の威力がある水爆を製造していたのだ。
    もし、両国が何百発も使用していたとしたら、今の地球に人類はいなかっただろう。
    自国民を守るためなら、他国の環境や人命はおかまいなしという、両国のトップや
    軍事関係者は「慈悲」という言葉を知らないし、日本人を人間と思っていたかったのだろうか。
    慈悲がないから広島・長崎やカラフトの一般国民を無差別に殺戮できたのだろう。
    キリスト教も仏教の「融和」「お慈悲」「平等」などの言葉を学ぶべきだ。

CTBT = CTBT(別掲)
ECCS(emergency core cooling system)イー・シー・シー・エス : 緊急炉心冷却システム。
    原子炉の、緊急炉心冷却装置。非常用炉心冷却装置。
    原子炉のパイプが破損して冷却水が失われた場合、緊急に冷却水を送って、
    原子炉が空焚(からだ)き状態になって炉心の溶融や放射性物質の漏出を防ぐ安全系の最重要装置。
    原子炉で発生する熱を取り除くための冷却系配管が破断するなどで、
    炉心から冷却水が大量に失われる事故(冷却材喪失事故)が起きたとき、緊急に水を押し込む。
     加圧水型炉では、高圧で蓄えてある水を入れる蓄圧注入系、
    ポンプを使い高圧で送り込む高圧注入系、圧力が下がってから働かせる低圧注入系の3系統がある。
     沸騰水型炉では、圧力容器上部から高圧で水をまく高圧炉心スプレー、低圧炉心スプレー、
    低圧注入系がある。格納容器内を冷やす格納容器スプレーや、格納容器の小ささを補う
    サプレッション・プール(チェンバー)もある。これらと格納容器とを工学安全施設という。
     冷却水の流出により日本で初めてECCSが実作動したのは、
    1991(平成3)年2月に起きた関西電力美浜原発2号機(福井県美浜町)の事故。
    蒸気発生器の伝熱管(直径22、2mm肉厚1.27mm)1本が破断し、このため原子炉が自動停止し、
    さらにECCSが作動した。原因は伝熱管の振動を抑えるための振れ止め金具の施工ミスだった。
EPZ(Emergency Planning Zone)
    @防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲。防災対策重点地域。緊急時計画区域。
     原子力施設からの放射性物質又は放射線の異常な放出を想定し、周辺環境への影響、
     周辺住民などの被曝(ひばく)を低減するための防護措置を短期間に効率良く行うため、
     あらかじめ異常事態の発生を仮定し、施設の特性などを踏まえて、
     その影響の及ぶ可能性のある範囲を技術的見地から十分な余裕を持たせて定めた範囲をいう
     (原子力安全委員会の「原子力施設等の防災対策について」(防災指針)による)。
     原発事故が起きたときに備えて、自治体などがあらかじめ住民の避難などの
     対策を決めておく地域のことで、対象自治体は原子力防災計画の策定や被曝対策用の
     ヨウ素剤の備蓄などを実施している。国の原子力防災指針では、原発から半径8〜10キロとの
     目安を示しており、佐賀、鹿児島の両県は原発から半径10キロをEPZとしているが、
     福島第一原発事故を受け、原子力安全委はEPZの拡大を検討する方針である。
     参 : 計画的避難区域
    A輸出加工区 = EPZ(別掲)
IAEA(国際原子力機関) = IAEA(別掲)
JCO臨界事故(ジェー・シー・オーりんかいじこ) : 東海村JCO臨界事故。
    1999(平成11)年9月30日、茨城県那珂郡東海村に所在する住友金属鉱山の子会社の
    ウラン加工施設「株式会社ジェー・シー・オー」東海事業所の転換試験棟で、
    沈殿槽に作業員がウラン溶液を大量に投入したため核分裂が連鎖的に続く臨界状態に達し、
    この連鎖反応は約20時間持続した。これにより、至近距離で致死量の中性子線を浴びた作業員3人中、
    2人が日本国内で初めて事故被曝で死亡し、JCO社員や周辺住民ら667人が被曝した。
    県は半径10キロ圏の住民に屋内退避要請を出した。
    事故の重大さは国際原子力事象評価尺度(INES)で当時、国内最悪のレベル4だった。
    同事業所によると、風評被害など被ばくに伴う補償請求が8018件あり、うち6983件で示談や
    民事訴訟などを通じ補償や賠償に応じた。合意金額は約154億円(個別の金額は非公表)。
    事故を巡っては、通報が遅れ、国の対応も後手に回り批判を浴びた。
    違法操業が原因だとしてJCOと事業所元幹部ら6人と法人としてのJCOが、
    業務上過失致死罪などで2003年3月に水戸地裁で有罪が確定した。
    事故の原因 : 旧動燃が発注した高速増殖炉の研究炉「常陽」用核燃料を加工を担う
     JCOのずさんな作業工程管理にあった。JCOは燃料加工の工程において、
     国の管理規定に沿った正規マニュアルではなく「裏マニュアル」を運用していた。
     一例をあげると、原料であるウラン化合物の粉末を溶解する工程では正規マニュアルでは
     「溶解塔」という装置を使用するという手順だったが、裏マニュアルではステンレス製バケツを用いた
     手順に改変されていた。事故当日はこの裏マニュアルをも改悪した手順で作業がなされていた。
     具体的には、最終工程である製品の均質化作業で、臨界状態に至らないよう形状制限がなされた
     容器(貯塔)を使用するところを、作業の効率化を図るため、別の、背丈が低く内径の広い、
     冷却水のジャケットに包まれた容器(沈殿槽)に変更していた。その結果、濃縮度18.8%の
     硝酸ウラニル水溶液を不当に大量に貯蔵した容器の周りにある冷却水が中性子の
     反射材となって溶液が臨界状態となり、中性子線等の放射線が大量に放射された。
    参 : [YouTube](東海村JCOバケツ臨界ウラン放射線・放射能被爆事故)
MOX燃料加工工場 : 全国の原子力発電所から出る使用済み核燃料を核燃料再処理施設で取り出した
    プルトニウムウラン混合酸化物(MOX)の粉末を、再び原発で使う燃料集合体(MOX燃料)に
    加工する施設のこと。ウラン資源の有効活用を掲げる核燃料サイクル計画の一翼を担う。
    茨城県東海村に技術開発用の加工施設はあるが商業用はまだない。
    日本のプルトニウム利用政策は現在、同燃料を普通の軽水炉で使用するプルサーマル計画を
    主軸に据えているが、新潟県刈羽村の住民投票で反対が多数を占めるなど、
    計画は行き詰まり状態で、現時点で燃料出荷先のめどは立っていない。 参 : 核燃料サイクル
NPT(核不拡散条約) = NPT(別掲)
NPT再検討会議 = NPT再検討会議(別掲)
アクチノイド(actinoid) : 原子番号89のアクチニウムから103のローレンシウムまでの15の元素の総称。
    すべて強い放射能をもち、物理的、化学的に極めてよく似た性質をもつ。
    希土類元素の大部分を占めるランタノイドと類似の挙動を示す。 参 : プルトニウム
一次冷却水(a primary coolant)いちじれいきゃくすい
    原子炉内で、核分裂によって発熱する炉心部を直接冷却する水。
    加圧水型炉(DWR)では、原子炉格納容器内にあり、核分裂で発生する高温となった一次冷却水が
    蒸気発生器(熱交換器)を通して二次冷却水を加熱し、発生する蒸気でタービンを回して発電する。

    原発の冷却水漏れ1.8トン、九電公表せず「想定の範囲内」
     九州電力は2011年12月9日深夜、定期検査中の玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)3号機で、
    原子炉補助建屋内にある1次冷却水の浄化やホウ素濃度調整をするポンプから
    1次冷却水1..8トンが漏れたことを明らかにした。九電は当初ポンプの温度上昇のみを
    同日午後3時半以降に佐賀、長崎両県や報道各社に伝えたが、1次冷却水漏れは公表しなかった。
    
    玄海原発
     九電によると、9日午前10時48分、3号機の充てんポンプ3台のうち稼働中だった1台で、
    通常は30〜40度の温度が80度以上に上昇して警報が鳴った。
    このため、休止していた他のポンプに切り替えた。1次冷却水はコバルトなどの放射性物質を含んだ
    汚染水で、原子炉補助建屋内のピットと呼ばれる回収ますに出たが、回収。外部への影響はないという。
     3号機は昨年12月11日に定期検査入り。原子炉内には燃料が装着されており、
    冷温停止状態を保つために冷却水を循環させていた。
    九電は高温になった原因は、冷却水不足や1次冷却水の不良などの可能性があるとみて調べている。
     九電は、温度上昇の警報が鳴った約4時間半後の9日午後3時半以降に佐賀、長崎両県、
    同6時ごろに報道各社にポンプの異常のみを知らせた。
    汚染水漏れについては、報道機関の問い合わせに、事実関係を認めていた。
    九電によると、汚染水漏れが設備内にとどまっているケースでは法規上、公表する必要はないという。
    九電は「1次冷却水の漏れは原子炉補助建屋内にとどまっており、
    広報する必要はないと判断した」と説明した。
     経済産業省原子力安全・保安院も、今回のポンプの異常や冷却水漏れは、
    法令による報告義務の対象にあたらないとしている。
    ただし、九電からは、警報が鳴ってすぐにポンプを停止し、冷却水が外部に漏れていないことや、
    モニタリングデータに問題がないとの報告があり、原因を調査することを確認したという。
     しかし、枝野幸男経済産業相は13日の閣議後の記者会見で、冷却水漏れをめぐる九電の
    対応について、「報告が遅かったことは遺憾だ。小さなことでもできるだけ早く公表すべきだ」と
    指摘しているし、中部電力や中国電力は1リットルを超える冷却水が漏れた場合、
    たとえ建屋内であっても地元や報道機関に公表しているが、
    九電は「水がタンク内にとどまっていれば、量が多くても報告や公表の義務はない」としているのは
    おかしい。放射性物質を含む約1.8トンの水漏れは1994年3月に3号機が運転を始めて以来、
    最大規模だったのに、その後水漏れが止まらず建屋外に漏れだしたらどうするのだ。

ウラン(uranium、Uran:ドイツ)
    英語のuranium(ウラニウム)の略称で、アクチノイド元素の一つ。元素記号はU。
    原子番号は92。原子量は238.0。天然にはピッチブレンド・カルノー石などの鉱物に含まれる。
    その同位体組成はウラン238が99.3%、ウラン235が0.7%のほか、
    ウラン234が微量に存在し、いずれも半減期の長いα崩壊をする。
    ウラン235と233(人工放射性核種の一つ)は連鎖的核分裂反応をするので核燃料となる。
    ウラン238も中性子を捕獲して核燃料のプルトニウム239となる。
    光沢のある白色固体の金属で、化学反応性が高く、粉末にすれば空気中で自然発火する。
    ウランとプルトニウム核兵器
    兵器級核物質の製造方法としては、
     @天然ウランの中にわずかしか含まれず、核分裂を起こすウラン235の比率を高める「濃縮」
     A原子炉でウラン燃料を燃やすと使用済み核燃料の中にできるプルトニウムを、
      化学反応を使って取り出す「再処理」の二つの方法がある。
    広島、長崎に落とされた原爆のうち、広島型は濃縮でつくられたウラン、
    長崎型は再処理でつくられたプルトニウムをそれぞれ原料としていた。
    濃縮法の中で技術的ハードルが低いのが、ウラン同位体の重さの違いを利用し、
    ウラン化合物のガスを遠心分離器にかけて濃度を高める「遠心分離法」である。
    北朝鮮ではプルトニウムとウランという2種類の核分裂物質を使った核開発計画を着々と進めてきている。
ウラン濃縮 : 天然ウランは質量数234、235及び238の3種類の同位元素からなる混合物である。
    ウラン238(燃えないウラン)は高いエネルギーの中性子でしか核分裂しないが、
    ウラン235(燃えるウラン)はエネルギーの高い中性子から熱中性子までの
    全てのエネルギー領域で核分裂するが、とくに熱中性子による核分裂数が多い。
    軽水型発電炉でウランから原子エネルギーを取り出そうとすれば、
    ウラン235の核分裂に依らなければならない。
    しかし、自然界にあるウラン鉱石から分離したウラン元素には、
    中性子を吸収して核分裂をするウラン235が約0.7%程度しか含まれていない。
    残りはわずかに質量が大きいウラン238が占めている。したがって、
    天然ウランでは核分裂の連鎖反応を起こしにくいので、ふつうの原発(軽水炉用)の燃料や、
    核兵器の材料として使うには、効率よく核分裂を起こさせるために、原発燃料用は通常、
    ウラン235の割合を3〜5%まで、核兵器に使う場合は90%以上まで含有率を高める必要がある。
    ウラン濃縮法(ウランを濃縮する方法)
     遠心分離法 : 遠心力の場で質量差による違いを用いる。
     ガス拡散法 : 微細穴を透過するときの拡散速度の違いを用いる。
     電磁法 : 電磁場で質量差による違いを用いる。
     ノズル法 : ノズルから吹き出す速度差を利用する。
     イオン交換法 : 化学的に酸化還元時に反応差を利用する。
     光化学的分離法 : 光化学反応速度差を利用する。
     化学交換法 : 塩酸ウラン溶液を使用する。
     レーザー濃縮法 : レーザー光線を照射して分離する。
     原子レーザ法 : 金属ウランを気化させた蒸気状態でレーザー光線を与えて分離する。
     分子レーザ法 : 六フッ化ウランの気体にレーザー光線を与えて分離する。 などがある。
    現在、工業的に行われているのは「ガス拡散法」と「遠心分離法」であり、
    他の方法は実験室規模からパイロットプラントまでの色々の段階にあり、
    開発内容は機密措置が取られて不明である。
    米国とフランスを初めとする四カ国共同はガス拡散法で、
    英国、西独とオランダの三国共同プラントは遠心分離法である。
    わが国は遠心分離法による開発を行ってきており、商業ウラン濃縮工場は
    平成4年3月より日本原発のウラン濃縮工場(青森県六ヶ所村)で操業運転を開始している。

    韓国の政府系研究機関で、IAEAに申告しないままウラン濃縮実験が行われていたことが
    2004年9月2日に分かったが、韓国科学技術省は「原発の核燃料の国産化を目指した研究の中で
    行われた。ごく少量であり、核兵器開発計画などとはまったく無関係」と強調しているが、
    原発燃料だったら5%も濃縮すればよいことで、0.2グラムの微量だとはいえ核兵器レベルに近い
    80%も高濃縮にする必要があるのでしょうか。

ウランの転換(ウランのてんかん)
    核燃料の原料となるウランプルトニウムの化学的な性状を変換する事、及びその作業を指す。
    通常は天然ウラン精鉱(イエローケーキ)を六フッ化ウラン(UF)に精錬する工程を言う。
    硝酸、有機溶媒などを使って酸化ウランを抽出し、フッ化水素と反応させて六フッ化ウランをつくる。
    反応タンクや、高温を保つ装置などが必要である。六フッ化ウランは温度や圧力によって、
    その状態を気体、液体、固体と変えやすく、その後の加工に都合がよい。
    日本国内には工場は無い。日本の電力各社は海外の転換工場からこの状態のウランを買いつけている。
    これらのウランは濃縮工場に送られて濃縮されて、濃縮ウランとなる。
    また、低濃縮ウランのUFを、濃縮度を調整の上、二酸化ウラン(UO)へ変える事を再転換という。
    UO粉末は焼結されて燃料ペレットとなる。燃料ペレットは核燃料製造工場にて燃料棒に詰められ、
    燃料集合体に組立てられて電力会社に納入される。
遠距離被爆者(えんきょりひばくしゃ) : 一般に、爆心地から2キロ以上離れた遠方で被爆した人を言う。
    被爆者援護法での、爆心地から2キロ未満で被爆した「直接被爆者」の1号被爆者、
    原爆が爆発した後に救援活動のため爆心地周辺に入って被爆した「入市(にゅうし)被爆者」の
    2号被爆者、救護所などで10人以上の被爆した者の救護や遺体搬送をして
    放射線を浴びた者の3号被爆者のいずれからも遠距離被爆者は除外されている。
    約6割は、けがもやけどもしなかったとの調査結果もある。
    2キロは国の原爆症の認定審査でも「壁」と言われ、被曝線量が低いことなどを理由に、
    ガンなどになった多くの人が、被爆と病気の因果関係を否定されてきた。
    だが、放射性降下物や放射性物質を吸い込んだことによる内部被爆の影響や、
    「心の傷」の問題も指摘されている。
    
    原爆の被爆に外傷の有無や、爆心地からの距離には関係なく、
    爆心地周辺にいた人は、入市被爆者も含めてガンや白血病などを発症した場合など、
    国はすべてを原爆症として認定すべきである。
    元はと言えばポツダム宣言を、国が頑固なまでに拒んで受諾を引き伸ばしたことから、
    原爆投下の引き金になった要因が大なのである。

海洋投棄規制条約(かいようとうききせいじょうやく) → ロンドン条約
加圧水型原子炉(Pressurized Water Reactor:PWR)かあつすいがたげんしろ : 加圧水型軽水炉。
    普通の水を減速材と冷却材として用いる軽水炉の一種で、現在世界で最も多い型式の
    原子力発電用の原子炉である。燃料として低濃縮ウランを一次冷却材として軽水を使用し、
    高圧の一次冷却系統とタービンへ蒸気を送る二次系統とが蒸気発生器を介して分離された
    間接サイクル方式による発電用原子炉のこと。
    現在、わが国の発電用原子炉の中で最も多く稼働している軽水炉(LWR)には、加圧水型(PWR)と
    沸騰水型原子炉(BWR)の2つの型がある。PWRは、減速材と冷却材として軽水を用い、
    炉心部における一次冷却材の沸騰を抑制するために一次冷却系統は100〜160気圧くらいの
    高い圧力をかける。この冷却材の軽水(一次冷却水)は沸騰することなく加熱され高温水となり
    蒸気発生器に導かれる。この高温の冷却材は蒸気発生器において別の水(二次冷却水)に熱を伝えて
    これを蒸気に変え、発電機のタービンを回して発電する。一次系と二次系が分離されているので、
    タービンを通る二次系の蒸気には放射性物質を含まない点が沸騰水型原子炉と異なる。
    日本では2004年3月現在、23基が稼動している。
外部被曝と内部被曝(がいぶひばくとないぶひばく) : 外部被曝は人体表面(肌)からの被曝であり、
    内部被曝は、放射性物質が空気や水、食べ物を経由して人体内部が被曝することである。
    また、人体は天然に存在する放射線源に被曝しており、これは特に「自然被曝」と呼ばれる。
    天然に存在する外部被曝源としては宇宙線や地殻からの放射線があり、
    内部被曝源としてはカリウム40や炭素14のような天然に存在する放射性同位体がある。
     外部被曝の身近な例では、X線や宇宙線による軽い外部被ばくがあるが、
    強い放射線を大量に浴びると、造血器官、皮膚、神経、生殖器、内臓などがすべて打撃を受け、
    その結果、嘔吐、脱毛、倦怠感などの急性障害や、潰瘍、がんなどの晩発性障害が起きる。
    このように重度の外部被ばくは、原子爆弾以外は、原子力施設の臨界事故
    あるいは強い放射能源に触れてしまったケースなど、すべて「人為的な」原因による。
    安全な距離を保つか、間に遮断するものがあれば、外部被ばくを避けることは可能である。
     内部被ばくは、肺から血液に入るのと、胃腸の粘膜から血液に入るのでは影響も違うが、
    わずかな放射線量の場合、外部被ばくよりも内部被ばくの方がずっと深刻である。
    内部被ばくは、ごく少量でも、体内で多大な影響を及ぼすことができる。
    被ばくによる被害は、「距離」と「時間」の要素が決め手となる。
    核の崩壊が出す粒子状の放射線は、発信源から短い距離しか飛ばないし、
    外部被ばくはかんたんにブロックできるしかし、放射性物質が体内に入ると、体の中は丸裸なので、
    放射線が数ミリ飛ぶだけでも、まわりの細胞は放射線をモロに受けることになる。
    内部被ばくは、放射性物質が「量=微量」でも、「距離=ゼロ(体内)」、「期間=長期間」の条件が
    そろえば、さまざまな病の原因になるということである。どのような病気かと言うと、
    がん(白血病、肺、すい臓、大腸)、糖尿病、心臓病、慢性疲労など、限りがない。
     広島、長崎の被爆は原爆により瞬間的に放射線を浴びた外部被曝が中心で、
    チェルノブイリの爆発事故でも原発内に入った作業員らが外部被曝した。
    これに対して周辺の住民は、事故で放出された放射性物質を
    体内に取り込むことによる内部被曝が中心であった。
核シェルター(Nuclear shelter)かくしぇるたー : 核兵器からの防護を目的としたシェルター。
    有事の際のNBCR攻撃(N:核兵器・B:生物兵器・C:科学兵器・R:放射能)などの各種攻撃に対してや、
    自然災害(地震・津波・台風)より、一時的に危険から身を守る空間である。
    通常は一般市民の退避用途のものを指し、地下鉄などの大規模地下公共施設を転用する他、
    個人住宅内に設置されるものもある。冷戦下、民間防衛努力の一環として発達。
    また、国民皆兵の永世武装中立を国是とするスイスのような国でも整備が進められていた。
    基本的には核兵器の被害のうち、残留放射線への対応を主眼とする。
    核兵器の使用によって発生する熱線・爆風・放射性降下物質(いわゆる死の灰)のうち、
    危険な放射線源は半減期が長くても数日程度であるため、ひとまずの目安として
    外部の影響がなくなるまでの2週間程度の退避生活を過ごせるよう設計されている。
    規模としては、一般家庭の利用を想定した小型シェルター(5〜10人程度)から、
    大規模施設に設置を想定した大型シェルター(数千人規模)まで多様である。
    多くのシェルターは地下に建設され、食料や飲料水は独自に備蓄し、
    呼吸用の空気は特殊なフィルター(濾過装置)によって外気から取り込むようになっている。
    参 : NPO法人・日本核シェルター協会(HP)、核シェルター(サクラビルテスHP)
     核シェルターを保有して逃げ延びる事が出来ても、生き延びれるのは数カ月が限度と言われ、
    しかも1人や1家族生き残ってもまともな生活はできない。個々の職業を持っている人が
    お互いに支え合って生活していることから、少人数が生き残ってもいずれは閉所の中で狂い死に
    すると思う。1千万円以上もする家庭用シェルターを備えてまで、自分だけ生きようとは思わない。

核燃料サイクル(かくねんりょうサイクル) : 「原子燃料サイクル」ともいい、原子力発電所(軽水炉)で
    燃やした使用済み核燃料を再処理し、燃え残りのウランや再処理して取り出したプルトニウムを回収し、
    再加工して再び高速増殖炉や普通の原発(軽水炉)の燃料として再利用することを言う。
    輸入頼みのウランを有効活用するのが、最大の狙いである。
    この核燃料サイクル計画は、原子力委員会の決定「原子力開発利用長期計画」(1961年2月8日)から
    始まり、いわば「国策」としてすすめられ、将来はプルトニウムを高速増殖炉で燃やして増やし、
    「準国産」エネルギーにするのが目標だった。この「国策」に基づき、電力10社の出資する
    日本原燃株式会社の再処理工場が青森県に建設された「六ヶ所村再処理工場」である。しかし、
    福井県で高速増殖原型炉「もんじゅ」が1995年にナトリウム漏れ事故を起こし、高速増殖炉の開発は
    中断していていまだに実用化されていないために当面の利用方法が、使用済燃料を再処理・再加工し、
    従来型原子力発電所で利用する「プルサーマル」が柱となり、2010年までに16〜18基で行うことが
    予定されているが、国内ではようやく2009年に九州電力玄海原発でスタートし、
    高速増殖原型炉「もんじゅ」も2010年5月6日に事故から14年半ぶりに運転を再開し、
    日本政府は「2050年ごろの実用化」を掲げている。
    プルサーマル燃料は元の燃料の最大2割から4割程度に相当する燃料として活用でき、
    その分ウラン資源可採年数を延長できることになる。
    さらに、将来技術開発によって高速増殖炉が実用化されれば、天然ウランをエネルギー資源とし、
    燃やした燃料以上のプルトニウムを生み出すことが可能となるのでウラン資源の有限性を
    事実上克服でき、日本の超長期にわたる安定エネルギー供給問題が解決されることになる。
    とはいえ、核燃料サイクルは当初の計画通りに進んでいるわけではなく、たとえば、六ケ所村の
    再処理工場の建設費は膨大にふくれあがっている(予定8000億円→2兆1400億円)。また、
    その処理能力も年間800tUとされている、全国の使用済核燃料発生量である年間1000tUには
    間に合わない。簡単な計算で、年間200tUの行き場のない使用済核燃料が発生することが予想される。
    さらに、上記のように計画で予定されているいプルサーマルも、見通しがたっていない。
    再処理の際に出た高レベルの放射性廃液はガラスで固め、地下深くに埋設する。日本、フランス、
    ロシアなどがこの路線を採用し、米国など原発保有国の大半は、使用済核燃料をそのまま地中に
    埋める直接処分方式を採用している。しかし、旧通産省(現経済産業省)が1994年にコスト比較をし、
    日本の方式は直接処分方式の2倍の費用がかかることを試算していたのにもかかわらず、
    電力会社や原子力研究開発機関から反対されて公表していなかったのである。    
核燃料サイクルの流れ(黄色は再処理工場)
各地の
原子力発電所

廃棄物
低レベル放射性廃棄物埋設センターで処理
使用済み
燃料
再処理工場で
受け入れ・貯蔵
せん断・溶解

廃棄物
高レベル
放射性廃棄物
貯蔵管理センター

廃棄物
保管
分離 ガラスビーズ
精製・脱硝 ガラス固化 ウラン鉱山
 
ウラン
酸化物
製品
回収ウラ
ン・プル
トニウム 
最終処分場
(地下300m)
転換工場
回収
ウラン
再処理
工場
     六フッ化
      ウラン
将来に
向け
貯蔵
MOX
燃料
加工工場

MOX
燃料
各地の原発
燃料棒
ウラン濃縮工場
など
    2005年4月19日、原子力発電所の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムをウランと混ぜ、
    再び原発の燃料に加工する工場(MOX工場)の建設について、青森県が受け入れを表明し、
    事業者の日本原燃と立地基本協定を結び、本格的な準備に入った。
    参 : MOX燃料加工工場

    2004年3月の参院予算委員会で福島瑞穂社民党党首の質問に対し、日下一正現経済産業省
    資源エネルギー庁長官は「日本におきましては再処理をしない場合のコストという試算をしたものは
    ございません」と平然とウソをついていたのである。電力会社から「もし本当に発表され、
    それが非常に割高である場合、サイクル事業が成り立たなくなる可能性がある」と
    コスト論議を「封印」されていたのである。電力会社は自らの経営路線を改めずに、
    核燃料サイクルの2倍ものコスト高は国民に電気料金の上乗せすればよいと考えているのである。
    使用済み核燃料の安全な廃棄方法が確立されていなく、事故のために高速増殖炉の開発が
    中断されて核燃料サイクルは軌道に乗っていないのに、青森県は高速増殖炉までのつなぎだった
    プルサーマル計画のMOX工場建設を受け入れたが、県の財政難などの理由で
    国民を危険にさらしてよいものだろうか。

核燃料棒(nuclear fuel rod)かくねんりょうぼう : 燃料棒(ねんりょうぼう)原子炉の炉心の部品のひとつ。
    原発の核燃料は、ウランを濃縮して指先ほどの大きさに焼き固めたもので、
    「被覆管」と呼ばれる金属の筒に数百個詰め込んだ「燃料棒」の形で使われる。
    棒状の燃料棒は炉心内での核燃料の標準的な形状であり、数十本の燃料棒が束ねられ
    「燃料集合体」と呼ばれるユニットが組まれる。制御棒と共に複数個の燃料集合体によって
    炉心が構成される。原子炉の大きさによって異なるが、炉心に挿入される集合体の数は数百になる。
    核燃料の交換作業は燃料集合体の単位で行われる。
    原子炉で使用される核燃料は、熱交換効率や安全性、取り扱いの便宜のために、
    1cmほどの円柱状の燃料ペレットから始まって、最後は大きな燃料集合体に組み上げられている。
    まず、核燃料は燃料ペレットと呼ばれる長さ1cm、直径1cm弱ほど長方形の小さなセラミックに
    焼き固められる。この燃料ペレットが約350個、一直線にまとめられて、
    ジルコニウム合金製等の燃料被覆管と呼ばれる4mほどの長さの細い管に詰めまれ、
    バネと共に両端が密封される。この状態が燃料棒である。この燃料棒を百数十本から2百本以上集めて
    間隔を空けて束になる様に金属で固定した物が燃料集合体であり、原子炉の炉心で使用される。
    参 : 使用済み核燃料
核の先制不使用(No first use of nucleus)かくのせんせいふしよう : 核の先行使用。核の第一使用。
    核攻撃を受けない限り、核兵器を使用しないことをいい、核兵器を事実上の「禁じ手」にして、
    核廃絶への抵抗感を少なくする手段として議論になってきた。
    圧倒的な核戦力を持つ米国が先制不使用を宣言すれば核軍縮につながるとされる。
    東西冷戦時代、通常兵器で圧倒的に優位だった旧ソ連を中心とするワルシャワ条約機構に対し、
    米国など北大西洋条約機構(NATO)側は核兵器を先に使用することを辞さないとして、
    先制不使用政策を採用していなかった。核不拡散条約(NPT)上の核保有5カ国では、
    中国と旧ソ連が先制不使用を宣言していたが、冷戦後にロシアは撤回したので、
    現在、核保有5カ国のうち先制不使用を宣言しているのは中国だけである。
    NPT非加盟の核保有国ではインドが宣言している。
    口約束に過ぎないとの見方がある一方、軍縮効果を期待する声もある。

    米に「先制不使用宣言」勧告  核廃絶へ、国際委が報告書案
     ペリー元米国防長官など日米欧豪の政治家らでつくる「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」
    (共同議長・川口順子元外相ら)が核兵器の廃絶への道筋を示すために策定している
    報告書案の概要が2009年3月15日、分かった。オバマ米大統領が核の「先制不使用」政策の
    採用を検討すると宣言し、核軍縮を先導するよう勧告、3段階で核を全廃する。
    諮問委員の阿部信泰元国連事務次長ら関係者が明らかにした。
     オバマ大統領はキッシンジャー元米国務長官やペリー氏らが2007年に提唱した
    「核なき世界」を政策目標とすると公約、核軍縮の機運は高まっている。
    国際委は報告書を年内にまとめる方向で、米政府の核政策に影響を与えそうだ。
     先制不使用は、米国や同盟国が核攻撃されない限り、先に核を使わないと約束する政策。
    米国の「核の傘」に依存する日本政府内には、
    北朝鮮のミサイル攻撃抑止のために「先制核使用」の選択肢を保持するべきだとの意見が根強い。
     阿部氏らによると、核廃絶は、米国が先導する初期段階、核廃絶のめどをつける中期段階、
    核廃絶を検証する最終段階−で実現。4年間の初期段階で米国は、先制不使用へ向けた宣言に加え
    (1)包括的核実験禁止条約(CTBT)批准
    (2)核分裂物質生産禁止条約(カットオフ条約)の交渉開始
    (3)ロシアと締結した第1次戦略兵器削減条約(START1)更新
    (4)中国との核軍備管理対話、を行う。
核の平和利用(かくのへいわりよう) : NPTは米ロ英仏中の5カ国の核独占を認めるかわりに、
    「加盟国の奪い得ない権利」として、原子力発電など「核の平和利用」を認めた。
    しかし、北朝鮮が、NPTから脱退表明して核兵器保有を宣言した。
    NPT加盟国のイランが「核の闇市場」を通じてウラン濃縮技術を取得するなどNPTの抜け穴が露呈した。
    米国は、大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)など核不拡散の強化を重視した。
    日本や途上国が主張したNPT体制の維持・強化に興味を示さなかった。
    米ブッシュ政権は、核疑惑国の北朝鮮とイランに平和利用の権利を制限する一方、
    核兵器を保有するインドには全面的な原子力協力の再開を約束するなど、
    自国の基準で「平和利用」の定義を決める姿勢を強めている。国際ルールが損なわれて
    NPTの実効性が失われかねないと、非核国と不拡散関係者は懸念を示している。
核の闇市場(かくのやみしじょう)
    パキスタンの「核開発の父」と呼ばれるカーン博士が築いた核物質や技術の秘密取引ネットワークのこと。
    2004年2月、博士がイラン、リビア、北朝鮮への核技術供与を告白した。
    ウラン濃縮用遠心分離機の部品をマレーシアで生産、
    カーン博士の「右腕」とされるスリランカ人のタヒールらが他の核関連部品も調達し、1980年代以降、
    アジア、中東、欧州まで国際的に売買するネットワークをつくり上げていたことが発覚した。
    2003年10月にはマレーシアで製造された遠心分離機部品のリビア移送が阻止されている。
    核拡散防止条約(NPT)体制下で一部の大国が核を独占する中、北朝鮮など米国から
    敵視されている国には、体制防衛手段としても核の抑止力を得たい思惑がある。しかし、
    闇市場を通じてテロリストの手に核兵器が渡る恐れもあり、米国は取り締まり強化を訴えている。
    2005年2月7日発売の米誌タイム最新号は、パキスタンのカーン博士による「核の闇市場」の
    発覚から1年以上たった現在も、核技術取引に暗躍するネットワークがなお存在していると報じた。
    同誌によると、カーン博士が主宰したカーン研究所に近い筋は、所長は摘発されたものの
    核技術の供給者と仲介者のネットワークは健在で「何も変わっていない」と述べた。

    パキスタンではカーン博士は「核開発の英雄」とされていたように、パキスタンは博士により核保有国に
    なれたのである。他国に国の重要機密情報を漏らせば死刑は免れないのに、「国の英雄」として
    国民から高い支持をされている博士は自宅軟禁状態ではあるが、悠々自適で毎日を過ごしている。
    金のために北朝鮮などに裏の闇取引で核の脅威を与えた彼が、このままの状態でいいのだろうか。

核の輸出規制(かくのゆしゅつきせい) : 日米欧やロシア、中国など45カ国で
    原子力供給国グループ(NSG)を組織し、核技術や燃料の輸出を管理し、
    核不拡散条約(NPT)に実効性を持たせる役割を担っている。
    輸出先はNPTへの加盟、国際原子力機関(IAEA)の保障措置の全面的受け入れが求められる。
    NSGはNPT非加盟のインドが1974(昭和49)年にカナダ製原子炉で作ったプルトニウム
    核実験を成功させたのを機に発足し、ロンドン・ガイドラインと呼ばれる
    指針をつくって輸出規制を実施し、定期的に会合を開いて議論している
     2008年9月、米国が説得する形で、NSGは日本を含む全会一致でインドの「例外扱い」を認めた。
    実際の輸出入にあたっては核兵器に転用しないことなどを誓約させる「原子力協定」が
    2国間で締結される。唯一の被爆国である日本政府はインドとの協定締結には慎重な姿勢だ。
核不拡散条約 = NPT(別掲)
核兵器(かくへいき) : 核反応によって、核エネルギーを爆発的に放出するようにした兵器の総称。
    原子爆弾や水素爆弾、核弾頭を装着したミサイルなど。 参 : 戦術核戦略核
核密約の公開(かくみつやくのこうかい) : 1960(昭和35)年の日米安全保障条約改定時に、
    核兵器を積んだ米軍の艦船・航空機の日本での寄港・通過について事前協議の対象外とする、
    との密約が交わされたと指摘されてきた。歴代自民党政権はその存在を否定したが、
    民主党政権発足後、岡田克也外相(当時)が省内の調査を指示し、関連文書が見つかった。
    検証を委ねられた有識者委員会は「暗黙の合意があった」として「広義」の密約と結論づけた。
    (2011.5.7、朝日新聞より)
核持込みをめぐる日米間の密約(かくもちこみをめぐるにちべいかんのみつやく)
    核持ち込みをめぐる日米密約。核持ち込み日米密約。核持ち込み密約。日米核密約。日米安保密約。
    1960年の日米安保条約改定時に、日本国内へ核兵器、中・長距離ミサイルを持ち込む場合などには、
    日米間の事前の協議が必要と定められた。しかし、核兵器を積んだ米艦船の寄港、
    航空機の領空の一時通過などの場合は、秘密合意によって事前協議が不要とされた。
    2000年に見つかった米国務省の文書や、米国関係者の証言などで、
    秘密合意があったことが明らかになっている。米側で見つかった当時の討議記録には、
    事前協議は「米軍機の日本飛来、米海軍艦艇の日本領海並びに港湾への
    侵入に関する現行の手続きに影響を与えない」と記されている。合意当初、日米間で
    「持ち込み」を意味する英語の「イントロダクション」の解釈にずれがあり、その後すり合わせていた。
     1963年4月には、当時の大平正芳外相とライシャワー駐日米国大使が秘密会談で
    この解釈を確認した。1974年にラロック元海軍少将が米議会で
    「米艦は日本寄港の際、核武装を解かない」と証言した。
    1981年にはライシャワー元駐日大使が「核兵器を積んだ艦船の寄港は、
    核持ち込みにはあたらない。日米間で、口頭了解がある」と発言した。
    2009年になって村田良平元外務事務次官も密約の存在を証言したが、
    政府は一貫して否定し続けている。
    参 : 外務省機密漏洩事件安保条約討議記録(日米安保条約へ)
     外務省の薮中三十二事務次官は2009年8月24日の記者会見で、核の持ち込みの定義をめぐり、
    「そのときどきの話はあった」と延べ、日米間で議論があったことを認めたが、
    国内外で数々の証言があるにもかかわらず、これまで「密約はない」と完全否定してきた外務省が、
    民主党政権が現実味を帯びるなか、姿勢を修正しつつあるとも言えるということだが、
    誰が国民に隠し通せと指示したのかを徹底的に調査し、過去にさかのぼってまでも処分すべきだ。


