肝臓関連(YSミニ辞典)
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B型肝炎(びーがたかんえん) : DNAウイルスであるB型肝炎ウイルス(HBV)の感染による肝炎という
肝臓の病気のこと。主に血液を介して感染する肝炎で、キャリア(ウイルス持続保有者)の大半は、
B型肝炎の母親から生まれるときに感染(母子感染)していたが、現在は乳児に免疫グロブリンを投与し、
さらにワクチンを接種するようになり、母子感染はほぼ予防できる。
成人では性交渉や輸血、注射針などを通して感染し急性肝炎を起こすが、
通常、一過性感染の経過をとり慢性化はしないが、新生児や小児が感染するとウイルスが体内に残る
未発症の「持続感染者」になることがある。こうなると、若い時に軽い肝炎を起こし、
その後、10〜15%の人が慢性肝炎となり、
肝硬変、
肝がんに進む恐れがあるという。
HBVは直径42nmの球形粒子で、イギリスのデーン博士が初めて確認したことから
デーン粒子とも呼ばれる。その表面には厚さ7nmの外殻(envelope)を持ち、
内部にはウィルス本体の遺伝子や遺伝子を複製するのに必要となる酵素などを含む核となる蛋白を持つ
2重構造をしたウィルスで、このHBV体内に入り肝臓で増殖すると、一定の潜伏期間を経た後に、
身体がだるいとか食欲がない吐き気がするとか黄疸の症状が見られる。
これが急性肝炎で成人がA型B型肝炎にかかると劇症肝炎といって、まれに激しい症状を引き起こし、
時には死亡することもあるが、大部分の人は(98%〜99%)1〜3カ月で完全に治癒する。
こういう一過性の感染のほかに感染したウィルスが肝臓に住みついてしまう人たちもいる。
この人たちをB型肝炎持続感染者(HBVキャリア)と呼んでいる。乳幼児期を過ぎてからの
HBVキャリアになる確立はきわめて低く、ほとんどのHBVキャリアは母子感染である。
現在の年齢構成では50〜60歳のいわゆる
団魂の世代に多く約2%くらいいる。
若い世代はHBV母子感染防止事業が実施された1986年以降きわめて少なくなってきている。
一方、B型慢性肝炎になると、肝臓に炎症が起こり、次第に肝臓の細胞が破壊されていくため、
10年〜20年かけて、次第に慢性肝炎から肝硬変へ進行する場合がある。
さらに肝硬変に進行した患者では、その約半数に肝臓癌が発生する。
また無症候性保菌者の場合にも、完全に肝臓からウイルスが消えてしまうわけではないので、
一部の患者では、再び肝機能が悪化する事がある。
国内患者・持続感染者は推定110万〜140万人。
B型肝炎の遺伝子タイプ
タイプ |
多い地域 |
特 徴 |
A |
欧米 |
成人が感染しても慢性化する危険がある。近年日本で増えている |
B |
日本の東北・沖縄 |
症状が比較的軽い |
C |
日本各地 |
肝がんなどを起こしやすい |
他にD(欧州・北アフリカ)、E(アフリカ)、F(中南米)などがある。
2011年5月、B型肝炎の遺伝子タイプ診断薬が保険適用になった。 |
症状 : 全身倦怠感
(ぜんしんけんたいかん)に引き続き
食欲不振・悪心
(おしん)・嘔吐
(おうと)などの症状が出現することがある。
これらに引き続いて黄疸
(おうだん)が出現することもある。医師などの患者以外の人からみた
他覚症状として、灰白色便、眼球結膜、肝臓の腫大
(しゅだい)などがみられることがある。
この場合、右背部の鈍痛や同部に叩打
(こうだ)痛をみることがある。
これが急性B型肝炎(HBVの顕性感染)である。
しかしHBVに初めて感染しても自覚症状がないままで経過し、
ウイルスが生体から排除されて治癒してしまうこともある(HBVの不顕性感染)。
なお、B型肝炎ウイルスの持続感染者(HBVキャリア)が肝炎を発症した場合にも