    米核持ち込み密約、存在認める=元外務次官が証言
     1960年に日米安全保障条約が改定された際に、核兵器を搭載した米軍艦船の寄港や
    領海通過を日本政府が黙認する密約が日米間で交わされていたことが2009年6月29日、
    明らかになった。1987年7月〜89年8月まで外務事務次官を務めた村田良平氏(79)が
    時事通信社の取材に対し、前任者から密約を記した文書の引き継ぎを受けたと証言した。
    政府はこうした密約の存在を一貫して否定しており、今後、国会論戦などで波紋を呼びそうだ。
     安保条約改定時、日米両政府は核を含む米軍の装備の重要な変更については、
    事前に協議することを決めた。村田氏の証言は、核搭載艦船の寄港や領海通過は
    事前協議の対象外とし、日本が容認する了解が成立していたことを示すものだ。
    核持ち込みをめぐる密約は、米国立公文書館所蔵の文書などで存在が確認されているが、
    外務次官経験者が認めたのは初めて。
    「日中戦争なら核報復を」佐藤栄作首相、65年訪米時に
     1965年1月に訪米した当時の佐藤栄作首相がマクナマラ国防長官との会談で、
    その3カ月前に中国が初めて実施した核実験をめぐり「(日中で)戦争になれば、
    米国が直ちに核による報復を行うことを期待している」と表明、核戦争を容認していた様子が、
    2008年12月22日付で外務省が公開した外交文書で明らかになった。
     長官との会談は1月13日に行われた。前年10月に実施された中国の核実験をめぐり、
    長官が「今後2〜3年でどう発展するか注目に値する。日本は今後、
    核兵器の開発をやるのかやらないのか」と迫ったのに対し、首相は「日本は核兵器の所有、
    使用はあくまで反対」と米国の「核の傘」の下にいる立場を強調した。
     続いて首相は「核兵器の持ち込みとなれば、これは安保条約で規定されており、
    陸上への持ち込みについては発言に気をつけて頂きたい」と断ったうえで
    「(中国との)戦争になれば話は別で、米国が直ちに核兵器による報復を行うことを期待している。
    その際、陸上に核兵器用施設をつくることは簡単ではないが、
    洋上のものならば直ちに発動できると思う」と述べた。長官は「なんら技術的な問題はない」と応じた。
     このやりとりは、1960年1月の日米安全保障条約改正時の密約が前提にあるとみられる。
    「洋上」は艦船を指し、核を搭載した米艦船の寄港は、
    密約によって日米間の事前協議が不要とされていた。
     一方、その前日のジョンソン大統領との会談では、首相が「中共(中国)の核武装にかかわらず、
    日本は核武装は行わず、米国との安全保障条約に依存するほかない。
    米国があくまで日本を守るとの保証を得たい」と求め、大統領は「保証する」と述べた。
     この会談で首相が「中共が核を持つなら日本も持つべきだと考える」と発言したことが1998年、
    米国の公文書で明らかになっている。今回公開された外交文書でこの発言は確認できなかった。
     ただ、マクナマラ長官に対しては「技術的にはもちろん核爆弾をつくれないことはない」
    「宇宙開発のためのロケットを生産している。
    これは必要があれば軍用に使うことができる」と発言している。
     「日本は核武装できる」としながら「核武装せず米国に期待する」と表明した佐藤氏はその後、
    「非核三原則」などが評価され、1974年にノーベル平和賞を受賞した。
    「核密約関連資料あった」外務省元条約局長が寄稿
     核兵器を積んだ米艦船や航空機の日本への立ち寄りを
    日米間の事前協議の例外扱いとする「核密約」について、外務省で条約局長などを歴任した
    東郷和彦(とうごう・かずひこ)・元オランダ大使(64)が2009年8月朝日新聞に寄稿した。
    「密約」文書そのものの存在は確認を避けたが、
    密約とされる日米合意への対処をめぐる大量の文書が省内にあったことを明らかにし、
    「何がどう問題で、どう対処してきたかを国民にきちんと説明する時期がきた」と訴えている。
     手記によると、東郷氏は1998年7月に条約局長に就任後、
    1960年の日米安保条約締結に向けた日米交渉やその後の運用をめぐる文書を整理した。
    その中で最も大量にあったのが、「日本への核持ち込みに関連する資料」だったという。
    歴代条約局長がこの問題にどう対処してきたかや、米側で「密約」について
    文書や証言が明らかになった際の外務省内での議論についての文書も含まれていたとしている。
核融合炉(かくゆうごうろ) : 太陽などの恒星の内部で起きている核融合反応を人為的に制御し、
    発生したエネルギーを利用するための装置で、
    地上に太陽をつくる「夢のエネルギー」として半世紀前から研究されてきた。
    核融合は一般的には重い原子核を作り、その際比較的大きなエネルギーを放出する反応をいう。
    現在研究が進められている核融合反応は、重水素(D:陽子1個、中性子1個)と
    三重水素(T:陽子1個、中性子2個)とを1億度以上に熱して、プラズマ状態にして
    ヘリウムへの融合反応を起こさせると、ヘリウム(陽子2個、中性子2個)の原子核と中性子1個に変わる。
    この核融合反応で放出される膨大なエネルギーを発電に利用するものである。
    この方法は、核分裂炉による発電に比べ、ウラン資源の制約がない、
    放射性廃棄物の量が少なくてすむ、理論上は、燃料1グラムから石油8トン分に
    相当するエネルギーが得られるなど、多くの長所がある。
    国際協力による国際熱核融合実験炉(ITER)の建設が
    2007年内にもフランスで始まる見通しで、日本も貢献が期待されている。
    建設から解体までの総経費は約1兆7千億円で、日本は建設費の約9%、
    運転費の約13%を負担することになっている。
カットオフ条約(FMCT) = カットオフ条約(別掲)
上関原発建設計画(かみのせきげんぱつけんせつけいかく) : 上関原発計画。
    瀬戸内海に面した山口県上関町長島の西端(四代田ノ浦地区)に、
    中国電力が国内最大級の出力をもつ出力137.3万キロワットの改良沸騰水型炉(原子力発電所)を
    総工費約8千億円で2基建設する計画で、同電力が1982年に公表し、当時の町長が誘致を表明した。
    予定では、1号機が2007年度、2号機が2010年度に着工し、それぞれ2012、2015年度に
    運転を開始することになっていたが、地元神社所有地の取得の遅れや訴訟の影響で、
    着工予定が計6度延期され、1号機を2009年度、2号機を2012年度にそれぞれ2年延期された。
    総面積約160万平方メ−トル(15万平方メ−トルは埋め立て)、発電に使った水蒸気の冷却水は、
    予定地の北側の海から取水し、南側約140メ−トル沖の水深17メートルにもうける
    放水口から放流する。取・排水量は、2基合せて毎秒190トンになる。
    町側も財政状況を考え誘致を申し入れ、1994年に国の要対策重要電源に盛り込まれている。
    1996年に中国電力が地元に建設を申し入れたが、賛否をめぐって町内は対立してきた。
    しかし、2001年5月16日、上関原発建設計画の事業着手が、
    総合資源エネルギー調査会電源開発分科会で承認され、
    2001年6月に国の電源開発基本計画に組み込まれた。電源開発計画への組み入れは、
    地元合意や用地取得、漁業補償などの見通しがたった上で知事同意を得るのが基本。
    ところが上関原発では、地元合意もされないまま、用地取得も見通しが立っていない。
    漁業補償についても地元祝島漁協の反対を押し切っての合意で、現在裁判を係争中で、
    建設予定地の入会権をめぐる共有地訴訟では2003年3月の山口地裁岩国支部の一審判決は
    住民の入会権を認め、中電に立ち木の伐採や整地の禁止を命じる判決を出した。
    その控訴審判決が2005年10月20、広島高裁で言い渡され、
    草野芳郎裁判長は「入会地として使用されずに30年以上が経過しており、
    入会権はすでに時効により消滅している」として、一審判決を取り消し、原告側の請求を棄却した。
    しかし、ボーリングなど詳細調査を巡って中電が県に提出した環境保全を守っていなかった点や、
    原告側の上告審での判決確定を待たずに、係争中の共有地での詳細調査開始の許認可などで、
    県側は難色を示しているし、決着するにはかなりの時間を要すことになる。
    祝島住民らの反対運動により予定が大幅に遅れ、中電は1号機の2015年度運転開始、
    2号機の2020年度運転開始に予定を変更し、2009年9月10日に敷地造成のための
    海面埋め立て工事に着手しようとしたが、建設に反対する住民の抗議行動に阻まれ、
    翌日の11日の作業も中止に追い込まれた。また東京電力福島第一原発の事故を受けて
    作業を中断した。 参 : 日本の原発A9
     福島第一原発の事故を受け、経済産業省がエネルギー政策の見直し議論を始め、
    原発とカネの問題で、多額の交付金の見返りに原発を建設する仕組みが問い直され、
    この上関原発建設計画も政策見直しで注目されているという。もし計画が中止された場合、
    今まで国が支払った何百億円もの交付金や補助金は税の無駄遣いになるわけだ。
    また原発推進のための電気料金の上乗せに、電気利用者が気付かないまま月300円前後を
    払っているそうだが、中止したとしても上関町は交付金を返還しなくてもよいことになっているため、
    電気料金も返還されないのだ。まったく国民から税金や上乗せ電気料を搾取する
    詐欺まがいの政策ではないか。人口3500人強の漁業の町で、ほぼ半分は65歳以上という
    上関の町税は2億円ほどしかないのに、すでに町の財政を電源3法交付金に依存しているため、
    11年度の当初予算は前年度比17%増の約44億円を計上しているという。
    将来の原発の維持費のために交付金を貯めておくなら分かるが、
    町の温浴施設や総合文化センターをつくるために大型予算を組んでいるのである。
    原発がある21市町村のうち、10市町村は、事前の財政の割合を示す財政力指数が
    0.51〜0.96で、「1」を下回っていて、中国、四国、九州は0.5台であり、原発に関係のない
    ハコモノをつくったこともあるが、原発立地の後の維持費が財政にのしかかっていることは確かである。
    原発を誘致しても財政赤字の市町村が多いし、寿命が約40年の原子炉の廃炉作業に
    1基約2千億円もの費用がかかるし、万が一原子炉が爆発すれば瀬戸内海は死の海になることから、
    原発を立地した市町村周辺のみに多額の交付金が入る政策はやめ、原発建設計画は中止し、
    原子力発電の安全神話が崩れたからには、全世界の原発は廃止すべきである。


    原発の建設は国の棄民政策
    (朝日新聞2008.10.4「声」より、山口県下関市の主婦・沢村 和世さん(72歳)の投稿文紹介)
     瀬戸内海に向けて大型原発2基建設という計画なんて、いつか挫折するものと思い込んでいた。
    ところが、計画浮上以来26年もたって、今、予定地の埋め立て許可申請という事態にまで立ち至った。
    中国電力が、山口県熊毛郡上関町に建てようとしている上関原発のことである。
     9月19日の上関町議会では、埋め立てに同意する議案が8対4の賛成多数で可決された。
    県知事のスタンスは「国のエネルギー政策に協力する」「地元の選択を尊重する」であり、
    知事の手に握られている「埋め立て許可」の行方は決まりの感さえある。
     しかし、知事が「地元の選択」というのは町長と議会のことであって、町内には原発の計画浮上以来、
    一貫して島民の9割以上が反対している祝島がある。予定地から正面4キロ足らずの位置に。
     彼らは漁業補償金の受け取りも拒否し、自力での農漁業振興と島おこしに懸命だ。
    彼らの生産活動は、埋め立てだけでも悪影響を受ける。
     また、毎秒190トンの温排水と、微量とはいえその中の放射能は、
    徐々に瀬戸内海全体を殺していくのではあるまいか。
    それでなくとも瀬戸内海は過去の危険な工業用水の垂れ流しや、家庭から出る汚水、
    護岸工事などにより、海の汚染はひどくなるばかりで、天然記念物のカブトガニの生息域は狭まり、
    ハマグリは獲れなくなり、漁獲量は激減しているのである。
    これらすべてが複合汚染によるものであり、その上に放射能で汚染されるのは絶対避けるべきで、
    過去、スリーマイル島原発事故や、何十万人の人たちが犠牲になったチェルノブイリ原発事故では
    いまだに後遺症で苦しんでいる人もいるし、人間が操作するものに絶対安全は有り得ない。
    原子力施設は、海流の移動が遅くで海底に汚染物質が溜まり易い瀬戸内海に建設するより、
    太平洋や日本海沿岸に設置すべきだ。絶対安全と言うのなら、中電幹部の住宅近くか、
    原子力行政を推し進めている国会の近くに建設計画を立ててはいかがなものでしょう。
    住民の先頭になって国会議員が反対するのは目に見えている。祝島もそれと同じだ。

    山口県は海を守る意思があるか
    (朝日新聞2009.5.2「声」より、山口県周南市の山田 誠さん(62歳)の投稿文紹介)
     環境省のホームページでは、瀬戸内海は「地中海と同じく閉鎖性海域で風光明媚、漁業資源の宝庫」
    であるという。そして、関係する自治体はこの海の自然環境を守ることが求められているとある。
     今、その中にある山口県上関町に原子力発電所を建設するという問題で揺れている。
    それも当然で、計画では原子炉の冷却水に海水をあてるため、7度も高くなった温排水を海に
    放出するという。が、それは17年間で周防灘にある全量の海水を使うほどの量に匹敵するからである。
     もし、原発が建設されれば閉鎖性であるがゆえに、周辺海域は漁業被害を受けるのは必至と
    多くの海洋研究者が警告している。ところが、中国電力は「温排水の影響は軽微」という素人的見解と
    共に「中電調査は妥当」「判断根拠は言わない」というそっけない返答だった。
     県の姿勢はまさに「中電の弁護人になり下がっている」と言っても過言ではないと思う。
    県が率先して瀬戸内海を守らなければ誰が守るのであろうか。
    埋め立て許可を出した県知事の猛省を促したい。
     県を「中電の弁護人」と言う前に、自民党政権と太いパイプで結ばれていた「国の手先」としての
    保守王国・山口県と言った方がいいでしょう。つまり国の意向を県が仲立ちしただけと言えるでしょう。

    耐用年数の規定がない「原発」
    (朝日新聞2010.2.3「声」より、山口県光市の田中 輝彦さん(72歳)の投稿文紹介)
     中国電力山口支社広報担当の「お答えします 原発は必要不可欠な電源」(26日)に異論を唱えたい。
    回答には、供給安定性、経済性に優れた原発を主力電源に位置づけ、積極的に推進する必要があり、
    放射性廃棄物や廃炉になった原発は、適切な管理・処分がなされているとある。
     しかし、上関原発は計画が浮上してから28年間、祝島の住民をはじめ、
    多くの人たちが「ノー」のサインを出し続けている。
    これはひとえに、安全性、経済性、自然環境の確保が国難であることを確信しているからである。
     また、放射性廃棄物、廃炉の管理・処分は適切と言っても、これはあくまで一時しのぎである。
    2002年12月、原子力発電環境整備機構が「高レベル放射性廃棄物」の処分場建設に向け、
    候補地選定のための「概要調査地区」の公募を開始したが、
    7年を経過した今でも、1カ所の候補地すら決まっていない。
     また、原発については耐用年数の規定もなく、電力会社の裁量に任されている。
    食品には賞味期限があるのに、より危険度が高い原発に耐用年数の期限がないのはなぜだろうか。
    このような状況では、国民の完全、安心が確保できているとは思えない。
    政府及び電力会社は、早急にエネルギー政策を見直して欲しい。
     日本の原発で紹介している宮崎県綾町のパン製造販売・小川 渉さん投稿の
    
原発の電気は「低廉」ではないでは原発は経済性に優れているとは言えないことを述べられているし、
    放射性廃棄物や廃炉になった原発は、適切な管理・処分がなされているというが、
    高レベル放射性廃棄物の処分技術は実証されておらず、処分場の具体的な安全評価基準も
    決まっていない。また、再処理で出る高レベル放射性廃棄物の行き先も、
    燃やしたMOX燃料の始末も決まっていないという現状なのである。
    高レベル放射性廃棄物処分などの費用もかなりの額になるうえ、
    原子力発電の原子炉などの寿命は約40年が目安で、その時の廃炉作業に
    1基約2千億円もの費用がかかり、この費用も電気代に織り込まれることになるのである。

    許せない中電の「スラップ訴訟」
    (朝日新聞2010.12.6「声」より、山口県周南市の三浦 翠さん(71歳)の投稿文紹介)
     最高裁は11月19日付で、中国電力が山口県上関町で計画する
    上関原発の海面埋め立て工事を妨害した場合、1人1日500万円を中電に支払うよう命じた
    地裁岩国支部の決定を支持し、祝島住民たち反対派の特別抗告を棄却した。
     最高裁は、祝島の人たちが原発計画に同意せず補償金を受け取っていないこと、
    この海を守ることが島民の生存権を守る闘いであるという事実を、どうとらえているのか。
    私から見れば、祝島の人たちのほうに正義があると思う。
     必死で生活を守ろうとする個人に対し、大企業が高額の賠償金を
    ふっかけて困らせる訴訟は「スラップ訴訟」と呼ばれ、、欧米では問題になっている。
    アメリカのカリフォルニア州では、すでに州民事訴訟法で、スラップ訴訟の乱用を禁じている。
     中電は別の訴訟でも、海面埋め立て工事を妨害したとして、
    島民とシーカヤック隊の若者の計4人に対し、4800万円払えと言っている。
     先日、その裁判を傍聴した。シーカヤック隊の若者の「この美しい海を僕たちは子供に残したい。
    原発は廃棄物の処理方法も定まらず、事故が起これば広範囲に甚大な被害を及ぼす」という訴えは、
    ストレートに胸に響いた。一方中電は、「なぜ4800万円なのか」という理由を、
    具体的に説明すら出来なかった。「ただの脅しよ」と言った祝島の人たちの言葉に、私はうなづいた。
     中電は、原発建設計画をいいかげんにあきらめるべきだ。
    いままでにばらまいてきた補償金などは、私たちの納めた電力料金から支出されてきたわけで、
    こんな計画がなければもっと電力料金は安くなっていたはずだ。いったいこれまで何億円使ったのだ。
    正義の味方としての私から見ても、祝島の人たちのほうに正義があると思う。

    始まってしまった原発建設工事
    (朝日新聞2011.2.26「声」より、山口県柳井市の団体代表・武重 登美子さん(77歳)の投稿文紹介)
     21日、中国電力は山口県上関町の原子力発電所建設工事を本格着工した。
    原発の正面に位置する祝島島民が30年近く守り続けてきた海へ、
    15隻もの台船がやって来て岩石を海底に落とす様を見ると、島民ならずとも思わず涙がこぼれた。
     人類の財産ともいうべき田ノ浦湾を14万平方メートルも埋め立ててしまうことは、
    わずかに残った瀬戸内海の原風景を消滅させるということである。湾内には大量の真水が湧き上がり、
    豊後水道から流入する黒潮の影響と相まって、世界でもまれな環境が形成されている。
     度々報道されるように、世界の学者が注目しているホットスポットである。
    新種・希少種の貝類ウミウシ類、内海で初めて発見された海藻類、
    天然記念物絶滅危惧種の多くの鳥類、子を育てるスナメリ等々。
     原発が稼働し始めた時には1秒間に190トンもの放射性物質や薬品入りの温排水が四六時中
    辺りに拡散し、稚魚や魚の卵、プランクトンを死滅させながら漁民の生活を圧迫していく。
    そうなってしまえばこの場所は永久に再生することはないのである。
     海の生物の生存権を奪うのも、漁民の生活権を奪うようになるのも原発建設のせいだが、
    その上に事故による放射能汚染がある。上関原発の近くには米軍の岩国基地や
    航空機のルートがあり、万が一原子炉に墜落すると多くの人や生物が犠牲になる。
    近くには活断層があり、原子炉が直下型の地震に耐えられるとは思えない。チェルノブイリ原発事故では
    周辺を中心に何万人もの人たちががんなどで亡くなり、いまだにがん患者が増えているという。
    放射能が半分に減る期間(半減期)は、セシウムやストロンチウムで約30年で、
    プルトニウムに至っては2万4000年もかかり、事故が起きるたびに地球全体を汚染しているのだ。

    上関原発、事実に基づき再検証を
    (朝日新聞2011.3.7、「声」より、山口県田布施町の甲斐 勝紀さん(67歳)の投稿文紹介)
     2月6日、中国経済産業局が、「これは何の自給率でしょう?」という
    広告チラシを新聞に折り込んでいました。
     この広告は、エネルギーの自給率を示しながら、原子力発電の宣伝をしています。
    原発は二酸化炭素を排出しない、発電コストが安定、燃料が入手しやすい、
    自然環境を壊さず安全な海を、と述べています。
    メリット?のみを宣伝し、上関原発の建設を後押ししている内容です。
     また、中国電力は「energy(エネルギー)通信」という公告誌を発行、
    テレビやラジオでも原発の必要性を宣伝していますが、いいことばかり宣伝しています。
    物事は全てにおいて長所・短所があります。
    建設ありきで長所だけを宣伝するのは、国民をだますことになるのではないでしょうか。
     上関原発建設については、多くの学者や住民が指摘している問題点を全ておおやけにして、
    住民が納得のいく形で進めるべきだと思います。今の国や中国電力のやり方は公正ではないと思います。
     諫早湾の干拓事業が好事例で、計画段階で、海の環境が大幅に変わることを
    指摘していた学者などがいたにもかかわらず、いいことばかりを言い、補償金を支払い、
    潮受け堤防を完成させました。さして今、漁民が泣いています。
     電力や水道・ガスは現在の国民には必要不可欠なことから、これらに関わる事業者は、
    住民の意見を聞くことなく好き勝手なことをしているように思える。政治家は、
    選挙に応援したり多額の献金してくれるこれらの企業・自治体のためには協力を惜しまない。
    したがって、諫早湾の干拓事業のように「後はどうなるか知るものか」と無責任行政になってしまうのだ。
    膨大な補償金や建設費に費やした国民の血税は誰が補償してくれるのか。
    災害や人為的なことで万が一にも原子炉が大爆発した場合に誰が責任をとるのか。
    上関原発を計画・推進した国会・地方議員、町長や企業のトップ名を連名で挙げておくべきだ!
    こいつらが多くの近隣住民を殺すことになった張本人だとね。

    市や町は原発交付金を返上して
    (朝日新聞2011.4.2、「声」より、山口県周防大島町の藤村 英子さん(84歳)の投稿文紹介)
     山口県は2月24日、上関原発建設地周辺の2市3町に対し、
    電源立地交付金の配分を決定した(上関町には国が直接支払う)。福島第一原発事故が起きる前だった。
    交付金の総額は約86億円。早速、原発に反対する市民団体は各自治体に対し、
    「受け取らないで」と要請したが、どの自治体も応じなかった。
     間もなく、東日本大震災が起こり、被災地の惨状は目を覆わんばかりだった。
    あれだけ安全だと言っていた原発も大きな被害を受け、事故の深刻さは日を追って増している。
    土地も海も汚染され、対策の見通しもたたない有り様だ。
     「私はどうなってもいい。この家にいたい」と、救出に行った救急隊員を拒むおばあさん。
    青々と実った野菜を、トラクターで潰さねばならぬと嘆く農民。
    搾った牛乳を捨てる悔しさを訴える酪農家など、映し出されるテレビに胸が痛くなった。
    同時に、上関に原発を建てさせてはならないと強く思った。
     交付金対象の市長や町長さん、どうか上関原発建設に反対し、交付金を返上してください。
    国もこんなお金があれば、そっくり今回の被災者救済にあててください。切にお願いします。
     誘致を推し進めた自治体が交付金をもらった後、最終段階で建設を拒否した場合でも、
    交付金の返還はしなくてもよいということになっていることから、各市町村すべてが、
    もらったものは返すはずがないでしょう。その場合、国民の血税が無駄遣いとなるのだ。

    原子力は本来的に破壊の技術
    (朝日新聞2011.7.8、「声」より、山口県光市の田中 輝彦さん(73歳)の投稿文紹介)
     先日、中国電力の株主総会に出席した。福島第一原子力発電所事故直後でもあるため、
    会社側にもある程度の経営方針の変化があるのではなかろうかと予測した。
    しかし中電は上関原発の計画継続を表明した。そして原発の停止、廃止、
    新設中止、自然エネルギーへの転換を求める株主提案はことごとく否決された。
     原発推進の根拠をただす質問等が相次いだが、あいまいな答弁に終始した。
    質問者一人一人の意見を真摯に聞く姿勢は見られず、
    私も質問を用意していたが発言の機会さえ与えられず、非常に残念な思いをした。
     原子力の技術は戦争の中から生まれてきた。本来的には破壊の技術であり、
    安全や持続可能などという価値観の下で設計されたものではない。
    そこからは制御不能な事故も起こり得るし、生態系を傷つけたり自然の環境に戻しようもない
    廃棄物が蓄積したりする。中電がここまで上関原発新設に固執し続ける根拠は、
    国と電力会社が持ちつ持たれつの関係にあるからに他ならない。
     原子力は国を揺るがすほどのリスクの高いエネルギーであり、
    平和的利用には限界があると言わざるを得ない。
    国と電力会社が原子力エネルギーの撤退に向け、大きく舵を切ることを切望せずにはいられない。
     福島第一原発の事故は、元はと言えば自民党が強力に推し進めてきた原子力行政によるものだが、
    上関原発の新設が持ち上がったのは、中電が1982年に公表した上関原発建設計画に
    当時の上関町長が誘致を表明したからだ。上関の町税は2億円ほどしかないのに、
    何十年もの間、毎年何十億円の交付金というあぶく銭で町の財政を切りまわしているのだ。
    すべてが国民の血税なのに、何十億もの箱物を建てるなどしてあまりにも虫が良過ぎる。
    福島のような重大事故が起きると、何百キロも離れた静岡のお茶までが汚染されたように、
    上関で原発事故が起きれば大阪や九州全土までが犠牲になるというのに、
    上関町や周辺市町村だけが甘い汁を吸ってよいのか。
    周辺市町村で上関原発建設計画に賛同しないのは周南市だけなのだ。
    遠い市町村や外国に移り住まなければならなくなったら、これらの市町村が責任をとってくれるのか!

    「みんなで考えましょう!原子力以外のあしたのエネルギー
    「原発は二酸化炭素は出さないが、何かあると危険な放射能を出します!
北朝鮮の核計画申告(きたちょうせんのかくけいかくしんこく) : 北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議は
    2007年10月3日、核施設稼働停止などの「初期段階措置」に続く「第2段階の措置」として、
    北朝鮮が同年12月31日までに寧辺の3核施設の無能力化を完了させ
    「すべての核計画の完全かつ正確な申告」を行うことで合意、文書を採択した。
    見返りとしてのエネルギー支援と米国のテロ支援国家指定解除作業の開始でも一致していたが、
    申告内容などをめぐる米朝のせめぎ合いで申告の時期がずれ込んだ。
    北朝鮮外務省報道官は2008年1月4日に談話を発表し、2007年11月に核計画申告を作成、
    内容を米国に通報したことを明らかにしたが、米側は申告とは認めないとしている。

    核実験1回で日本円にして300億円もかかるといわれているのに、
    北朝鮮は国民が餓死しても核開発を続けているのだ。これにかかる費用を即刻食料費に替えるべきだ。

汚い爆弾(dirty bomb:ダーティー・ボム)きたないばくだん : 放射能爆弾。
    放射性廃棄物などに火薬を取り付けて爆発させる爆弾のことで、
    放射性物質を飛散させ、生体や環境を故意に汚染するように設計されている。
    汚い爆弾は、医療用などに使われるセシウムストロンチウム
    コバルトなどの放射性物質を原料に転用できる。高濃縮ウランプルトニウムのような
    厳しい管理下には置かれていないので、盗難などの危険性が指摘されている。
    また、核爆弾のような核分裂は起きないので破壊力は小さいが、
    テロ兵器などとして使用される懸念があると指摘されている。
    名の由来としては、核汚染を引き起こすことを目的とし、核物質の種類によっては数年〜数百年、
    あるいは数億年という長い年月の間、放射線を発しつづける汚染を引き起こすことによる。
    原子力発電が爆発を伴いメルトダウンした状態を「ダーティボム状態」と形容する場合もある。
緊急時避難準備区域(きんきゅうじひなんじゅんびく いき) : 福島第一原子力発電所の原発事故に関して
    「屋内退避指示」が発令されていた、原発から20〜30キロ圏に位置する市町村に対して、
    政府が2011年4月11日に発表した屋内退避指示に替わる要請で、
    緊急時避難準備区域の住民が、原発の状況が悪化した場合には屋内退避や非難などの措置を
    迅速に取れるようあらかじめ準備しておく必要がある区域をいう。
    子供や妊婦、要介護者、入院患者は立ち入らないように求められる。
    区域内の保育所、幼稚園、小中学校、高校は休園、休校。現在屋内退避の指示が出ている
    20〜30キロ圏内のうち、「計画的避難区域」に含まれない地域が指定される。
    なお、4月20日現在、原発の周囲20キロ圏内の地域に対して、
    住民への立ち退きや出入りの禁止を法的に強制可能な「警戒区域」への指定が検討されている。
緊急炉心冷却装置 = ECCS
グレイ(gray) : シーベルト同様、受け手の影響を示す吸収線量の国際単位。
    電離放射線を照射された人体や動物や建物などの物体が単位質量当たりに受け取る
    エネルギー(吸収線量など)を表すSI組立単位であって、ジュール毎キログラム(J/kg)に相当する。
    放射線および物質の種類に関係なく、割合として、物質1kg当り放射線から吸収したエネルギーが
    1ジュールであるとき、これを1グレイといい、Gyで表す。
    1975(昭和50)年の国際度量衡総会で、ラド(rad)にかわる単位として採択された。
    1グレイは100ラドにあたる。名称はアメリカの物理学者グレーL.H.Gray(1906〜65年)の
    業績にちなんでいる。電離放射線にはX線、ガンマ線、アルファ線などの種類があり、
    また、放射線と物質の相互作用にも種々の形態がある。これらの違いによって、
    グレイ単位で表される量には吸収線量の他にも様々なものがある。
計画的避難区域(けいかくてきひなんくいき) : 指定された地域の住民は約1カ月かけて
    別の場所へ計画的に避難することになる。市町村、県、国が連携して避難計画をつくる。
    立ち入りが禁止されている福島第1原発から半径20キロ圏以内の「警戒区域」より外側の地域で、
    累積放射線量が事故発生から1年間で20ミリシーベルトに達する恐れのある地域をいう。
    飯館村全域と川俣町山木屋地区のほか、浪江町、葛尾村の警戒区域を除く地域、
    南相馬市の一部である。このほか主に第一原発から20〜30キロ圏で、状況によって
    屋内退避や避難を急に求められる恐れのある地域は「緊急時避難準備区域」とされている。
    いずれる政府が2011年4月22日に設定した。原子力災害対策特別措置法に基づく措置である。
    避難を拒否したり、一時帰宅をしたりしても違法とはならず、罰則はない。
    (2011.4.12、5.16、8.17朝日新聞より) 参 : EPZ

    福島県内の5市町村「計画的避難地域」に
     2011年4月11日、枝野官房長官は記者会見で、福島第1原発から半径20km圏外にある
    福島県葛尾村、浪江町、飯舘村の全域および、川俣町と南相馬市の一部に対して、
    「計画的避難区域」に指定すると発表した。
    対象地域の住民には約1カ月をめどに避難するよう要請する。
       また、政府が「屋内退避指示」を出している20〜30のも圏内のうち、
    計画的避難区域に指定されなかった地域は、「緊急時避難準備区域」に設定し、
    緊急時には屋内退避や自力での避難を求める。
原子爆弾(an atomic bomb)げんしばくだん : 原爆(げんばく)
    核分裂の連鎖反応によって瞬間的に大量のエネルギーを放出させる爆弾。
    ウラン235、プルトニウム239を原料とする。1キログラムのウラン235が爆発して
    放出するエネルギーはTNT火薬2万トンが爆発するときのエネルギーにほぼ等しい。
    核分裂の際に発生するγ線・β線・中性子線などによる放射線障害、熱放射による火災と火傷、
    衝撃波による破壊などを起こす。1945(昭和20)年8月、ウランを用いたものが6日広島に、
    プルトニウムを用いたものが9日長崎にアメリカ軍によって投下され、大惨害をもたらした。
    2011年3月末現在、国が発行する被爆者健康手帳を持つ人は21万9410人。
    広島原爆 : 米国のB−29爆撃機「エノラ・ゲイ」が1945年8月6日午前8時15分、
     広島市の上空で世界初のウラン型原子爆弾「リトルボーイ(少年)」を投下。
     市中心部の広島県産業奨励館(原爆ドーム)近くの島病院上空約600メートルで爆発した。
     爆心地の地表温度は4000度に達し、大量の放射線が発生した。
     市内の建物の90%以上が焼失または全半壊し、
     1945(昭和20)年末までに推定約14万人が死亡したとされる。
      
     リトルボーイ(長さ:約3m、 重さ:約4トン、直径:約0.7m、核原料:ウラン235)
    参 : 広島平和記念資料館(HP)、[YouTube](広島原爆投下)
    長崎原爆 : 米国のB29爆撃機「ボックス・カー」が1945年8月9日午前11時2分、
     長崎市の上空でプルトニウム型原子爆弾「ファット・マン(太っちょ)」を投下。
     エノラ・ゲイと同様早朝テニアン島を出発し、当初第1目標の小倉上空に達したが、
     天候が悪かったため投下を断念、目標を急遽第2目標の長崎に変更した。
     しかし、長崎でも市の中心部には投下できず、
     少し北部の浦上地区、松山町上空9600メートルから投下し、
     高度500メートルで炸裂した原爆はわずか0.2秒後には半径200メートルもの火球を作り、
     この火球の表面温度は太陽の表面温度並の8000度にも達し、約1万3千戸が全壊・全焼した。
     広島型の1.5倍の威力があったが、平地の広島に比べて谷間の長崎は、
     地形が原爆の被害の拡大を防げたのだが、それでもこの原爆で数カ月以内に約7万人が亡くなり、
     その後亡くなった人を入れると、15万人ほどの人が命を落としたとされる。
      
     ファット・マン(長さ:約3.2m、重さ:約4.5トン、直径:約1.5m、核原料:ブルトニウム239)
    参 : 長崎原爆資料館(HP)アンゼラスの鐘
        [YouTube](長崎原爆後 街風景)、[YouTube](長崎原爆後)
    マンハッタン・プロジェクトと呼ばれた原爆開発製造計画に関与した場所は、
    広島に落とされた原爆に使用されたウランを分離・濃縮した工場のある米テネシー州オークリッジ、
    プルトニウムを生産したワシントン州ハンフォードや、
    原爆の設計製造を担ったニューメキシコ州のロスアラモスなどがある。
    原爆開発計画は極秘だったため、オークリッジは1949(昭和24)年までは
    地図にも存在しない「秘密」の町で、郵便物の住所は別の町になっていた。
    その当時、町に住む7万5000人の研究者たちはウランという言葉を使うことも、
    勤務地を話題にすることも禁じられていた。

    長崎市に原爆が投下された8月9日の翌月、同市に外国人記者として初めて入り取材した
    米シカゴ・デーリー・ニューズ紙(廃刊)の故ジョージ・ウェラー記者の未公表の原稿と写真が60年ぶりに
    見つかった。原稿は、長崎市の惨状と原爆症に苦しむ市民の様子を克明に記している。
    ウェラー記者は原稿を連合国軍総司令部(GHQ)検閲担当部局へ送ったが、当時、米政府は
    原爆の放射線による健康被害を過小評価する姿勢を見せていて、新聞への掲載は許されなかった。
    この原稿が公表されていれば米世論に影響を及ぼし、核開発競争への警鐘となった可能性もある。
    米政府は「多数の民間人の被ばく死」というのは日本側のプロパガンダだとして、
    米国内の世論を操作。原爆の惨劇が米国人に広く認識されるには1946年8月、
    ジョン・ハーシー氏の「ヒロシマ」が米誌ニューヨーカーに掲載されるまで待たねばならなかった。
    核兵器の研究を進める米政府は、国民が放射能に恐怖心を持つことを避けたかった。
    放射能による健康被害を認め、広島や長崎にいた米捕虜、
    被爆地に派遣された米兵などへの補償法ができたのは1985年だった。
    ウェラー記者の原稿が掲載されていれば、米国内で原爆使用を非難する世論が高まり、
    政府の核兵器開発に対するブレーキになった可能性もある。その意味で「幻の原稿」は、
    ジャーナリズムを圧殺した検閲の罪を問うている。故ジョージ・ウェラー記者の原稿の公表を阻んだのは、
    当時のGHQの検閲制度だったが、米政府が不利な事実を隠し、国内外の世論をコントロールする
    ための戦争報道の規制は60年後の今も、手法を変えながら生き残っている。
                                       (毎日新聞、國枝すみれ氏の記事を部分引用)
    参 : 急性放射線障害晩発性放射線障害被曝線量セシウム137A9

     アメリカが広島のウラン型と長崎のプルトニウム型の2種類を用いたのは、
    うわさされているように、私も、どちらが殺傷能力があるかの人体実験だったと思う。
    アメリカのいう戦争の早期終結のためなら1種類の原爆でよかったはずで、
    何個も製造していた中で、わざわざ違う火薬の詰め方と、違う核原料の2種類を使う必要はない。
    つまり、種類の違う原爆の殺傷能力の違いと放射線影響の確認を行ったのだろう。
    当時、広島に入った記者による放射能汚染を告発した記事が英紙「デーリー・エクスプレス」
    (45年9月5日付)に掲載され、米政府はその打ち消しに躍起になっていたように、
    当時から放射線による人体への影響は知っていたと思われる。
    広島に原爆を投下してからわずか3日間で長崎(曇っていなかったら小倉)に投下する必要が
    あったのだろうか。広島に巨大新型爆弾が落とされ、何十万人の人が死傷したことが分かり、
    うろたえ、うちひしがれていた日本なのに、せめて10日間くらいの降伏期間をおいてほしかった。


    1981(昭和56)年8月6日の朝日新聞「天声人語」より
     広島、長崎に落とされた原子爆弾は意外に小さい。広島型は長さ3m、長崎型は3.5mである。
    このふたつの爆弾がどれほどの破壊力をしめして約20万人の命を奪ったのか、
    繰り返して書き残しておきたい。
    ▼原爆による死因を列挙すると、まず射熱傷・焦熱傷・蝕熱傷。
     爆発時の火球の温度は数百万度にのぼり、爆心地から1.2km以内で、
     直接、熱線を浴びた人の大半は焼け死んだ。熱によって皮膚は炭化し、内臓まで蒸発した。
     子を抱いて逃げる瞬間の、片足をあげたままの姿勢で黒こげになった母子もいた。
    ▼爆風による死。そして人類がかつて経験したことのない大量放射線障害。皮膚出血斑、脱毛、下痢、
     血尿、貧血、そして衰弱死。放射線量400ラドを半致死線量というが、広島爆心地の空中線量は
     ガンマ線が10300ラド、中性子線が14100ラド。これが人体の細胞を破壊し急性放射能症を起こした。
    ▼障害はのちのちまで続く。ケロイド、原爆白内障、白血病、甲状腺がん、乳がん、
     肺がんなどへの影響、胎内で被爆した子への影響、精神神経系障害。
    ▼『米ソ核戦争が起こったら』(米国技術評価局編)によると、ICBMサイロへの攻撃をねらうという
     限定的な核戦争でも、米国の死者は2千万人、ソ連(現ロシア)の死者は千万人以上と推定されている。
    ▼しかし「限定的核戦争」の想定は幻想にすぎない。
     ひとたび核攻撃の応酬があれば、戦局が不利になった側が「限定」にとどまるはずがないのだ。
     攻撃が拡大した時の米国の死者は7千万人から1億6千万人、ソ連は5千万人から1億人。
    ▼さらに、経済、環境の破壊で数千万人が死に、がんなどによる死者は数百万人にのぼり、
     地球の生態系が破壊される。、と前記の本はいう。
     原爆被爆国の体験からいえば、この想定もまだまだひかえ目のように思える。
    ▼いま、地球上の悪魔の兵器は広島型原爆の百万個分、といわれている。
    原爆投下は国際法や軍紀無視
    (国際法の権威でイリノイ大学教授「フランシス・ボイル:Francis Boyle」氏の持論)
     米軍将兵の命を救うために原爆を投下したという主張自体、明らかな国際法違反であることを
    自ら示している。いかに多くの軍人の命を救うためでも、戦闘員を守るための民間人殺りくは戦争犯罪だ。
     1940年10月、米国陸軍省は「陸戦規則」と題する「戦場マニュアル27−10」を発布、
    1907年のハーグ条約の順守を義務付けた。戦闘員と非戦闘員との明確な区別を求め、
    敵対行為や戦闘使命の遂行は兵士にのみ向けられるべきだとしている。
     原爆投下は1945年当時も、国際法や国際慣習法に違反するばかりか、
    米軍が自軍に順守を求めた規則にも違反する。ハーグ条約の関連文書は
    「非戦闘員への傷害、民間施設への破壊や攻撃、民間人を威嚇する目的での空爆」を明確に禁じる。
     原爆の効果を試すために、通常爆撃にさらされていない都市を選んだのも違法だ。
    広島、長崎の野戦命令書は「投下目標」を「市街地」と、明らかに軍事的敵意を市民に向けている。
     ニュルンベルクと東京での軍事裁判の憲章が1945年8月につくられるが、
    都市への原爆投下は人道に反する罪と戦争犯罪を構成する。
    憲章は兵士に対し、非人間的な違法命令は拒否することも義務付けている。
     私の父はサイパンや沖縄の上陸作戦に海兵隊として参加したが、
    上官の違法な命令を拒否し、捕虜に人道的な扱いをした。(1999.8.1、朝日新聞より)
    歴史の「イフ(もし)」
     日本がポツダム宣言を速やかに受け入れて降伏していたら、広島、長崎の原爆投下は避けられていた。
    とよく言われる所以はこうである。当時の東郷茂徳外相らは、和平工作を念頭に置いて
    宣言への態度表明を控えるように主張、いったんはその意見が通った。しかし強硬派におされて
    鈴木貫太郎首相が記者会見で「日本政府は宣言を重視しない。黙殺するのみである」と語ってしまった。
    この「黙殺」というのがあいまいな言葉で、穏やかに解釈すれば「ノーコメント」に近い響きがある。
    「相手にしない。無視する」という強い否定にも受け取れる。
    連合国側はもちろん「拒否」と解釈し、原爆投下へと突き進んだとされる。
     鈴木首相がポツダム宣言の受諾を決意したとしても、軍部がだまっているはずはなく、
    原爆投下による大量殺人を回避できることはなかったでしょう。
    しかし、日本に無条件降伏を求めるポツダム宣言が出される前日の7月25日には
    「8月3日以降に広島、小倉、新潟、長崎の4都市のいずれかに投下せよ」と、
    すでに命令は発出されていたことから、広島・長崎への投下後から
    1カ月経っても降伏していなかったら、小倉・新潟にも落とされていたかもしれませんね。

    原爆投下した米国は許せぬ
    (朝日新聞2008.7.17「声」より、福岡県水巻綾町の井口 才男さん(78歳)の投稿文紹介)
     長崎市に原爆が投下されて63年、1945年8月9日11時2分、
    長崎市は火の玉を浴び、一瞬にして廃墟と化し、約7万4千人の命が奪われた。
     逃げまどう被爆者は我が身の皮膚を地面に引きずり、裸に蚊帳や敷布をかぶって、
    気が狂ったように泣き叫んでいた。虚空をつかむような黒こげ遺体が至る所に転がり、今でも夢に見る。
    浦上川には焼けこげてふくれた遺体が無数に流れていた。まさに生き地獄だった。
     学徒動員で長崎機関区の助手だった私は、その時、諫早駅にいたが、臨時の救援列車に乗り、
    長崎市へと向かった。午後1時ごろ道ノ尾駅に着いたが、それから先へは進めなかった。
    多くの遺体を担架で運び、仲間と火葬した。私が15歳のときである。
     数えきれぬ被爆者を広島・長崎に与えた米国を許す寛容さを、私は持ち合わせていない。
    父を奪い、多くの友の命を虫けらのように焼き殺した原爆を許すことは出来ない。
     今、長崎の港には遊覧船があるという。
    しかし、その海底には怨念(おんねん)に満ちた被爆者が、今でも成仏出来ずに眠っているだろう。
    妻の父も三菱長崎製鉄所で被爆死した。8月9日、妻と2人合掌の日も近い。
原子力安全委員会(Nuclear Safety Commission:NSC)げんしりょくあんぜんいいんかい
    日本の行政機関の一つで内閣府の審議会等の一つ。事務局は内閣府内。
    原子力船「むつ」の放射線漏れをきっかけに、原子力行政を推進する原子力委員会が
    安全審査も所管することへの批判が高まり、1978(昭和53)年に原子力の安全確保の
    充実強化を図るため、原子力基本法の一部を改正し、原子力委員会から分離、発足した。
    国家行政組織法上の第8条審議会と同等の機能を有する。
    (ただし、国家行政組織法第1条の規定に基づき、内閣府は国家行政組織法の適用から
    除外されているため、中央省庁再編以降は内閣府設置法第37条に審議会等としての根拠を有する)
    原子力安全委員会は、原子力や放射線を専門にする5人の委員(委員長を含む)で構成し、
    約100人のスタッフが支えている。原子力基本法に基づいて設置されている審議機関であり、
    原子力の研究、開発および利用に関する事項のうち、
    安全の確保に関する事項について企画し、審議し、および決定することが任務であり、
    必要な場合は、内閣総理大臣を通じて関係行政機関の長に勧告することができる。
    委員会の下に原子炉安全専門審査会(非常勤審査委員60人以内で構成)と
    核燃料安全専門審査会(同40人以内)、分野ごとの専門部会がある。
    原子力安全委員会の所掌事項は、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法に
    次のとおり定められている。
     1.原子力利用に関する政策のうち、安全の確保のための規制に関する政策に関すること。
     2.核燃料物質及び原子炉に関する規制のうち、安全の確保のための規制に関すること。
     3.原子力利用に伴う障害防止の基本に関すること。
     4.放射性降下物による障害の防止に関する対策の基本に関すること。
     5.第1号から第3号までに掲げるもののほか、原子力利用に関する重要事項のうち、
       安全の確保のための規制に係るものに関すること。
    日本の原子力安全規制は、規制行政庁(経済産業省原子力安全・保安院、文部科学省等)が
    安全規制を行うとともに、規制行政庁から独立した原子力安全委員会がさらにそれをチェックする
    多層的体制。原子力安全委員会は、専門的・中立的な立場から、原子炉設置許可申請等に係る
    2次審査(ダブルチェック)、規制調査その他の手段により、規制行政庁を監視、監査している。
    近年は、常勤ではあるが定例会議は週1回だけであり、議事録を確認する限り、
    会合は最短で10分弱、長いもので1時間半となっている。
    「知識を持ち合わせていないので、東電(東京電力)と原子力安全・保安院にしっかりと
    指導をしていただきたい」と発言し、国民へと安全確保の案を出すどころか、
    知識が無くともできる職務であることを露見させた。また福島第一原発の事故では、
    放射性物質の広がり方の予測データを持っているのに公表せず、批判された。
    そして、このような働きで、約1650万円の年収(月給93万6000円とボーナス)をもらっている。
     いざという時に何の役にも立たず、税金泥棒みたいな委員会は不要だ。
    
    姿見えぬ原子力安全委 事故時の助言役、果たせず(2011.4.5、asahi.comより)
     原子力の安全確保の基本方針を決める原子力安全委員会の存在が、揺らいでいる。
    事故時には専門家の立場から政府や事業者に助言をする役割も担うことになっているが、
    福島第一原発の対応では本来の使命を十分に果たせていない。
    未曽有の大事故に、能力の限界を指摘する声も内部から上がっている。
     安全委は内閣府に置かれた、省庁から独立した機関。作業員2人が死亡、
    住民ら約660人が被曝(ひばく)した核燃料施設JCOの臨界事故(1999年)の反省から、
    直接事業者を規制する原子力安全・保安院が経済産業省の中に設けられ、
    その保安院の安全規制を監視するお目付け役として、独立色を強めたはずだった。
     安全委の委員は、原子力や放射線などの専門家5人。約100人の職員が事務局として支える。
    ふだんは安全審査や原子力防災の指針を定めるなどの仕事をしているが、今回のような事故時には、
    緊急に専門家集団を設けて首相に技術的助言をすることが原子力災害対策特別措置法で決まっている。
     だが、安全委は当初沈黙を続けた。
    住民の被曝や汚染の広がりの予測に役立つ放射能拡散の試算もなかなか公表しなかった。
     班目(まだらめ)春樹委員長が初めて会見したのは、地震発生から12日後の3月23日。
    「助言機関として黒衣に徹してきた」と釈明した。2号機の建屋外で高濃度の放射能汚染水が
    見つかった28日の会見では、「どんな形で処理できるか知識を持ち合わせていない。
    保安院で指導してほしい」と自らの役割を否定するような発言も飛び出した。
     安全委は事故発生当日、専門家集団を招集するとともに、現地へ職員を派遣した。
    官邸や保安院、東電にも連絡係を置いて情報を集めてきた。
    だが、委員の一人は「今の安全委では人手が足りない」と漏らす。
     代谷(しろや)誠治委員は「原子炉の圧力などの重要なデータが時々刻々で入ってこない」と打ち明ける。
    4月1日に始まった原発敷地内での飛散防止剤散布も「漏れ伝わってきた程度」といらだちを隠さない。
     JCO事故の際に陣頭指揮を執った安全委員経験者らからは「今回は安全委の顔がみえない」
    「技術的側面の支援をしていない」との批判まで出ている。
     政府内でも存在感は薄れていくばかり。
    菅直人首相は3月16日から29日にかけて原子力などの専門家6人を内閣官房参与に次々と起用。
    4月1日には放射線医学の専門家を首相官邸に招いて意見交換した。その一方で、
    政府は保安院の院長や審議官の経験者を安全委事務局に送り込み、てこ入れを図り始めた。
     安全委は4日に開いた定例会で、地震後初めて保安院から事故の正式な報告を受けた。
    報告内容はすでに入手済みの情報ばかり。班目委員長は「保安院とのコミュニケーションが
    足りないと思っていた。今回の報告が改善の一歩になれば、というのが本音だ」と話した。
    原子力安全委員へ寄付、衝撃
    (朝日新聞2012.1.19「声」より、香川県坂出市の佐藤 正春さん(69歳)の投稿文紹介)
     元旦早々、本紙記事にあぜんとした。原発関連企業・業界団体からの
    一部原子力委員会への寄付行為である。政官学の癒着は、世間で憶測されたことだと思うが、
    このように生々しく活字にされると、読む側の衝撃は少なくない。
     当事者は、便宜を図った覚えはないという。しかし、受け取る側には何らかの
    「お目こぼしをいただこう」との意図はある。あしき因習である「魚心に水心」という言葉が連想される。
     これによって安全対策の手が甘くなり、東電福島第一原発の事故の遠因となったのであれば、
    由々しき問題であり、言語道断である。他の原発に関する審査結果にも、
    手心がなかったかどうか疑念か生じる。これまでの審査の徹底的な検証を望みたい。
     寄付を受けた一部の委員は、いずれも我が国における原子力分野での
    最高権威者と位置づけられる人たちである。
    公人・良識人としての立場をわきまえ、寄付や擦り寄りをはねつける識見はなかったのか。
     「驕る平家は久しからず」という。経済大国を自任するこの国が
    崩壊していくアリの一穴とならねばよいが。改めて、神仏に祈る。
     原子力安全・保安院は東電福島第一原発事故で、国よりのごまかし説明をしていたが、
    原子力安全委員は全く顔を出さなかった。事故収拾の助言くらいすべきである。
    これも賄賂と分かった寄付金をもらった後ろめたさなのだろうか。

原子力安全協定(げんしりょくあんぜんきょうてい)
    「原子力施設周辺の安全確保及び環境保全に関する協定」の通称。
    原子力施設周辺の安全確保と住民の健康保護及び地域の生活環境を保全することを目的とし、
    原発や核燃料サイクル施設を抱える原子力施設所在道府県、市町村並びに隣接市町村が
    原子力事業者と結ぶ協定のこと。法令で義務付けていないが、1970年代から各地で結ばれている。
    内容はさまざまで、福井県と立地市町の協定は運転停止を求める権限を持つと明記し、
    原発停止後に事業者が無断で再稼働することも禁じる。
     原発の周辺自治体が協定を結ぶ例もまれにあり、北海道電力は泊原発をめぐり、
    北海道と立地の泊村のほか、周辺3町村とも連名でトラブル時の停止要求権がある協定を締結し、
    中部電力浜岡原発でも、静岡県と立地の御前崎市に加え、10キロ圏内の3市を含んだ協定がある。
    主な内容
     ●周辺環境における放射線の共同監視(通常は事業者、地方自治体、国の三者がそれぞれ測定)
     ●異常時等における情報の迅速な連絡・通報義務
     ●地方自治体による立入り調査・安全措置要求の受入れ
     ●施設の新設または増設、変更に対する地元の事前了解
     ●施設の安全確認の実施
原子力安全・保安院(Nuclear and Industrial Safety Agency:NISA)(げんしりょくあんぜん・ほあんいん
    日本の官公庁のひとつ。経済産業省の一機関であり、
    法令上の位置付けは「資源エネルギー庁の特別の機関」とされる。
    2001(平成13)年1月6日、中央省庁再編の際に新設され、旧通産省資源エネルギー庁や
    旧科学技術庁の安全規制部門を集約した組織で、初代院長には佐々木宜彦が就任した。
    東京都千代田区霞が関の本院の下、地方機関として、全国の所要の地に産業保安監督部、
    原子力保安検査官事務所などが置かれている。原発や原子力産業の原子力、電力、都市ガス、
    高圧ガス、液化石油ガス、火薬類、鉱山関係の施設や産業活動の安全規制、保安を所管し、
    これらの施設に対しては必要に応じて、立入検査、報告徴収、改善命令等を行う。
    地方機関として産業保安監督部・原子力保安検査官事務所が各地に置かれている。
    原子力関連施設に対する安全規制業務は、原子力安全基盤機構と連携して行っている。
    約800人の職員がいて、東京・霞が関の本庁のほか、全国の原子力施設の近くに職員が常駐している。
    原発推進を担う経産省の下にあることから、「推進と規制の関係が不透明」という指摘もあり、
    独立性を保てるのかと、批判の的になっていることもあり、分離議論が2010年から省内で始まっている。
    菅政権は内閣府の原子力安全委員会も含め再編を検討している。
    福島の原発事故に関しては、職員を派遣して東京電力の作業を監督し、
    現場で集めた情報を緊急時対応センターで分析し、政府に報告している。
    今回の事故を国際基準で最悪の「レベル7」と決めたのも保安院である。
    参 : 原子力安全委員会原子力安全・保安院(HP)、原子力安全・保安院(経済産業省HP)、
        緊急時情報ホームページ(原子力安全・保安院HP)

    「情報なく、言えない」と原子力安全・保安院、福島原発爆発で
     大きな爆発音の後に立ち上る白煙。原発内で何が起きたのか…。
    福島第一原発1号機の建屋爆発を受け、原子力安全・保安院は2011年3月12日午後6時、
    記者会見を始めた。注目の会見に100人を超す報道陣が集まったが、中村幸一郎審議官は
    「具体的な情報が得られていない」と歯切れの悪い返答に終始。記者と押し問答を繰り返した。
     爆発について「12日午後3時36分にタービン建屋周辺で
    縦揺れとともに爆発音が発生したと東京電力から連絡があった」と述べた。
     また、「けが人が4人いるという報告は受けている」と明らかにした。
     爆発の詳細については「現時点では具体的な情報を得られていないので、
    情報収集し、分析して具体的な対応策を速やかに検討していきたい」と語った。
     原発の現状について「映像を見る限りの情報しか、具体的には得られていない」と述べるにとどめた。
     放射性物質を閉じ込める作業については「放射性物質の状況などを調べて判断するべき」とする一方、
    「手元に具体的な数字の報告が上がっていない」とした。
     こんな情報では記者会見を開く必要はないようで、直接東京電力から説明を受けるべきだ。
    原発事故、役立たず機関の責任
    (朝日新聞2011.5.10「声」より、埼玉県上尾市の会社顧問・花田 和紀さん(71歳)の投稿文紹介)
     どのメディアも東京電力の補償問題を厳しく取り上げております。
    当然ながら東電に一義的に責任があることは否定しません。しかし、それで済むものではありません。
    責任を明らかにしてもらいたい人たちは他にもいます。
     東電の役員報酬、社員の年収カットなどの提案は心情的には理解できます。
    しかし、原子力政策は政官業もたれあいで推進されてきたのです。
    旧政権の自民、公明党それに現政権の原発推進派の責任も免れません。
     さらに私が問いたいのは原子力安全・保安院の責任です。「御用学者」という言葉をよく聞きますが、
    メンバーの多くがそうだったように思えます。国民の生命健康を守る使命感が
    甚だ欠如していたという不信感をぬぐい去ることができないのは私だけでしょうか。
     十分に機能しなかった委員会、組織は厳しくペナルティーが科せられるべきであります。
    さもなくば、今後もこの種の事故はなくならないでしょう。
    役立たずの専門機関は税金の無駄遣い以外の何ものでもありません。
     その通りで、東電の原発事故後に何をしていたのか分からない原子力安全委員会と
    原子力安全・保安院は統合して税を削減し、関連省庁からの天下りを完全禁止として
    企業寄りの原子力行政を無くしない限りは重大事故は今後も起きるでしょう。

    保安院やらせ指示、四国電も<原子力関連シンポ>
     中部電力と四国電力は2011年7月29日、原子力関連の国主催シンポジウムで、経済産業省
    原子力安全・保安院から、推進側の参加者動員や発言を指示されていたことを明らかにした。
    九州電力に端を発した原発のやらせ問題は、原発を規制する立場の保安院まで
    関与していたことが発覚。原子力を取り巻く不透明な癒着の構図が浮き彫りになってきた。
     経産省は九電の「やらせメール」の問題を受け、過去5年、計35回の国主催の
    原子力関連シンポジウムについて、電力7社に調査を指示。29日に各社が報告した。
    海江田万里経産相は、記者会見で「極めて深刻な事態。徹底解明したい」と述べ、
    第三者委員会による調査を指示した。8月末までに結果を出す方針だ。
     保安院がやらせを指示したのは、2006年6月に四電伊方原発のある愛媛県伊方町、
    2007年8月に中部電浜岡原発のある静岡県御前崎市であったシンポジウム。
    使用済み核燃料をリサイクルして使う「プルサーマル発電」の是非をめぐる重要な説明会だった。
     安全は二の次で電力会社とべったり癒着している保安院は廃止した方がましだ。
    「原子力安全庁」新設に要望2点
    (朝日新聞2011.8.24「声」より、長崎県長与町の張本 雅文さん(61歳)の投稿文紹介)
     菅内閣は15日、経済産業省から原子力安全・保安院を分離し、環境省の外局に
    「原子力安全庁(仮称)」を新設することを柱とした原子力安全規制組織改編の基本方針を閣議決定した、
    という記事を読みました。この原子力安全庁の新設は、
    原発推進の立場を取る経済産業省から原子力安全・保安院を分離する、
    という菅直人首相の意向を踏まえたもののようですが、私は気になることが二つあります。
     一つは、新組織の名称に「安全」という言葉が使われていることです。
    福島第一原発の事故で、原発の安全神話は崩壊してしまったのに、なぜあえて「安全庁」としなければ
    ならないのか、理解に苦しみます。幸い、まだ仮称となっているので、例えば「原子力制御庁」というような、
    原発を監視・規制するという趣旨をストレートに表した名称にするように要望します。
     もう一つ気になるのは、この組織の長や幹部の人選についてです。
    私は、過去のしがらみを断ち、原発の監視・規制を強力に推し進めていくためにも、
    官僚の起用は必要最小限にとどめ、原発を熟知し、なおかつ経済産業省や電力業界と関係の薄い、
    在野の専門家を積極的に登用すべきだと思います。
     国や企業寄りで、都合の悪いことは国民に隠すような原子力安全・保安院は廃止し、
    規制行政庁から独立した原子力安全委員会を、張本さんの言われる「原子力制御庁」や、
    「原子力監視・規制庁」などに改称・改編したらいいと思う。“安全”の文字は私も不要だと思う。
    今の組織では国(経済産業省)の一機関である原子力安全・保安院に遠慮し、ダブルチェックで
    あるはずの原子力安全委員会がほとんど機能していないような状態であり、税の無駄遣いである。
    それにしても事故後に被爆した多くの作業員の健康状態はどうなっているのだろうか。
    何人被爆したかは知らされるが、何人が亡くなり、何人が重体などの情報はほとんど聞かれない。
    原子力安全・保安院が大事故であったことを、意識的に隠蔽しているとしか思えない。

    電力6社が報告ミス…ストレステストに影響不可避<原発緊急安全対策の報告書>
     経済産業省原子力安全・保安院は2011年9月15日、東京電力福島第1原発事故を受けた
    全原発の緊急安全対策で、電力会社6社からの報告で誤記載などのミスがあったと発表した。
    保安院は全電力会社に再調査を指示。政府が全国の原発で再稼働の条件とした、
    安全性を評価するストレステスト(耐性検査)への影響は避けられない情勢となった。
     ミスがあったのは、保安院が3〜6月、電力各社に対して指示した緊急安全対策のほか、
    外部電源の信頼性確保やシビアアクシデント(過酷事故)の対策などの報告書。
    女川、東通両原発(東北電力)をはじめ、浜岡(中部電力)▽大飯、高浜(関西電力)
    ▽島根(中国電力)▽伊方(四国電力)▽東海第2、敦賀(日本原電)、の計9原発でミスが見つかった。
     保安院によると、女川原発では、原子炉の代替注水や燃料貯蔵プールの注水に使われる
    ホースの本数が実際と異なっていたほか、大飯原発では、
    容量200トンの燃料タンクを半分以下の80トンと誤って記載するなどのミスがあった。
    各社とも、数字の読み取り誤りや、報告書への単純な誤記載が目立つという。
     保安院は各原発に立ち入り検査を実施し、緊急安全対策が適切に取られていることをすでに
    確認している。保安院の森山善範原子力災害対策監は今回の報告ミスについて
    「評価結果には影響しない」とする一方、「緊急安全対策はストレステストの前提になる」(同)として、
    ストレステストへの影響は避けられないとの見方を示した。
     保安院は「数字の間違いは評価結果の信頼性に影響する」(森山対策監)と事態を重くみており、
    各電力会社からの再調査結果の報告を受けた後、慎重に確認作業を進める。
    1社あたり最低でも1週間程度はかかる見込みという。
     報告ミスではなく、「虚偽報告」だろう。多くの各社が都合の良い方に数値を間違えるはずがない。
    こんな危険な施設で単純な誤記載があるのは、原発を軽く見ている証拠だ。
    また、作成が義務付けられている原子力災害対策本部の重要会議の議事録が作成されていなかったことに、
    原子力安全・保安院は「開催が急に決まるなど、事務的に対応が難しかったようだ」と釈明しているが、
    議事録もとれないほど忙しかったら、ICレコーダーなどを用いて後日作成できるではないか!
    国民にとって都合の悪い議事内容を意図的に隠蔽したとしか思えない。
    誰が議事録をとることになっていたのか、とらなかったのは「議事録は残すな」と上司が言ったのか、
    などを徹底的に解明し、法的に義務付けられていることを履行しない事務方の処分を望む。
    このように「虚偽報告」や「隠蔽工作」で塗り固められているのが保安院のような気がする。

原子力供給国グループ(Nuclear Suppliers Group:NSG)げんしりょくきょうきゅうこくぐるーぷ
    1974(昭和49)年にNPT非加盟のインドが、IAEA保障措置下にあるカナダ製研究用原子炉から得た
    使用済み核燃料を再処理して得たプルトニウムを使用して核実験を成功させたことを重く見たのが
    きっかけで、日米欧と旧ソ連などの原子力先進国が設立した。参加国が原子力技術や核燃料の輸出を
    厳しく管理・規制することで核拡散の防止を図る。紳士協定的な組織だが、NPTに実効性をもたせる
    役割を担う。NSG参加国は、2004年6月10日に中国、エストニア、リトアニア、マルタの4カ国、
    2005年7月15日にクロアチアが新たに加わり、45カ国となった。
    なお、インド、パキスタン、北朝鮮及びイスラエルといったNPT非締約国やイラン等は参加していない。
原子力協定(an atomic energy agreement)げんしりょくきょうてい : 核物質や原子力関連の
    資機材・技術を平和利用を前提に移転するため、国や国際組織間で結ぶ法的枠組み。
    IAEAの査察受け入れや第三国への移転規制を定めた協定に政府が署名し、国会が承認する。
    原子力プラントの海外からの受注などの、いわゆる「原発ビジネス」は、協定締結国との間でのみ
    認められる。日本は2011年8月現在、米国・英国・フランス・カナダ・オーストラリア・中国の6カ国と
    欧州原子力共同体(EURATOM)との間で締結している。ロシアとの間では、2007年2月の
    フラトコフ首相(当時)の訪日時に交渉開始で合意した。また、カザフスタン、ヨルダン、
    韓国との間で署名が行われている他、トルコなど、数ヵ国とも交渉が行われている。
    日本企業は自民党政権下の1970年代から圧力容器などの機器を輸出している。
    民主党政権は原発全体の建設を担う「丸ごと輸出」を推進し、
    2010年10月受注のベトナムが初のケースとなる。 参 : 日本原子力産業協会(HP)
原子力災害対策マニュアル(げんしりょくさいがいたいさくマニュアル)
    1999(平成11)年に発生したJCO事故を教訓として制定された
    原子力災害対策特別措置法(原災法)に基づき、首相官邸や省庁、自治体、電力会社などが
    一体となって事故対応などの防災活動にあたる手順(活動要領)を定めた手引書のこと。
    原発近くの指揮所「オフサイトセンター」に現地対策本部を設置し、線量予測の「放射線」、
    原子炉情報収集の「プラント」、住民非難の調整を担う「住民安全」など7班の実働隊を編成して
    対応にあたることを定めている。2000年の策定後、防災訓練の結果を踏まえて7回改訂した。

    原発災害マニュアル、全然使えず<政府、全面改訂へ>
     原発事故が起きた場合に中央省庁と自治体、電力会社が現地で対応を調整する仕組みを定めた
    政府の「原子力災害対策マニュアル」が東京電力福島第一原発の事故では想定外の事態が重なり、
    ほとんど活用されなかったことが分かった。政府は全面改訂に着手した。
     朝日新聞が入手したマニュアルは1999年に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故後、
    経済産業省を中心に策定したもので、A4で123ページにわたり関係機関の対策を細かく規定している。
    原発近くの指揮所に対策本部を設けて省庁や自治体、電力会社などが情報を共有。
    首相官邸に事故処理や避難指示について現場に即した対策を提言する狙いがあった。
     ところが、今回は指揮所が被災してマニュアルの根底が崩れ、
    関係機関は初動段階からマニュアルに頼らず対応するしかなかった。
     菅直人首相が2011年3月11日に緊急事態を宣言した直後から、
    現地対策本部長となる経産省の池田元久副大臣をはじめ各省庁や東電の幹部らはマニュアル通り、
    福島第一原発から約5キロ離れた大熊町にある指揮所「オフサイトセンター」に集合。
    ところが指揮所は停電して非常用電源設備も故障し、原子炉の圧力や温度、原発施設の放射線量などの
    基礎データを把握できなかった。電話も不通で、官邸や福島県、市町村とのやりとりは困難を極めた。
     機器の操作や広報対応を担う「原子力安全基盤機構」の職員や周辺市町村の職員は、
    指揮所にたどり着けなかった。出席者が集まり次第開く「協議会」は同日中に開催できなかった。
     政府はマニュアル内容の不備が指揮命令系統の乱れを生み、初動の遅れを招いたと判断。
    事故調査・検証委員会が2012年に出す検証結果を待たずにマニュアルの改訂を急ぐ。
    (2011.6.9、朝日新聞より一部省略)
原子力事故の国際評価尺度(INES)げんしりょくじこのこくさいひょうかしゃくど
    国際的な原子力事故の評価尺度。原子力事故の重大さを表す国際的な指標で、
    各国の原子力規制当局が評価する。原子力施設で起きたトラブルがどの程度の規模か、
    一般の人にわかりやすく示すため、国際原子力機関(IAEA)などがつくった指標で、
    「レベル0」から「レベル7」までの8段階があり、「レベル2」以上はIAEAに報告しなければならない。
    1992(平成4)年から運用が始まった。大きくは、「原子力施設外への影響」、「施設内への影響」、
    放射能汚染の防護策がどれだけ損なわれたかを示す「深層防護の劣化」の3基準で判断する。
    補足基準として「安全文化の欠如」「手順の不備」などがあり、これに触れると1段階上がる。
原子力事故の国際評価尺度と主な事故
レベル 事故例

深刻な事故
数万テラベクレル以上
チェルノブイリ原発爆発事故(旧ソ連、1986年)
520万テラベクレル
福島第一原発事故(2011年)
37〜63万テラベクレル
大事故
数千〜数万テラベクレル
施設外への大きなリスクを伴う事故
数百〜数千テラベクレル
スリーマイルアイランド原発事故(米、1979年)
施設外への大きなリスクを
伴わない事故
ジェー・シー・オー(JCO)臨界事故(1999年)
東海村・核燃料加工施設での
臨界事故による放射能漏れ




重大な異常事象 旧動燃東海再処理工場火災・爆発事故
(1997年)
異常事象 美浜原子炉2号機・蒸気発生器
伝熱管損傷事故(1991年)
旧動燃・高速増殖炉原型炉「もんじゅ」
ナトリウム火災(1997年)
運転制限範囲からの逸脱 「もんじゅ」ナトリウム漏れ事故(1995年)
東京電力の原発でのトラブル隠し(2002年発覚)
美浜原発3号機の蒸気噴出事故(2004年)
安全上重要ではない事象(尺度以下) 東芝原子力技術研究所にある臨界実験装置の
原子炉(出力200ワット)が自動停止(2004年)
評価対象外(安全に関係ない事象)
       は放射性物質(放射性ヨウ素換算)の外部放出量
    参 : 確率論的安全評価

    放射性物質、発生13日で既にレベル7相当に(2011年4月13日、読売新聞より)
     東京電力福島第一原子力発電所の事故で、経済産業省原子力安全・保安院が
    2011年4月12日に「国際原子力事象評価尺度(INES)」の暫定評価を最悪の「レベル7」とする
    根拠になった放射性物質の放出量は、3月23日までで既に「7」のレベルに達していたことが、
    内閣府原子力安全委員会の推計データでわかった。
     同15日頃から放出量が急激に増え、安全委は2号機で同日に起きた
    原子炉格納容器の損傷が影響したとみている。
     安全委は、周辺環境の放射線量調査のデータなどから逆算して原発からの放出量を推定する
    手法を使って試算。東日本大震災発生日の3月11日から4月5日までのデータを用いた場合、
    大気中に放出された放射性のヨウ素131とセシウム137の総量が、3月23日の時点で
    約10万テラ・ベクレル(テラは1兆倍)以上になり、「7」の基準である数万テラ・ベクレルを超えた。
原子力潜水艦(げんしりょくせんすいかん) → 潜水艦
原子力損害賠償支援機構法(げんしりょくそんばいばいしょうしえんきこうほう)
    東京電力福島第一原子力発電所で発生した原発事故による損害賠償を国が支援するため、
    原子力損害賠償支援機構の設置・組織を定める日本の法律(2011年8月10日法律第94号)で、
    2011年8月3日の参院本会議で、民主、自民、公明3党などの
    賛成多数(みんな、共産、社民各党などは反対)で可決、成立し、公布日に施行された。
    別名:東京電力賠償支援機構法、東電賠償支援機構法、原子力損害賠償支援機構法、原賠機構法。
    全国の電力事業者を中心とする原子力事業者が共同で支援機構を設立し、政府が資金面で援助を行う、
    というもの。支援機構の運営にあたり政府は2兆円分の交付国債を発行し、機構の運営を支える。
    法律の趣旨 : 東京電力福島原子力発電所事故による大規模な原子力損害を受け、
    政府として、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、
     @被害者への迅速かつ適切な損害賠償のための万全の措置
     A東京電力福島原子力発電所の状態の安定化・事故処理に関係する事業者等への悪影響の回避
     B電力の安定供給
    の3つを確保するため、「国民負担の極小化」を図ることを基本として、
    損害賠償に関する支援を行うための万全の措置を講ずる。
    法律の概要 : 原子力事業に係る巨額の損害賠償が生じる可能性を踏まえ、
    原子力事業者による相互扶助の考えに基づき、将来にわたって原子力損害賠償の支払等に
    対応できる支援組織(機構)を中心とした仕組みを構築する。
    (1)原子力損害賠償支援機構の設置、原子力事業者からの負担金の収納
     1.法律の趣旨
     2.法律の概要
       原子力損害が発生した場合の損害賠償の支払等に対応する支援組織として、
       原子力損害賠償支援機構を設け、損害賠償に備えるため積立てを行う。
       機構は、機構の業務に要する費用として、原子力事業者から負担金の収納を行う。
       機構に、第三者委員会的な組織として「運営委員会」を設置し、
       原子力事業者への資金援助に係る議決等、機構の業務運営に関する議決を行う。
    (2)機構による通常の資金援助
     原子力事業者が損害賠償を実施する上で機構の援助を必要とするときは、機構は、
     運営委員会の議決を経て、資金援助(資金の交付、株式の引受け、融資、社債の購入等)を行う。
     機構は、資金援助に必要な資金を調達するため、
     政府保証債の発行、金融機関からの借入れをすることができる。
    (3)機構による特別資金援助
     @特別事業計画の認定
      機構が原子力事業者に資金援助を行う際、政府の特別な支援が必要な場合、
      原子力事業者と共に「特別事業計画」を作成し、主務大臣の認定を求める。
      特別事業計画には、原子力損害賠償額の見通し、賠償の迅速かつ適切な実施のための方策、
      資金援助の内容及び額、経営の合理化の方策、賠償履行に要する資金を確保するための
      関係者(ステークホルダー)の協力の要請、経営責任の明確化のための方策等について記載する。
      機構は、計画作成にあたり原子力事業者の資産の厳正かつ客観的な評価及び経営内容の
      徹底した見直しを行うとともに、原子力事業者による関係者に対する協力の要請が
      適切かつ十分なものであるかどうかを確認する。
      主務大臣は、関係行政機関の長への協議を経て、特別事業計画を認定する。
     A特別事業計画に基づく事業者への援助
      主務大臣の認定を受け、機構は、特別事業計画に基づく資金援助(特別援助)を実施するため、
      政府は機構に国債を交付し、機構は国債の償還を求め(現金化)、
      原子力事業者に対し必要な資金を交付する。
      政府は、国債が交付されてもなお損害賠償に充てるための資金が不足するおそれがあると
      認めるときに限り、予算で定める額の範囲内において、
      機構に対し、必要な資金の交付を行うことができる。
      機構は、政府保証債の発行等により資金を調達し、事業者を支援する。
    (4)機構による国庫納付
     機構から援助を受けた原子力事業者は、特別負担金を支払う。
     機構は、負担金等をもって国債の償還額に達するまで国庫納付を行う。
     ただし、政府は、負担金によって電気の安定供給等に支障を来し、または利用者に
     著しい負担を及ぼす過大な負担金を定めることとなり、国民生活・国民経済に重大な支障を
     生ずるおそれがある場合、機構に対して必要な資金の交付を行うことができる。
    (5)損害賠償の円滑化業務
     機構は、損害賠償の円滑な実施を支援するため、
      @被害者からの相談に応じ必要な情報の提供及び助言、
      A原子力事業者が保有する資産の買取り、B賠償
     支払の代行(原子力事業者からの委託を受けて賠償の支払、
     国または都道府県知事の委託を受けて仮払金※の支払)を行う。
     ※平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律案に基づく国による仮払金
    (6)会計処理
     機構は、負担金について、原子力事業者ごとに計数管理を行う。
    
    これでは加害者救済機構だ
    (朝日新聞2011.8.23「声」より、埼玉県所沢市の村田 道義さん(72歳)の投稿文紹介)
     福島第一原発事故の被害者補償問題で、東京電力が責任をどう全うするのか注目している。
     原子力損害賠償法は、事業者の賠償責任は無過失責任かつ無限責任をうたう一方、
    損害賠償措置(保険)の1200億円を超える損害については政府が援助できる。
    さらに天災地変による場合には免責としている。
     このような微妙で様々な解釈がありえる条項に今回の事故はどう該当するのか、
    本来ならそこから議論すべきだろう。
     ところが、今月3日、原子力損害賠償支援機構法が成立した。
    この機構には関西電力など原発を所有する11社が負担金を出し、
    政府が利子のつかない交付国債などで資金を交付して貸し付け、東電の賠償を支援する。
    政府の資金は公的資金であり、返還するため電力会社は電気料金に転嫁するだろう。
     東電の株式や金融機関の責任追及は先送りされた。
    東電の経営は保証され株主も保護されることになる。これでは加害者救済機構といわざるを得ない。
     二度と悲劇を起こさないためにも、東電の責任を明確にし、責任を果たさせるとともに、
    原発を推進した歴代政権もその責任を問われるべきだと思う。
     原子力安全委員会の班目春樹委員長は2011年6月9日の衆院復興特別委員会で、
    福島第一原子力発電所の事故について「まさに人災である」と述べ、
    これまでの国の原子力行政や東京電力の対応に落ち度があったと認めている。
     班目氏は自民党の谷公一氏の質問に「原子力施設は分厚く守られなければいけない」と
    指摘した上で「津波が想定を超えたからといって、第2、第3の防護手段がなければいけない。
    実際にそういう手段を講じていなかった」と反省の弁を述べ、国・東電のミスを認めたように、
    非常用発電装置を高台に設置していなかったとか、各号機の給電ケーブルを共有していたとか、
    複数の原発を同一敷地内に設置したとか、安全より経費節減を重視した欠陥原発といい、
    原発事故は「人災」なのだから、事故による電力料金の値上げと税の国民負担は納得できない。
    原発を強力に推進し、欠陥原発を容認してきた自民党政権の責任も大きい。

原子力損害賠償紛争審査会(げんしりょくそんばいばいしょうふんそうしんさかい)
    文部科学省主管の機関の一つで、原子力損害の賠償に関する法律第18条と
    原子力損害賠償紛争審査会の組織等に関する政令(法律)により設置されている。
    原発などで事故が起きた場合、原子力損害賠償法に基づき文部科学省に設置する組織で、
    被害者への賠償を円滑に進めるための範囲の指針の策定や和解の仲介などを行う機関である。
    法律、医療、原子力の専門家らの約10人の委員で構成される。まず、賠償の対象や範囲について、
    原子力事業者(電力会社等)との交渉の基礎となる事故に伴う賠償の「判定指針」を作る。
    被害者と原子力事業者との交渉が難航した場合には、和解に向けた仲介もする。
    1999年9月に茨城県東海村の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」で起きた臨界事故の際に、
    調停役として初めて設けられた。
    原発事故で出荷制限や自粛に賠償、紛争審査会が1次指針静岡新聞ニュースより)
     文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は2011年4月22日、2回目の会合を開き、
    東京電力福島第1原発事故の賠償範囲を定める第1次指針案を提示した。
    農水産物の出荷制限や自粛による農家や漁業者の損害を賠償の対象にすることで一致。
    風評被害のうち、事故との関係が強いケースも賠償が必要との意見が大勢を占めた。
     避難生活の精神的苦痛も対象とする方向。1999年に茨城県東海村の
    核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」で起きた臨界事故時に比べ賠償範囲を広げ、
    一段の被害者救済を目指す。28日の次回会合で1次指針をまとめる。
     原発事故は収束のめどが立たず、被害は深刻さが増している。
    放射性物質の観測データに基づき、政府が出荷制限したり、
    県などが出荷自粛を要請した野菜や魚の損害は「事故との関係がはっきりしている」と判断した。
     売り上げの減少分や廃棄費用を賠償対象にすることを指針に明示し、
    東電に賠償金の仮払いや早期の全額支払いを促す。
     審査会は、出荷制限されていない品目にもかかわらず、同じ産地という理由で売れなかった風評被害に
    ついても、「事故と密接な関係がある」(能見善久会長)とし、1次指針に盛り込む方向で検討する。
     避難生活に伴う精神的な苦痛も賠償することを了承。避難や屋内退避の指示を受けた
    30キロ圏内に加え、計画的避難区域、緊急時避難準備区域に指定された
    地域の住民を対象とする見通し。精神的損害はJCO臨界事故の際は認めなかった。
     対象区域内の住民に対しては、避難に伴う実費や宿泊費を支払う。
    (1)営業が困難になった事業者の損失(2)職場に出勤できない人の給与(3)健康被害
    (4)放射線量を調べる検査費用―などは東海村の事故時と同様に賠償する。
     東電は月内にも避難住民に1世帯当たり100万円、単身世帯には75万円の仮払いを始める。
    だが当面の生活資金の意味合いにとどまっており、審査会は1次指針を通じ追加支払いを求める。
原子力の平和利用(げんしりょくのへいわりよう) : ウランなどが核分裂して生まれる膨大な
    原子力エネルギーを発電や放射線治療など、軍事以外の目的で原子力を有効活用すること。
    核不拡散条約は非核保有国に核兵器の保有を禁じる一方、原子力の平和利用を認めている。
    非核保有国は国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れる義務がある。
    IAEAは「核の番人」と呼ばれ、非核保有国の原子力施設に立ち入り、
    核物質の管理結果をチェックして軍事転用されないようにする。現在151カ国が加盟している。
     核兵器の拡散を防ぐことを主な目的に1970年に発効した核拡散防止条約(NPT)でも、
    核兵器を持たない非核保有国が原子力の民生利用を進めるため、
    IAEAによる査察を受け入れた上で、設備や資材、情報などを入手する権利を保証している。
     原子の平和利用は、1953年に国連総会でアメリカのアイゼンハワー大統領が演説したことに始まった。
    日本は1956年に原子力基本法を制定した。同法は、「原子力利用は平和利用に限定し、
    民主的な運営の下に、自主的にこれを行い、その成果を公開し、進んで国際協力に資するもの」と
    明記している。原子力開発は、この精神を基本に進められている。
    政府は今後もこの姿勢を維持していくことを世界に約束している。
    また、国際原子力機関では、各国の原子力施設が平和利用にのみ使用されていることの確認のため、
    国際的な相互査察を行っており、日本はこれに全面的に協力している。
    原子力の平和利用の3原則(The three principles for peaceful use of nuclear energy)
     1954年3月、自由・改進・日本自由の3党が突如原子炉予算を提出・可決したことに対し、
     同年4月23日、日本学術会議は原子力問題に対する政府の態度を非難し、
     原子力研究の軍事利用を防ぐため、核兵器研究の拒否と、
     @国が勝手に研究の方向性などを決めるのではなく、研究者の自由を尊重する(民主)
     A外国に頼らず、日本の国情にあった科学技術を発展させる(自主)
     B研究の一切の情報を国民に知らせ、軍事機密をなくす(公開)の三原則を声明、
     同年10月の第18回総会で可決した。1955(昭和30)年成立の原子力基本法に盛り込まれたが、
     「公開」は「一切の情報」ではなく「成果」に限るなどとされ、
     「原子力政策決定過程がやがて見えにくくなった」との指摘もある。
      米国のアイゼンハウアー大統領が原爆一本から原子力発電との2本立てに原子力政策を変更、
     自国で原発を実用化するとともに、日本へ巧妙に原子炉を売り込んだのである。
     その際、中曽根康弘氏が重要な役割を果たした。
     その一方で日本学術会議は原子力平和利用三原則(民主的運営、自主的研究開発、情報の公開)を
     決定し、その趣旨は原子力基本法に引き継がれた。
     日本の原子力研究開発は、米国の意向とそれに便乗する勢力と、
     平和利用三原則とその背景にある国民世論との矛盾をかかえてスタートしたのである。
    アトムズ・フォー・ピース(Atoms for Peace) : 平和のための原子力。原子力の平和利用。
     アイゼンハワー大統領が1953(昭和28)年12月8日に国連総会で行った演説の題名。
     米国による核技術の独占を過去のものと認め、米国が農業や医療、発電など原子力の平和的な利用を
     国際的に推進する姿勢を示した。また、国家からの核分裂物質の供出を受ける組織の必要性を訴え、
     国際原子力機関(IAEA)の設立につながった。その演説で「私は提案したい。
     原子力技術を持つ各国政府は、蓄えている天然ウラン、濃縮ウランなどの核物質を、
     国際原子力機関(IAEA)を作り、そこにあずけよう。そしてこの機関は、
     核物質を平和目的のために、各国共同で使う方法を考えてゆくことにする。
     原爆(投下)という暗い背景を持つ米国としては、力の誇示のみでなく、平和への願望と
     期待をも示したいと望む」と呼びかけた。各国に原子力の平和利用を呼びかけたこの演説は、
     友好国や非同盟国に技術支援することで、急ピッチで核開発を進めるソ連へ対抗する狙いだった。
     ところが、国連演説のすぐ後には沖縄に戦術ミサイルが配備され、
     翌年初頭に初の米原潜「ノーチラス」が進水する。3月にはビキニ水爆実験の死の灰を浴びた
     第五福竜丸事件が起き、日本で原水爆禁止の署名運動が広がり、反米、反核感情が急速に高まった。
     こうした中で、未来のエネルギーとして原発を日本に導入する方策が練られたのである。
原子力発電環境整備機構(Nuclear Waste Management Organization of Japan:NUMO)ニューモ
    げんしりょくはつでんかんきょうせいびきこう : 略称は、原環機構(げんかんきこう)
    2000年(平成12年)6月の「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」施行を受け、
    高レベル放射性廃棄物(使用済み核燃料)処分のため電力業界などが
    2000年10月に設立した日本の事業体のことで、日本銀行などと同じ国の認可法人である。
    処分場建設地の選定、処分場の建設・管理、処分場の閉鎖後の管理などの業務を行っている。
    建設地選定は(1)文献資料などで概要調査地区の選定(2)ボーリング調査などで精密調査地区の選定
    (3)地下施設での調査などで2020年代後半をめどに建設地の選定。
    2030年代後半の処分開始を目指している。
    コマーシャルを通じて日本全国の自治体に交付金(最大90億円)を提示して最終処分場候補地の
    公募をしているが、「核のゴミ」を嫌う自治体が圧倒的に多く、現在応募しているのは、
    高知県安芸郡東洋町のみである。ただ、この東洋町では、市長が単独で行った応募を巡って
    賛成派と反対派が町内を二分する議論となっている。
    参 : 日本の原発原子力発電環境整備機構(HP)
原子力発電所(an atomic power plant)げんしりょくはつでんしょ : 原発。
    原子力発電(nuclear poewr generation)を行う施設。
    原子炉内で核分裂を起こし、それによって発生するエネルギー(熱)で湯を沸かして蒸気を発生させ、
    その蒸気でタービンを回転させる事により発電を行なう発電所の一つ。
    
    原子力発電所の概略図
    原子力発電の問題点
    ●放射能漏れ : 燃料棒・ならびに核分裂後の物質は、強力な放射能を持っている。
     また、設備内部を行動する際の着衣や用具などは、
     微量の放射性物質が付着している恐れがあるため、原則として焼却処分される。
     これらの物質は、放射性廃棄物に分類され、放射線量の少ないものは
     ドラム缶への貯蔵・および管理が義務づけられる。また、発電所周辺に放射線が漏れる度合いは、
     自然界で照射されるそれと比べても、ごく微量であるとの見解が示されている。
     しかし環境保護団体の多くは、その見解を文字通りには信じてはいない。
     また、発電所の所員、そして作業員(多くの場合、アルバイトである)への被曝に関しては、
     放射線量測定のためのフィルム式バッジを装用して日常的にチェックが行なわれている。
    ●炉心溶融(メルトダウン)の危険性 : 日本の発電設備で使われている原子炉のタイプでは
     起きにくいとされている。が、日本は地震国であるため、建造物や原子炉のパーツが大地震に
     どこまで耐えられるか(そして損傷の度合いなど)は、未知数の部分が多いのも事実である。
    ●放射性廃棄物の処理 : 地震の多い日本であるが、現在では地下300m以下の
     安定した地層に穴を掘り、そこに廃棄物を埋蔵処分する手法が検討されている。
    ●燃料の再処理 : 核分裂後の燃料棒には、その過程でプルトニウムが残されている。
     これを再び取り出して原子炉で使用できる燃料にするための設備が核燃料再処理工場である。
     が、その工程の過程で使われる劇物などの薬品による工場周囲の環境汚染や、
     恒常的な・あるいは事故発生時の放射能漏れの事態に関しては、
     工場での作業員・周辺などにどのくらいの被曝が発生するか現時点では想定されえない要素が多くある。
     このため世界各地で、環境保護団体による工場の操業・あるいは
     工場の建設自体を中止する旨の抗議が、多数あがっている。
    ●大地震の揺れや、隕石・戦闘機などの飛行物体の衝撃に耐えられるか
     柏崎刈羽原発、地震で微量放射能含む水流出…変圧器火災も
      2007年7月16日午前の新潟県中越沖地震で、震源地から9キロ・メートルの距離にあった
      東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市)は強い揺れに見舞われ、
      7基ある原子炉のうち、稼働中だった2、3、4、7号機が自動的に緊急停止した。
       この影響で、定期検査で停止中の6号機で、微量の放射性物質を含む水が建屋の床などに漏れ、
      海に流れ込んだ。最終的な外部への漏えい量は、約1・2トンと推定される。
      東京電力は柏崎刈羽原発では、耐震設計上の想定を大幅に超える地震の加速度を記録したと
      発表しているが、それなら基準が同じ全国に55基ある原発すべてで放射能漏れは
      有り得ることではないか。想定外だったからしかたがないでは、核関連施設では済まされない。
      早急に安全基準の見直しを行い、マグニチュード8であっても事故は皆無でなければならない。
      また、微量であっても、放射性物質を含む水を、チェックなく海へ流すことは許されない。
      もし、浜岡原発で大事故が起きれば東京を含め200万人の死者がでると言われているのである。

     福島第一1号機で爆発…4人負傷、3人被曝YOMIURI ONLINE:読売新聞より)
      東日本大震災で被災した福島第一原子力発電所1号機の原子炉建屋で2011年3月12日午後、
     水素爆発が発生し、作業員4人が負傷、放射性物質も飛散して敷地外にいた住民ら3人が被曝した。
      1号機は原子炉内が過熱しており、経済産業省原子力安全・保安院は、炉心が溶融した
     可能性を指摘。東京電力は、運転再開が困難となる海水の注入に踏み切ることを決めた。
     その作業に備え、福島県は同日夜、避難指示の範囲を半径20キロ・メートル圏へ拡大した。
      12日午後3時36分頃、東京電力福島第一原子力発電所(福島県大熊町、双葉町)1号機建屋付近で、
     ドーンという大きな爆発音とともに白煙が上がり、原子炉建屋が骨組みを残して吹き飛んだ。
      同日夜、記者会見した枝野官房長官は「格納容器と建屋の間にたまった
     水素による爆発で原子炉建屋の壁が崩壊した」と語った。
      残存した格納容器には損傷はないが、原子炉内の燃料集合体の一部が高熱で溶ける
     炉心溶融が進み、過酷事故に発展する恐れがあるため、東電は、炉内に核分裂を抑えるホウ酸と
     海水を注入し、核分裂が連続して起こる再臨界に達しない措置をとることを政府に伝えた。
     専門家は「廃炉覚悟の最終手段」と分析する。
      枝野官房長官は「放射性物質は爆発当初より濃度は減っていて問題はない」と説明しているが、
     爆発時は濃度が高く、時間が経つと拡散して低くなるのは当然のことで、
     多量の放射能が漏れている可能性があるのに、爆発した建屋の近くで誰が放射線量を測定したのだ。
     モニタリングでは建屋に近接した場所を計測するので、数100m以上離れた場所の測定をすべきだ。
     また「爆発は建屋の壁が崩壊したものであり、中の容器が爆発したものでないと確認された」と言うが、
     建屋が破壊された危険な状況の中、どこの所属の誰が容器の爆発ではないことを確認したのだ。
     電源が回復しない段階では放射能を監視するモニタリングポストのデータも取れず、
     モニタリングカーを動かして測定しているようで、放射能の常時監視もできない状態とも言われている。
     敷地外にいた住民ら3人が被曝したということは、核分裂によって生じた放射性物質が外部に
     多量に放出されていることになり、ウラン核燃料の少なくとも一部が、金属被覆を溶かして露出し、
     融解を引き起こしている可能性があることから、問題がないというのはおかしい。
     3人の体調にも問題がないと説明しているが、被爆後遺症のことは現時点ではわからないではないか。
     第一、負傷した4人の作業員のその後の被爆や健康状態を何故知らせないのだ。
     当初の避難指示の範囲を半径10キロから20キロへ拡大したのも、
     何か国民に隠しているように思える。万が一のことを考えたのなら100キロでもいい。
     炉心の状況、放射能データなどをもっと詳細に説明すべきで、不十分な説明のまま、
     夜に避難指示をだすというやりかたでは不信感が増すばかりだ。
     日本の沿岸地震では、ほんの100年ほど前に明治三陸地震津波が起きているが、
     このとき、岩手県沿岸の津波は38mを記録しているのだ。
     東京電力も政府も「今回の地震は想定外の大きさだった」なんて言葉を安易に使ってほしくない。
     危険な原子力施設には、想定外のことは起きることを前提に核施設を設計すべきで、
     事故時に重要な非常用ジーゼルエンジンの石油タンクを、なぜ地下に設置しなかったのだ!
     こんなお粗末な原子力行政なら、即刻上関原発の建設は中止すべきだ。
     念を押すが、隕石や航空機などの落下は想定外ではなく、いつでも原子炉誘爆は起きるのだ。

    ●点検・検査体制の不備や人為的による事故発生 : チェルノブイリ原発事故
     福井県・美浜原子力発電所の事故など、人為的なことによる多くの事故が発生している。
    参 : 日本の原発世界の原発日本原子力発電株式会社MOX燃料加工工場水力発電
        上関原発建設計画A9

    人類にとって原発はパンドラの箱
    (朝日新聞2011.3.14「声」より、山口県岩国市の宮田 伊津美さん(64歳)の投稿文紹介)
     原発は初めから「トイレのないマンション」と呼ばれる欠陥品だ。
    厄介で危険な放射性廃棄物を出すが、それを無毒化する技術はない。
    生活環境から隔離して、自然に毒性が減るのを何千年も何万年も管理しながら待つしかない。
     近年の科学技術の進歩のスピードは異常なほどだ。太陽電池の性能が向上し、
    風や波による発電ももっと進み、現在考えもしなかった方法での発電も発明されるであろう。
    そして安全で環境負荷の少ない電源が確立した時、原発はどうなるか。
     原発そのものが放射性物質の固まりとなっており、解体処理して何千年も管理し続けるには
    多大な費用と危険を伴う。しかもそれによって1ワットの電力も得られない。
    その時、重荷でしかない原発を、国と電力会社はどうするのか。
     そのままコンクリートの箱で覆うか、その地域全体を危険ゾーンとして
    有刺鉄線で囲うなどの対応を取るぐらいしかできないのではないか。
    その時になって原発は人類にとってパンドラの箱であったと嘆いても、後の祭りである。
    東電は正確で正直な情報を(朝日新聞2011.3.26「声」より、
    北九州市八幡西区のフリーライター・佐々木 紅児さん(43歳)の投稿文紹介)
     「大丈夫?」って聞くと、「大丈夫」って言う。「安心していい?」って聞くと、「安心していい」と言う。
    「心配ない?」って聞くと、「心配ない」と言う。それでも不安になって「安全なの?」って聞くと、
    「安全だ」と答える。聞き間違いでしょうか。いいえ昔から。
     テレビで何度も流れる公共広告機構(AC)の金子みすゞの作品「こだまでしょうか」を、
    東京電力の言葉に置き換えると、あまりの空虚さに強い憤りを覚える。
     今、本当に必要なのは、正確で正直な情報を余すところなく公表することだ。
    福島第一原発の現状が分からないから、デマや流言があふれ、
    風評被害が被災地間格差を生んでしまう。
     経営や企業責任といった今後のことより、今、最優先事項は住民の安全確保だ。
    そのためにはつまびらかな情報を開示して、最善の策を講じることに尽きる。
     「心」は見えないけれじ、「下心」は見える。「思い」は見えないけれど、
    「思い上がり」は誰にでも見えるのである。
     そう、原子力発電の問題点は、本当のことを隠したり、ウソを言ったりした場合、
    被災住民を不安や困惑に陥れたり、風評被害につながることが、もう1項目あった。
    「現時点では分かりません」なら記者会見する必要はない。
    被曝した地域住民や作業員のその後の経過を、全く発表しないことも不安をかきたてる。

原子力への国家支援(げんしりょくへのこっかしえん) : 原発1基あたり、運転開始までの10年間に
    約480億円、その後の40年間に約900億円が、電源三法交付金として立地地域に支払われる。
    使用済み核燃料の再処理や放射性廃棄物の最終処分の費用は、推計で総額約19兆円。
    これらの費用は、電源開発促進税などのかたちで電気料金から徴収されている。
     東京電力の福島第一原発事故の関連では、
    損害賠償額が2年間だけで4兆5400億円、廃炉費用は1兆1510億円が見込まれている。
    除染にも1兆円以上かかる見通しだ。(2012.2.4、朝日新聞より)
原子炉(げんしろ) : リアクター。ウラン・トリウム・プルトニウムなどの核分裂性物質を燃料とし、
    核分裂の連鎖反応を適度に制御しながら定常的に持続させ、
    そのエネルギーを利用できるようにした装置。連鎖反応を起こす中性子の速度、
    燃料の種類と形態、冷却・減速の方法など様々な観点から分類される。
    原子核研究・材料試験・発電・船舶などの推進機関・アイソトープ生産・医療など多くの用途がある。
    原子炉には使用される核反応の種類から、ウランなどの重たい元素の原子核の核分裂を利用する
    「分裂炉」と、水素などの軽い元素の原子核の核融合を利用する「融合炉」とに分けられるが、
    一般には前者を指す。    
原子炉の要素と形式
要素 炉心 核燃料 、制御棒、冷却材、減速材、原子炉圧力容器
保安装置 原子炉格納容器、非常用炉心冷却装置
形式 核分裂炉 軽水炉 加圧水型原子炉沸騰水型原子炉
ロシア型加圧水型原子炉、韓国標準型原子炉
重水炉 CANDU炉、新型転換炉、ガス冷却重水炉
黒鉛炉 黒鉛減速ガス冷却炉、改良型ガス冷却炉、
黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉、
黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉、溶融塩原子炉
高速炉 高速増殖炉、高速中性子炉
核融合炉 トカマク型、ヘリカル型、磁気ミラー型、
逆転磁場配位型、レーザー核融合、フューザー
    参 : 国際熱核融合実験炉廃炉
原水爆禁止運動(げんすいばくきんしうんどう)
    第二次世界大戦後に起こった、原水爆の製造・実験・使用の禁止と廃棄を求める平和運動。
    1945年8月の世界大戦終結後、初めての大規模な世界平和大会が、
    1949年4月パリとプラハで同時に同じ議題で開かれた。その背景には、
    アメリカの強硬な原爆独占政策のため原子兵器の廃棄が実現しないことへの危機感があり、
    また1947年から顕在化した米ソ冷戦への危機感があった。
    その世界大会によって設置された常任委員会(1950年11月世界平和評議会と改称)は、
    1950年3月、スウェーデンのストックホルムでの第3回委員会において、
    原子兵器を無条件に禁止すること、それを保障する国際管理を確立すること、
    最初に原子兵器を使用する政府を戦争犯罪人として取り扱うことなどを訴える署名運動の展開を決議した。
    これが有名なストックホルム・アピールである。この署名運動は、同年6月に始まった朝鮮戦争を背景に、
    たちまち世界的な支持を得て、同年8月まででも3億、1953年までには
    5億(日本では645万余)の署名を集め、朝鮮戦争でのアメリカによる原爆使用を防止するとともに、
    後の日本の原水禁運動の源流となった。特に、1954(昭和29)年の第五福竜丸の乗員が
    ビキニ水爆実験の「死の灰」を浴びた事件をきっかけに原水爆禁止署名運動が全国的に広まり、
    1年間で3千万人を超す署名が集まる。翌年8月には広島で第1回原水爆禁止世界大会が開かれ、
    翌月、日本原水協が結成された。ただ、1960年代には、社会主義国の核実験の評価をめぐり
    共産党系と旧社会党系が対立し、1963年の世界大会で分裂は決定的となり、
    社会党系の原水禁が1965年に結成された。
    参 : 原水爆禁止日本協議会(日本原水協HP)、原水爆禁止2011年世界大会オフィシャルウェブサイト
原爆症(げんばくしょう) : 「原子爆弾症」、「原子爆弾傷」とも表記する。
    原子爆弾・水素爆弾の炸裂などに伴って放出される各種放射線・熱線、
    および爆風が人体に引き起こす病的影響の総称。熱線、爆風による火傷などの外傷のほか、
    放射線被曝による全身的な機能低下や発育不全、肝機能障害、造血器障害、
    甲状腺機能低下症、がん(悪性腫瘍)、白血病白内障などの障害がある。
    発症は被爆直後の場合が多いが、発生から10年、20年、経った後に発症することも少なくない。
    また、直接被爆をしなくても、原爆投下直後に降った放射能を帯びた「黒い雨」を浴びたり、
    母胎内で被爆して生まれた子供にも発症した。
    原爆症の三つの区分
     @熱線、爆風による創傷、熱傷
     A放射線被曝による急性放射線障害
     B放射線被曝による晩発性障害(白血病、白内障、瘢痕性萎縮による機能障害など)
    原爆症認定 : 国による認定制度は1957(昭和32)年に始まった。
     原爆の放射線が原因で、発病するか治癒能力が低下して医療が必要な人に対し、
     被爆者援護法に基づき厚生労働相が認定する。厚生労働大臣の下に審査機関があり、その病気が
      @原爆の放射線が原因で発病するか治癒能力の低下によるものである(放射線起因性)
      A医療を必要とする状態にあるもの(要治療性)
     の条件を満たすかどうか審査し「原爆症」と認定されると「医療特別手当」が支給される。
     しかし、この原爆症認定は非常に厳しく、近距離での直接被爆以外は、
     救護や肉親を探すため後から中心地に入った人はほとんど却下されている。
     認定されている被爆者は、被爆者健康手帳を持つ約24万人余のうち約2200人に過ぎない。
     手帳所持者の大半が月額約3万4千円の健康管理手当てを受給し、
     原爆症と認められれば月額約13万7千円の医療特別手当に切り替わる。
      2001年以降は爆心地からの距離をもとに被爆者が浴びた被曝線量を算出、
     性別や被爆時の年齢を加味して発病に影響した「原因確率」をはじき出し、認定の可否を判断してきた。
     この方法では、入市や救護で残留放射線を浴びた被爆者が認定されることはなかった。
     被爆者健康手帳を持つ約24万人余のうち、原爆症と認定された人は1%に満たない。
     「基準が厳し過ぎる」という批判を受け、2007年8月、
     広島を訪問した阿倍首相(当時)が見直しを示唆し、厚労省は2008年4月、認定枠を拡大し、
     基準を改め、がん白血病、副甲状腺機能高進症、放射線白内障、放射線起因性の心筋梗塞
     いずれかを発症し、爆心地から約3.5km以内での被爆など一定条件を満たせば
     自動的に認める「積極認定」を導入した。条件にあてはまらない人は個別に「総合判断」する。
      国は2009年度予算に2800件の新規認定を見込み、医療特別手当として122億円を計上し、
     1800件の新規認定を見込んで79億円の予算を組んだ2008年度より上積みし、
     認定増加に備えてはいる。
     積極認定する5疾病と被爆条件(新認定基準)
      @爆心地から約3・5キロ以内で直接被爆
      A原爆投下後約100時間以内に、爆心地から2キロ以内に立ち入り
      B原爆投下から2週間以内に、約2キロ以内に1週間以上滞在
      のいずれかを満たす、5疾病(がん、白血病、副甲状腺機能障害、放射線白内障、心筋梗塞)の
      患者を積極的に認定する。
     2008年4月以降の判決で認められ積極的認定以外の対象疾病例
      慢性肝炎、肝硬変、胃切除後障害、甲状腺機能低下症、貧血、ガラス片摘出後遺症
      国がポツダム宣言を早期に受諾していれば、原爆投下による大量殺人や原爆症で苦しむ人は
     いなかったことから、原爆投下を回避できなかった国には責任と救済の義務がある。
     一生、外出をためらうことになった顔のケロイドは、
     直接の放射線ではなく類焼による火傷だとしても原爆症の認定をすべきだ。

原発交付金(げんぱつこうふきん) : 「電源開発促進税法」、「特別会計に関する法律」、
    「発電用施設周辺地域整備法」の「電源三法」に基づき、原発などの建設を進めるため、
    電力会社から電源開発促進税として集めた電気料金の一部を、
    国が原子力発電用施設の立地自治体や周辺自治体に配分する交付金のこと。
    税金分は電気料金に上乗せされるため実質的には電力使用者が負担していることになる。
    電源立地地域対策交付金が主で、原発の場合、交付金の種類により、
    建設前の調査段階から運転終了までが対象期間で、発電量に応じて支払われるほか、
    運転の長期化に応じて加算される仕組みの交付金もある。また原発以外に、
    再処理工場やウラン濃縮工場なども「発電に不可欠な施設」として交付対象に含まれる。
    電源立地地域対策交付金は、2003(平成15)年10月1日に電源立地促進対策交付金、
    電源立地特別交付金など、主要な交付金等を統合して創設された。
    地域で行われる公共用施設整備や、住民福祉の向上に資する事業に対して交付金を交付することで、
    原発施設の設置に係る地元の理解促進等を図ることを目的としている。
     電源立地地域対策交付金の年間総額はここ数年、1千億円前後で推移しており、
    予算ベースで2010年度が約1097億円、2011年度が1110億円である。
     困窮した自治体をカネで誘うための交付金といった方が解りやすい。
    しかしハコ物建築で、巨大な役場、体育館、公園、公民館などを大都市のゼネコンなどが受注し、
    結局関係のない国民の税金までを持っていかれることになるのだ。おらが村やおらが町へ
    原発誘致を願い出た特定の自治体への交付金なので、電力会社が負担すべきだ。

    玄海町、原発交付金の1億円をずさん処理佐賀新聞の情報コミュニティより)
     東松浦郡玄海町が2010年度、原子力発電所に関連する国からの交付金1億円を
    基金に積むための予算措置をしていなかったことが2011年8月5日、同町への取材で分かった。
    町は「予定していた事業が遅れ、予算化を忘れていた」と認めている。年度末になって急きょ、
    基金に積み立てたが、本来の補正の手続きを踏んでおらず「不適切」との指摘が上がっている。
    多額な“原発マネー”が交付されるなか、町のずさんな財政運営の一端が浮き彫りになった。
     予算措置をしていなかったのは、2010年度に交付されたプルサーマル受け入れに伴う
    核燃料サイクル交付金の1億円。町は同年度分について、6月補正予算で、
    次世代エネルギーパーク整備の事業費として約2億5千万円を計上していたが、
    用地買収が遅れたため、年度内の全額執行が見込めなくなった。しかし、次年度にすぐ工事着手などが
    できるよう、要求額を約2億5千万円から1億円に減額し、核燃料サイクル補助金基金に積むことにした。
     執行部は3月議会で同基金を積み立てる条例改正案と事業費を1億円に減額する補正予算は
    提案したが、基金に積み立てる予算措置をしないまま、3月末までに内部処理で組み入れた。
     予算措置をしていなかったことについて同町幹部は「当初の見込みより用地買収が遅れ、
    見極めがぎりぎりになり、結果的に忘れていた」と釈明した。
    岸本英雄町長は「基金に積み立てるやり方は手続きとしておかしくはない」と話している。
     地方の財政に詳しい地方自治総合研究所の飛田博史研究員は
    「多額の原発関連交付金を長年扱ううちに、なれ合いになっていたのではないか。
    手続きのミスというより、税金を大切に計上する意識が足りない町の姿勢の問題」と話している。
     核燃料サイクル交付金は、九州電力玄海原子力発電所3号機のプルサーマル受け入れに伴い
    14年度までに総額60億円が交付される。内訳は玄海町に30億円、県15億円、唐津市15億円。
    玄海町は、太陽光や水素など新エネルギーを体験できる次世代エネルギーパーク整備などに充てている。
    山口県上関町、原発交付金で整備「海峡温泉」船出にさざ波中国新聞ニュースより)
     山口県上関町の温浴施設「上関海峡温泉 鳩子の湯」が2011年12月6日、
    町民を対象にプレオープンした。中国電力が計画する上関原発に伴う国交付金を財源に町が整備した。
    福島第1原発事故で今後の交付金確保が見通せない中での出発になる。本オープンは9日。
     室津小跡地の約6600平方メートルに立つ鉄筋平屋約1520平方メートルの施設。
    上関海峡を望み、男女を週ごとに入れ替える「石の風呂」と「木の風呂」、露天風呂やサウナ、家族風呂、
    地元産の魚介類を生かしたレストランもある。泉質はナトリウム塩化物冷鉱泉で赤銅色の湯が特徴。
    総事業費約9億5300万円のうち、約8億4600万円は原発関連交付金で賄った。
     年間維持費は約7千万円と見込まれ、オープン後は持続的運営が課題になる。
    指定管理者の一般財団法人「なごみ」(代表理事・柏原重海町長)は町から年1千万円の
    委託料を受け取るが、残りは年間利用者約7万人を見込む入浴料やテナント収入などで賄う方針。
     同財団の井原久治事務局長は「約40人の新規雇用が見込まれ、
    地元食材の地産地消など波及効果も大きい」と期待する。
     しかし、原発関係交付金の状況次第では、運営にも不安が残る。
    原発反対派の岩木基展町議は「完成した以上は安定経営をしてほしい。
    魅力を高め、赤字穴埋めが町財政の負担とならないように」と注文している。
     上関原発は完工できるかも分からないのに、原発交付金8億円で温泉施設を造るのはおかしい。
    50億円もする総合体育館も造るそうだが、これらすべて原発が稼動してから建造すべきだ。
    原発交付金は全国民の税金から拠出されていることから、たとえ国が原発立地自治体を
    誘致するための苦肉の策だったとしても、もし不発に終わったら国と上関町の詐欺行為ともいえる。
    国の税金を特定の自治体のみが無駄に使うことは許せない。

    上関海峡温泉
    
 上関町を舞台に人気を集めたNHKの連続ドラマにちなみ「鳩子の湯」と愛称を付けた。
    開館時間は午前10時〜午後9時(入浴受け付け午後8時まで)。入浴料は中学生以上600円、
    小学生以下300円(3歳以下無料)。町内の65歳以上の高齢者と障害者の入浴料は半額となる。
    原発交付金分を穴埋め(2011.12.20、朝日新聞より)
     経済産業省資源エネルギー庁は、東京電力福島第一原発と同第二原発が立地する福島県の
    自治体に対し、来年度から原発交付金に代わる財政措置をとる方針を固めた。
    第一原発事故に伴う廃炉や運転停止で原発交付金の対象から外れると想定。
    大幅な歳入減に陥らないよう、現行の交付金制度とは別の枠組みで同程度の額を手当てしたい考えだ。
     エネ庁は、新たな財政措置の規模や期間などを詰めており、
    国の来年度予算の編成作業に合わせ、年内に決定する見通し。
     福島県の関係自治体は、廃炉に伴う「廃炉交付金」の創設を国に要望。ただ、エネ庁は、
    同県以外の立地自治体も対象となり得る廃炉交付金ではなく、同県に限る形を検討している。
原発事故の賠償(げんぱつじこのばいしょう)
    「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」(1961年制定)によると、
    通常の条件下で事故が起きた原発事故の損害は電力会社だけが損害賠償責任を負い、
    メーカーなどは賠償責任を負わないとしている(原子力損害でない場合は、
    民法や製造物責任法によって賠償責任が生じる)。
    ただし「異常に巨大な天災地変または社会的動乱」によって引き起こされた損害については
    事業者の賠償責任が免除されるとの例外規定があり、東日本大震災のような
    「想定外の巨大地震」による事故は、電力会社の賠償責任とはならず、
    国が必要な措置を講じることとされている。戦争やテロによる事故も、同様の扱いである。
    原賠法がなければ、原子力事故が起きた場合の倒産リスクが高すぎ、
    民間企業は原子力産業に参入することができない。また、原子力損害賠償の仕組みがないままだと、
    賠償責任を負った会社が倒産し、被害者が補償を受けられない事態に陥る可能性が高い。
    原賠法が作られた背景には、このような理由がある。
    過去に原賠法が適用されたのは、1999年に茨城県東海村で起きた臨界事故。
    このときは放射性物質の飛散などはなかったとされているが、
    事故を起こした核燃料加工会社JCOが負った損害賠償額は150億円に達した。
     「原発事故の賠償責任としての受益者負担には納得はできない。
    あくまでも、東電単体の責任で、広義に捉えても東電及び原電立地交付金を貰ってきた
    地方自治体までが、責任を負う範囲かと思う」のネットでの意見に私も賛同する。
    16兆円もあるといわれる東電の総資産を削り、
    先ずは手持ちの剰余金と保険金などで賠償責任を果たすべきである。
    現在、電気料金は、事業活動に必要な諸々の費用(総原価)に、15%の利益を乗せて決定”される
    “総括原価方式”を取っているため、原発に関しては“失敗して大事故を起こしても、
    当座は国が支援し、あとは自動的に、電気料金値上げで損害賠償し解決できる”と言う、
    無責任ルールが確立していること自体も納得できない。


    東電は原発賠償に身を切れ
    (朝日新聞2011.5.21「声」より、滋賀県野洲市の非常勤講師・岩本 修さん(66歳)の投稿文紹介)
     東京電力の役員報酬は2009年度で平均約3700万円でトップは7200万円程度だという。
    福島第一原発事故の賠償に伴って会長、社長らは役員報酬を全額返上するという。
    だが、生活を破壊された被災者や連日、事故現場で危険な環境下で
    復旧に当たっている作業員らのご苦労に比べ、役員らの姿が見えてこない。
     同じ人間でありながらこの落差は、まさに戦中の国民、兵士と
    戦争を遂行した指導者の構図と似ていると思う。
     私は原発設置当時から、原発が安全という根拠があるのならなぜ、
    電力消費の多い大都会に建設しないのか疑問を抱いていた。
    今回の事故が想定外の地震と大津波であれば、他の原発も同様の事故を起こす可能性が大いにある。
    元から安全神話などあり得ず、地震国日本に原発の存在は許されない。
     事故賠償で政府支援の枠組みが決まり、多額の税金支出も予想される。
    責任問題について本紙声欄でも意見が掲載されていた。
    東電は原発の危険性を指摘されながらも稼働を続け、高い公共性の名の下で独占的に利潤を得てきた。
    事故の企業当事者として身を切って賠償責任を果たすべきだと考える。
     国や自治体との有利な橋渡しのために天下りしてきた役員が、こんなに報酬を得ているとは
    知らなかった。こんな役員のための多額の報酬も電気料金に上乗せされるのだろう。
    役員報酬は一般サラリーマンの年収の2倍くらいまでとし、人件費を節約して利用者に還元すべきだ。

原発事故の賠償条約(げんぱつじこのばいしょうじょうやく) : 原発事故の被害が国外に広がった場合、
    損害賠償訴訟の裁判管轄権を事故発生国に限定し、補償の限度額を定めて電力会社に負わせる
    国際的な枠組み。欧州連合(EU)諸国は「パリ条約」、ロシアや東欧、中南米は「ウィーン条約」、
    米国は「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)」に加盟。日本が加盟を検討するCSCには
    責任限度額を超えた場合に加盟国が拠出金を出し合い支援する制度がある。
    加盟には国内法整備が必要。中国や韓国などアジアの立地国は加盟していない。
    非加盟国の被害者が提訴する裁判の管轄権を主張することは原則としてできない。
    (2011.5.29、朝日新聞より)
    米、原子力損害補償条約の批准求める
     パネマン米エネルギー副長官は2011年5月12日、将来起きる可能性がある原子力事故の賠償金を、
    世界各国が拠出した基金で補う「原子力損害補完的補償条約」を「日本が批准することが極めて重要だ」
    と述べ、日本政府に早期条約締結を促した。共同通信との電話インタビューで語った。
     東京電力福島第1原発事故については「作業は明らかに長期間に及ぶ。
    (収束の)確たる見通しはない。道のりは長い」と厳しい見方を示した。
     副長官の発言は、未曽有の巨額賠償金の支払いが予想される福島の事故を受け、
    将来の重大事故に備えた国際的な協力体制構築が急務であるとのオバマ政権の見解を代弁している。
    原発賠償条約、加盟を検討<海外から巨額請求の恐れ>
     東京電力福島第一原子力発電所の事故で、日本が海外から巨額の賠償を負わされる
    恐れがあることがわかった。国境を越えた被害の損害賠償訴訟を事故発生国で行うことを定めた
    国際条約に加盟しておらず、外国人から提訴されれば日本国内で裁判ができないためだ。
    菅政権は危機感を強め、条約加盟の本格検討に着手した。
     原発事故の損害賠償訴訟を発生国で行うことを定める条約は、
    国際原子力機関(IAEA)が採択した「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)など三つある。
    日本は米国からCSC加盟を要請されて検討してきたが、日本では事故が起きない
    「安全神話」を前提とする一方、近隣国の事故で日本に被害が及ぶ場合を想定し、
    国内の被害者が他国で裁判を行わなければならなくなる制約を恐れて加盟を見送ってきた。
     このため、福島第一原発の事故で海に流れた汚染水が他国の漁業に被害を与えたり、
    津波で流された大量のがれきに放射性物質が付着した状態で他国に流れついたりして
    被害者から提訴されれば、原告の国で裁判が行われる。
    賠償金の算定基準もその国の基準が採用され、賠償額が膨らむ可能性がある。
原発訴訟(げんぱつそしょう) : 原子力発電所の安全性や人体・環境への影響をめぐり、
    国や電力会社を相手取って争われる訴訟の総称、一般呼称。
    原子炉の設置許可取り消し、建設差し止め、運転差し止め、
    あるいは、作業員・住民の健康被害の賠償が請求の原因とされる場合が多い。
    これまで確定した原発訴訟では、すべて住民ら原告が負けている。
     滋賀原発2号機(石川県)については住民らが北陸電力を相手に金沢地裁に提訴。
    2006年の判決は原発の運転差し止めを認めた。
    稼働中の原発では唯一の事例だが、高裁で原告が逆転敗訴し、2010年、最高裁で確定している。
     福井県にある高速増殖原型炉「もんじゅ」の設置許可をめぐる訴訟では名古屋高裁金沢支部が
    2003年、国の安全審査に「見過ごせない誤りや欠落」があるとして地裁判決を取り消し、
    原告勝訴を言い渡したが、最高裁で逆転敗訴した。
原発と市町村税(げんぱつとしちょうそんぜい) = 原発と市町村税(税関連に別掲)
原発の耐震と費用(げんぱつのたいしんとひよう) : 2006年の耐震指針改訂後、周囲の活断層や備える
    地震の想定が見直され補強も進められた。東電は1千億円かけ柏崎刈羽原発7基の補強を表明。
    中部電力は耐震強化に難があった浜岡原発1、2号機の廃炉と1基の新設を決めた。
    原発1基の建設費は数千億円。地質調査や地震の解析は調査会社などが請け負い、
    電力会社も関連の技術者を抱える。(2011.10.17、朝日新聞より)
高速増殖炉(fast breeder reactor:FBR)こうそくぞうしょくろ
    原発の使用済み核燃料に含まれるプルトニウム(核爆弾の材料であり、
    わずか1グラムで何百万人も殺せる猛毒物質)を取り出し、燃え残ったウランとともに再び燃料に使い、
    しかも同時に新たなプルトニウムを生み出してしまう特殊な原子炉のことで、
    速いスピードの中性子(高速中性子)を利用して核分裂を起こして
    プルトニウムを「増殖」することからこのように呼ばれる。
    通常の原子炉における燃料転換率は1未満であるが、
    高速増殖炉においては、燃料転換率(燃料増殖率)1.4を実現している。
    消費される燃料より多くのプルトニウムが生み出されることから、
    ウラン資源の利用効率が飛躍的に高まると期待され、
    国の核燃料サイクル政策の中核を担う施設である。
    冷却材にナトリウムのほか、鉛ビスマスやヘリウムガスなどを使う炉が各国で研究されている。
    日本はナトリウムを冷却材にした炉の開発を進めている。
    もともと、今使われている普通の原子炉(軽水炉)よりも先に研究、開発が始まりながら、
    いまだにどの国も実用化(商業利用)できていない。
    普通の原子炉(軽水炉)に比べて費用も高くつく上に、非常に危険で技術的にも難しく、
    実験・開発中の原子炉でも事故や故障が続き、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなど、
    先進諸国もすべて開発をあきらめている。
    高速増殖原型炉「もんじゅ」
     日本は、東海村に開発の第1段階である実験炉「常陽」があるほか、
    福井県敦賀市に新たに第2段階である原型炉「もんじゅ」が1991(平成3)年5月に完成した。
     研究開発段階の原子炉や材料の特性などのデータを集めるのが目的の試験用の原子炉で、
    現在主流の原発(軽水炉)の次に「夢の原子炉」として期待されたが、
    初送電から4カ月後の1995(平成7)年12月8日、
    2次冷却材のナトリウム0.64トンが漏れる火災事故を起こすなど相次ぐトラブルで運転を停止した。
    燃料のプルトニウムに「高速」中性子を打ち込むことで核分裂を促し、
    炉内の燃えにくいウラン238を燃えやすいプルトニウム239に変える。
    このプルトニウムを燃料として使えるため、理論上は運転するほど燃料が「増殖」できる。
     出力は28万キロワット。原子炉から熱を取り出す冷却材にナトリウムを使うのが特徴である。
    
    2010(平成22)年5月6日午前10時36分、事故から14年半ぶりに運転を再開した。
    2002(平成14)年にナトリウム漏れ対策の強化を中心とする設置変更許可が認められ、
    運転再開に向けて改造工事の準備が進んでいるが、日本原子力研究開発機構や国は
    2015年までにもんじゅの研究成果をまとめ、2025年頃までに次の段階の実証炉、
    2050年頃までに実用になる商業炉の導入につなげる計画である。
     もんじゅの開発・建設にはこれまで事業費9千億円がつぎ込まれた。
    事故後の停止中も1日当たり5500万円の維持費がかかっている。
    再開後は年に150〜180億円の運転費用が必要で、廃炉費用は少なくとも約2千億円とされる。
    再開が14年間遅れたことで燃料が劣化し、研究内容の修正を余儀なくされた。
     原子力機構の設置や開発・建設に1兆円を超える費用がかかったのに、
    再開後の運転費用などに少なくとも3千億円程度が見込まれるというが、
    それに見合う成果は不透明なままの再出発という。こんな危険な原子炉に何兆円もの
    税金を使わなかったら、太陽光発電システムを何十万基と補助設置できたのである。
    安全性は勿論のことであるが、経済性も重視すべきで、
    国民の血税を湯水のように使って14年半もの長期間何をしてきたのだ!

    参 : MOX燃料加工工場日本原子力研究開発機構(HP)
高速増殖原型炉「もんじゅ」 → 高速増殖炉
高速中性子(fast neutron)こうそくちゅうせいし
    低エネルギー核物理学の範囲でのエネルギー値の高い中性子のこと。
    厳密な定義は無いがエネルギー値が0.1〜1.0MeV(メガ電子ボルト)よりも大きいものを
    指すことが一般的である。核分裂で生まれたばかりの中性子は数百万電子ボルトのエネルギーを持ち、
    高速中性子といわれ透過力が強い。高速中性子を利用するのが高速炉高速増殖炉である。
    中性子の速度は、そのエネルギー値から求める事が出来る。
    1eVの中性子速度=1.4×104m/sec
    故に、1MeVの高速中性子の速度は、1.4×107m/sec(毎秒1.4万km)である。
高速炉(Fast Reactor:FR)こうそくろ : 高速中性子による核分裂反応がエネルギーの
    発生源となっている原子炉である。高速中性子炉(Fast Neutron Reactor:FNR)とも呼ばれる。
    2030年代以降の実用化が構想されている第4世代原子炉の一つに挙げられている。
    高速中性子による核分裂連鎖反応を用いてウラン238から
    プルトニウム239を生産する増殖炉は、高速増殖炉という。
高レベル放射性廃棄物(high−level radioactive waste、high activity wastes)
    こうレベルほうしゃせいはいきぶつ : 原子力発電所使用済み核燃料から
    プルトニウムウランを抽出した後に生じる放射性廃棄物の再処理工程において、
    排出される放射能レベルが極めて高い廃液、または廃液をガラス原料と共に溶かし、
    キャニスタ−の中でゆっくりで固めた(ガラス固化体)ものをいう。
    また、再処理せずに使用済み核燃料をそのまま処分する(ワンス・スルー)国では、
    使用済み核燃料そのものが「高レベル放射性廃棄物」となる。
    ガラス固化体は青森県の貯蔵施設に30〜50年置くことになっているが、
    国が探しているのは、その後の処分地で、高レベル放射性廃棄物は、
    2000年に制定された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(略称「高レベル処分法」)で、
    地下300〜1000mの地層に埋め捨て処分することが定められたが、
    最終的な処分場所は、反対が多く決まっていない。
    使用済み核燃料にも燃料ウランの100万倍の放射能があり、100万年の管理が必要とも言われる。
    処分技術は実証されておらず、処分場の具体的な安全評価基準も決まっていない。
    参 : 日本の原発MOX燃料
国際原子力機関 = IAEA(別掲)
国際原子力パートナーシップ(Global Nuclear Energy Partnership:GNEP)
    米国ブッシュ大統領によるエネルギー政策の一環として、
    エネルギー省のサミュエル・ボドマン長官が2006年2月6日に発表した、
    使用済み核燃料の再処理を柱とする国際的協力体制の構築計画のこと。
    核燃料サイクルによる原子力エネルギーの供給を図りつつエネルギー需要、
    環境、開発、不拡散上の諸問題への対応を図ることを目的として、
    原子力発電より発生する使用済み核燃料の再処理時のプルトニウムを、
    核発電用燃料へ再利用は可能でも核兵器への転用を防止するための核拡散防止計画の一つ。
    2008年11月現在、GNEPの参加国は我が国を含む25カ国。
    参 : (社)日本原子力産業協会(HP)、国際原子力エネルギー・パートナーシップ(外務省HP)
国際熱核融合実験炉(ITER:イーター)こくさいねつかくゆうごうじっけんろ
    熱核融合の国際的な研究を行う実験施設のこと。
    名称は、ラテン語で「道」を意味する「iter」に由来する、とされている。
    国際的な技術協力によって熱核融合エネルギーの実現と新エネルギー源の開発を目指し、
    50万キロワットの出力を長時間実現するのが目標である。
    この核融合実験炉は核融合炉を構成する機器を統合した装置であり、
    ブランケットやダイバータなどのプラズマ対向機器にとって総合試験装置でもある。
     水素の同位体である重水素とトリチウムの混合気体を1億度以上の「プラズマ」と呼ばれる高温状態にし、
    その中にある原子核同士を衝突させて核融合を引き起こすことによってエネルギーを取り出す。
    ウランプルトニウムなどの重い元素が分裂してエネルギーを放出する反応過程とは反対に、
    熱核融合では、重水素やトリチウムなどの軽い元素が結合することによってエネルギーを放出する。
     熱核融合による発電では、1グラムの燃料からタンクローリー1台の石油(約8トン)に相当する
    エネルギーが得られる。もし、熱核融合が実現すれば、燃料は無尽蔵なので
    恒久的なエネルギー源が確保できることから、「地上の太陽」と呼ばれることもある。
     2006年11月にはプロジェクトの実施主体となる国際機関を設立する国際協定である
    「イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定」
    に対する署名が行われた後、2007年10月24日に協定の効力が発生し、
    イーター国際核融合エネルギー機構が国際機関として正式に設立された。
     ITER計画は、太陽と同じ核融合反応を人工的に起こし、エネルギーを取り出す。
    燃料の重水素や三重水素は海水からほぼ無限に取り出せるとみられ、
    未来のエネルギー源と期待され、成功すれば原型炉、実証炉または商業炉の建設へと進む。
     日本、欧州連合(EU)、ロシア、米国、中国、韓国、インドの7カ国が協力して
    フランスのカダラッシュで建設が進められている。
    総経費は約1兆7千億円で、日本は建設費の約9%、運転費の約13%を負担する。
    参 : 国際熱核融合実験炉(HP)、イーター(ITER)事業について(外務省HP)

    核融合反応実験、2026年開始目標<ITER機構>
     日本や欧州、米国など7カ国・地域が共同で進める国際熱核融合実験炉(ITER)について、
    ITER機構(池田要・機構長)は2009年6月18日、2026年に核融合反応実験を開始するという
    目標時期を初めて示した。水戸市内で開いた理事会で決定した。
    ただ、2018年に炉を完成させるという当初目標は遅れる見通しで、先行きは不透明な部分もある。
     ITERは2008年からフランス・カダラッシュで基礎工事が始まっている。
    理事会では、2018年の段階では、核融合反応に必要な高温・高圧のプラズマを作り出す
    最小限の機器だけで実験を開始することを確認。26年までに炉を完成させ、
    重水素と三重水素(トリチウム)を使った核融合反応実験に入ることにした。
     2006年の時点で1兆7千億円と見積もられた総事業費は、増額が心配されているが、
    見通しは示されなかった。約半分が建設費に充てられるが、必要機器はほとんど各国の物納となるため、
    具体的な金額について池田機構長は「各国の見積もりにゆだねられる」との考えを示した。
再処理の工程(さいしょりのこうてい) : 使用済核燃料を裁断し、化学薬品で溶かして再利用可能な
    プルトニウムを取りだし、ウランと混ぜた混合酸化物(MOX)を化学的に回収し、
    燃料に不必要な残りの核分裂生成物を安全に処理することである。放射性廃液は高温の炉内で
    ガラスと混ぜ、金属容器に入れてガラス固化体にする。MOXはMOX燃料工場に送られる。
    処理方法は大別して湿式法と乾式法があり、湿式法には沈澱法、溶媒抽出法、イオン交換法があり、
    乾式法にはふっ化物揮発法、乾式高温法がある。
    溶媒抽出法(ピューレックス法)は現在実用化されている唯一の方法である。
     六ケ所再処理工場は年800トンの使用済み燃料を処理する能力があり、
    1998年からすでに2400トンを受け入れている。 参 : 核燃料サイクル        
    「原子力・エネルギー」図面集2008−7−16より
暫定規制値(ざんていきせいち)
    放射性物質で汚染された食品の出荷や販売を規制するため、食品衛生法に基づき設けた基準。
    放射性ヨウ素で飲料水・牛乳・乳製品1キログラム当たりで、300ベクレル、野菜類が同2000ベクレル。
    放射性ヨウ素の影響を受けやすい乳児が飲む乳類は同100ベクレルを超えてはいけない。
    一定量の野菜や牛乳などを1年間とり続けた場合、ヨウ素の甲状腺での線量が50ミリシーベルト
    セシウムの全身的線量が5ミリシーベルトを超えないように算出されている。
シーベルト(Sievert) : 人が体の外から放射線を浴びたり、体の中に放射性物質を取り込んだりした時の
    被曝の大きさを表す単位で、放射線が人体に与える影響を示している。記号はSv。SI単位である。
    呼称は、放射線防護の研究で功績のあったロルフ・マキシミリアン・シーベルトにちなむ。
    物質が放射線に照射された時、物質の吸収線量を示す単位がグレイ(記号Gy。定義J/kg)である。
    ただし、生体(人体)が放射線を受けた場合の影響は、受けた放射線の種類(アルファ線、ガンマ線など)
    により異なるため、吸収線量値(単位、グレイ)に放射線の種類ごとに定められた
    放射線荷重係数を乗じて共通の尺度で測るための単位となる線量当量(シーベルト)を算出する。
    人体が放射線にさらされる事を放射線被曝(ほうしゃせんひばく)といい、
    人体は年間およそ2.4ミリシーベルト(世界平均)の自然放射線に常にさらされている。
    1時間あたりに直すと0.274マイクロシーベルトである。胸部のCTスキャンの1回の放射線量
    6.9ミリシーベルト。一度に大量の放射線を浴びた方が体へのダメージは大きい。
    ごく微量の放射線では人体に影響を与えることはないが、大量の放射線は人体に有害である。
    特に、放射性物質を扱う環境にある人は、自分がどの程度の放射線を受けたのかを、
    常に厳密に管理しなくてはならない。その際に用いられる尺度の一つがシーベルトである。
    国際放射線防護委員会(ICRP)は、一般の人の被ばく限度量を
    「1年間で1シーベルトの1000分の1に当たる1ミリシーベルト以下に抑えるべきだ」と勧告している。
    また、原子力施設で働く作業員に対しては、法律で、1年間に50ミリシーベルト以下、
    また、5年間で100ミリシーベルト以下にするよう定めている。
    宇宙飛行士の若田光一さんは2009年に4カ月半国際宇宙ステーションに滞在した際、
    約90ミリシーベルトの線量を受けたと見積もられている。
    放射線を短期間に全身被曝した場合の致死線量は、5%致死線量が2シーベルト、
    50%致死線量(LD50)が4シーベルト、100%致死線量が7シーベルトと言われている。
    200ミリシーベルト以下の被曝では、急性の臨床的症状は認められないとされるが、
    長期的な影響については議論があり、また、低線量の被曝についても
    健康被害が生じたとして訴訟が起きている。
    福島第一原子力発電所の敷地境界付近で、2011年3月12日午後3時29分に測定された放射線は、
    1時間に1015マイクロシーベルトで、これは一般の人の被ばく限度量を1時間で
    超えてしまうことを意味している。業務に従事する人の年間上限は50ミリシーベルトだが、
    福島第一原発の作業員に限り、250ミリシーベルトに引き上げられた。
    また、人体に目立った影響が出るとされるのは、200ミリシーベルト程度で、
    7000ミリシーベルトを浴びると、ほとんどの人が死亡するとされている。
    参 : 被曝線量半減期ベクレルグレイ
市民測定所(Citizens’Radioactivity Measuring Station:CRMS) : 市民放射能測定所の略称。
    東京電力福島第1原発事故を受けて、食品から摂取する放射性物質の暫定規制値の見直しを
    国が進める中、対応の遅れへの不信感などから市民自らが食品を検査するために
    開設された測定所で、全国各地に広がり、不安を感じる人たちの受け皿になっている。。
    食品、水、土壌、落ち葉など検出限界10ベクレルで放射性セシウムを測定できる。
    準備中のものも含め、少なくとも全国30カ所にある。寄付を募って測定器を購入したり、
    企業が事業として取り組んだりと、運営方式は様々である。
    多くが1台100万円以上する測定器を使っている。
    参 : 全国市民測定所マップひまわりHP
重水炉(heavy water reactor:HWR)じゅうすいろ : 核分裂を引き起こす中性子の減速のためや、
    場合によっては炉心の冷却のために重水素と酸素を化合させた重水を用いる原子炉のこと。
    軽水(普通の水)を減速材に使う原子炉(軽水炉)では濃縮ウランが燃料として必要だが、
    重水炉では濃縮されてない価格の安い天然ウランまたは
    濃縮度の低いウランを核燃料として使用できる利点がある。
    ただ、普通の水に含まれる重水は微量のため、重水を取り出すのにかかるコストが高くなる。
    重水炉は一般の軽水炉に比べ、核兵器の原料となるプルトニウムの抽出が容易とされる。
ジュネーブ合意 = ジュネーブ合意(ジュネーブに別掲)
使用済み核燃料(しようずみかくねんりょう) : 原子力発電所で使った核燃料の燃えカスのことで、
    「死の灰」などとも言われている。この中には、燃え残りのウランのほか、
    新しくできたプルトニウムが含まれている。使用済み核燃料を剪断(せんだん)して細かくし、
    硝酸に溶かして科学的に分離(再処理)すれば、プルトニウムを抽出することができる。
    プルトニウムは、高速増殖炉の燃料などとしても利用できるが、
    約8kgあれば、原爆1個を造れるとされる。日本全国の原発で1年間に発生する量は約1千トン。
    政府は青森県六ケ所村の再処理工場で化学処理してプルトニウムを抽出する方針だが、
    処理能力は最大800トン。再処理工場の稼働は2012年10月だが、
    技術的なトラブルが相次いで試運転段階で止まり、再会のめどすら立ったいない。
    本格操業しても200トン分処理できない。再処理で生まれる高レベル放射性廃液は
    ガラスで固めて地下深くに埋める予定だが、候補地選びは難航している。
    使用済み核燃料は原子炉から取り出した後でも大量の熱や放射線を出し続けている。
    このため燃料プールで冷やす必要がある。プールは原子炉建屋などにあり、常に冷却されている。
     全国どの原発でも高い放射能を持つ「粗大ごみ」の使用済み核燃料の貯蔵量が増え続け、
    福井県の高浜原発ではすでにプールの7割が埋まっているという。プールが満杯になれば、
    原子炉内の燃料を取り出して交換することができなくなり、運転を続けられなくなるのだ。
    使用済みの核燃料は六ケ所村の再処理工場で処理できるとしていたが、
    相次ぐトラブルでいつ稼働できるかわからない状況なのだ。先行して受け入れてきた
    同工場の燃料プールはすでに満杯近くとなり、新たに受け入れる余裕はほとんどない上に、
    青森県むつ市で計画されている中間貯蔵施設の工事は東日本大震災後から止まっている。
    安全より経費削減を優先して設計された原発といい、使用済み核燃料の再処理問題といい、
    これが自民党が強硬に進めてきたお粗末な原子力行政なのだ。

    使用済み燃料再処理施設 : 使用済みの核燃料を、ウラン、プルトニウム、核分裂生成物に
    分ける施設。この後、ウランとプルトニウムは転換工場、成型加工工場へ送られて、
    核燃料(MOX燃料)として原発で再利用される。これを「核燃料サイクル」という。
    使用済み核燃料税 : 原子力発電所に保管される使用済み核燃料に課税する法定外税。
    総務省が2003年9月18日付で、創設を全国で初めて認めた。新潟県柏崎市は2003年10月から、
    鹿児島県川内市は2004年度から課税。5年間でそれぞれ26億円、12億6千万円の税収を見込む。
    背景には、原発の建設直後には莫大(ばくだい)な固定資産税収が入るものの、
    その後急減する立地自治体の財政構造がある。
    電力業界は当初、都道府県が課税する核燃料税との二重課税と反対したが、
    最終的に東京、九州両電力は課税を容認した。
    参 : 日本の原発核燃料棒

    青森県の三村申吾知事は2005年11月19日、東京電力と日本原子力発電が青森県むつ市に
    計画する使用済み核燃料の中間貯蔵施設の立地を受け入れる、と表明した。
    原子力発電所から出る使用済みの核燃料を、再び原発の燃料に使えるよう再処理するまでの間、
    保管する施設で、国が進める核燃料サイクルの主要施設のひとつ。
    建設は全国初で、両社は2010年までの操業開始を目指す。
    応募の飴玉
    処分場誘致の魅力は豊富な交付金で、応募するだけで年2億1000万円の交付金が2年間出る。
    2007年度からは年10億円に増額される。次の概要調査地区に進めば、さらに上限70億円。
    応募自治体が半額以上、残りが周辺自治体に配分される。
    2006年度からは都道府県に対し、各地域振興計画に25億円の交付金が出ることになった。
    処分場が立地した場合、年200億円を超える交付金や固定資産税が見込める。
    ただし、交付金の使途は医療・福祉・教育文化・スポーツ施設の整備などに限られ、箱モノが中心である。
    核処分場応募
    高知県東洋町の田嶋裕起町長が、町議会の同意を得ないまま、2007年1月28日付けで
    原子力発電環境整備機構が公募している高レベル放射性廃棄物最終処分場の
    第1段階調査(候補地選定に向けた文献調査)に全国で初めて応募した。
    応募は受理され、全国で初めて文献調査を実施するための手続きが進められる。
    処分場の安全性に対する不安は大きく、隣接する海陽町など徳島県内にも衝撃が広がった。
     文献調査に応募した問題で、調査に反対する町民は2007年3月2日、
    町内への放射性廃棄物持ち込み拒否を骨子とする町条例制定に向け、田嶋裕起町長に本請求した。
    田嶋町長は、3月中に臨時町議会を開き、条例案を提案する。
     自治体トップの田嶋町長自身も、このような強引な手法をすれば議会や住民のほか、
    周辺自治体が反発することは分かっていたはずなのに、
    何故事前に県や町議会に意見や同意を求めなかったのだろうか。ゴミ処理場の誘致でも反発は
    確実なのに、危険な核関連施設の誘致を独断で、しかも水面下で決めるとは思ってもみなかった。
    地震や隕石などの落下物による放射能漏れ事故でも起きれば、東洋町だけの問題ではない。
    このような危険な施設だからこそ、巨額の交付金を提示されて7年にもなるのに、
    どこの市区町村も手を挙げなかったのである。
    東洋町の年間予算は約20億円で、累積赤字が約50億円あることから、
    町長は「今日の夕張は明日のわが身」などと言い、財政難の解消を図りたいのはわかるが、
    危険な施設を受け入れ、棚からぼた餅のような金を当てにして財政を立て直すことはいただけない。
    財政難は東洋町だけでなく、全国ほとんどの市区町村が財政難に陥っているのである。
    苦しい地方財政を逆手に取るようにして、巨額の交付金で建設候補地という魚を釣り上げ、
    原子力政策を進める国の不信感に加え、何千億円の血税をこんなところに勝手に使うことも問題だ。
    また、誘致を推し進めた自治体が交付金をもらった後、
    最終段階で建設を拒否した場合でも、交付金の返還はしなくてもよいということは大問題で、
    全国の多くの自治体が金だけの目的で交付金を分捕った後で誘致を断ったらどうするのだ!
    こんなことで済むのなら、私が住んでいる市にも交付金をもらうために手を挙げ、
    税金を大幅減額してほしいと言いたくもなる。

除染(じょせん) : 被曝により皮膚や衣服や機器・施設などの表面に付着した放射性物質を除去したり、
    付着した量を減らしたりすることをいう。除染対象物によりエリアの除染、機器の除染、
    衣料の除染、皮膚の除染などに分けられる。 物の除染には浸漬、洗浄、研磨などが行われ、
    除染剤には合成洗剤、有機溶剤などが用いられる。
    また、身体の皮膚の汚染には、中性洗剤、オレンジオイルなどが用いられる。
    放射性物質をほかの場所に広げたり、体内に取り込んだりしないよう、
    できる限り早く取り除くことが重要である。まず衣服に放射性物質が付着していないか測定して、
    汚染が確認されれば服を脱ぎ、服はポリ袋などに密封する。
    体の表面に物質が付着していた場合には、タオルを使って生ぬるい湯で洗い流すのが基本だという。
    せっけんと水でよく洗えば、皮膚表面の汚染はのぞける。
    肌を傷つけないよう、皮膚が赤くなるほどこすったり、爪を立てたりしてはいけない。
    除染したら、放射性物質が取り除かれたかを測定して確認する。
食品衛生法の暫定規制値 → 食品衛生法(食品に別掲)
ストレステスト = ストレステスト(別掲のB)
ストロンチウム(Strontium) : 周期表第2族に属し、原子番号38の元素で、原子量87.62、
    元素記号はSrである。18世紀末スコットランドのストロンチアンの鉛鉱山で採掘された
    ストロンチアン石(初めは炭酸バリウムと考えられていた)から、1808年イギリスのH・デービーによって
    単体として取り出され、発見鉱物にちなんでストロンチウムと名づけられた。
    地殻中の存在量は同族のカルシウムよりはるかに少ない。
    天青石(てんせいせき)SrSO4、ストロンチアン石SrCO3などとして産出するが、
    他の同族元素の鉱石(重晶石BaSO4、あられ石CaCO3など)にも少量混入している。
    軟らかく銀白色のアルカリ土類金属で、化学反応性が高い。空気にさらされると、
    表面が黄味を帯びてくる。放射性同位体の9038Srはセシウムなどの放射性降下物に含まれ、
    その半減期は28.90年でイットリウム90となる。
    常温、常圧で安定な結晶構造は、面心立方構造(FCC、α−Sr)。
    単体は銀白色の金属で、比重は2.63、融点は777℃、沸点は1382℃。
    空気中では灰白色の酸化物被膜を生じる。水とは激しく反応し水酸化ストロンチウムを生成する。
    人工放射性同位体のストロンチウム90は、核分裂生成物の主成分の一つ。
    科学的な性質はカルシウムに似ていて水に溶けやすく、動物体に入ると骨に沈着し造血機能をおかす。
    利用例 : 炎色反応は深紅色で、花火に使用。工業的に製造されてβ(ベータ)線源に利用される。
     警戒用信号灯、テレビのブラウン管、コンピュータのディスプレイに使用するガラスの原料(SrCO3)、
     真空管の電子ゲッター、磁石、スピーカーなど。
スリーマイル島原発事故(すりーまいるとうげんぱつじこ)
    スリー・マイル・アイランド原発事故。別称「TMI(Three Mile Island)事故」。
    1979(昭和54)年3月28日、アメリカ合衆国東北部ペンシルベニア州の川の中州にある
    スリーマイル島原子力発電所の2号炉(加圧水型軽水炉:PWR、95.9万kW)で発生した
    米史上最悪の放射能漏れ原子力事故。
    旧ソ連のチェルノブイリ原発事故よりはるかに小さな炉心溶融(メルトダウン)事故だが、
    人類社会が経験した2度の大原発事故のうちの一つで、
    世界各国が原子力防災体制を強化拡充する契機となった。
    原子炉冷却材喪失事故(Loss Of Coolant Accident:LOCA)に分類され、
    想定された事故の規模を上回る過酷事故(Severe Accident)で、
    国際原子力事象評価尺度(INES)の「レベル5」に分類された。
    
    スリーマイル島原子力発電所。真ん中手前の二つのドームが原子炉建屋で、
    その隣の白い建物が制御室を含むタービン建屋である。奥に見える二基の塔状構造物は放熱塔。

     同炉の定格出力での運転中、蒸気発生器に水を送っていた二次冷却水の主給水ポンプが停止し、
    自動的に補助給水ポンプが起動したが、ポンプの出口弁が閉じていたため給水できず、
    非常用炉心冷却装置(ECCS)が自動作動したにもかかわらず、
    運転員の誤判断で同装置を手動停止したなどの機器故障や人為的ミス(誤操作)が重なった結果、
    炉心上部が露出し、炉心が溶融するというこれまでにない事故となった。
    事故が拡大した最大の要因は、一次冷却水が十分あると誤判断した運転員が
    ECCSを停止させたことだ。その結果、圧力容器内から冷却水が流失し、炉心の3分の2が露出する
    空焚(からだ)き状態になった。後の調査で炉心の半分が溶けていたことが分かった。
    非常事態が宣言され、付近の住民が避難し混乱に陥った。
    この事故で大気中に放出された放射性物質(放射性希ガスと放射性ヨウ素)は、
    希ガスが約93ペタ(1000兆)ベクレル(Bq)、ヨウ素が約0.56テラ(一兆)ベクレル程度。
    周辺住民の被曝線量は1mSv(ミリシーベルト)以下で、健康に与える影響はほとんどないとされる。
    だが、現在もなお原子炉内には広島型原爆数百個分のストロンチウムセシウムヨウ素が残っている。
    2号機の廃炉作業は2034年までかかる予定で、除染、廃炉費用は計18億ドル。
    1号機は事故後6年以上たってから再稼動した。
     放射線障害の発生はなかったと言えども、地球を汚したことは確かである。

    原発建設、30年ぶりに本格化=初の融資保証発表−米大統領
     オバマ米大統領は2010年2月16日、メリーランド州の職業訓練センターを訪れ、
    クリーンエネルギーによる雇用創出計画の一環として、
    ジョージア州の原子力発電所建設計画への融資保証を発表した。
    1979年のスリーマイル島事故後、原発の安全性と経済性への不安から、
    現在まで米国での原発の新規着工は止まっていたが、原発建設に政府の融資保証が
    供与されるのは初めてで、約30年ぶりに原発建設が本格化することになった。
    東芝や三菱重工業など日本の原子力関連企業の商機拡大につながる可能性もある。
     融資保証額は約83億ドル(約7400億円)で、
    電力大手サザンが計画しているボーグル原発に増設される2基の原子炉建設に対し供与される。
    原発建設には多額の費用が必要となるため、電力会社にとっては政府の融資保証を得ることが重要だ。
     原子炉は、東芝傘下の米ウェスチングハウスが設計したAP1000を採用、
    正式な操業認可を受けた後、2016年以降に稼働する予定。
    今回の原子炉建設に伴い3500人の雇用が創出され、完成後は800人の雇用が確保される見込み。
制御棒(せいぎょぼう) : 原子炉の連鎖反応を加減するために、炉の中に出し入れする棒。
    原発の炉心で中性子を吸収して核分裂反応を抑制し、出力を調整したり、運転を止めたりする装置で、
    形は棒状又は板状である。制御棒を燃料集合体の間に挿入すれば反応が抑制され、
    引き抜くと促進される。緊急時には、制御棒が自動的にすばやく差し込まれて、
    原子炉の運転を止めるのに使用される。
    中性子吸収材には核分裂により発生する中性子を吸収しやすいホウ素、カドミウム、
    ハフニウムなどが用いられる。ハフニウム製はホウ素の制御棒より高価だが、
    中性子を吸収し続けても効率が落ちず、長期間使用できる利点があるとされる。
世界の原発(せかいのげんぱつ) : 国際原子力機関(IAEA)によると、2010年1月現在で
    世界で稼働中の原子炉は437基にのぼる。うち最も多いのが米国で104基、フランスの59基、
    日本の54基が続く。2009年は世界の総電力量のうち約14%を原発でまかなった。
    商用原発は1954年、当時のソ連が世界で初めて建設し、各国で建設が相次いだが、
    1986年のチェルノブイリ(現ウクライナ)原発事故を機に、見直し機運が高まった。
    しかし、近年は電力需要の増加や地球温暖化対策などから、世界的に原発回帰の動きが起きていた。
順位 国名 合計出力
MW(e)
基数
アメリカ 100,747 104
フランス 63,260 59
日本 46,823 54
ロシア 21,743 31
韓国 17,705 20
イギリス 10,137 19
カナダ 12,569 18
インド 3,987 18
ドイツ 20,480 17
10 ウクライナ 13,107 15
11 中国 8,438 11
12 スウェーデン 9,036 10
13 スペイン 7,450
14 ベルギー 5,902
15 チェコ 3,678
16 スイス 3,238
17 フィンランド 2,696
17 ハンガリー 1,889
17 スロバキア 1,762
20 アルゼンチン 935
20 ブラジル 1,884
20 ブルガリア 1,906
20 メキシコ 1,300
20 パキスタン 425
20 ルーマニア 1,300
20 南アフリカ 1,800
27 アルメニア 375
27 オランダ 787
27 スロベニア 666
   365,725  431
稼働中の原子炉だけの数値。
合計出力はメガワット    
    参 : 日本の原発米国の原発、[YouTube](世界の原発ランキング)
セシウム137 : 137Cs。「死の灰」と呼ばれる放射性降下物の一つで、核分裂により新たに生まれる。
    原子力発電の燃料として使われるウランが核分裂した際に生じる放射性物質。
    ガンマ線を放射し、人体に取り込まれやすく、体内では消化器や筋肉に影響を与えて
    がんなどの原因となる。半減期は30年と長く、土壌粒子と結合しやすいため、
    農作物を通して体内被ばくの原因ともなる。1979年の米スリーマイル島原発事故や、
    1989年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故後も大気中から検出された。
     工藤章・京都大学名誉教授(現・吉備国際大政策マネジメント学部長)らの研究チームは、
    北極の氷塊中からごく微量のガンマ線を計測する独自の方法を開発し、
    1平方センチメートルあたり約0.005ミリベクレルまで検出制度を高め、
    広島、長崎に投下された原爆やビキニ水爆実験がもたらした核時代の「死の灰」を、
    北極の氷河から検出している。1960年代から始まったフランスと中国の核実験で生じた
    セシウム137の分析では、1メガトンあたりの換算で平均千ベクレルを計測し、
    アメリカのビキニ水爆に比べて1万倍にものぼり、
    きわめて放射線の強い死の灰をもたらしていたことが初めて明らかになった。
    こうした研究で、年代ごとに汚染が拡がり、地球を汚染させた証拠が永遠に残ることになった。
セミパラチンスク核実験場(セミパラチンスクかくじっけんじょう) : 旧ソ連最大の核実験場の一つであった。
    カザフ共和国(現カザフスタン)の北東部、セメイの西方150kmの草原地帯にあり、
    面積は約1万8500平方キロで四国とほぼ同じ。公表されているだけで1949年から1989年の
    40年間間に 大気中での111回の核実験の他、地上、地下で計456回の核実験が行われた。
    この結果、核実験場を中心とする広範囲な放射能汚染により、約160万人以上の周辺住人が
    被曝する結果となった。もっとも大きな被曝をうけた村の一つといわれるドロン村は、
    核実験場の境界から約60kmはなれていて1グレイ以上の被曝があった可能性がある。
    施設は最初の核実験からちょうど42年目にあたる1991年8月29日に正式に閉鎖された。
    放出された総エネルギーは、広島に投下された原爆の約1100個分に相当する。
    1965年に実験場南東部で行われた地下核実験では「原子の湖」と呼ばれる人造湖が形成された。
戦術核(せんじゅつかく) : 戦術核兵器(せんじゅつかくへいき)の略称。戦場での軍事目標攻撃用の核兵器
    戦場単位で通常兵器の延長線上での使用を想定した核兵器である。
    米ソ間の核軍縮協定などでは射程距離5500km以下のものが戦術核兵器であると定義され、
    戦略核兵器や、戦域核兵器(中距離核兵器)に対して射程距離が短い。
    空対地・地対空・地対空・地対地(SRBM)のミサイル及ロケット弾、航空機搭載の核爆弾、
    核砲弾、核地雷、核魚雷、核爆雷、中距離核ミサイルや陸上配備巡航ミサイルや核砲弾、
    戦術攻撃機(F16やA6など)搭載爆弾、水上艦艇搭載巡航ミサイル弾頭などが該当する。
戦略核(せんりゃくかく) : 戦略核兵器(せんりゃくかくへいき)の略称。戦略攻撃核兵器。
    敵対国の本土にある軍司令部や首都などへの攻撃を想定し、
    その国の戦争遂行能力の壊滅を目的とした核兵器のこと。一般的に戦術核兵器より威力が大きい。
    米ロの定義では、射程5500キロ以上の大陸間弾道ミサイル(ICBM)や
    潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、航続距離8千キロ以上の
    長距離戦略爆撃機(B52やB1、B2など)で射程600キロ以上の巡航ミサイルを運搬手段とする、
    破壊力の大きな長距離核兵器である。
即発臨界(そくはつりんかい) : 原子核分裂の反応によって生成される中性子には、
    原子核が分裂した直後に発生する即発中性子と、分裂後の原子核がベータ崩壊を起こすことによって
    二次的に発生する遅発中性子がある。即発中性子のみで臨界に達するのが即発臨界で、
    ウラン燃料の核分裂反応が急速に進み、出力が急上昇するので制御が難しく、
    出力の急上昇に伴い燃料が破損し、放射性物質が冷却水中に流出する危険がある。
    1999年のJCOの臨界事故も、発生直後に即発臨界になったとみられる。
第五福竜丸(だいごふくりゅうまる) : 第五福龍丸。1954年3月1日未明、米国の水爆実験によって
    発生した多量の放射性降下物(いわゆる死の灰)を浴びた静岡県焼津市の
    遠洋マグロ漁船の船名である。船についてはその後、保存運動が起き、
    東京都江東区の都立第五福竜丸展示館で保存・展示されている。
    無線長だった久保山愛吉さん(当時40歳)がこの半年後の9月23日に
    急性放射能症(血清肝炎)で死亡した。その後、肝臓がんなどで14人が死亡した。
     1954年3月1日、第五福竜丸は太平洋のマーシャル諸島近海において
    約1600km離れた地点で調査操業中にビキニ環礁で行われた米国の水爆実験に遭遇し、
    船体・船員・捕獲した魚類が放射性降下物に被爆した。
    実験当時、第五福竜丸は米国が設定した危険水域の外で操業していた。
    危険を察知して海域からの脱出を計ったが延縄の収容に時間がかかり、
    数時間に渡って放射性降下物の降灰を受け続けることとなり第五福竜丸の船員23名は全員被爆した。
    後に米国は危険水域を拡大、第五福竜丸以外にも危険区域内で多くの漁船が操業していたことが
    明らかとなった。この水爆実験で放射性降下物を浴びた漁船は数百隻にのぼるとみられ、
    被曝者は2万人を越えるとみられている。水爆の威力は広島に投下された原爆の1000倍とされる。
     予想以上に深刻な被害が発生した原因は、当初米国がこの爆弾の威力を4〜8Mtと見積もり、
    危険区域を狭く設定したことにある。爆弾の実際の威力はその予想を遥かに超える15Mtであった為、
    安全区域にいたはずの多くの人々が被曝することとなった。
     日米政府は総額200万ドル(当時で約7億2000万円)の見舞金支払いで政治決着した。
    この事件をきっかけに原水爆禁止運動が始まり、世界に広がった。 参 : ビキニ水爆実験
    
    <ビキニ水爆実験>死の灰浴びた? 第五海福丸乗組員死亡11人、がんで6人
     1954年に米国が太平洋のビキニ環礁で行った水爆実験で汚染された海域にいた
    高知県のマグロ漁船「第五海福丸」(157トン、24人乗り組み)の元船員で所在が判明した19人のうち、
    11人が既に死亡し、6人の死因ががんだったことが同県太平洋核実験被災支援センターと
    毎日新聞の調べで分かった。同実験での被ばく被害は「第五福竜丸」が有名だが、
    6回の実験では延べ約1000隻の日本の船が放射能に汚染されたマグロを投棄するなどしており、
    乗組員が被ばくした可能性がある。今回の調査について、同センターの山下正寿事務局長(66)は
    「放射線被害は明らか。国は実態解明と救済の検討を早急に始めるべきだ」と指摘している。
耐震指針(たいしんししん) : 「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の略称。
    原発の建築基準法にあたるもので、地震に対する安全性を検討する基準となる。
    国が1978(昭和53)年に策定したもので、原発周辺の活断層について評価対象を
    「5万年前以降に活動したもの」としていた。その後、1995(平成7)年の阪神大震災などを通じて
    進んだ地震研究の知見を取り入れて、2006(平成18)年9月に初めて全面的に改定してできたのが
    現在の新指針で、評価対象の活断層を「8万〜13万年前」まで拡大し、直下地震の規模の見直しや、
    周辺敷地で発生した地震記録に基づく新しい計算手法などが採り入れられるなど、基準が強化された。
     一律に強度を定めるのではなく、各原発ごとに、最も影響が大きそうな地震を想定し、
    例えば、志賀原発2号機では最大の揺れの想定が約1.2倍、
    柏崎刈羽原発では約3〜5倍引き上げられたように、想定よる揺れや、津波に耐えるように設計する。
    新指針では、極めてまれだが発生する可能性がある津波への備えとして
    「重大な影響を受ける恐れがないこと」とした。
    参 : 発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(内閣府原子力安全委員会)

    耐震指針の想定外=巨大地震、見直し不可欠に(2011.3.12、MSN産経ニュースより)
     国の原発耐震指針は、原発が直下地震や津波、火山災害などに襲われても
    安全性に深刻な影響が出ないよう求めている。だが、マグニチュード(M)8・8の東日本大震災は、
    東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)を直撃した新潟県中越沖地震(M6・8)を大きく上回った。
    今後、日本の原発は、想像を超える巨大地震を想定した安全対策の見直しが求められる。
     原発耐震指針は平成18年に改定。原発直下や周辺で起きる地震の規模を大きめに見積もることや、
    安全性に関わる機器の耐震基準を引き上げることなどが大きな変更点だった。
     しかし、東電福島第1原発(福島県)では、「止める」「冷やす」「閉じ込める」という
    原発の三大安全原則のうち「冷やす」は正常に機能しなかった。
    安全確保には、耐震指針の再見直しや、原発耐震性の確認を根本的にやり直すことが課題となる。
     わずか100年ほど前の三陸沖地震では38mの大津波が確認されているのに、
    自家発電機の燃料タンクを地上に設置していたことから、津波の影響で、
    これら12台全ての自家発電機が作動せずに大事故になったことは、人災以外の何物でもない。
    新指針に合わないと廃炉や補強、計画変更につながって、運転できなくなったり
    多額の費用がかかったりすることから、産業界から圧力があり、
    見直しを先延ばしする政治的な判断が働き、電力会社に有利な改正になっていたという。
    経済性に走らず、あくまでも安全性第一の技術を確立すべきで、
    甘い想定で原発震災が起きると、より経済的負担がかかってくる。
    車のようにスイッチを切れば、原子炉が直ちに停止するような装置ができない限り、
    原発は地球上からなくした方がよい。今回の事故で少なからずも地球を汚したことは確かなのだ。

脱原発の日 = 脱原発の日(別掲)
チェルノブイリ原発事故(ちぇるのぶいりげんぱつじこ) : 1986(昭和61)年4月26日
    1時23分(モスクワ時間)、旧ソビエト連邦ウクライナ共和国(現ウクライナ共和国)のキエフ市北方にある
    チェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた爆発事故で、無許可でタービン発電機の慣性回転を
    利用して電力を発生させる実験中、原子炉の自動停止装置、安全装置を遮断したうえ、
    制御棒をほとんど全部引き抜いたために出力が急上昇し、暴走状態となった。
    大量の蒸気が急激に発生して爆発、さらに水素爆発が起きて大量の放射性物質が放出され、
    大量の放射性降下物が欧州全域を汚染し、消火作業で被爆した約50人が死亡した。
    安全性が不足する設計ミスに人為的ミスが重なって大事故が起きたのである。
    この炉は、旧ソ連が独自に開発したRBMK(黒鉛減速軽水冷却沸騰水型)と呼ばれる
    出力100万KWの原子炉で、定期点検で出力を停止する途中に実験が行われ、
    その最中に爆発事故は起きた。わずか数秒の間に2度以上の大爆発が起き、原子炉は壊れ、
    核燃料はこなごなになってふき上げられた。千メートルから2千メートルもの上空に
    プルトニウムセシウム放射性ヨウ素(ヨウ素131)などが大量に放出され、吹き上げられた放射能は、
    希ガスを除き約5000万キューリーで、ウクライナ周辺やヨーロッパの各地を汚染し、
    一部は風に乗って日本にも達して地球全体に放射能が降った。
    事故では広島型原爆500発分の放射性物質が放出された。放射能が半分に減る期間(半減期)は、
    セシウムやストロンチウムで約30年で、プルトニウムに至っては2万4000年もかかる。
    立ち入り制限を解除するめどは立っていない。
    30キロメートル圏内には、定住者はいないはずだが、制限を無視して戻った約320人が住み、
    停止した1〜3号機の保守や森林火災防止のため7600人が働いている。
    チェルノブイリ原発周辺は、30キロメートルにわたって、人の住めないところとなり、
    約14万人が避難し、そのうちの約11万6千人は強制疎開であった。その後も広範囲で疎開が続き、
    計約40万人に増えた。1990年に至っても白ロシア共和国で100万人の避難をきめるなど、
    その影響は今も続いている。放射線被曝(ひばく)で50人近くが死亡、約4000人の子供が
    甲状腺がんを発病した。その他のがんによる将来の死亡数は1万人近くになると推定されている。

    事故を起こした4号炉はコンクリートで固められ、「石棺(せきかん)」と名づけられた。
    もしも風化によって「石棺」が崩壊すると、まだ残っているたくさんの放射能が放出され、
    再び汚染がひろがる危険性がある。事故による直後の死者(1986年)は、原発の運転員と
    消防隊の隊員たち31人だったが、数年、あるいは数十年もたってから、ガンなど
    さまざまな病気にかかる人が増えてきている。それが、放射能災害の恐ろしさである。
    事故後も1号炉〜3号炉の運転は続けられたが、原発は2000年12月、完全閉鎖された。

    事故の特別調査チームを率いたクルチャトフ原子力研究所(モスクワ)のアレキサンドル・ボロウォイ
    博士(67)が、事故から20年を前の2006年3月に、爆発した原子炉に残る大量の放射性の燃料の
    詳細を明らかにした。約150トンが高熱でドロドロに溶け、溶岩状の物質となって炉内に残っている。
    硬いが、もろく、粉塵となって飛散したり、地下にしみ出したりする二次汚染の恐れが出ている。
    事故のあった4号炉を鉄板とコンクリートで覆った「石棺」は老朽化が激しい。
    炉内は今でも放射能レベルが極めて高く容易に近づくことができない。
    石棺の壁はすき間が多く、雨水や結露水などが毎年4千立方メートルも内部に入り込んでいるという。
    ボロウォイ博士は「石棺の一部が壊れれば、再び放射性汚染が起きる危険が高い」と指摘している。
    ドーム形の「第2石棺」で覆う国際プロジェクトが2009年の完成に向け進み出している。
    参 : [YouTube](チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染)、A9

    ある種の肥料をまくと作物が放射能を吸収しにくいことが判り、
    汚染した麦は家畜のえさや種まきに回し、菜種油はディーゼル油にして車の燃料にし、
    肉牛は出荷前に60日間、きれいなえさで汚染度を下げるというが、
    それでなくても地球全体の放射能汚染が進んでいるというのに、こんな牛肉の輸入は絶対反対だ!!
    1954年に米国の水爆実験で第五福竜丸の乗組員が被曝した事件で、
    米政府は日本に慰謝料7億2千万円を支払って政治決着させたが、
    冷戦下の旧ソ連は1986年のチェルノブイリ原発事故で、
    放射能汚染を受けた西側諸国の酪農家に何の賠償もしなかったのだ。

地下核実験(ちかかくじっけん) : 地表面下の様々な深度で行われる核実験である。
    数十〜数百メートルという深い縦穴を掘ったり、山の斜面に水平にトンネルを掘ったりして、
    その中で核弾頭を爆発させる実験で、放射能が地上に漏れないようにするために、
    穴にはコンクリートで頑丈に蓋をする。爆発の威力を確かめるために行うが、
    地上で実験すれば、放射性物質が広がり、人の健康を損ねる恐れがあることから、
    1963(昭和38)年に発効した部分的核実験禁止条約(PTBT)で地下以外の核実験が禁止されため、
    核実験は地下で行うことになった。実験の手法は、冷戦時に米国及びソ連にて確立され、
    核爆発が完全に地中で収束した場合には、放射性降下物は殆ど発生しない。
    しかし爆発時の振動によって地面に穴が空いてしまった場合には、
    そこから大量の放射性降下物が発生してしまう。
    地下核実験では、その核出力と爆弾の構造に応じた地震波が発生するが、
    多くの場合で地殻の陥没によるクレーターも生成される。1976(昭和51)年には、地下核実験の
    最大核出力を150キロトンとする地下核実験制限条約(TTBT)が米国とソ連の間で締結された。
     秘密の核実験をされた場合の知る手掛かりは、核爆発によって生じる
    @地震(地震波)A放射性物質B大気の振動C水中音波の4つの方法があるが、
    地下核実験の場合BCはあまり生じないとされ、@Aが焦点になる。
     国連総会で1996年にあらゆる核実験を禁ずる包括的核実験禁止条約(CTBT)が採択されたが・・・

    北朝鮮が地下核実験、2006年以来2度目…「成功」と発表
     北朝鮮の朝鮮中央通信は2009年5月25日、「地下核実験を成功裏に実施した」と報じた。
     北朝鮮の核実験は2006年10月に続き、2度目となる。韓国青瓦台(大統領府)によると、
    25日午前9時54分、北朝鮮北東部の咸鏡北道豊渓里(プンゲリ)を震源とする
    マグニチュード(M)4.5人工的な揺れが確認された。
    李明博(イミョンバク)大統領は、北朝鮮が核実験を行った可能性が高いとして、
    同日午後に国家安全保障会議を緊急招集するよう指示した。
     北朝鮮は、追加的な核実験を行わないよう求めた国連安全保障理事会決議を無視して
    核実験を行ったもので、国連安保理で北朝鮮に対する制裁論議が高まるのは確実だ。
    朝鮮中央通信は、「爆発力などにおいて、新しく高い段階で行われた。
    実験結果で核兵器の威力をより高め、核技術を発展させる」としており、
    2006年10月に行われた前回の核実験を上回る規模であることを示唆した。
     北朝鮮は2009年4月、人工衛星を打ち上げるとの名目で長距離弾道ミサイルを発射。
    これを非難する国連安保理の議長声明などに反発し、同月29日、
    外務省報道官の声明で核実験を行うと予告していた。この時は、実施時期を特定していなかった。
    北朝鮮は核問題を扱う6か国協議のボイコットも宣言している。
     強硬姿勢をエスカレートさせることで、米国を交渉に引きずり出す狙いがある。
    同時に、ミサイルに搭載可能な「使える」核爆弾を本気で保有する決意を示している。
     地下核実験には高価な計測機器(実験時に溶融するため、使い捨てとなる)の
    費用を含め2000万ドル(約18億円)もかかるとされているのに、
    北朝鮮はこの金を国民の食料や福祉に使ってほしいね。
    全世界から猛抗議されてまで、どこの国を攻撃するのに実験を重ねると言うんだ!

チャイナ・シンドローム = チャイナ・シンドローム(別掲)
中間貯蔵施設(ちゅうかんちょぞうしせつ) : 使用済み核燃料中間貯蔵施設の略称で、
    使用済核燃料を再処理工場で再処理するまでの間、
    一時的に貯蔵・管理する鉄筋コンクリートでつくられた丈夫な倉庫のような施設である。
     原子炉から取り出された使用済燃料は一定期間、発電所内の貯蔵プールで貯蔵された後、
    頑丈な容器(キャスク)に入れられ、中間貯蔵施設へ運ばれてくる。
     プルサーマル発電では、再処理された使用済み核燃料を発電に利用する。
    全国の電子力発電所からは毎年約1000トンの使用済み核燃料が生じており、
    現在は全国55カ所の原発敷地内にある貯蔵プールで保管している。
    しかし、貯蔵プールは2007年3月現在、約7割が埋まっており、
    今後、中間貯蔵施設が数カ所必要とされている。
    東京電力が青森県むつ市に計画する施設は計5000〜6000トンを貯蔵できるという。
    2010年の創業開始を目指している。
中国の核実験(ちゅうごくのかくじっけん) : 1960年代初頭に設立した
    第9学会(北西核兵器研究設計学会)により、核兵器の開発が進められた。
    1964(昭和39)年以来、ロプノール湖は核実験場として使われた。
    1996(平成8)年までに核実験が45回に渡り実施された。
    それらのうち1980(昭和55)年までに行なわれた核実験は、地下核実験ではなく地上で爆発させた。
    そのため、新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)の広い範囲の土地が放射能で汚染され、
    現地に住む人間も被害を受けた。
    参 : [YouTube](中国の核実験)、[YouTube](中国、初の水爆・核実験)
    
    米科学誌、中国・核実験でウイグル人数十万人が死亡した可能性
     米国で最も人気の高い科学雑誌「サイエンティフィック・アメリカン」2009年7月号が、
    中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で中国当局が実施した40数回の核爆発実験の放射能により、
    数十万ものウイグル住民が死亡した可能性があるとする記事を掲載した。
     記事は、ウイグル人医師のアニワル・トヒティ氏と札幌医科大教授で物理学者の高田純氏の
    合同調査結果を基礎に書かれたもの。高田教授は同自治区のシルクロード紀行番組を長年、
    放映したNHKの核実験無視の姿勢を非難している。
     同誌7月号は、「中国の核実験は多数の人を殺し、次世代を運命づけたのか」
    「中国が40年にわたり核爆弾を爆発させたことで、
    放射能の雲は住民の上を覆った」という見出しの記事を掲載した。
     同記事はまず、トヒティ医師が新疆ウイグル自治区で1973(昭和48)年の子供時代、
    3日間、空が黒くなり、土砂のような雨が降ったのを目撃し、
    後年、それが核爆発の結果だったことを認識したと指摘。
    その上で「シルクロード上のロプノル実験場における、1964年から1996年までの
    40数回の核爆発による放射能の結果、数十万の住民が死んだ可能性がある」と報じた。
     記事はさらに、現在、英国やトルコを拠点にウイグル人の放射能被害を研究するトヒティ医師が、
    高田教授と「ロプノル・プロジェクト」という共同研究 を進めているとし、
    高田教授の「新疆ウイグル地区で放射能汚染のために19万4千人が死亡し、
    120万人が白血病などを病んだ」という算定を伝えた。
     「サイエンティフィック・アメリカン」は米国だけでなく国際的評価が高く、
    同誌が今回、事実として正面から伝えた「シルクロードの核汚染」は、
    それを否定してきた中国政府にも厳しい詰問となる。
     また、高田教授はNHKが長年、シルクロードの番組を放映し、
    多数の日本人観光客に核汚染が明白な地域を訪問させながら、
    核爆発については一切、沈黙してきたとして今年4月、公開質問状の形で抗議した。
     NHK側は、「(放射能汚染についての)認識は放送当時も現在も持っていない」と回答したというが、
    今回の米国の科学雑誌の記事は、高田教授側の研究の成果や意見に国際的認知を与えたこととなる。
    日本の悲惨な被爆と放射能汚染を熟知している中国が、漢民族ではなくウイグル族の居住地で、
    しかも地上での核実験を40数回行ったということは、チベット人の皆殺しを企てたのと同じく、
    目の上のたんこぶのウイグル人の大量粛清をもくろんでいたのではなかろうか。
    それらの放射能は北京はもとより、偏西風に乗って日本にも降り注いでいたかもしれない。
    野蛮なことをやるもんだ。日本の南京虐殺を誹謗する資格はない!
    チェルノブイリ原発事故が起きてからも10年間にわたり核実験を行っていたのである。

テクネチウム(tecnetium) : 周期表第7族に属し、マンガン族に属する遷移元素の一つで固体金属。
    原子番号43。元素記号Tc。分子量99。比重11.5。融点2200℃。
    1937(昭和12)年にC.ペリエとE.セグレが加速器(cyclotron:サイクロトロン)内部で
    重陽子(水素の原子核)が衝突したモリブデン製の偏向板を分析し、マンガンとレニウムを取り出し、
    その存在を確認した最初の人工元素(新元素)で、質量数90から110までの
    同位体はすべて放射性である。人工的に作られた初の元素であることから
    人工を意味するギリシア語(technekos)にちなんで「テクネチウム」と名付けられた。
    天然のテクネチウムとしては、ウラン鉱の自発核分裂生成物として微量が検出されている。
    宇宙上では、天体にテクネチウムが存在することがスペクトル線によって確認されている。
    テクネチウム98やテクネチウム99mなどの同位体がある。医療用のテクネチウム99mは、
    元の量の半分になる半減期が約6時間と、ほかの同位体よりもずっと短い。医用トレーサーとして
    用いられ、腎臓の機能のほか、がんの転移や、脳の働きを診る検査でも利用されている。
    質量数99のものはウランの自発核分裂で生成され、半減期は21万2000年である。
    安定な同位体の存在しない元素だが、その中で最も安定した同位体の質量数は98である。
    銀灰色の金属でβ線の標準線源として用いられ、半減期は約420万年である。
    湿った空気中で徐々に酸化皮膜に覆われるが、400℃以上に熱すると酸化テクネチウム(Z)を生じる。
    フッ化水素酸、塩酸に不溶だが、硝酸、濃硫酸に溶ける。
    酸化数U、V、W、Y、Zの化合物が知られる。99Tcはβ線の標準線源として用いられる。

    検査で子ども過剰被曝(2011.9.2、朝日新聞より)
     甲府市立甲府病院(小沢克良(かつら)院長)の放射性物質(放射性同位元素)を使った検査で、
    学会などが勧告する基準を超える同位元素が投与され、
    少なくとも子ども84人が過剰に内部被曝(ひばく)していたことがわかった。
    同病院は1日、会見で、「病院のチェック態勢が不十分だった。本来、被爆をなるべく少なくすることが
    病院の使命であるにもかかわらず、多大なご迷惑をおかけしたことをお詫び致します」と謝罪した。
    病院によると、問題は放射性物質「テクネチウム」を含む検査薬を静脈注射して行う検査で起きた。
     1999年から今年までにこの検査を受けた15歳以下の子どもに145人のうち、記録があったのは
    95人分。うち84人が日本核医学会などの推奨基準を超える量のテクネチウムを投与された。
    11人については過剰ではないと病院が判断した。残り50人は記録がなかった。
     過剰投与された子どもたちの全身の内部被曝線量を算出すると、生涯の推計で
    平均約30ミリシーベルト。複数回の検査の合計で、100ミリシーベルトを超えた子が5人いた。
     全身の被曝線量が100ミリシーベルトを超えると成人でもがんのリスクが高まる恐れがある。
    子どもは放射線の健康影響を3倍以上受けやすい。
     テクネチウムの半減期は約6時間と短いが、駐車で体内に入れるため完全に消えるまで被爆が続く。
    しかも放出される放射線は比較的透過力が強い。
     検査を担当していた男性放射線技師(54)は、基準を超す量を投与した理由として、
    「子どもはじっとしていられないので、時間の短縮や画像の質を高めるためだった」と説明しているが、
    じっとしている子どももいるし、じっとしない子どもは注意したりなだめたりすればよいことで、
    量を増やしたからといって質のよい画質が得られることはないとのことではないか。
    投与量は医師から受けずに独断で決めていたほか、
    実際に使った投与量を保険で認められた量に改ざんしていたからには、犯罪の臭いがする。
    また、親らへの連絡に4カ月もかかったことについて、
    院長らは「この結果を得るのに時間がかかったため」と説明しているが、
    裁判での審議でもあるまいし、1週間もあれば十分調査できるではないか。

内部被曝(ないぶひばく) → 被曝
日本原子力産業協会(にほんげんしりょくさんぎょうきょうかい)
    「原産協会」は略称で、正式名は「社団法人日本原子力産業協会」である。
    正力松太郎・初代原子力委員長の呼びかけをきっかけに、
    1956(昭和31)年3月に「日本原子力産業会議」として設立された民間唯一の原子力総合団体で、
    企業や団体、研究機関など約800の組織で構成し、
    原子力開発に対する国民の理解増進や政策協力などを目的としている。
     2006(平成18)年4月、日本原子力産業会議が創立50周年を迎えたのを期に改組し、
    「自ら戦略的に行動する団体」として、名称を変更、再出発した
     原産協会は、わが国のエネルギー問題における原子力利用の重要性を踏まえ、
    国民的立場に立って原子力の平和利用を進めるとの産業界の総意に基づき、
    多岐にわたる民間産業界の中核として、直面する課題の解決に主体的に行動することを
    目的とする公益法人で、政府の行う原子力開発利用計画の策定と政策の推進に協力し、
    原子力の平和利用を促進することによって、
    わが国の国民経済と福祉社会の健全な発展向上に資することを目指している。
    参 : 日本の原発日本原子力産業協会(HP)
日本原子力発電株式会社(にほんげんしりょくはつでんかぶしきがいしゃ、JAPC) : 原電(げんでん)
    茨城県東海村と福井県敦賀市に原子力発電所を持つ卸電気事業者。設立は1957(昭和32)年。
    東海村の東海発電所は日本最初の商業用原子炉である。 関連企業に、
    原電事業株式会社、原電ビジネスサービス株式会社、原電情報システム株式会社がある。
    何故か2006年8月6日現在、日本原子力発電HP(http://www.japc.co.jp/)は閉鎖されている。
    参 : 東海発電所原電事業株式会社原電ビジネスサービス株式会社原電情報システム株式会社
日本原水爆被害者団体協議会(にほんげんすいばくひがいしゃだんたいきょうぎかい) : 日本被団協。
    1956年8月10日に長崎で結成され、広島・長崎に対するアメリカの原爆投下によって被害を受けた
    市民で構成されている各都道府県にある被爆者の団体の全国組織で、本部は東京都港区にある。
    核兵器の廃絶と原爆被害への国家補償を訴えてきた。
    被爆の惨状を伝えるための「語り部」活動や原爆展の開催も国内外で続けている。
    こうした活動は国際的にも認められ、2005年のノーベル平和賞の有力候補にあがった。
    日本被団協に加盟するのは45団体で計62496人。
    被爆者健康手帳を持つ259556人(2006年3月末現在)のうち24%、
    広島、長崎両県を除くと47%に当たる。被爆者が少ない地域ほど、
    被爆者団体が相互の助け合いや平和運動の拠点となっているのがうかがえる。
    
    日本原水爆被害者団体協議会の結成から半世紀を前の2006年に、中国新聞社は、
    全国48の被爆者団体の代表者らに組織実態や展望についてアンケートを行った。
    ほとんどの団体が被爆体験の証言活動などに努める一方、
    活動の後継者となる二世の組織がない団体は43に上っている。会員の高齢化から、
    鳥取県原爆被害者協議会が「解散を検討している」など、被爆者運動は岐路に差し掛かっている。
     朝日新聞社の44団体へのアンケートでも、3割余りが近い将来の解散の可能性を
    懸念していると答えた。被爆者の高齢化や人材不足、財政難などが背景にある。
    核廃絶と援護策の充実を訴えてきた各地のよりどころを失いかねないと不安を募らせている。
    参 : 日本被団協(HP)、原水爆禁止日本国民会議(原水禁HP)、
        原水爆禁止日本協議会(日本原水協HP)、広島平和記念資料館(WEB SITE)
日本の原発(にほんのげんぱつ) : 日本の原子力発電所は現在稼働中17カ所、
    54基が商用運転中で、日本の電力の約25%をまかなっている。
    2010年3月で日本原子力発電敦賀原発1号機(福井県)が運転40年になる。
    建設・準備中が14基あり、稼動していない発電所は10カ所、そのうち計画中が3カ所、
    計画断念・凍結が5カ所、解体中が1カ所となっている。日本の発電の内訳は
    火力(66%)、原子力(25.4%)、水力(7.9%)、太陽光、風力など(0.7%)の順である。
    国は原発の比率を40%に上げたい考えである。 参 : 世界の原発米国の原発
    
    日本の原発(経済産業省の2008年版エネルギー白書より)
    発電コスト : 運転年数40年とした国の試算で1キロワット時当たり5.9円。LNGの6.4円、
     石炭の6.5円、水力の13.6円などと比べ最も安い電源とされる。
     だが、米国の原発では1円台と低く、日本の高コスト構造は課題である。
     さらに、電気事業連合会は、使用済み核燃料の再処理や放射性廃棄物の最終処分など
     発電後にかかる「バックエンド費用」について18兆9100億円と試算した。これを発電コストに
     上乗せすると6円台になり、必ずしも経済性に優れているわけではないと指摘する声も多い。
     特に、使用済み燃料の再処理で生じる高レベル放射性廃棄物の最終処分は約1万年もかかり、
     最終的なコスト算定は難しい。「国策民営」の日本の原子力。
     今後、国と民間がどう費用負担するかなど、経済性をめぐる論議が活発化しそうである。
    参 : 上関原発建設計画A9
    
    原発の電気は「低廉」ではない
    (朝日新聞2010.1.30「声」より、宮崎県綾町のパン製造販売・小川 渉さん(61歳)の投稿文紹介)
     26日の「声」欄に「原発は必要不可欠な電源」という中国電力の見解が掲載された。
    原発の最も深刻な問題は、破局にいたる大事故のリスクだが、
    ここでは電力会社が強調する「原発の経済性」に絞って反論したい。
     発電単価を火力や水力と比較した数値では、原発は安価に見える。しかし、以前より
    専門家も指摘しているように、実は見せかけである。設備の耐用年数を現実より長くしたり、
    余剰電力を消費する揚水発電ダム建設費を入れなかったり、都合よく数字合わせをした結果だ。
     素人でも容易に想像できるのは、使用済み核燃料の再処理に関する費用が膨大になることだ。
    「兆」単位の金額を投入し、無理に無理を重ねても稼働できない青森・六ケ所再処理工場はその象徴だ。
    高レベル放射性廃棄物処分や廃炉の費用も、当然発電コストだが、
    不確実なことが多すぎて実質計算不能。
     さらに、反対世論への対策費や、無理を通すために「電源立地地域対策交付金」も必要となる。
    いずれにしても、原発が生み出すのは、決して「低廉な電気」ではない。
     「発電時に二酸化炭素を出さない」を金科玉条にして、原発を推進するのは、
    「木を見て森を見ない」議論の典型だろう。
     我が家は老夫婦2人しか住んでいなく、オール電化しているのに冬季は月に3万円前後の
    電気料金がかかる。なるべく安くと、午後11時から午前8時の割引時間帯に電気器具を
    用いることにしたからか、昨年の3万円以上から今年は3万円を少し切った。
    これというのも中国電力が上関原発建設計画で巨額の交付金や対策費などで無駄金を使い、
    これらにかかったコストを電気料金に上乗せしていることも一因だと思う。
    ソーラーや風力発電などの普及で、電力需要は減る一方で、
    国民のほとんどが反対している危険な原子力発電所の設置になぜこだわるのだろうか。
    電力会社は、危険な原子力をクリーンさだけで売り物にしているに過ぎない。
    巨額の交付金で建設候補地という魚を釣り上げ、原子力政策を進める国の行政も問題で、
    私たちの何千億円もの血税をこんなところに勝手に使うことは許されない。
    高レベル放射性廃棄物処分などの費用もかなりの額になるうえ、
    原子力発電の原子炉などの寿命は約40年が目安で、その時の廃炉作業に
    1基約550億円もの費用がかかり、この費用も電気代に織り込まれることになるのである。

    生態系を崩壊する原発推進政策
    (朝日新聞2010.10.22「声」より山口県柳井市の団体代表・竹重 登美子さん(77歳)の投稿文紹介)
     名古屋市で2010年10月18日、国連地球生きもの会議の
    本会合・生物多様性条約第10回締約国会議が始まった。
     地球上では、生きものどうしのつながり、
    生きものと環境との間のつながりが、過去から未来へ展開している。
    しかし、現在、人間によって至る所でこれらの連鎖が壊れ、人間はじわじわと己の首をしめている。
     例えばオオカミが絶滅したことにより猿や鹿やイノシシが増え、農産物が荒らされる。
    またミツバチが激減したことで農産物の受粉が出来ない事態が起きている。
    ミツバチが激減した真相は不明だが、自然環境の変化や農薬の影響などを指摘する関係者もいる。
     地球温暖化も人間活動により地球のサイクルが狂った結果だと思う。
    民主党政権は原発建設を推進しているが、「発電時にCO二酸化炭素)を出さない」というだけで、
    原発は決して脱温暖化にはならない。構造的に冷却水が必要なため、海岸を埋め立てて自然を
    破壊したり、大量の温排水を海に流したりして、海の生物の多様性を失わせ、温暖化を加速させる。
     そのうえ、ひとたび事故が起きれば、大気中に放射能がまき散らされる。
    チェルノブイリ原発事故による放射能汚染被害は、広島原爆の約600倍ともいわれている。
    さらに、原子力事故による放射能汚染は、事故がおきてから何年にもわたって続き、
    生きものの遺伝子を傷つけたり、甲状腺がんなど人の病を多発させたりしている。
    生物多様性の保存は原発と決して無縁ではない。
     民主党政権はこれらを直視し、原発の積極的推進を見直すべきである。
    経済最優先よりも、地球全体の保全を最優先すべきである。
     日本唯一のトキにしても、強い農薬に汚染された田んぼのドジョウやカエルを食べたことから、
    臓器が汚染されたり、卵がかえらなくなったりして絶滅してしまったのだ。
    我が山口県の八代のナベヅルにしても同様な要因で激減している。
    保護地だけ無農薬にしただけではだめで、飛来する場所すべてを
    無農薬の田畑にしなくてはならないために幅広い地域住民の協力なしではナベヅルが増えることはない。
    いずれか人類も、大気汚染、農薬や放射能などの体内蓄積により同じ運命をたどることでしょう。

    東日本大震災、原子力政策の転換点<60年長期運転、見直しも>
    (2010.3.14、@nifty「産経新聞」ニュースより)
     東日本大震災で東京電力の福島第1原子力発電所などが受けた深刻な被害は、
    日本の原子力政策の全面的な見直しを迫るものだ。耐震性だけでなく津波も念頭に置いた対応策を
    早急に具体化する必要がある。一連のトラブルで不安が高まれば今後の原発建設計画にも
    大きな影響を及ぼすとみられ、電力供給の主役を担う原子力の信頼回復に向けた取り組みは急務だ。
     東電の小森明生常務は12日、耐震基準の妥当性について
    「見直さなければいけないと、真摯(しんし)にとらえている」と話した。
    今回の震災では東電が福島第1と第2の計7基が停止し、東北電力の女川原発でも3基がストップ。
    特に深刻な福島原発は、想定外だった津波による被害が死活的問題として浮上した。
     両社に限らず海沿いに立地してきた全国の原発の安全性に警鐘を鳴らすものでもある。
     平成7年の阪神淡路大震災や柏崎・刈羽原発が被災した19年の新潟県中越沖地震などが
    起こるたびに、国は耐震基準を引き上げてきたが、
    津波を想定した新たな安全対策を早急に具体化する必要がある。
     今回の被災は、原発の立地政策にも深刻な打撃を与えかねない。
     政府は、昨年6月に策定したエネルギー基本計画で原発推進を明記したが、
    新たに建設場所を決めることは周辺住民の不安を取り除かない限り、極めて困難になる。
     電力各社がすでに計画を決めたり建設を進めている原発は、東電・福島第1原発の7、8号機や
    中国電力・上関原発の1、2号機、北海道電力・泊原発3号機など全国に15基。
    これらに対して計画見直しや変更が求められる可能性もある。
     新設とは別に、電力各社は古い原発を当初の想定よりも長い期間運転して有効活用する方策を推進。
    例えば日本原子力発電・敦賀原発1号機、関西電力・美浜原発1号機も長期運転を決めている。
     被災した福島第1原発1号機も長期運転を計画していた。昭和46年3月に運転を開始し、
    寿命は30〜40年とされた。だが、部品の劣化などを診断した結果、必要な点検項目を設けるなどの
    措置を取れば60年に延長できると判断。地元自治体の容認を受けて国が2月に
    計画を認可したばかりだった。今後は各社の長期運転についても新設と同様に逆風が吹くことになる。
     ただ、原子力に代わる大きなエネルギー源は見あたらない。
    期待される太陽光発電は、発電量が小さく稼働が天候に左右されるデメリットがある。
    風力発電も風況の良い立地場所が限られるなど課題は多い。
     さしあたり、休眠中の古い火力発電所の再稼働などでしのぐ事態も出てきそうだが、
    燃料の石油は、産油国の不安定な政情から常に供給途絶の危機や価格高騰にさらされる。
     2度の石油危機を経て地球温暖化への対応も加わり、脱石油と原子力、クリーンエネルギー
    導入拡大を中心とするエネルギー政策を進めてきた日本の戦略は、大きな岐路に立たされている。
     東電は耐震基準の妥当性について「見直さなければいけない」と言っているが、地震が多く、
    しかもリアス式海岸で津波が大幅に増幅されるような危険な場所に危険な原発を設置しておきながら、
    予備発電機の石油タンクを外部にさらすなど、見直し以前の計画・設計段階からの不備があったのだ。
    原発に頼り過ぎたことから、事故で原発が停止すると代替設備がなくて通常の電力供給は出来なくなる。
    とどのつまりは計画停電などで首都圏の交通は大混乱となり、
    東京都民や対象地域の住民らからの困惑の声が広がることになった。
    停電の実施も直前になって変更するなど「二転三転ぶりには、怒りを通り越して、呆れてしまう」と
    苦情を呈されるような体たらくさをさらけ出している。全面補修や新たな設備投資には、
    税の負担や電力料金への上乗せが、地域住民に重くのしかかってくる。
    また、漏れた量は少ないとしても、放射性物質のセシウムなどで地球を汚したことは確かだ。

    「危険な原発は、想定外まで想定して立地計画・設備設計をせよ!」
    新開発と省エネでノーモア原子力
    (朝日新聞2011.3.18「声」より福岡市早良区の吾郷 慶一さん(86歳)の投稿文紹介)
     世の中には、どんなに大丈夫と思っても、とんでもない結果を招くことがある。
    原子力発電所のように、放射能を幾重にも厳重に封じ込めることができるといわれた仕組みでも、
    巨大地震にはかなわない。少々の震度では平気だと専門家たちは考えていたようだが、
    そうはいかなかった。マグニチュード9.0は想定外だったとは言わせない。
     今をおいて国の原発政策を大転換する機会はない。
    いくら小手先の改善策を採ってもその場しのぎ。耐震構造を完璧にするのは地震国では不可能だ。
     ではどうするか。方法はいくつもある。太陽、風力、地熱、潮力など
    自然エネルギーの増強に総力を挙げる一方、企業も家庭も省エネに今まで以上に知恵を絞る。
    放射性廃棄物の処理に悩む時間と金も浮く。スリーマイルチェルノブイル
    後遺症から抜け出すのにどれだけ時間がかかったか、考えてみたらいい。
     人命重視を本当に思うなら、すぐにでもできることではないか。
    そこに踏み込んでこそ、放射能の洗礼を受けた日本人が「ノーモア原子力」の先頭に立てる。
     想定外の巨大地震の他、戦闘機や飛行機の墜落、隕石の落下などの想定できるものがあるからには、
    危険な原子力は用いるべきではない。今後永遠に「ノーモア原子力」でよい。
    特に上関原発は、近くに戦闘機の発着の多い米軍岩国基地があるし、
    北朝鮮からも近いことから、真っ先にミサイル攻撃を受けそうだ。
    そうなれば原子炉の誘爆で西日本一帯で水道の水も飲めず、汚染地域で採れた
    農作物や牛乳・卵なども口にすることができなくなり、日常生活が破壊されることになる。
    国や専門家は漏れた放射性物質は人体に影響するものではないと言っているが、
    原発事故が起きるたびに地球を汚染していることだけは確かなことだ。

    東日本大震災: 余震震度6強 原発のもろさ再び露呈(2011.4.9、毎日新聞より)
     2011年4月7日深夜に最大震度6強を観測した東日本大震災の余震で、
    北海道から関東の原発は大きな影響を受けた。一部の原発で外部からの電力供給を断たれたほか、
    外部電力の復旧後も非常用電源(ディーゼル発電機)が故障した。
    今のところ、東京電力福島第1原発(福島県)のような深刻な事故にいたっていないが、
    今後もマグニチュード7級の余震が起こる恐れがあり、
    経済産業省原子力安全・保安院は「安全策をもっと担保する必要がある」と指摘する。
    地震国・日本で、原発の電力確保が「綱渡り」であることが改めて浮き彫りになった。
    女川、東通、六ケ所再処理工場で電源喪失
     東北電力東通(ひがしどおり)原発(青森県)は、7日午後11時32分の余震発生直後、
    県内の広範囲にわたる停電の影響などで、2系統あった外部からの送電が止まった。
    直後に非常用ディーゼル発電機1台が起動し、使用済み核燃料プールの冷却は維持された。
    8日午前3時半には、外部電源1系統が復旧した。
    定期点検中で運転しておらず、外部に放射性物質は漏えいしていない。
     ところが同午後2時前、運転中の非常用ディーゼル発電機から軽油が漏れ出して故障。
    全部で2台備えているが、別の1台は検査で使えない。
    今後、再び地震による停電などで外部電源が遮断されれば、電源車で対応するしかないという。
     東北電力女川原発(宮城県)は余震直後、停電のため3系統ある外部からの送電のうち
    2系統が止まった。1〜3号機は3月11日の震災後、運転していなかった。
    1系統残ったが、強い揺れで使用済み核燃料プールの計器が誤作動して自動停止し、
    一時、プールの冷却ができなくなった。結局、機器に損傷はなく、約1時間後、手動で冷却を再開した。
     しかし、原子力安全・保安院によると、女川原発1号機の非常用ディーゼル発電機2台のうち
    1台が4月1日の点検で故障していたことも判明。不安要因をぬぐい去ることができずにいる。
     震災で福島第1原発は、非常用を含む全電源が喪失し、炉心溶融や水素爆発、
    プールの温度上昇など深刻な事態を招いた。海江田万里経産相は3月30日、
    各電力会社に原発や原子力施設が全電源を喪失する事故を想定した緊急対策の策定を指示した。
    非常電源車の配備や訓練の実施などを盛り込み、今月中に報告するよう求めている。
     福島第1原発のような事故は免れたが、住田健二・大阪大名誉教授(原子炉工学)は
    「(東通の非常用ディーゼル発電機の故障は)あってはならない。
    一方、非常用ディーゼル発電機は、うまく起動しないことが多く不安定な電源だ。
    装置を複数準備するだけではなく、異なる種類の対策を講じることが必要だ」と指摘する。
     内閣府原子力安全委員会の代谷誠治委員は8日の会見で、
    「当面は、経産相が指示した追加対策で対応する。
    しかし、必要があれば、原発の安全性を判断する国の安全審査指針を見直したい」と述べた。
    「プールの弱点」、明白に
     一方、女川原発では、使用済み燃料プールが強く揺れ、水が端からあふれて建屋内にこぼれ出た。
    漏れた水は、1号機2.3リットル▽2号機3.8リットル▽3号機1.8リットルで、
    放射能量は817〜5410ベクレル。幸い、国に報告が求められる基準値(370万ベクレル)を下回った。
     地震に伴う水漏れは過去にも発生した。
     07年の新潟県中越沖地震では、東京電力柏崎刈羽原発で、地震の揺れによって、
    使用済み核燃料プールの水がこぼれた。震度6強の強い揺れで、
    地震動とプールの水が共振して揺れが拡大する「スロッシング現象」が起きたとされる。
    その結果1、5、6号機のプールから水がこぼれ、
    近くにいた作業員にかかったほか、6号機では、その水が外部へ漏れた。
     福島第1原発の4号機では水素爆発が発生し、
    放射性物質が外部に広がったが、プールが原因となった。
     NPO法人「原子力資料情報室」(東京)の伴英幸共同代表は、
    「プールが原発の弱点になることが明らかになった。もし原発を続けるのであれば、
    プール自体をいかに閉じ込めるか検討することが必要だ」と指摘。
     気象庁が8日、「今後もマグニチュード7級の余震はありうる」と予測したことを踏まえ、
    伴さんは「福島第1原発以外の原発も危うい状況におかれていることを認識すべきだ」と訴える。
    防災指針、見直しへ
     内閣府原子力安全委員会は8日、東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発の事故を踏まえ、
    原子力事故の際の防災指針を見直すことを明らかにした。
     現指針は、原発の場合、防災対策を重点的に実施すべき地域(EPZ)として、
    半径8〜10キロと規定しており、20キロ以内を避難指示とした現状に合わないため。
     地震国・日本で、原発の電力確保が「綱渡り」であることが改めて浮き彫りになったからには、
    原発は安全が確保されるまで廃炉にすべきだ。事故のたびに基準値を変えるのなら
    見直しの意味はない。見直しは他のクリーン・エネルギーへの転換だけでよい。
    原発は、今もって事故が起きるたびに地球を汚しているのだ。
    地球に住む生物は人間だけではない。東電は、高濃度の放射性物質を海に垂れ流しておいて、
    海中の小動物や海藻類への影響については、何の責任も感じていないのだろうか。

    「はじめに原発ありき」こそ問題
    (朝日新聞2011.4.7「声」より山口県岩国市の主婦・藤脇 恵実さん(37歳)の投稿文紹介)
     私は従来、原発に反対である。現在に生きる私たちが必要とするエネルギーを得るために、
    未来の人びとに放射性廃棄物を残すのは無責任と考えるからだ。
    そして、大事故が起こった際の悲惨さは、他の方式の発電の場合と比較にならない。
     福島原発の事故に関連して、「原発事故が起こったからといって、
    即原発反対というのは安直すぎる」とか、「原発は怖いけど、発電のためには必要」とかいう声を聞く。
    このような「はじめに原発ありき」の姿勢こそが問題なのだと私は言いたい。
     何を根拠に、原発を人類に必要不可欠なものと決め付けるのだろう。
    地震学者らによって鳴らされてきた原発事故への警鐘も、原発建設予定地での反対住民の声も、
    その「はじめに原発ありき」の姿勢によって無視されてきたのできないか。
     国はエネルギー政策を脱原発へと転換すべきだ。これは安直でも何でもない。
    現在から未来へと続く人びとの暮らしを本気で大切に思うなら、選択されてしかる道である。
    自然エネルギーをエネルギー政策の中心に据え、
    そのより効率的で安定的な発電の実現を推進すべきだと思う。
     私も従来より、原発に反対である。地球上になかった危険なものを造りだし、
    地球に棲む全生物の安全を脅かすことは許すべきではない。

    稼働中の原発の安全対策を急げ
    (朝日新聞2011.4.22「声」より大分県日田市の橋本 睦雄さん(78歳)の投稿文紹介)
     7日深夜に宮城県沖を震源とするマグニチュード7.4の余震があり、
    東北電力の東原原発では稼働中の外部電源が遮断され、非常用ディーゼル発電機で
    使用済み核燃料貯蔵プールの冷却をしたという。私の素人考えでは、一歩間違えば
    福島第一原発事故の二の舞にならぬとも限らない由々しい状態だったのでは、と思えてならない。
     現在、国内では五十数基の原発が稼働中だとか。現段階では福島原発事故の押さえ込みが
    最優先課題だとは思うが、稼働中の他原発の安全性はどうなのか。不安と疑念がどうしても拭えない。
    国は早急に安全基準を見直し、各電力会社に改善措置を指示し、実行させることも急務だと思う。
     もちろん、理想としては人や地球に優しいクリーンなエネルギーに転換させることだが、
    我が国の総電力需要量の30%を原発に依存している現状では、一気に原発を停止させるなど不可能だ。
    だからこそ、少なくとも安全に対しては万全の措置を施し、電力政策を遂行することが、
    為政者を始め原発推進論者のとるべき必然の義務であり、責任だと思う。
    一日も早く、しっかりした対処方針を示し、実施に移すことを切望する。
     問題が起きた時には車のエンジンのように、スイッチを切れば直ちに原子炉が稼働停止するように
    ならない限り、現在の原発は徐々に廃止して他の発電に転換していくほかに方法はないと思う。
    国の原発推進政策による高額な交付金や補助金のエサで原発を誘致して原発事故に遭った市町村は、
    地震と津波の二重災害の他に放射能汚染という三重の災害に苦しめられることになった。
    原発さえなければ、阪神・淡路大震災のように早期復興が可能だったのに、
    いつ我が家に帰れるかわからない事態に陥ったのである。
    山口県の上関原発には、多くの地域住民が原発建設反対運動を続け、
    何十年も設置を遅らせてきたのである。もしも上関原発が稼働し始め、
    福島第一原発事故のように高濃度な放射性物質が海に流れ出れば、瀬戸内海は死の海と化す。

    中国の事故笑えぬ日本の原発
    (朝日新聞2011.8.4「声」より仙台市青葉区の堺 武男さん(62歳)の投稿文紹介)
     中国の高速鉄道は、驚くべき悲惨な事故を引き起こした。
    国威発揚と利潤追求優先の工事、大事故も懸念されながら続けられた運転、大事故。
    事故原因を隠そうとするも、被害者らや世論の前で慌てて車両を掘り起こす行政。
    安全性が確認されないままの運転再開――。
    一連の動きは、日本の福島第一原発事故とあまりに似通っていないか。
     何度か起きている事故を無視して、狭い地震列島に54もの原発が造られ、ついに大事故が発生。
    しかし、その直後に起きていたメルトダウン(炉心溶融)の公表は2カ月も経ってから。
    東京電力と政府のいうことはどこまでが真相で、何を隠しているのかは分からない。
    そして安全性が確認されないまま玄海原発(佐賀県)の再稼働に向けた「安全宣言」が
    経済産業相から出される――。これらの事実を見ていると、
    中国の高速鉄道事故を対岸の火事として笑うことはできない。
     今後10年で日本の原発の3割は建築後40年に達し、
    大地震が起きればいつ何が起きてもおかしくない状況にあると思う。
    福島の事故で確認されたのは原発の「安全性」ではなく、「安全ではないこと」だけ。
    後世の子どもたちのためにも「廃原発」に取り組むべきだ。
    小泉元首相、原発依存反省は
    (朝日新聞2011.9.28「声」より埼玉県所沢市の阿部 武久さん(65歳)の投稿文紹介)
     小泉純一郎元首相が18日、川崎市内で講演し、「原発建設の費用を自然エネルギーの開発に使い、
    原発依存度を下げるべきだ」と述べた。「高レベル放射性廃棄物の処分に
    膨大な費用と数万年単位の時間がかかる」とも言い、原発はコスト面でも問題があると指摘した。
    その論は是とするが、福島第一原発事故が起きてようやくの感は否めない。
     というのも、小泉氏は首相だった2005年1月25日の参院本会議で、
    民主党の江田五月氏から「原発が大津波の被害に遭った時の危険性」の指摘を受けていた。
    これに対し、「地震や津波が発生した際には放射能漏れなどの事故を起こすことがないよう
    耐震性の強化を図っているほか、海水が引いた場合にも冷却水を提供できる装置を講じている」などと、
    原発の安全対策は万全だと答弁していたのである。
     反省はないのだろうか。
     もしこの時、「脱原発」にかじを切っていれば、との思いはある。
     だが、今からでも遅くはない。現在は政界を引退した小泉氏も、影響力ははまだあるだろう。
    日本の未来のために、自身の影響力の残る政財界、マスコミに対し、
    ぜひ声を大にして「脱原発依存」を発信してほしい。
     反省すべきは小泉元首相だけでなく、電力業界の役員が、企業献金廃止後にも寄付の名目で、
    35年前から自民党へ献金していたように、自民党と電力9社は癒着しながら、
    原発反対住民を「原発は安全だ。交付金で町や村は潤う」などと口車に乗せ、
    交付金や補償金目当ての市町村長らとタックを組んで原発を推し進めてきた自民党や電力各社が
    大いに反省すべきだ。自民党のいう原発の安全神話も、原発のコスト安もすべて崩れ去り、
    多量の廃炉を海に捨てる重大な問題も、関係省庁とアメリカとぐるになって隠し通していたのだ。
     原発行政の失敗は、悲惨な原発事故を見ても明らかになったことから、
    自治体すべてが「脱原発」に傾くと思いきや、山口県上関町の町長選挙では、
    町長・住民ともども、原発の危険度は承知しながら、これからもおいしい原発マネーで
    町の財源を賄っていこうというのだ。命と引き換えに原発推進と言うことらしいが、
    原発事故が起きれば50キロと離れていない我が周南市まで巻き添えになることになる。
    その上、原発に関わる費用は電力料金に上乗せされたり、増税により、全国民が負担を強いられて
    いるのだ。上関町の税収は2億円しかないのに、箱物の体育館建設に54億円も使うというのだ。
    何の働きも努力もしないで懐に入るあぶく銭だから、国民の血税を湯水のごとく使うのだ。
    今の自民党もひどい。東日本震災復興の予算審議を急がなければならないのに、
    公明党と連携して「揚げ足取り」や「中傷」ばかりに終始している。
    被災住民の将来的な居住地の確保、放射性廃棄物の除去・埋め立て、瓦礫の撤去、
    道路・鉄道の整備のほか、周辺地域の風評被害の収束と補償、放射性廃棄物の処理・埋め立て、
    高レベル放射性廃棄物の最終処分、廃炉の処理問題など、問題が山積しているというのに、
    問題外の低レベルな相手の弱みの追及に貴重な審議時間を費やしている。

農産物の出荷停止 = 農産物の出荷停止(別掲)
廃炉(はいろ) : 老朽化して寿命を迎えた原子炉の運転を停止して解体・撤去すること。
    日本の商業用原発のうち初期に建設されたものは、運転開始から約30年たち次々と老朽化してきた。
    電力会社は、長寿命化のための補修工事と並行して、経済性が劣るものは廃炉にする方針をとる。
    日本ではごく小規模の研究炉JRR−1と動力試験炉JPDR、
    原子力船「むつ」が廃炉になったが、今後、大型実用炉の廃炉時代が始まる。
    日本原子力発電東海発電所の黒鉛ガス炉は1998(平成10)年に運転を終了した。
    日本初の商業用軽水炉である同社の敦賀1号機は、2010(平成22)年まで運転した後に廃炉にする。
    総合エネルギー調査会原子力部会(通産相の諮問機関・当時)が出した中間報告では、
    110万kW級の原子炉を廃炉にすると、廃棄物は50万〜55万トンに及び、うち放射性のものは約3%。
    ドラム缶に詰めて3万〜4万本となり、地下50〜100mに浅地中処分することになる。
    総費用の見積額は1基当たり沸騰水型炉で178億円、加圧水型炉で192億円とされる。
    しかし、2001年に始まった日本原子力発電東海発電所の解体では
    17年がかりで930億円かかる見通しだ。

    廃炉の現状知り、脱原発を確信
    (朝日新聞2011.9.24「声」より、福岡県田川市の嘱託社員・敷地 光彦さん(67歳)の投稿文紹介)
     本紙の原発列島ニッポン「迫る廃炉ラッシュ」(18日)を熟読して、改めて日本は
    脱原発しかないと確信しました。寿命のきた原子炉を廃炉するのに20年以上もかかること、また、
    廃炉で出た放射性廃棄物の管理や具体的な処分方法の技術がいまだに確立していないこと、
    更には処分費用も巨額で建設費用を上回ることなどの記事に注目しました。
     東京電力福島第一原発の事故収束について、政府側は年内の冷温停止を強調しましたが、
    収束の工程表の日程は変えないとのこと。東電の膨大な賠償額の全体像はいまだ見えない状況です。
    ところが電力会社は原発復活に固執しているし、日本経団連の米倉弘昌会長も「世界的に
    (原発なしで)やっていけるかどうか疑問だ」と話しており、脱原発の世論にはなお反対しているようです。
     米倉会長は原発事故の後、「原子力行政が曲がり角に来ているとは思っていない」と発言していました。
    今もそう思っているのでしょうか。福島県の惨状に対して一体どういう認識をお持ちでしょうか。
    原発推進派の良識とは一体なんでしょうか。
     ドイツのようにきっぱりと脱原発を表明し、
    再生可能エネルギー中心に切り替えることこそが国民の望む方向だと思います。
     原子炉を廃炉にするには建設時の費用を上回る巨額の処分費用がかかり、
    それも電気料金に上乗せされるのだ。これ以上の問題に放射性廃棄物の処理がある。
    廃棄物の具体的な処分方法も確立していないのに、米国の圧力で原発を推進してきたのが大問題で、
    その米国でも地元の反対や安全基準の見直しなどがあり、いまだに最終処分場の建設も
    始まっていない現状なのに、日本で大量の放射性廃棄物の埋設を引き受けてくれる
    都道府県はどこにあるのだ。原発の設計・建設・維持や廃炉には膨大な企業の利益があることから、
    日本経団連の米倉会長は原発推進を口にしていると思われるが、
    全国でたまる一方の放射性廃棄物の埋設を引き受ける都道府県の仲介くらいしてもらいたいものだ。
    ドイツがやれるのに、日本が脱原発ができない理由はどこにもなく、
    世界的に原発なしでやっていけるかどうか疑問など全くない。利潤より安全が第一だ。

浜岡原発(Hamaoka Nuclear Power Stasion)はまおかげんぱつ : 浜岡原子力発電所の略称。
    静岡県御前崎市佐倉5561にある中部電力の唯一の原子力発電所である。
    1〜4号機は福島第一原発と同じ沸騰水型炉(BWR)、5号機は新技術が盛り込まれた
    改良型沸騰水型炉(ABER)。1号機(1976年3月運転開始)、2号機(1978年運転開始)は
    2009年1月に運転を終了して廃炉の手続きに入った。その代替として6号機の建設計画がある。
    中電が発電したり他社から受けたりした電力量実績は、2010年度速報値では1423億キロワット時、
    そのうち浜岡原発の発電電力量は153億キロワット時である。
    敷地面積は160万m(東西1.5km、南北1kmm)で、PR施設である浜岡原子力館が併設されている。
    
    浜岡原子力発電所(浜岡原子力館展望台から)
    東海地震の予想震源域にあり、活断層が直下にあるという説まで発表されており、
    またトラブルが多発していることなどから耐震性の不足が懸念されている。
    また、今までは高さ10〜15mの砂丘で高さ(斜面遡上高)8mの津波を防ぐ想定になっていたが、
    東北地方太平洋沖地震の教訓から、2011年3月16日に2〜3年以内に地上高4m(標高、海抜12m)
    ほどの防波壁を作る計画が発表された。2011年5月6日、菅直人内閣総理大臣が全原子炉の
    運転停止を海江田万里経済産業大臣を通じて要請した際、3号機は定期点検で停止中で、
    稼働中だった4、5号機は5月15日までに停止した。
    中部電力は、津波・地震対策を取った上で再稼動する方針だが、いま、地元自治体の意見が割れている。
    背景には、安全性に対する不安だけではなく、経済的な事情もからみあう。
    参 : 浜岡原子力発電所(中部電力HP)

    <浜岡原発>全面停止へ、「唐突」「英断」…戸惑う地元
     中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の原子炉を全て停止するよう菅直人首相が
    2011年5月6日、中部電力に要請したことについて、地元住民や自治体、関係者の間には
    戸惑いと歓迎が交錯した。「唐突で人気取り」「交付金に依存する自治体財政はどうなる」と
    疑問視する向きがある一方、静岡県の川勝平太知事は「英断に敬意を表する」と評価、
    危険性を訴えてきた市民団体などからも「当然の判断だ」とする声が上がった。
    浜岡原発停止を決定<中電、計画停電は回避の方針>
     中部電力は2011年5月9日、臨時取締役会を開き、
    菅直人首相による浜岡原発(静岡県御前崎市)の全面停止要請の受け入れを決定した。
    2、3日中に運転中の浜岡原発4、5号機を停止する。
    停止期間は地震、津波対策を終えるまでの2〜3年程度になる見通し。水野明久社長は会見で、
    浜岡原発の全面停止で電気料金を値上げすることは「現段階では考えていない」と述べた。
     水野社長は、対策実施後の運転再開について海江田万里経済産業相から「確約を得た」とも明かした。
     夏場の電力供給が逼迫(ひっぱく)するため、中電は運休中の火力発電所を稼働させるほか、
    他電力会社からの融通で計画停電は避ける方針。
    一方で、東日本大震災後に続けてきた東京電力、九州電力への電力融通は打ち切る。
     中電によると、浜岡原発の電力を火力で代替すると、発電コストが年間約2500億円増える見通し。
    中電は、産業界や一般家庭に節電を求める一方、政府には顧客や浜岡原発が立地する周辺自治体、
    株主などに過度な負担や不利益を掛けないよう支援を要請した。
     水野社長は会見で「福島第1原発の事故で広がった不安を真摯(しんし)に受け止めた」と
    受け入れ理由を説明。発電コストの増加で「赤字となる可能性もある」と述べた。
     中電の決定を受けて、海江田経産相は9日会見し、「中部電力の取り組みを最大限支援していく」と
    述べ、金融支援を含めて対応する考えを表明した。海江田経産相は原発立地の地元自治体への
    交付金は、今後2年間は従来通りとし、2年後以降も減額はしないと説明した。
     全国の原発に指示した緊急安全対策の確認結果から、稼働中の原発の継続運転や、
    定期点検中の原発の運転再開は「安全上支障がない」と述べた。(中日新聞ニュースより)
     浜岡原発の原子炉全面停止は、「なぜ浜岡原発だけなのか」「停止は非科学的」だとか
    「横須賀基地を放射能から回避したいアメリカ(米軍)の意向に従っただけ」
    「首相のパフォーマンスや人気取り」などと色々言われているが、
    巨大地震の発生について国の地震調査委員会によると、
    30年以内に発生する確率は東海87%、東南海70%、南海60%ということで、
    東日本大震災と同じくプレートが沈み込む境界型の東海地震想定震源域の真上にある浜岡原発は、
    他の原発に比べて極めて逼迫(ひっぱく)度が高いことから、国民の生命・財産を守るために
    菅首相が専門家の意見を聞くなどして決断したのは当然のことだと思う。

    浜岡原発の全基運転停止は当然
    (朝日新聞2011.5.11「声」より東京都府中市の会社員・岩村 昭夫さん(56歳)の投稿文紹介)
     菅直人首相は、中部電力の浜岡原発(静岡県)について、
    防潮堤設置などの中長期の安全対策が実施されるまで、
    稼働中の4、5号機を含めすべての原子炉を停止するよう求めたという。英断を評価したい。
     浜岡原発3号機は7月から再稼働予定との記事(4月29日)が出た時には目を疑った。
    余震が続き、福島第一原発の事故も収束しない今、
    いつ起きても不思議ではない東海地震の想定震源地の上に立つ浜岡原発は、直ちに全基運転停止し、
    大地震に耐えられるかどうか厳密に点検するのが当然だと思っていたからだ。
     中部電力の「再稼働を前提にしないと、逆に地元から断念したと思われる」という言い分は、
    震災や原発事故がなかったかのようなものだ。
     原発推進に傾いていたドイツのメルケル首相は、今回の事故直後、17基の原発のうち、
    1980年以前に建設した7基の運転を3カ月間停止するよう命じた上、
    いったんは平均で12年間延長すると決めた原発の運転期間を再び短くし、
    今後は自然エネルギーに力を入れる姿勢を鮮明にしたという。
     事故があった当の日本で同様の措置がなぜとれないのだろうかと思っていただけに、
    今回の決断を機に、原発政策が大胆に見直されることを期待したい。
     前記のコメントと同じで、全基運転停止は当然のことです。
半減期(half life、half value period)はんげんき : ある物質の量が半分になるのにかかる期間。
    一般に、素粒子・原子・分子・イオンなどの量が、時間とともに減少する時、その量がはじめの
    2分の1になるのに要する時間。特に放射性核種の崩壊の速さや素粒子の寿命を表すのに用いられる。
    放射線を出す物質が、放射線を出しながら壊れて、元の半分の量になるまでの時間のこと。
    放射性物質の放射線の強さは時間とともにしだいに減少していく。これは、放射線を出す原子核の数が
    時間とともに減少し、また放射線の強さが単位時間当りの崩壊原子核数に比例するためである。
    放射性物質の原子核の崩壊は、個々の原子核については偶然に支配される確率現象である。
    減るスピードは放射性物質の種類によって大きく違い、3.8日で半分になるものもあれば、
    30年かかるものもある。ヨウ素131の半減期は8.0日、セシウム137は30年、
    プルトニウムは半分の量になるなで2.4万年もかかる。
    半減期が短いものはすぐに減る一方、その間は多くの放射線を出すので、注意する必要がある。
    半減期が長いものは、放射線を少しずつしか出さないが、長期間にわたって出し続ける。
    参 : 薬学における半減期
非核三原則 = 非核三原則(別掲)
ビキニ水爆実験(びきにすいばくじっけん) : ビキニ環礁水爆実験。ビキニ核実験。ビキニ事件。
    水爆開発「キャッスル作戦・ブラボー(BRAVO)」に着手した米国が
    1954(昭和29)年3月1日3時42分(1回目)から中部太平洋の
    マーシャル諸島(当時は米国の信託統治領)のビキニ環礁で行った実験。
    5月までに6回爆発させた(うち1回はエニウェトク環礁)。1回目の3月1日に爆発させた
    「ブラボー」は広島型原爆の1千倍の威力があり、現場から約160キロ東で操業中だった
    静岡県焼津市のマグロ漁船「第五福竜丸」が放射性降下物「死の灰」を浴びて乗組員23人が被曝
    無線長の久保山愛吉さん(当時40歳)が急性放射線症で半年後に死亡した。
    他に汚染マグロを投棄するなどした漁船は延べ1000隻に上り、ほか貨物船、現地住民、
    米兵が被曝し後遺症に苦しんでいるが、被ばく者と認定された元船員はいない。
    1955年の日米両政府による政治決着で、第五福竜丸以外の被害実態は調査されなかったのである。
    この事件から原水爆禁止運動のうねりが世界に広がった。
    
    ビキニ被曝実態、広く調査を
    (朝日新聞2010.9.30「声」より、大阪市福島区の久保 三也子さん(81歳)の投稿文紹介)
     1954年に米国が実施したビキニ環礁の水爆実験で、
    「死の灰」が広く日米本土にまで広がっていたという本紙記事(19日)を読んだ。
    その内容から1995年に高知市で開催された「空襲・戦災を記録する会」の
    第25回全国連絡会議に参加したときのことを思い出して、やっぱりという思いを強くした。
     その会議で、高知県の高校生の平和学習グループがビキニ水爆実験で
    多くの高知船籍の漁船が被曝したと発表した。私は初めて聞く事実に驚いた。
    当時、「第五福竜丸」の記事は毎日のように報道され、静岡県焼津港に水揚げされた魚を
    検査するテレビ映像も流されていたが、高知船籍漁船の被曝はほとんど知らされなかった。
     調査の高校生に漁師は、「港では魚ばかりがガイガーカウンターで放射能検査され、
    わしら漁師は何の検査もしてもらえなかった」と話したという。
    その言葉は被曝の事実とともに私の心に重く残った。
     魚が検査されたことから、国は第五福竜丸以外にも被曝した船があった事実を知っていたのだろう。
    国民の生命にかかわる重大なことをひそかに日米で政治決着して、健康被害を放置してきたことに
    怒りだけではなく怖さを感じる。今からでも遅くない。実態を調査すべきだと思う。
     「都合のよいことは強調し、都合が悪いことは隠し通す」というのが政治の常道手段なので、
    今後も核持ち込みをめぐる日米密約官房機密費などのように、
    国民へすべてを明かすことはないでしょう。

被曝(ひばく) = 被曝(別掲)
被曝線量 = 被曝線量(別掲)
被爆2世(ひばくにせい) : 両親のいずれか、または双方が被爆者で、
    母親が原爆投下後に妊娠、出産した被爆者(1世)の子どものことで、被爆3世は孫になる。
    母親の胎内で被爆した人が被爆者と認定される「胎内被爆者」とは明確に区別され、
    被爆者援護法の対象外となっている。
    広島、長崎原爆被爆者の子どものことであり、30〜50万人と言われているが、実態は不明である。
    被爆者には被爆者援護法に基づく被爆者健康手帳が交付され、
    医療費の本人負担分が原則免除されたり、特定の病気にかかり申請すれば
    健康管理手当(月額約3万4千円)が受給できたりするが、2世への国の施策は健康診断のみ。
    一部自治体は被爆者健康手帳のような役割を果たす健康診断受診証などを発行し、
    特定の病気を治療した場合、医療費を助成するところもある。
    日米共同研究機関の放射線影響研究所は2007年、
    親の被爆で2世の生活習慣病リスクが増加する証拠は見られないと発表したが、
    「影響はない」とは断定しておらず、調査を続けている。
    国も2世について「現時点では原子爆弾の遺伝的な影響はない」との見解を示している。
     長崎市と県は、両親かどちらかの親が被爆者で、長崎原爆投下翌年の
    1946年6月4日以降に生まれた人に、年1回の健康診断を無料で実施している。
    甲状腺がんや白血病にかかる確率が高いといわれるが、がん検診は無料診断の対象にならない。
    参 : 全国被爆二世交流会(HPなし)、全国被爆二世団体連絡協議会(HPなし)、
        全国被爆者青年同盟(HP)、被爆二世の会(ブログ)
福島第1原子力発電所(ふくしまだいいちげんしりょくはつでんしょ)
    東京電力初の原発として計画され、1号機が1971(昭和46)年3月、営業運転を始めた。
    福島県大熊町と双葉町にまたがる約350万平方メートルの敷地に、現在6基の原子炉が稼働する。
    燃料の核分裂反応によって生じた熱で水を沸騰させ、そこから生じた高温の蒸気で
    タービンを回して発電する「沸騰水型原子炉」で、総発電量は約470万キロワット。
    1号機は2011年、営業運転開始からちょうど40年を迎える「高経年化原発」である。
     2011年3月11日に発生した日本の三陸沖を震源とする国内観測史上最大の
    マグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)とそれに伴う津波により、
    福島第一原子力発電所では、地震ののち自動停止したものの津波により冷却能力を失い、
    原子力事故の国際評価尺度がレベル「5」の深刻な原子力事故が発生した。
    政府は2011年4月12日、広い範囲で人の健康や環境に影響を及ぼす大量の放射性物質が
    放出されているとして、国際的な基準に基づく事故の評価を、最悪のレベル「7」に引き上げた。
    福島第1原発と第2原発周辺には、避難指示や屋内退避指示が出された。
    また、十分な電力の供給が難しくなっていることから、計画停電が実施された。
    
    福島第1原子力発電所
    四角い建物の奥から1、2、3、4号機で、4号機から1号機に向かう方向が真北となる。右方向が太平洋

    
    蒸気爆発などを起こして無残に破壊された建屋
    
    原子炉の概略図(asahi.comより)
    参 : 東日本大震災

    福島第1原発、汚染水流出付近で最大750万倍のヨウ素
     東京電力は2011年4月5日、東日本大震災による福島第1原子力発電所事故で、
    2号機タービン建屋からとみられる水が流出している付近の海の放射性ヨウ素の濃度が
    4日午前9時段階で、1立方センチメートルあたり20万ベクレルだったと発表した。
    法令基準濃度の500万倍にあたる。
     東電はまた、同じ場所での2日、3日段階での濃度についても発表。
    2日は30万ベクレル(法令濃度の750万倍)、3日は7万9千ベクレル(同200万倍)だった。
     東電は2日に採取した流出汚染水の分析に着手した段階で、
    流出先付近の海の汚染のレベルについて「法令基準の1千万倍程度」と説明していた。
     枝野幸男官房長官は5日午前の会見で、高濃度の放射能汚染水の保管場所確保のため、
    比較的汚染度の低い水を海に放出したことについて、
    「より高い濃度の汚染水が海水に流出するのを防ぐため、やむを得ない措置であるとはいえ、
    意図的に放射性物質を含んだ水を流さざるを得ないのは大変残念で申し訳ない」と陳謝したが、
    危険な原子力発電所を造りまくった国の誤った原子力政策がこのような危機をもたらしたのだ。
    口を開けば「人体には安全、問題はない」と言うが、海の小さな生物にはどうなのだ。
    世界の海の水を汚染することになったのは確かなのだ。

    魚も出荷停止へ 茨城沖のコウナゴ、高濃度ヨウ素検出で
     福島第一原発から約70キロ南にある茨城県北茨城市沖で取ったイカナゴ(コウナゴ)から
    高濃度の放射性ヨウ素が検出されたことを受け、政府は2011年4月5日、
    原子力災害特別措置法に基づき、茨城県沖で取れたイカナゴの出荷停止を
    近く同県に指示する方向で検討に入った。同法に基づく出荷停止の指示は水産物では初めて。
     水産物はヨウ素の暫定基準値が決まっておらず、食品安全委員会と厚生労働省が
    近日中に設定する見込み。野菜は1キロあたり2千ベクレルで、この数字を軸に協議されている。
    政府は設定を受け、4080ベクレルが検出されたイカナゴの出荷を止める方針だ。
    農林水産省は出荷停止を受け、茨城県に出漁の停止を求める。
     農水省は水産物の検査を強化する方針で、今後ほかの魚種でも基準値以上が検出された場合、
    出荷停止の対象は広がる見込みだ。イカナゴが取られたのは茨城県北部の海域で、千葉県に
    近い海域では数回の検査で検出されていないため、停止措置の対象範囲は慎重に検討している。
     イカナゴは浮き魚と呼ばれ、放射性物質の影響をより受けやすいとされる底魚や海藻とは
    生息地域が異なる。農水省が専門家に尋ねたところ、
    網で漁獲される際に海面近くの海水で汚染された可能性が高いという。
     海の近くに原発を設置したおきながら、水産物のヨウ素の暫定基準値をいまだに
    決めていなかったとは……まったくお粗末で後手後手の原子力行政だ。

    放射能汚染水の放出は大丈夫か
    (朝日新聞2011.4.9「声」より、長崎市の会社員・四元 勝彦さん(65歳)の投稿文紹介)
     茨木沖のイカナゴから基準値を超える放射性セシウムが検出された。小魚だからと侮ってはならない。
    食物連鎖でその範囲は無限と考えるべきだろう。さらにセシウムは半減期が30年と長い。
    政府は「直ちに影響を及ぼすものではない」「海洋汚染防止条約(ロンドン条約)が定義する
    『投棄』には当らないから条約違反ではない」という。本当にそうなんだろうか?
     日本の法律では緩急の度合いを「直ちに・遅滞なく・速やかに」と3段階に使い分けていると学んだが、
    それは周辺国の人には理解できないだろう。
    低濃度だから、非常時だから、条約に違反しないからよいというものではないだろう。
     この度の東日本大震災では世界中から手厚い支援と温かい声援を頂いている。
    これに対して我が国の対応は誠意あるものだろうか?
    初期対応を誤り、後手対応の繰り返しでは、やがて世界の声は懸念から批判に変わり、
    国際社会から断絶されるのも遠くない。技術大国、経済大国の名に恥じぬよう、
    ロボットを活用し大型タンカー数隻を廃船する覚悟で汚染水を回収するくらいの
    大英断ができる人物はいないのだろうか?
     枝野官房長官は「直ちに」をよく用いるが、「直ちに影響はないが、あとで影響が出る可能性がある」と
    いうことではないか。したがって将来は不安だらけだ。直ちにではなく先のことを言うべきだ。
    言葉尻を濁すのは国会議員のお得意芸で、後で責任をとらされないように、
    「努力したいと思います」など、ほとんどが「〜思います」で閉めている。

    汚染水放出は「国際犯罪」、チェルノブイリ関係者らが批判
     東京電力が福島第1原子力発電所から低レベルの汚染水約1万1500トンを海に放出した問題で、
    旧ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年)で現場処理の責任者を務めたオストレツォフ氏や
    環境専門家ら3人が2011年4月11日、モスクワ市内で記者会見し、
    日本の措置を「国際犯罪だ」と強く批判した。
     出席者らは、汚染水の放出がロンドン条約(廃棄物などの投棄による海洋汚染の防止条約)に
    抵触すると主張。「日本は汚染水に含まれる物質を明らかにせず、その影響に関する科学的予測もなく
    放出した」「汚染水は石油ターミナルなどに貯蔵して処理することもできるはずだ」などと述べた。
     ロシアは日本の支援で建造された放射能汚染水の海上処理施設「すずらん」を福島に送る考えも
    示しており、出席者からは「日本は迅速に(受け入れの)決定をするべきだ」との声も上がった。
     オストレツォフ氏は産経新聞の取材に「まずは放射能汚染を局地化するための“障壁”設置を
    急ぐべきであり、それを石棺で原発を覆うための第1段階と位置づけるべきだ」と指摘。
    「状況は日本人が考えている以上に深刻だ。
    少なくとも北東アジア全体にかかわる国際問題として受け止めてほしい」と話した。
     ロシア外務省は4月7日、汚染水の放出について
    「今後は排出を容認しない措置を取るよう望む」との声明を出し、不快感を表明した。
    ゼオライト、汚染水対策に=放射性物質吸着、冷却再利用も―福島第1原発・東電
     福島第1原発事故で、東京電力は2011年4月16日までに、海中の放射性物質が拡散するのを
    防ぐため、「ゼオライト」という鉱物を取水口付近に投入した。放射性物質の吸着効果が確認されており、
    今後、建屋内の水の汚染軽減に活用することも検討している。
     ゼオライトは、1979年の米スリーマイル島原発事故でも汚染水の除染に使われた。
    微細な穴を多数持ち、1キロ当たり、放射性セシウム6グラムを吸着することが、
    東電が海中で実施した試験で確認されている。
     東電は汚染水拡大を物理的に防ぐ水中カーテン「シルトフェンス」に加え、
    ゼオライト100キロを詰めた縦、横、高さ各80センチの大型土のう3袋を取水口付近に投入。
    このほか計7袋を用意しており、17日以降も投入を継続する。
     東電は今後、投入したゼオライトの吸着効果を詳しく分析。原子炉冷却のため注入した水や、
    タービン建屋などにたまった水の汚染をゼオライトで軽減し、冷却に再利用できるか検討する。
    起きるべくして起きた事故だ
    (朝日新聞2011.4.15「声」より、大分県臼杵市の団体職員・岩本 泰博さん(60歳)の投稿文紹介)
     およそ地上にある施設で、原発ほど高度の安全性・頑強さが求められるものはないと考える。
    福島第1原発もまた、そのように設計・建設されているものと私はこれまで信じていた。
     それが今回、いかにもろいものであったかが露呈した。東日本大震災直後の報道で
    私があぜんとしたのは、津波の想定が5.7メートルであったことと、
    非常用発電設備が地下に設置されていたことである。
     東北地方東岸一帯は何度も津波に襲われており、明治三陸大津波では岩手県大船渡市で
    38.2メートルを記録している。そんな地方に設置する原発が、想定5.7メートルとはあまりに甘すぎる。
     今回の大惨事の発端は津波の一撃で電源喪失したことだ。
    原発の非常時に、ボイラーでいうば安全弁の役割を果たすのが緊急時炉心冷却装置であり、
    それを作動させる上で最後のとりでとなるのが非常用発電装置である。これが、立地が
    海面からわずかしかない場所である上に地下に設置されているとは、素人の設計とさえ思えてくる。
     つまるところ、この原発は生まれながらに今回の惨事が起きる要素をはらんでいたことになる。
    このような欠陥原発を建設した東京電力とそれを認めた国(経済産業省)の罪は大きい。
     その通りで、原発の設計者と認可した当時の官僚の名を挙げてほしいものだ。
    私はこの他に、各号機の距離を数キロ離し、それぞれに作業員を配置する方式にすべきだと思う。
    発電機や電源ケーブルを共用するなんて素人でも行わない。安全より経費節減を主体にした設計だ。
    
「原発推進は決して間違いではない」、与謝野経財相
     与謝野馨・経済財政相は2011年4月15日の閣議後の記者会見で、
    「今後も日本経済にとって、電力供給にとって、原子力発電は大事だ。
    (原発を)推進してきたことは、決して間違いではない」と述べ、
    東京電力福島第一原発事故を受けても「原子力は必要なエネルギー源」との認識を示した。
     与謝野氏は日本原子力発電出身で、通産相などとして原発を推進してきた。
    原発の安全性について「言い訳がましいことは言いたくないが、最良の知見、最善の知識、
    最良の技術でベストなものをその当時は作ったと確信をしていた」と説明。
    「原発を推進してきた立場として今回の事故に謝罪をするつもりはないか」という記者の質問に対し、
    「ないです」と述べた。(2011.4.16、朝日新聞より)
     「政界の癌」と言われるだけあって、無神経な与謝野氏の発言には頭にくる。
    100年ほど前の明治三陸地震による大津波では38.2メートルもの津波が押し寄せ、
    多くの人々が亡くなっていることを知っていて、「最良の知見、最善の知識、最良の技術で
    ベストなものをその当時は作ったと確信をしていた」とよく言えたものだ。そのような津波は
    想定できるのだから、非常用発電装置は地下でなく、高台に設置するのが当然ではないか。
    欠陥原発を設置したことから、多くの住民が我家にも戻れず、不自由な生活を強いられ、
    いつ仕事にありつけるか分からないことを知っていての発言としては、甚だ遺憾である。
    風評被害で対象外野菜などが価格暴落するし、外国人労働者が本国に帰って経営が困難になったり、
    観光客が激減したりして九州や沖縄までの広範囲の国民に心配と迷惑をかけているのだ。
    しかも、大量の放射能で海や空を汚染し、地球を汚しているではないか!
    起きた結果に責任を負うのが政治家なのだから、
    「頭のいい私が、こんな欠陥原発を推進してきて申し訳ない」の一言でもいってほしいものだ。
    想定内の危険性を無視してまで原発推進による利益を享受し、
    甘い汁だけを吸ってきた政官財の関係者の責任を追及すべきだろう。

    度が過ぎる東電顧問の戯言
    (朝日新聞2011.5.13「声」より、福岡県福津市の藤原 昇さん(72歳)の投稿文紹介)
     「低線量の放射線はむしろ健康にいい」「原子力を選択したことは間違っていなかった。
    地元の強い要望で原発ができ、地域の雇用や所得が上がった」
    「巨大な天災時には免責条項もある」などなど、
    尋常とは思われない戯言(たわごと)を繰り返したのは加納時男・東京電力顧問(元参議院議員)。
     この文面に私はあぜんとした。正常な思考の持ち主ではない。立場上とはいえ、この一連の発言は
    「度が過ぎる」としか言いようがない。当人は一度でもあの地を訪れ、その現実を知ってのことか。
    やはり今回の原発事故は「起こるべきして起こった」と言わざるを得まい。この期に及んで、
    関係者のトップからこんな発言が飛び出すとは。驚きも悲しみも通り越し、むなしさだけが込み上げる。
     私の知人も老いを忘れてかの地でボランティアとして奮闘中である。
    だが公然とこんなことを口にする東電顧問や、海外でゴルフに興じる民主党震災対策副本部長
    (9日に引責辞任)、こんな調子では今回の大参事による心の傷痕は簡単に癒えそうもない。
    心身共に疲れ果てた被災地の人々、とりわけ弱い立場の老人や子供たちに思いをとせる時、
    こんな言動に涙する国民は多いはずだ。
     地元の強い要望ではなく、国からの驚くべき高額の交付金(全国民の税金)や
    東電への雇用などの好条件によるもので、市町村の年間税収入の何倍もの大金が入らなければ
    危険な原発を誘致するはずがない。原発がなければ被災者の捜索も震災復興も
    阪神大震災と同様に早期に行えたのに、放射能から逃げ回るような現状で、
    「原子力を選択したことは間違っていなかった」と、どうして言えるのだろう。
    原発周辺の汚染、いや地球規模の放射性物質による汚染についても間違いはなかった?
    3月14日に水素爆発を起こした3号機の原子炉建屋について、その前日から高い放射線量の
    データを把握していたにもかかわらず、公表しなかったことの顧問の意見を聞きたいものだ。
    東電広報部は「放射線量が高いことについては、これまでも事実として公表させてもらっているが、
    その具体的なデータなどは公表していない。整理し、しっかりとまとめた上で公表したい」
    と話しているが、隠していたデータもあるではないか。放射線量などのデータに基づいて
    周辺住民の避難指示などを行うのに、後でまとめて公表するはないだろう。

    東電顧問は作業員の心想像を
    (朝日新聞2011.5.14「声」より、福岡県行橋市の主婦・津田 和子さん(62歳)の投稿文紹介)
     自民党の原発推進派が「エネルギー政策合同会議」を発足させた。
    反原発の世論に対抗し、原発を守るためだという。
    東京電力の元副社長で現在は顧問の加納時男・元参議院議員も参与として参加している。
     加納氏はインタビューに答え、「福島第一原発第5、6機も捨てずに生かす選択肢はある」
    「低線量の放射線は『むしろ健康にいい』と主張する研究者もいる」と言う。これには驚いた。
    加納さんという方は正直なのか、厚顔無恥なのか、鈍感なふりをしているのか。
     一度、避難を余儀なくされている原発周辺の住民と同じ体験をされてはどうだろうか。
    自分の家があっても住めず、プライバシーもままならない避難所暮らし。
    劣悪な環境の中、必死で復旧作業に当たる方たちや、送り出す家族の胸の内……。
    加納氏に想像する力が無いとは思えない。
     日本は地震列島だ。今回のような事故が、また起きる可能性はある。
    危険な列島の上に、これ以上原発はいらないと思う。
    電力不足は少し我慢したり工夫したりして、皆でこれまでの意識を変え節電に努めることで乗り切りたい。
    そして選挙の際には、各人に与えられた一票を注意深く行使しなければならないと思う。
    国連、福島事故の想定「甘すぎ」
     国連は2011年9月14日、福島第1原発事故を受けた原子力安全に関する報告書を公表し、
    同事故の教訓として、起き得る事故の想定が「甘すぎた」と指摘した。一方、国際原子力機関(IAEA)が
    地球規模でリアルタイムの放射線量をまとめる観測システムを構築することを提言した。
     報告書はIAEA、世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関など16の国連関係機関が
    まとめたもので、同事故をめぐる国連各機関の包括的な報告書は初めて。22日に
    米ニューヨークの国連本部で開かれる原子力安全に関する首脳級会合での議論のたたき台となる。
     「福島の事故の最も重要な教訓」として「どのような形態の事故が起きる可能性があるか、
    起こりやすいかについての想定が甘すぎた」と指摘。
    その上で、世界で稼働、計画中の原発について事故の危険性の想定を見直すよう求めた。
     安全より安さを追求した設計・建設・運転・保守が「甘い」ではなく「甘すぎ」だったことを、
    関係者は深く反省し、原子力委員会や経済産業省原子力安全・保安院は総退陣すべきだ。
    企業や政府サイドよりに一度黒く染まった血液は、総入れ替えしない限り、きれいな血にはならない。

    東電は積極的に情報開示を
    (朝日新聞2011.9.30「声」より、相模原市中央区の根岸 実さん(62歳)の投稿文紹介)
     東京電力が衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会に、福島第一原発事故に対処する手順書の
    一部を黒塗りして提出したが、「知的財産、核物質防護上」の措置、との説明は全く理解しがたい。
     原発のあり方が議論されているいま、当面は原発の再稼働もやむを得ないと私は考えるが、
    そのためには原発稼働の安全性の確保は大前提であり、事故原因の徹底的な検証は不可欠である。
     東電は事故後「想定外」を主張してきたが、東日本大震災前に福島第一原発が想定を超える
    津波に見舞われる恐れがあると試算し、原子力安全・保安院に説明したものの、
    対策を講じていなかったことなどが既に明らかになっている。津波のほか、危惧される地震自体の
    原子炉への影響も明白になるかと期待していたのに、黒塗りでは東電への不信感が増すだけである。
     原子力の特殊性から機密もあろうが、被災者の方々の苦労を考え、原発の安全性確保に向けて
    企業論理よりも安全をより重視して情報開示に努めることこそ、東電の責務である。
    政府も速やかに手順書を開示し、国民の目に見える形で事故の徹底検証を行うべきではないか。
     東京電力の資産査定や経営見直しを進める政府の第三者委員会「経営・財務調査委員会」が、
    東電の電気料金の算定根拠となるさまざまな見積もりについて、過去10年間分を徹底調査したところ、
    実際にかかる経費より約6186億円も過剰に計上されていたことが判明したように、
    利用者から高い電気料金をむしり取っていたのだ。こんなことがばれないように各所を黒塗りに
    していたとしか思えない。現在では原子力の特殊性からの機密など有り得ず、
    日本を含め、いざとなればどこの国でも原爆や水爆は造れるのである。
    したがって黒塗りにして隠す理由は全くなく、安全より利潤を追及していたことがばれるからだろう。
    特別委員会は、「こんな黒塗りの手順書は受け付けられない。元のままの手順書を持ってこい」
    とでも言ってほしいね。

    事故で東電の刑事責任は?
    (朝日新聞2011.11.1「声」より、神戸市灘区の市嘱託職員・北側 論さん(62歳)の投稿文紹介)
     東京電力福島第1原発事故は、収束に何十年かかるかわからず、放射能は孫子の代まで脅かす。
     これは天災か? 断じて違う。地震国に原発を建て、巨大津波の可能性など予測できた
    危険を無視した挙げ句の大惨事が、天災であるわけがない。
     にもかかわらず、当事者たる東電は、賠償の上限を求めたり、
    「原子力は国策」と国に責任分担を要求し、さらに一方的な賠償基準で被害者に
    膨大複雑な申請書の提出を要求したりするなど、言語道断な態度である。
     政府の姿勢も納得できない。原子力損害賠償支援機構法で事故処理費用や賠償を最終的に
    電気料金と税金で国民に転嫁し、当然破綻すべき東電や大株主を救済しようとしている。
     さらに不可解なのは、いまだに刑事責任を問う声があがらないことだ。
    静岡県の天竜川下りの転覆事故では、翌日には家宅捜索が入った。
    JR西日本の宝塚線脱線事故では、JRと経営者の刑事責任を問う声をマスメディアも大いに後押しした。
    ところが原発事故では、いまだに警察、検察が動く気配もなく、事故原因に関する証拠も
    東電が握ったまま。テレビも新聞も追求が甘い。一体この国の主人は誰なのか?
     警察は、現場を捜索して東電から「では電気事業をやめます」といって関東一円が
    停電に見舞われるとも思っているのだろうか。計画段階のミス、設計段階でのミス、
    操作ミス、虚偽説明などを徹底追及し、誰が津波の上限を下げたのか。
    誰が予備エンジンを海水に浸かる場所に設計し、誰が予備エンジンを原発ごとに配置しなかったのか。
    などなど、個人の追及をすれば刑事責任はいくらでも問えると思う。

沸騰水型原子炉(Boilling Water Reactor:BWR)ふっとうすいがたげんしろ : 沸騰水型炉。
    核分裂反応によって生じた熱エネルギーで原子炉の冷却水(軽水)を直接沸騰させ、
    炉心で取り出された汽水混合流の高温・高圧の蒸気を汽水分離器、蒸気乾燥機を経て
    タービン発電機に送り、発電する型の発電用原子炉のこと。
    この蒸気が原子炉の上部を通ることから、制御棒は原子炉の底から入れる構造になっている。
    日本国内で運転可能な原子炉の中では、最も多いタイプの原子炉で、
    東北、東京、中部、北陸、中国の各電力と、日本原子力発電が採用している。
    加圧水型原子炉(PWR)に比べて構造は簡単であるが、タービンには放射能を帯びた蒸気に
    直接触れてしまう恐れもあるので、蒸気を回収し再循環させるだけでなく、タービン建屋(たてや)など、
    これに関わる全ての系を堅牢に遮蔽することで、放射線が外部に漏れることを防いでいる。
    発電に利用された蒸気は放射能を帯びている為、 外部からの核分裂反応の制御は主に制御棒や、
    冷却材流量の増減で行われ、冷却材喪失事故時には非常用炉心冷却装置(ECCS)を動作させる。
    原子炉内の圧力は約70気圧、温度は約285℃の高温の蒸気を作り出している。
    日本では2004年3月現在、29基が稼動している。
    
    沸騰水型原子炉の概略図
プルサーマル : 和製英語で、「プル」とは「プルトニウム」のことで、「サーマル」とは、
    「サーマル・ニュートロン・リアクター」(軽水炉)あるいはサーマル・ユース(熱中性子炉での利用)の
    略で、「普通の原子力発電所でプルトニウムを燃料に使う」という意味である。
    ウランを燃料に、高熱で湯をわかした水蒸気により発電機を回して電気を起こすのが
    原子力発電(以下原発)の仕組みだが、プルトニウムもウラン燃料と一緒に使うことにしたもので、
    原発でウランを燃やしたあとに残る使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、
    ウランとの混合酸化物(MOX)燃料に加工して、再び通常の原発で燃やして発電することである。
    国が資源の有効活用やプルトニウムを余分に持たない手段として1997(平成9)年に決定した。
     プルサーマルは燃料の4分の1〜3分の1がMOX、残りがウランと、2種類の燃料を一緒に燃やすため、
    原子炉内の出力がばらつきがちになる。さらに、核分裂を抑える役割の制御棒の働きがわずかに
    弱まるとされる。こうした違いが原発の安全性に影響するのではないかと危惧する意見もある。
    このため、プルトニウムの割合を変えた複数のMOX燃料を組み合わせて出力のばらつきを抑えたり、
    MOX燃料の場所を制御棒から離したりするなどの工夫が必要になる。    
再処理とプルサーマル
原子力発電所
(普通の原子炉でMOX燃料を使うプルサーマル)
@使用済み核燃料
軽水炉
サイクル

BMOX燃料
再処理工場
(青森県六ケ所村)
AMOX MOX燃料工場
(再処理工場に隣接して
2012年に操業予定)
A放射性廃棄物
高レベル放射性廃棄物
最終処分場

(建設地募集中)
     福井県敦賀市にある核燃料サイクル機構の新型転換原子炉「ふげん」は、
    1979年に運転を始め、2003年の春までに772体のMOX燃料の集合体(束)を燃やしているが、
    これは全世界で燃やされた4778体の6分の1を占め、世界で一番MOX燃料を燃やした原発となった。
    しかし、原子炉の構造が複雑で建設・発電コストが高くつくために、
    2003年春に運転を停止し、解体されるのを待っている。代わりに建設予定の大間原発は、
    沸騰水型の原発の改良型で、世界で初めてMOX燃料だけを燃やす原発になる。
     政府は、ウラン資源の有効利用と核兵器の原料になるプルトニウムを余分に持たずにすむため、
    1997年に早期推進の閣議了承を受け、電力業界で2000年度でに4基、2000年代初頭に5基、
    2010年までに7〜9基で実施し、全国の約3分の1にあたる原発で実施する方針を出した。
    しかし、燃料を製造した英企業のデータ改ざん(1999年)、
    関西電力向けMOX燃料のデータ捏造(ねつぞう)や、東京電力の原発トラブル隠し(2002年)が
    相次いで発覚したことから信頼を失い、事前に得ていた地元の了解が白紙撤回され、
    開始が大幅に遅れている。電力会社は地元自治体の了解を得ようと懸命で、
    現在、九州電力玄海原発や四国電力伊方原発で準備が進んでいて実施に一番近い。
    ほかに、中部電力浜岡原発、関西電力高浜原発などで話が進んでいる。
    本来、プルトニウムは新型の高速増殖炉で再利用するつもりだったが、
    もんじゅの長期停止や炉の開発の遅れなどで、プルサーマルが核燃料サイクルの柱になる。
    プルサーマルでは使用する燃料のうち、4分の1程度をMOX燃料にするのでウランが節約できる。
    だが今、ウランは安いので再処理費用の高さを考えると経済的に引き合わない。
    再処理で出る高レベル放射性廃棄物の行き先も、燃やしたMOX燃料の始末も決まっていない。
    これらのことがあっても、全国の電力各社は2010年度までに全原発の約3分の1にあたる
    計16〜18基で実施することをめざしている。
    参 : 核燃料サイクルMOX燃料加工工場

    九州電力のプルサーマル計画
    九州電力は2004年4月28日、同社の玄海原発3号機で、
    早くとも2009年からプルサーマル計画を実施すると、佐賀県知事に伝えているが、
    知事と町長の事前了解と、地元の周辺自治体や漁業関係者の受け入れ問題が残っている。
    佐賀県の古川康知事と同県玄海町の寺田司町長は2006年3月26日、
    九州電力玄海原発3号機(玄海町)のプルサーマル計画に正式に同意した。
    九電との安全協定に基づき計画を了解するとの文書を、それぞれが九電の松尾新吾社長に手渡した。
    玄海3号機の計画は、現段階で唯一、国の許可と地元同意の両方がそろい、
    実施にめどがついた形となる。九電は2010年度までの実施を目指し、本格的準備に入る。
    順調に手続きが進めば2010年度に導入され、全国初となる可能性が高い。
    MOX燃料検査を国に申請−プルサーマルで九電山陽新聞より)
     玄海原発3号機(佐賀県玄海町)のプルサーマルで九州電力は2007年9月3日、
    フランスで10月から製造するプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料の設計や、
    製造過程での品質保証確保について、
    国の検査を受けるための申請を経済産業省原子力安全・保安院に行った。
     九電によると、フランスに保有するプルトニウム約1・1トンの半分を使用し、
    燃料製造会社メロックスで10月上旬からMOX燃料16体を製造。
    同社の工場に九電社員3人を駐在させ、工程ごとの検査や製造状況を確認する。
     検査期間は3日から2009年末までで、保安院は今回の申請を基に燃料の品質管理体制を確認。
    最終的には完成後の燃料を検査し、プルサーマルに使用できるかを判断する。
    MOX燃料製造へ検査申請−伊方プルサーマル四国新聞社より)
    四国電力は2007年9月10日、伊方原発3号機(愛媛県伊方町)のプルサーマルで使用する
    プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料のフランスでの製造開始に向けて、
    経済産業省に国の検査を受けるための申請を行った。
     四電は2010年度に伊方3号機でプルサーマルを開始する計画。
    現時点ではMOX燃料の製造開始時期は未定だが、08年12月までには製造を終える予定という。
     四電は使用済み核燃料から抽出したプルトニウム約0・6トンをフランスに保有しており、
    今回はこれを利用して、フランスの燃料製造会社メロックスの工場でMOX燃料21体を製造する。
     国は、四電が提出した燃料の仕様、性能、強度に関する申請書類を基に検査を実施。
    最終的には発電所内に運ばれた完成燃料を検査した上で、プルサーマルでの使用の適否を判断する。
     四電は2006年11月、三菱重工業とMOX燃料の加工契約を締結。
    製造は三菱重工と委託契約するフランスの核燃料会社アレバNC社傘下のメロックスが手掛ける。
    プルサーマル再開準備−高浜原発 関電、地元了承ならasahi.comより)
    関西電力の森詳介社長は2007年11月26日の記者会見で、
    凍結していた高浜原発(福井県高浜町)3、4号機でのプルサーマル計画について、
    「準備作業を進めたい」と述べ、福井県議会の12月定例会で了解を得たうえで、
    年明けにも再開へ向け本格的な作業に入る方針を示した。
     高浜原発でのプルサーマル計画は、2004年8月に11人の死傷者を出した
    美浜原発(福井県美浜町)3号機の事故以降、3年以上、中断している。
    準備再開についても森社長はこれまで、「スケジュールは考えていない」と強調してきたが、
    地元側に安全性の説明などを繰り返してきたことで、県議会で了承がとれる見通しがたったとみている。
     12月に地元の了解が得られれば、早ければ来夏までに、
    プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料の調達先である仏メロックス社と正式契約する見通しだ。
     国は10年度までに全国の原発16〜18基でプルサーマルを実施する方針。
    森社長は10年度までの計画実現について、「間に合うかどうかは申し上げられない」と述べたが、
    運転開始には燃料の契約を終えてから3年程度かかると言われ、難しい状況だ。
     プルサーマル計画はこれまでに、九州電力が玄海原発(佐賀県)3号機、
    四国電力が伊方原発(愛媛県)3号機で国の承認と地元了解を得て、燃料を発注している。
プルトニウム(plutonium) : アクチノイドに属する超ウラン元素の一つ。元素記号はPu、原子番号は94。
    ウランに重水素を衝撃させて作った人工放射性元素で、同位体はすべて放射性である。
    単体は銀白色の固体金属で、発火しやすい。冥王星(めいおうせい)の英語名、Plutoにちなむ。
    最も半減期の長い核種の質量数は242。天然にも質量数239のものが微量に存在する。
    プルトニウム239(239Pu)の同位体は、原子炉中でウラン238の中性子照射によって多量に得られ、
    容易に核分裂するので原子爆弾や水素爆弾に利用、核燃料としても重要で、
    半減期は約24360年と長い。プルトニウムなどの超ウラン元素は放射能毒性がきわめて強く、
    プルトニウムはその利用量が多いため毒性の問題が起こっている。
    ただし、体内に取り込んでも消化管から吸収されにくく排泄(はいせつ)されやすいという。
    何と言っても核兵器の材料なので再処理が核の拡散につながるという問題があり、
    原子力が難しいのは、やろうと思えば発電と核兵器開発の両方が出来ることである。
    実際、日本以外で再処理工場があるのは核兵器保有国だけなのである。
    使わずにたくさん持つと外国にも心配をかけることから、
    日本ではしばらくプルサーマルで使うことにした。
米国の原発(べいこくのげんぱつ) : 米国では現在、103基の原発が稼働中で、
    世界の約4分の1を占め、2位のフランス(59基)、3位の日本(55基)を大きく引き離している。
    2005年で、米国内の全発電量に占める割合は19.5%で、石炭火力の49.7%に次いでいる。
    この世界最大の米国で、約30年ぶりに原発の新規建設が始まるかもしれない。
    すでに電力13社が、計約30基の新設を計画。早ければ2007年秋にも
    米原子力規制委員会(NRC)に申請する見通しである。2005年8月に成立したエネルギー政策法に
    盛り込まれた税制などの「破格の優遇措置」が、新設計画を強力に後押ししている。
    IAEAによると、世界で2006年11月現在建設中の原発は29基だが、
    これを上回る巨大な原発市場が出現する可能性がある。

    ブッシュ政権による原発推進政策への転換が始まった世界一の原発大国・米国で、
    原子力発電所の売買が盛んになっている。1999年のスリーマイルアイランド原発1号機をはじめ、
    これまでに全米103基のうち15基の所有者が入れ替わった。
    出力増強や設備利用率の改善などで原発の収益性が向上、投資対象としての魅力が増したためだ。
    電力市場の規制緩和による業界再編も絡み、大手電力会社による原発の寡占化が進んでいる。

    世界のエネルギについて米国のエネルギー長官サミュエル・ボドマン氏の話では、
    今後の世界のエネルギー消費量の増大に対処できるのは原子力である。
    米国では1976年以来始めて原子力発電所の再建設に入った。
    現在米国では105基の原発が稼働中であり、これまでは稼動期間を30年としていたが
    期間延長(30年→50年〜60年)する予定だ。今後原子力発電建設のラッシュが始まる。
    2053年には世界の原発は1500カ所になる。アジアでは32カ所建設される。
    アフリカに100カ所、アメリカ、フランス、スエーデンでは現在の5倍に膨れ上がるだろう。
    米国のエネルギー法案では2005年から2025年にかけて米国の電力需要は2倍になると予想している。
    石油の2兆リットル分を1本のウラン棒でまかなえる。従って、それを消化するには原子力しかない。
    稼動期間の延長もその対策の一つである。更に米国では税金対策を採る。
    現在55カ所で運転している原発では1kW当たり2セントで発電しているが、1.5セントを無税とする。
    ちなみに太陽光発電は1kW当たりの発電コストは20〜30セント、風力発電は10セント、
    一般の発電は数セントだ。燃料電池の実用化にはあと15年はかかるだろう。
    参 : スリーマイル島原発事故日本の原発
ベクレル(becquerel:Bq) : 土や食べ物などに含まれている放射能物質が、
    放射線を出す能力(放射能)の量(強さ)を表す単位で、SI組立単位の一つである。
    1秒間に1つの原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量が1ベクレルである。
    たとえば、370Bqの放射性セシウムは、毎秒ごとに370個の原子核が崩壊して放射線を発している。
    シーベルトは、人間が放射線を浴びた時の影響度を示す単位で、ベクレルをシーベルトに
    換算するには放射性物質の種類や、飲食や吸入など体内に入るルートなどで異なる係数をかける。
    なお、放出する放射線の強さ(エネルギー)とは異なる。ベクレルという名称は、
    ウランの放射能を発見しノーベル物理学賞を受賞したフランスの物理学者アンリ・ベクレルに因む。
    ちなみに、1キュリーは3.7×1010ベクレル。
    水や牛乳の規制値にあたる300ベクレルの放射性ヨウ素が出た物を1キロ食べると、
    人体影響は6.6マイクロシーベルトになり、胃のX線集団検診を1回受けた時の約90分の1に相当する。
包括的核実験禁止条約 = CTBT(別掲)
放射性廃棄物(ほうしゃせいはいきぶつ) : 核関連廃棄物。核廃棄物。核のごみ。
    原子炉などの原子力施設や使用済み核燃料の再処理工場、
    ラジオアイソトープを使用する工場や病院、研究室など、
    放射性物質利用の副産物として発生する放射性物質を含む廃棄物の総称をいう。
    放射性核分裂生成物、放射性物質によって汚染された衣類・器具やその洗濯・洗浄に用いられた水、
    閉鎖施設そのものなどのすべてを含む。
     核燃料サイクルの放射性物質は、一般に高レベルの廃棄物、
    超ウラン廃棄物、低レベル廃棄物の3種類に大別される。
    これらの廃棄物は、軍事(アメリカの防衛計画から発生したもの)、あるいは商業(原子力発電所
    核燃料サイクルの過程で発生したもの)のどちらかの過程から発生したものである。
     高レベル放射性廃棄物は、原発の使用済み核燃料から再利用されるプルトニウムウラン
    取り出した後に残る放射性物質で、そばに20秒いるだけで死ぬほど、放射能が強い。
    このような危険性の高い物質を処分するには、地下300メートルより深い、
    安定した岩盤に、まわりを粘土で包んだ上で地層中に埋設する。
    その際、「キャニスター」というステンレス製の容器にガラス固体化した放射性物質を封入し、
    鉄製の「オーバーパック」の中に閉じ込める。さらに、その周辺を「緩衝材」という粘土で包む。
    これらの人工的に設けられる障壁を「人工バリア」といい、地層が物質を長期にわたって
    固定する働き(天然バリア)と組み合せた「多重バリアシステム」により、適切に処分される。
     現在、使用済み核燃料は、青森県六ケ所村の再処理工場や全国の原発内のプールに保管されている。
    2007年11月に再処理工場が本格稼動すれば、処理後に年間1千本余りのガラス固体化が出てくる。
    一時的に再処理工場の隣の貯蔵管理センターで保管するが、青森県は県内で最終処分することを
    認めていない。そこで高レベル放射性廃棄物の最終処分場が必要になるが、
    処分場にふさわしいかどうかを調べる文献調査に応募したのは高知県の東洋町だったが、
    町長のリコール運動が起きた。外国で処分地が決まっているのはフィンランドと米国だけだが、
    米国は地元の反対や安全基準の見直しなどがあり、最終処分場の建設は始まっていない。
放射性物質(ほうしゃせいぶっしつ) : 放射能放射線を出す能力)を持つ物質の総称で、
    ウランプルトニウム、トリウムのような放射性元素もしくは放射性同位体、外部からの
    放射線にさらされることにより核反応を起こし放射性同位体となった(放射化された)物質を指す。
     ●原子炉で燃料として使用する核分裂性物質を、核燃料、核燃料物質という。
     ●核燃料となる物質、あるいはその原料を核物質という。
     ●放射線療法などで使用する放射線を生み出す放射性物質を、放射線源という。
     ●原子力施設や放射線利用施設などで発生する放射性物質を含む廃棄物を、放射性廃棄物という。
    放射性物質は時間とともに崩壊し、最終的には放射能を持たない安定な同位体となる。
    その期間を示す指標として半減期という値を用いる。半減期は核種により異なり、
    1マイクロ秒に満たないものから、ビスマス209の1900京年に及ぶものがある。
    同じ元素(鉄)でも、質量数55では2.73年、質量数61は5.98秒のように異なる。
     原子力発電所の事故で、住民の健康への影響が問題になることが多いのは、
    放射性のヨウ素131セシウム137、ストロンチウム90などがある。
    ヨウ素131は、体内に入ると甲状腺に長くとどまり、甲状腺がんの原因になることもあるが、
    薬で一定の予防や治療ができ、放射能が半分になるまでの期間である「半減期」も8日間と短い。
    セシウム137やストロンチウム90は放射線を出して壊れ、半減期が約30年間と長いため、
    食べ物などから体内に取り込まないように予防が大切で、これらは体内で骨や筋肉の成分などとして
    蓄積しやすい性質をもっているが、セシウムは100日ほどで排出され半減する。
放射線(ほうしゃせん) : 放射能から放出される非常に大きなエネルギーを持った、
    光の仲間の電磁波や高速の粒子のことで、いわゆるアルファ線、ベータ線、ガンマ線などがあるが、
    目に見えない光の一種である。医療で使うX線は、機械で発生する放射線である。
    しかし、放射線は、光とは違い目でみたり人間の五官では感じることはできない。
    物質中を放射線が走ると、その道筋にそって物質の分子が陽イオンと陰イオンに分かれる
    現象(電離)が起きる。光も、紫外線や赤外線も「広い意味」で放射線の仲間で、
    どれも電離を起こすわけではない。放射線治療や原子力の分野で「放射線」というときは、
    空気などを直接または間接に電離する放射線だけをいう。
    放射線は光を浴びるという意味で「被曝」を用いるが、爆弾の被害を受けるのは「被爆」を使う。
    放射線はなぜ「がん」に効くのか
    日常的な皮膚の擦り傷や切り傷がいずれ治るように、正常な細胞はDNAに傷を受けても、自分で治す
    力を秘めている。ところが、がん細胞は無限に増殖する力は強くても、DNAの傷を治す力が弱いため、
    放射線治療は、この正常細胞とがん細胞の回復力の差を利用している。一度に少量の放射線を
    照射してがん細胞を殺し、正常細胞が回復するまで時間を空けて、翌日などに次の照射をする。
    これを20〜30回繰り返す。ただ、日常でも深い切り傷がなかなか治らないように、
    放射線量が多すぎると、正常細胞も修復ができない。そのため、治療ではコンピューターを用いて、
    正常組織の被曝を極力抑え、がんに放射線が集中するようにしている。
    放射線の人体への影響(放射線の健康被害)
    放射線が人体に与える影響には、被曝した本人への身体的影響と、
    子孫にあらわれる遺伝的影響がある。身体的影響には、被曝から数週間以内の
    早期に出てくる脱毛などの症状と、数カ月以降になって出てくる白血病など長期的な影響がある。
    早期影響は原発のごく近くで大量の被曝をした場合でないと起きない。長期的な影響は
    数十年に及ぶと考えられている。広島、長崎の原爆被爆者の協力を得て調べた調査では、
    白血病や乳・肺・甲状腺などのがんのリスクが被爆者では高くなっている。
    ただし、リスクは被曝した放射線量による。線量が低ければ、はっきりした影響はみられない。
    (1)放射線障害
       人体が高レベルの放射線を受けたときの影響(放射線障害)には、大きく「身体的影響」と
       「遺伝的影響」とに分けられる。身体的影響は放射線を受けた個人だけにあらわれる影響であり、
       遺伝的影響とは放射線を受けた人の子孫に現れる影響のこと。
       なお、特殊な場合で、放射線を受けた胎児に現れる影響は、身体的影響になる。
       1.身体的影響:全身に高レベルの放射線を受けたときの身体的影響には、数週間以内に
         影響の現れる急性効果と、数年から数10年先にあらわれる晩発効果がある。
         身体的影響の現れ方は、受けた放射線の量が同じでも年令、性別、個人差などによって
         差があり、また、胎児や子供は大人に比べて放射線に対して感受性が高いと考えられている。
       2.遺伝的影響:生殖腺が高レベルの放射線を受けると、生まれてくる子供に異常があったり、
         正常に生まれても後の世代に影響を及ぼすことがある。これらの遺伝的影響は、
         放射線によって生殖細胞に突然変異が起きて生じるものだが、
         自然に起こる突然変異と現れ方が同じなので、区別は非常に難しいとされている。
       3.回復現象:少量の放射線を長時間にわたって受けるる場合と一度に同じ量の
         放射線を受ける場合とでは、影響は前者の方がはるかに少なくなる。
         これは、細胞や組織には放射線による損傷を修復する能力があるからです。
    (2)放射線障害と限界線量(しきい値)
       放射線の障害には、ある量以上の放射線を受けないとおこらないもの(非確率的影響)と、
       受ける線量がゼロでない限り、小さい確率ではあるが起こるとされているもの(確率的影響)がある。
       つまり、前者は限界線量(しきい値)があり、白内障や不妊などで、
       後者は限界線量(しきい値)がないと考えられる「がん」や遺伝的影響である。
       放射線による人体への影響については、被ばく線量が非常に高いレベル(数百ミリシーベルト)に
       ついては認められているが、微量の放射線(数ミリシーベルト以下)では何らかの影響が
       認められたケースはこれまでに確認されていない。しかし、放射線防護の立場からは、
       たとえ確率はごくわずかでも受けた線量に比例して障害は生ずるとする方が安全であり、
       このような仮定にたって放射線防護の対策がとられている。
    
    放射線量
    参 : 急性放射線障害晩発性放射線障害被曝線量
放射線影響研究所(Radiation Effects Research Foundation:RERF)
    ほうしゃせんえいきょうけんきゅうしょ : 放影研。旧ABCC。
    広島・長崎の原子爆弾の被爆者における放射線の健康影響を調査する科学研究機関で、
    1947(昭和22)年3月に広島、1948年に長崎に米国が設置した
    原爆障害調査委員会(ABCC)の業務を引き継ぎ、1975(昭和50)年4月に設立された。
    日米両政府が折半した予算をもとに、広島、長崎の研究所で両国約250人の職員が共同調査している。
    ニつの研究所では、臨床医学、疫学、遺伝学、分子生物学、統計学、
    およびコンピュータ科学など諸分野における最新の方法を駆使しながら、
    被爆者とその子孫について、被曝線量に基づいて放射線の影響を調査研究している。
    目的 : 原爆被爆者の追跡調査を行うことにより、放射線の人体に及ぼす医学的影響および
     これによる疾病を調査研究し、被爆者の健康保持および福祉に貢献するとともに、
     放射線の人体への影響に関する貴重なデータを提供し、人類の保健の向上に寄与することである。
    設立の経緯 : 1945(昭和20)年8月に広島・長崎に原子爆弾が投下され、
     多くの原爆被爆者を出した翌9月より、日米合同で被爆者に対する影響調査が開始された。
     1947年3月に米国原子力委員会の資金によって、米国学士院が放射線影響研究所の前身である
     原爆障害調査委員会(ABCC)を設立し、被爆者の健康について追跡調査を始め、翌年、
     厚生省国立予防衛生研究所がABCCに参加し、共同して被爆者の広範な健康調査を行ってきた。
     1975年4月、さらに調査研究を続行するため、ABCCを再編成し、
     日本の外務・厚生両大臣共同所管による財団法人放射線影響研究所が設立された。
    組織 : 日米両国の理事で構成される理事会により運営管理され、
     日米の専門評議員で構成される専門評議員会の勧告を得て調査研究活動が行われている。
     寿命調査、成人健康調査、遺伝学的調査、胎内被爆者調査、原爆被爆者の子供に関する調査、
     放射線生物学調査、細胞遺伝学調査、免疫学調査、分子疫学調査、統計学、
     原爆放射線量推定などの調査研究が、広島・長崎の各研究部門で分担し、実施されている。
    参 : 放射線影響研究所(HP)、ヒロシマの今から過去を見て回る会(HP)
放射線管理区域(ほうしゃせんかんりくいき) : 人が放射線の不必要な被曝を防ぐため、
    放射線量が一定以上ある場所を明確に区域し人の不必要な立ち入りを防止するために設けられる
    区域である。「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」によって、
    一般人の被曝線量は1mSv/年以下としなければならないと定められている。
    つまり、年間被曝線量が1mSvを超える地域は「放射線管理区域」である。
    事業者は●必要のある者以外の立ち入りを禁止●労働者の健康障害の防止に必要な事項を掲示
          ●労働者の被爆線量を測定、などの防護措置を取る必要がある。
放射線管理手帳(ほうしゃせんかんりてちょう) : 原子力発電所をはじめとした
    各種原子力施設で作業する従事者の被曝線量や健康診断結果などを記載する手帳のことで、
    これがないと放射線管理区域内で作業をすることができないことになっている。
    ただし法的根拠はなく、財団法人・放射線影響協会の放射線従事者中央登録センターと電力会社、
    元請会社、主な下請け会社などで自主的に運用している。
    作業中は本人たちの手元にはなく、会社側が預かっているケースが多いとされる。
    1955(昭和30)年)頃から、放射線を扱うような施設を持った大手メーカーが自主的に作成したのが
    始まりといわれている。しかし、1970(昭和45)年頃から、原子力発電所が建設されるにつれて、
    電力事業者やその他メーカでも個々に同様な手帳を作成するようになった。
    このような状況の中で、1976(昭和51)年に原子力関係施設における放射線作業者の
    被曝線量の一元管理に向けての検討を開始した。1977(昭和52)年11月に
    財団法人放射線影響協会に従事者中央登録センターが設置され、原子炉等規制法関係諸規則に
    基づく放射線管理記録の引き渡し機関として1978(昭和53)年1月に科学技術庁長官から、
    同年12月に通商産業大臣からそれぞれ指定を受けた。
    そして、1979(昭和54)年4月から放射線管理手帳制度の運用が開始された。
    記載内容 : 放射線管理手帳は、原子力施設に立ち入る者の被ばく前歴を迅速、
     的確に把握するとともに、原子力施設を運営している原子力事業者に対して管理区域内作業に際して
     必要な放射線管理情報を伝達することに用いられている。この手帳には、以下のものが記されている。
     ●顔写真●登録番号●氏名●生年月日●発行歴●異動経歴●被ばく歴
     ●電離線放射線健康診断記録●放射線防護教育歴
放射線火傷(ほうしゃせんやけど) → 火傷
放射線量率(ほうしゃせんりょうりつ) : たんに「放射線量」とも呼ばれ、その場所の空気中で
    どれだけの放射線が飛び交っているかを表わす量で、普通、レントゲン/時という単位が使われる。
    自然放射線によるバックグラウンド線量率は、
    通常10マイクロレントゲン/時(0.00001レントゲン/時)程度である。 参 : 被曝線量
放射能(ほうしゃのう) : 原子核が壊れながら放射線を出す能力、またはその物質のことをいう。
    放射能がこわいのは、その放射線が、我々の体の細胞や遺伝子を傷つけるからである。
    放射能が地面にあると、そこから出る放射線により、我々の体は外から被曝する(体外被曝)。
    放射能を含んだ空気を吸ったり水や食物を取り込むと、体の中の放射能から被曝する(体内被曝)。
    放射能の強さ(毎秒どれだけの数の放射線を出しているかのめやす)を表わすのに
    キュリーという単位を用いる。ある不安定な物質(元素)が、
    みずから放射線を出してほかの物質(元素)に変わる性質を表す場合と、
    この不安定な物質が1秒間に他の物質に変わる量(能力)を表す場合とがある。
    この不安定な物質を放射性物質という。つまり、放射線は「飛び出てきた」ものだが、
    放射能は「それを出す」側に関係する言葉で、例えば、もえている炭火から出る光が放射線に相当し、
    炭が放射性物質、炭火のもっている光を出す能力が放射能に相当することになる。
    また、放射能の強さを、毎秒1回の崩壊をする放射能の強さを1ベクレル(Bq)として表すこともあり、
    これが多ければ多いほど放射能が高い、または強いと言われる。
    身近にある物に例えると、懐中電灯を放射性物質とすれば、放射能は「光を出す力」で、
    実際に懐中電灯から出る光が「放射線」に例えられる。
    放射能は物の重さなどと違い、時間とともに次第次第に減っていく。
    その減り方を表す言葉が「(物理学的)半減期」で、最初100あった量が、
    半分の50に減るまでの時間をいう。また、半減期は放射性物質の種類によって異なる。
    なお、一般的にいって、半減期が長ければ長いほど単位質量・単位時間あたりの
    放射線の量は少なくなる。原子力に使うウラン−235はアルファ線、ガンマ線を出し、半減期は7億年、
    ウラン−238はアルファ線を出し、半減期は45億年、人工のプルトニウム−239でもアルファ線を出すが、
    半減期は2万4千年といわれている。 参 : セシウム137
放射能汚染水(ほうしゃのうおせんすい) : 福島第一原発では2号機のタービン建屋地下や
    外の坑道に高濃度の放射能汚染水がたまっている。これを移す場所を確保するため、
    もともとあった汚染度の低い水を海へ放流している。東電は「低レベル」と呼んでいるが、
    あくまで相対的な汚染度の違いで、基準が法で定められているわけではない。
    原子炉等規制法が定める海水での濃度の基準に比べると100倍程度の濃度で、この水1万トンに
    含まれる放射能の量は、高濃度汚染水10リットル程度に含まれる量と同じ水準になる計算だ。
    (2011.4.7、朝日新聞より)
    高濃度汚染水の流出 : 福島第1原発事故で東京電力は2011年4月2日、
     2号機の取水口付近にある作業用の穴(ピット)に高濃度の汚染水がたまり、
     周囲を固めたコンクリート壁に生じた亀裂を通じて海に流出しているのを確認したと発表した。
     ピットは縦1・2メートル、横1・9メートル、深さ2メートルで、
     地下の横穴を走る電源ケーブルに地上から近づき、保守管理をするのに使われている。
     東電は汚染水が海へ拡散するのを防止するため、1〜4号機取水口前面や取水口を囲む
     堤防の隙間(すきま)に「シルトフェンス」を設置するなどの対策を取った。
     高濃度の汚染水が海へ流出した問題で東電は4月21日、汚染水によって
     放出された放射性物質の総量は、6日に止水するまで少なくとも520トンが流出し、
     4700テラベクレル(ベクレルは放射線を出す能力の強さ、テラは1兆倍)の
     放射能が含まれていたと推定されると発表した。
     東電の保安規定で定めた同原発1〜6号機の年間限度の約2万倍に相当する。
     放出されたと考えられるのは、放射性ヨウ素が2800テラベクレル、放射性セシウム134と137が
     各940テラベクレル。集中廃棄物処理施設(集中環境施設)などから海に放出された
     低濃度の汚染水に含まれた放射性物質の総量(0.15テラベクレル)の約3万1000倍に当たる。
     この高濃度汚染水の収容先を確保するため、東電は4〜10日にかけ、
     敷地内の比較的濃度の低い汚染水1万393トンを意図的に海に放出した。
     放射能の量は1500億ベクレルと見積もられた。
    参 : [YouTube](高濃度の汚染水 流出止まる)

    福島第一原発放射能汚染水放水に対する抗議
     2011年4月4日、政府は福島第一原発施設内の放射能汚染水を、
    漁業関係者に何の相談もなく大量に放水することを決定し実行するという暴挙に出た。
     本会は、東京電力の関係者に対し高濃度放射能汚染水の海への流出を一刻も早く止め、
    これ以上の海への流出を行わないことを強く申入れてきたにもかかわらず、
    国と東京電力はこれを無視し、我が国漁業を崩壊に導く放射能汚染水の放水を強引に実行した。
     地震による施設の損壊状況の把握や放水による水の処理等、
    当然として行わなければならない手立てを何ら行わず、
    このような重大な事態を引き起こした、国と東京電力の責任は到底許されるものではない。
     海で生計を立てている全国の漁業関係者は、無責任な対応に計り知れない強い怒りを抱いている。
     我が国漁業を死に至らしめないため、汚染水の放水を一刻も早く中止するとともに、
    高濃度汚染水の流出防止にあらゆる手を講じなければならない。
     今回の国と東京電力の一方的な決定によりなされた暴挙と高濃度汚染水の流出が引き起こす
    あらゆる問題への対応や、直接、間接を問わず関係者の被る全ての被害に対する補償は、
    国と東京電力の責任において実施することを直ちに明らかにすることを求める。
       平成23年4月5日                          全国漁業協同組合連合会
    放射能汚染水を海へ、「日本に甘くみられた」…韓国が非難
     東京電力が放射能物質を大量に含んだ汚染水を海に流していることを受け、
    韓国では自国に知らせなかった日本政府への非難とともに、韓国政府に対しても野党から
    「日本に甘く見られている」、「政府の対応が遅い」として強力な対応を求める声が強まった。
     福島原発の汚染水を海に放出する作業について、韓国では近隣国でもっとも影響を受けやすいとして
    懸念が高まり始めた。韓国政府は2011年4月4日、「汚染水の海上投棄は国際法上の問題になる
    素地がある」として日本政府に検討を促した。海への汚染水放出が国際法上で問題にならないのか
    関連分析を急いでおり、問題が確認された場合には強く抗議する予定だ。
     野党の先進党は5日、「日本はもっとも近い韓国に事前協議はおろか、
    了承を求めることも通報もなかった」と指摘、「(韓国政府が)どれだけ甘くみられていたのか」、
    「外交ルートを全面的に稼働して日本に働きかけるべき」と強い不満を示した。
     先進党は政府の情報収集能力や対応にも批判を強めた。「政府は放射能汚染水の海上投棄について
    報道をみて知った」、「原発事故から1カ月になるのに政府は公式的な情報元も確保できていない」、
    「もっと情けないのは情報を待っている政府の姿勢」と厳しく追及した。
     韓国政府は各地の放射能数値をインターネットで公開し、日本産農水産品に加え、
    韓国国内の農産品に対しても放射能汚染の検査を始めた。放射能汚染への不安を払しょくすることが
    狙いだが、「安全」と繰り返す政府の見解と連日報じられる放射能関連報道は大きな食い違いがあり、
    放射能汚染への不安は高まる一方だ。(サーチナ・ニュースより)
    日本の放射能汚染水 早ければ3年で中国に到達
     福島第一原発の放射能漏れ事故は、中国の海洋や海産物に大きな脅威となり、注目が集まっている。
    東京電力(東電)は、漏出している放射線量について、今後3カ月で着実に減少し、
    6〜9カ月で「原子炉の冷温停止」が実現する見通しを明かした。「南方日報」が報じた。
     東電の見通しはすなわち、放射能汚染水が今後も漏れ続けることを意味する。
    中国農業部は2011年4月19日、中国産海産物に対する事故の影響について話し合うため、
    漁業・海洋専門家を北京に招集した。出席した専門家は、
    「海洋に流入した放射能汚染水が環流に乗ってすぐさま中国の海域に入ることはあり得ない。
    しかし、長期的スパンで見ると、その影響は避けられない」との見方を示した。
     会議に出席した海洋専門家によると、福島原発から漏出した放射能汚染水が、
    直接海流に乗って中国海域に到達することはあり得ないという。
    というのも、中国の海域外を流れる黒潮(暖流)系水の力が強いため、
    日本列島北部周辺を流れる東北から西南方向に向かう親潮(寒流)が中国の海域に入ることは
    不可能であるからだ。放射能汚染水が中国海域の太平洋環流に到達するまでに、
    最も早くて3年から5年、最長で10年くらいかかる。
    従って、その頃には、汚染水に含まれる放射性物質はかなり希釈されていると見られる。
     また、会議に出席した漁業専門家は、「中国国内の各海域(渤海、黄海、東シナ海、南シナ海)で獲れた
    海産物は、安心して食用にできる」と話した。農業部漁業局は、年内は西太平洋遠洋での
    漁業生産について、極めて慎重な態度で臨む構えを示している。(2011.4.21、人民網日本語版より)
放射能測定器(radiation detector)ほうしゃのうそくていき : 放射線(量)測定器。放射線検出器。
    測定器内のガスなどに放射線がぶつかると電気や光が出る。いくつかのタイプがあるが、
    それを検出することで測定する。放射線測定器には、1種類のみを利用した測定器が多いが、
    複数種類の測定器を搭載している機種もある。また、同じ測定方法でも、
    測定器の大きさによって感度は変わり、測定器が大きくなるほど高感度になり、価格も高くなる。
    測定器の検出方法や形状によって、表面汚染測定用・空間線量率測定用・ 
    積算線量測定用のいずれかの目的用になっているものもある。
    また、高い放射線に近寄ったときに危険を察知したい場合のアラーム機能も備わっている。
    表面汚染測定では、短距離しか飛ばないβ線を検出する機種が中心で、
    空間線量測定用・積算線量測定用は、γ線のみで測定するので、γ線専用の機種が多い。
    ある程度は両用できるタイプもあるが、検出可能な放射線・感度とあわせて考慮し、
    目的に適したものか確認する必要がある。
    一般的に、β線を測定できるGM管を利用したものは表面汚染測定向き、
    γ線のみ測定のシンチレータを利用したものは空間線量率・積算線量測定向きである。    
放射線測定器の種類
種類 検出可能な放射線 エネルギー
分解能
感度 備考 価格
(万円)
α線 β線 γ線 中性
子線
GM管(ガイガー
 ミュラー計数管)
(ガイガー
 カウンター)
×
カウントのみ
(一部  
 例外有り)
α線を検出できるのは
マイカ窓のもののみ。
野菜などの表面が汚染
されていないか調べる。
定期的な調整が必要
33
(5万円
くらい
〜)
NaI(TI)
シンチレータ
☆☆☆☆☆ 27

56
CsI(TI)
シンチレータ
☆☆ ☆☆☆☆
LaBr3(Ce)
シンチレータ
☆☆☆ ☆☆☆ エネルギー分解能が
NaI(TI)の約2倍
CdTe(CdZnTe)
シンチレータ
☆☆☆☆ ☆☆☆
He3
シンチレータ
Li6シンチレータ
Ge半導体 ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 液体窒素による
冷却が必要。
食品の測定に用いる
Si(Li)
半導体検出器
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ Ge半導体とほぼ同じ。
低エネルギー領域
測定向き
電離箱…放射線が空気にぶつかって飛び出した電子を増幅せずにそのままの量を計測する。
ガイガーカウンター
…仕組みが簡単で弱い放射線も検知でき、食品などの汚染の有無を調べるには
 向いているが、有害さの程度はわからない。性能はGM管の大きさで決まり、大きいほど能力は
 高まるが、市販の数万円程度のものだと、真の値の半分になったり、2倍になったりとずれが出る。
シンチレーションカウンター…シンチレータを使い、放射線の回数のみ数えるもの。その空間の
 放射線量を、人体に与える影響を示すシーベルトという単位で測る。定期的な調整が必要。
スペクトロメータ…放射線のエネルギーの高さを見て、
 放射性物質の種類の特定ができる(核種分析)機能があるもの。
…価格は日立アロカメディカルの製品
(注)●外国製品などに数万円で買えるものもあるが、正しくない測定値を表示するものもある。
    6万円で買った中国製のガイガーカウンターは使い物にならず、ゴミ箱に捨てたそうだ。
   ●同じ場所でも測定器の向きや高さによって値は大きく変わり、
    放射性物質のラジウムをわずかに含むコンクリートの近くは高い放射線量が出やすい。
   ●一般の人が用いる簡易なカウンターは、どのあたりの放射線量が高いか、
    目安を知るのに使える程度なので、線量計の値に頼り過ぎないこと。
    毎時0.1マイクロシーベルトの単位まで正確に測るのは、簡単に持ち運べない大きさで、
    数百万円もする装置が必要となる。
放射線の検出方法と検出器
検出方法 検出器名 主な測定対象放射線
電離作用を利用するもの 気体 電離箱 α線、β線、γ線
GM計数管(ガイガーカウンター) β線、γ線
比例計数管 中性子線
ガスフロー型計数管 α線、β線
固体 半導体検出器 α線、γ(X)線
励起(蛍光)作用を利用する物 NaI(TI)シンチレーション検出器 γ線
ZnS(Ag)シンチレーション検出器 α線
プラスチックシンチレーション検出器 β線
熱ルミセンス(蛍光)線量計(TLD) γ(X)線
蛍光ガラス線量計 γ(X)線、β線、中性子線
写真作用を利用するもの フィルムバッジ γ(X)線、β線、中性子線

放射線を計測する場合、気体や固体、液体との相互作用を利用して計測を行う。
電磁波放射線(γ線、X線)や荷電粒子(α線、β線)等の放射線は物質との相互作用で
イオン対(電子と陽イオン等)を生成させる。この1対の正負イオンを作るのに
必要なエネルギーをW値といい、気体では気体の種類によらずほぼ一定の35eV前後である

    参 : はかるくんWeb(文部科学省・簡易放射線測定器「はかるくん」貸出し事業ホームページ)
        財団法人・放射線計測協会(HP)、[YouTube](放射能測定器、ガイガーカウンター商品比較)、
        放射線測定器(HP)

    1万5750円の家庭用放射線測定器がエステーから登場
     エステーは2011年10月20日から、家庭用の放射線測定器「エアカウンター」を発売すると発表した。
    一般家庭でも簡単に、放射線の人体への影響を表す単位である「μSv/h(毎時マイクロシーベルト)」の
    数値を測れる。価格も1万5750円と、手ごろな水準に抑えた。
     同機を地上から1mの高さで持ち、水平に構えてボタンを押すと測定を開始。
    放射線の一種である空気中のガンマ(γ)線を測り、セシウム(Cs137)基準の換算式に当てはめ、
    0.05〜9.99μSv/hの範囲で表示する。首都大学東京の放射線安全管理学の専門家である、
    福士政弘教授の監修の下、同大学と共同開発。国の認定を受けた第三者機関による校正を
    行っているという。同教授が併せて監修した、放射線の基礎知識を掲載した小冊子も付属する。
     本体デザインは、同社の「かおりムシューダ」などを手がけたアートディレクターの佐野研二郎氏が
    担当した。単4アルカリ電池2本で駆動し、1日1時間使用した場合、
    約2カ月使用可能(連続使用の場合は約50時間)という。本体サイズは82×62×34mmで、
    重さは約105g。関東、東北を中心としたドラッグストアやホームセンター、ネット通販などで販売する。
     エステーが10月20日に発売する「エアカウンター」
メルトダウン = 炉心溶融
ヨウ素(Iodine)ようそ : 周期表第17族に属し、原子番号53の元素。
    元素記号はIあるいは分子式がI2と表される二原子分子であるヨウ素の単体の呼称。
    1811年フランスのクールトアが海藻灰の浸出液から各種の塩を除いた母液に過剰の硫酸を
    加えたところ、赤紫色の蒸気が発生した。これを冷却して暗紫色の結晶が得られたが、
    彼はこれを新しい元素であると考えた。1813年フランスのゲイ・リュサックおよび
    イギリスのH・デービーがこのことを確かめ、その蒸気が紫色であることから、
    ギリシア語で「すみれ色」を意味する「iodes」にちなんで命名された。
    ハロゲン元素の一つで、ヨード (沃度) ともいう。融点は113.6℃であるが、昇華性がある。
    固体の結晶構造は紫黒色の斜方晶で、反応性は塩素、臭素より弱い。水にはあまり溶けないが、
    ヨウ化カリウム水溶液にはよく溶ける。単体のヨウ素は、毒劇法により医薬用外劇物に指定されている。
    ヨウ素131 : 131I。放射性ヨウ素とも呼ばれるヨウ素の放射性同位体のうちの一つ。
     放射性崩壊による約8日間の半減期を持つ。主に医療や製薬の用途がある。
     また、核分裂生成物のうち放射能汚染の原因となる主要な存在として、
     1950年代の野外核実験やチェルノブイリ原子力発電所事故だけでなく、
     今日の日本の原子力事故に至るまで健康に多大な影響をもたらす存在として認知されている。
     主要なウランプルトニウム、間接的にトリウムのそれぞれの核分裂生成物でもあるため、
     全ての核分裂生成物の合計重量の3%近くを占める。
     ベータ崩壊による顕著な作用として、それが突き通る細胞から最高数ミリメートル内の細胞で
     突然変異および細胞死を引き起こす。放射線の結果として体内に入ると甲状腺に集まり、
     癌などの原因となる恐れがある。安定ヨウ素剤などで体内への吸収を防げる。
ヨウ素剤(Iodine tablet)ようそざい : ヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムの製剤として内服用丸薬、
    シロップ薬、飽和溶液(SSKI)、粉末状の塩等として製剤される他、アルコール溶液や
    ポリビニルピロリドンとの錯体として製剤される。放射性同位体の崩壊を利用し放射線医学試薬として、
    または安定同位体を利用して原子力災害時の放射線障害予防薬や造影剤の原料として
    用いられるほか、強い殺菌力を利用し消毒薬、農薬などに用いられる。
    古くから、ヨウ素が持つ強力な殺菌効果を利用し、ヨードチンキやルゴール液としてうがい薬、
    外用消毒薬として市販されてきた。また現在ではポリビニルピロリドンとの錯体として、
    ポピドンヨードとして販売され、強い殺菌力と比較して人体に対する毒性が低いため広く用いられている。
    またヨードメタンやジヨードメタン、ヨードホルム等の有機ヨウ素化合物は強い殺菌力および殺虫力を持ち、
    農薬として土壌くん蒸等に利用される。カビや線虫に対する効果が高く、多くが劇薬指定される。
    安定ヨウ素剤 : 放射性物質の一種であるヨウ素131が体内の甲状腺に取り込まれるのを防ぐ薬で、
     体内被曝による甲状腺がんを防ぐ効果がある。あらかじめ吸い込むことが予想される場合に
     予防的に飲んだり、吸入後に治療的に飲んだりすることがある。
     ただし、一時的に副作用で甲状腺機能が低下する可能性もある。成人は甲状腺がんになる恐れが
     ほとんどないことから、原子力安全委員会によるヨウ素剤予防投与の方針は、
     40歳未満の人を対象として、1回のみの服用としている。
     また、ヨウ素過敏症の人などは服用してはいけないとしている。
     ヨウ素は同位体の種類が多く、その大半が放射性同位体として知られているが、
     自然に存在するヨウ素のほぼ100%が安定同位体のヨウ素127であり、「安定ヨウ素」と呼ばれる。
     安定ヨウ素はカリウム塩の「安定ヨウ素」製剤として、丸薬または内服液として用いる。
     動物の甲状腺は、甲状腺ホルモンを合成する際に原料としてヨウ素を蓄積する。
     原子力災害時等により、不安定同位体の放射性ヨウ素を吸入した場合は、気管支や肺または、
     咽頭部を経て消化管から吸収され、その10〜30%程度が24時間以内に甲状腺に
     有機化された形で蓄積される。放射性ヨウ素の多くは半減期が短く、その代表としてよく知られる
     ヨウ素131の半減期は8.1日であり、β崩壊することで内部被曝を起こす。
     放射性ヨウ素の内部被曝は甲状腺癌、甲状腺機能低下症等の晩発的な障害のリスクを高めることが、
     チェルノブイリ原発事故の臨床調査結果より知られている。
     大量にヨウ素を摂取した場合、甲状腺にヨウ素が蓄積される。それ以後にさらにヨウ素を摂取しても、
     その大半が血中から尿中に排出され、甲状腺に蓄積されないことが知られている。
     それを応用したのが、放射線障害予防のための「安定ヨウ素剤」の処方である。
     非放射性ヨウ素製剤である「安定ヨウ素剤」を予防的に内服して甲状腺内のヨウ素を安定同位体で
     満たしておくと、以後のヨウ素の取り込みが阻害されることで、放射線障害の予防が可能である。
     この効果は本剤の服用から1日程度持続し、後から取り込まれた「過剰な」ヨウ素は速やかに
     尿中に排出される。また、放射性ヨウ素の吸入後であっても、8時間以内であれば約40%、
     24時間以内であれば7%程度の取り込み阻害効果が認められるとされる。
臨界事故(りんかいじこ) : 核燃料物質を取り扱う設備・機器が想定外の事態や
    不注意な操作などにより制御できなくなり臨界に達してしまうことをいう。
    米国では1940年代に研究施設で臨界事故が起き、日本では1999(平成11)年9月30日に
    茨城県東海村の民間ウラン加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」で発生した事故は、
    我が国初の臨界事故で、2人の作業員が多量に被曝(ひばく)して亡くなった例がある。
    周辺の一般の方にも被ばくされた方がいること、施設周囲の方々に避難または屋内退避が
    要請されるなどの防災措置が発令されたこと、またその原因が違法の手順によるとされていること、
    など、我が国の原子力安全の根幹にかかわる深刻な事故で、
    スリーマイル島の事故と同程度のレベル5の大事故あった。
    臨界を越えると出力が上昇するが、通常は温度の上昇に伴う負のフィードバック効果により
    体系は未臨界となる。JCO臨界事故では、溶液燃料が冷却されることによって、
    一旦は未臨界となった沈殿槽が再び臨界になる現象が見られた。
    参 : 原水爆禁止日本国民会議(HP)、即発臨界
    
    志賀原発で臨界事故、北陸電は国に報告せず
    北陸電力は2007年3月15日、志賀原発1号機(石川県志賀町)で8年前の平成11年、
    定期検査中に89本ある制御棒のうち3本が誤って抜けて原子炉が臨界に達し、
    緊急停止するまで臨界状態が15分間続いていたと発表した。
    事故発生は、茨城県東海村のJCOで起きた臨界事故の3カ月前だった。
    北陸電は当時、こうした経緯について、法律で定められた国への報告を怠っていた。
     北陸電は同日、経済産業省原子力安全・保安院に報告した。
    保安院は「臨界事故と認識している」とし、事態を重く見て、同社社長を呼んで厳重注意する。
    また1号機の運転停止と安全総点検、再発防止策の策定を指示する方針である。
冷温停止(れいおんていし) : 原子力発電所において、通常の原子炉の運転管理で使われる言葉で、
    原子炉モードスイッチが「燃料取替」または「停止」位置にあり、かつ、原子炉稼働中の300℃近い水温を、
    原子炉に制御棒を入れて核分裂を抑え水温が100℃未満で原子炉が安全に停止した状態をいう。
    継続的な安定冷却が保たれた原子炉は放射性物質が放出されない。
     東京電力福島第1原発事故では、核燃料が溶けて炉心溶融(メルトダウン)が起きている上、
    原子炉を覆う建屋が大破しており、通常の定義を当てはめられないため
    @原子炉の圧力容器の底部の温度がおおむねが100度以下A原子炉から大気への
    放射能の漏れを大幅に抑える、の2条件を設けて「冷温停止状態」という表現にした。
    そのうえで東電は安全管理の計画をつくり国の承認を受けた。
    参 : [YouTube](原子炉の「冷温停止」とは?その定義と現在の状況)

    野田首相、福島原発の冷温停止を宣言ウォール・ストリート・ジャーナル日本版より)
     東京電力福島第1原発事故で、政府は2011年12月16日、
    3月の東日本大震災で被災した東京電力福島第1原子力発電所の原子炉について、
    放射性物質の放出が大幅に抑えられた「冷温停止状態」に至ったと宣言した。
     野田首相は、同日開催された原子力災害対策本部の会議で、同原子炉が「冷温停止状態に達し、
    発電所事故そのものは収束に向かったと判断される」と述べ、
    「事故収束に向けた工程表『ステップ2』が完了した」とした。
     首相は同日夕、記者会見を開き、原発の外の被災地域ではいまだに多くの課題が残されていると
    しながらも、原発自体に関しては、「安定して冷却水が循環し、原子炉の底の部分と格納容器内の
    温度が100度以下に保たれ、万一トラブルが生じても、
    敷地外の放射線量が十分低く保たれる」状態が技術的に確認された、と語った。
     同時に、首相は「原発事故との戦いがすべて終わるわけではない」とし、
    事態の安定を目指した段階から廃炉に向けた段階に進む、と述べた。
     政府は、冷温停止状態の達成を受けて、原発周辺の警戒区域や計画的避難区域などの
    区分を見直す方針。野田首相は、帰宅困難区域について、「国として責任を持って中長期的な
    対応策を検討しなければいけない」と述べた。また、首相は、除染費として今年度予算と
    2011年度予算案などで1 兆円超を充てる方針を明らかにし、土地の買い上げを含めて対応するとした。
    原発事故「収束宣言」に疑問
    (朝日新聞2011.12.24「声」より、山形県鶴岡市の会社員・佐藤 正行さん(45歳)の投稿文紹介)
     野田佳彦首相は、福島第1原発の原子炉で冷温停止状態を確認したとして「事故収束」を宣言した。
    今後は30年以上かかる廃炉に向けた活動と避難住民の支援策に移っていく。
    しかし、原子炉が安定した冷温停止状態になったからといって、すぐに事故収束とは言えないと思う。
     原子炉からは今も放射能汚染水が漏れ続け、建屋などに高濃度の汚染水が約7万6千トンたまっている。
    汚染水を処理した後の水も増え続け、貯水先の確保も困難だ。
    溶けた燃料がどんな状態なのかも分からず、不安は尽きない。
     福島県の沿岸部では今もがれきが残り、再整備は進まない。いつ故郷に戻れるかる分からずに
    避難先で暮らす人がまだ多数いる中、事故収束宣言などありえないだろう。
     原子炉内の状態や放射能汚染の状況把握が十分でないまま、本格的な除染作業は来年になるという。
    汚染土壌を保管するための借り置き場の選定も難航し、中間貯蔵施設も決まっていない。
    避難住民が帰還できるまでの課題はまだ多い。
     避難住民が故郷で安心して元の生活ができるようになって初めて、
    本当の事故収束宣言が出せるのだと思う。
     正常運転する原発で用いられる「冷温停止」に、「状態」という
    あいまいな文字を付けて宣言にこだわる姿勢は、幕引きありきの政治的な思惑からで、
    工程表通りの事故対策の進展を国内外にアピールするためのものとしか思えない。
    メルトダウン(炉心融解)した現場を確認した人さえ誰もいないというのに……
    事故収束に向けた工程表の「ステップ2」が終了し、「冷温停止状態」を宣言したことについて、
    世論からも異論が続出し、ネット上の調査では、実に9割以上が違和感を表明しているのだ。

炉心溶融(Core meltdown:コア・メルトダウン)ろしんようゆう : 原子炉の重大事故の一つ。
    原子炉は通常、水で満たされ、炉心にある核燃料が一定温度以上に過熱するのを防いでいる。
    だが、何かの原因で原子炉内の冷却水が失われて炉心の水位が下がり、
    核燃料が水中から露出すると、空だきに近い状態になって炉内の温度が上昇し、
    燃料を入れたステンレス鋼製の原子炉圧力容器(被覆管)を溶かしたり、
    内部の圧力が高まって爆発したりといった最悪の事態に至る非常に危険な原子力事故で、
    通常、多量の放射能の漏洩を伴う。炉心溶融が起こった後、冷却処理を取らなければ、
    水素が発生する化学反応も起きて急激に温度が高くなり、2800度で燃料が溶け出す事態に陥り、
    核燃料の膨大な熱エネルギーによって原子炉圧力容器や格納容器、原子炉建屋などの構造物も破壊し、
    最終的には急激な爆発が起きて外部に放射性物質を大量に放出する危険を持つため、
    原子力発電において、現在までに人類が想定しうる最悪の事故とされる。
    1979(昭和54)年の米国のスリーマイルアイランド原発事故で起きた。
     2011年5月18日の朝日新聞には、「原子炉圧力容器の中の燃料棒は、
    ジルコニウムなどの金属でできた筒(被覆管)の中に、核燃料のウランを小指の先ほどの大きさに
    焼き固めたペレットを何百個も詰めたもので、炉心溶融とはこのペレットが溶けることを言い、
    メルトダウン(meltdown)とは、炉心溶融が進み、燃料全体がどろどろになって棒状の形を失い、
    落下して圧力容器の底にたまることを言う。圧力容器の鋼鉄は1500度で溶けるため、
    メルトダウンが起きると底に穴が開き、溶けた燃料が漏れ出すこともある。」とあり、
    炉心溶融=メルトダウンではなく、辞書ではメルトダウンは「炉心溶解」と訳されていた。
    経済産業省の原子力安全・保安院でも、ペレットが溶けて崩れることを「燃料ペレットの溶融」、
    溶けた燃料棒が原子炉下部に落ちることを「メルトダウン」とする定義を2011年4月に示している。
六ケ所再処理工場(ろっかしょさいしょりこうじょう)
    原発使用済み核燃料から、再利用のためのウランプルトニウムを分離・精製する化学工場で、
    核燃料集合体を3〜4センチの小片にせん断し、硝酸で溶かして、不要な核分裂生成物などと分ける。
    プルトニウムはコンクリート壁で密封したセル(部屋)で扱う。
    電力会社などが出資する日本原燃が青森県六ケ所村に立地した。建設費は約2兆1900億円。
    設備はほぼ完成したが、ウラン試験の結果を基に、必要な手直し作業を検討する。
    年間800トンの使用済み核燃料を処理する計画で、核燃料サイクルの中核施設となる。
     日本原燃六ケ所再処理工場で2006年3月31日午後、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する
    試運転(アクティブ試験)が始まった。試験期間は1年5カ月で、2007年8月の操業開始に向け、
    燃料の精製、脱硝などの工程を行い、機器の性能や安全機能を確認した上で約430トンの
    使用済み核燃料から約二トンのプルトニウムを取り出す。立地協定から21年を経て、
    再処理工場は本格操業に向け、ようやく動き出した。原燃の児島伊佐美社長は
    試験開始後の記者会見で「安全確保を最優先に慎重に取り組む」と決意を語った。
     問題がないことを国が確認すれば、自治体と安全協定を結び本格操業に入る。
    日本原燃は試運転終了時期を2008年に入って2度延期している。 参 : 再処理の工程
    2007年8月の操業開始予定が、いまだに本格操業に入れない理由が、
    処理の過程で出る高レベル放射性廃棄物をガラスで封じ込める
    「ガラス固化体」づくりが難航しているからだというが、
    危険な核施設では処理方法などのすべてが確立してから建設にかかるべきで、
    こんなことでは見切り発車していたことになるではないか。



































































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