急性B型肝炎と同様の症状が出現すること(HBVキャリアの急性増悪)があるので、
肝炎の症状がみられた場合には、適切な検査を行なって両者を区別する必要がある。
また、HBVキャリアが、慢性肝炎を発症している場合でも、自覚症状が乏しい場合があるので、
定期的に肝臓の検査を受け、主治医の適切な指導の下に健康管理を行ない、
必要に応じて積極的な治療を受けましょう。
B型肝炎ウィルス感染の予防法
●歯ブラシ、カミソリなど他人の血液が付いている可能性のあるものを共用しない。
●他の人の血液に触るときは、ゴム手袋を着ける。
●注射器や注射針を共用して、非合法の薬物(覚せい剤、麻薬等)の注射をしない。
●入れ墨やピアスをするときは、清潔な器具であることを必ず確かめる。
●よく知らない相手との性行為にはコンドームを使用する。
参 :
予防接種
C型肝炎(しーがたかんえん) : 1988(昭和63)年に発見されたC型肝炎ウイルス(HCV)によって
引き起こされる肝炎という
肝臓の病気のこと。成人で感染しても持続感染し、長い間に、
肝硬変や
肝がんになる人もいる。血液感染をするが、母子感染は少なく、以前は血液製剤や
輸血などの医療行為によって感染していたが、現在は輸血血液は厳しくチェックされ、感染はほぼない。
しかし、いまだに注射器の使い回しなどでの感染がある。国内の感染者は150万人を超えると言われ、
自覚症状がないために感染に気づいていない人も多い。急性肝炎は高率に慢性化し、
慢性肝炎は比較的ゆっくりと進行していくことが多く注意が必要である。
急激な炎症で肝細胞が壊死
(えし)し、死亡する場合もあるが、多くは自覚のないまま慢性肝炎となり、
慢性肝炎になって10〜40年以上経過すると、肝硬変や肝がんに進行する危険もある。
根治につながるインターフェロン治療は、保険適用でも月額で最高十数万円と高額で、
発熱や脱毛などのさまざまな副作用がある。
出産時などに止血剤として投与された血液製剤「フィブリノゲン」などでC型肝炎に感染したとして、
患者らが国と製薬会社に賠償を求めた
薬害C型肝炎集団訴訟の初めての判決が2006年6月21日、
大阪地裁であった。中本敏嗣裁判長は「国の権限不行使は著しく不合理であり違法だ」と述べ、
国と製薬会社の責任を認め、原告13人(請求額計7億5900万円)のうち9人に
計約2億5600万円の支払いを命じた。うち4人は製薬会社のみに賠償を命じた。
危険な血液製剤を放置した国の不作為を厳しく批判する内容で、
国が150万人以上とされる感染者全体の救済措置を迫られるのは必至だ。4人の請求は棄却した。
訴訟は2002年10月、感染者16人が国と製薬企業に損害賠償を求めて大阪、東京の両地裁に提訴。
その後、福岡、名古屋、仙台の3地裁へも相次ぎ、現在係争中の5地裁の原告は96人。
2006年8月には福岡地裁での判決も控えている。
E型肝炎(hepatitis E)いーがたかんえん : ウイルス性肝炎の一種で、E型肝炎ウイルス(略称HEV)と
呼ばれる接触感染性ウイルスによって起こる。ウイルスが発見されるまでは非A非B型肝炎と
呼ばれていた。日本の感染症法での取り扱いは4類感染症。
潜伏期間は15日〜7週間と考えられ、15歳から40歳の成人に最も一般的に見られる。
小児もまたこの感染症によく罹患するものの、症状が認められることはそれほどない。
本症はしばしば自然消失・自然治癒が見られる「自己制御式の」病気のため、その致死率は通常低い。
しかし感染期間中(通常数週間)には、労働・家族の世話・食事の摂取といった患者の能力は、
著しく低下する。E型肝炎は時折、重症な急性肝疾患に進展し、全症例の約2%が致命的となる。
臨床的にはA型肝炎に類似し、食べ物や飲料水などから感染、慢性化せずに急性肝炎を起こすが、
妊婦では本症は重症化しやすく、まれに『劇症肝炎(ないし肝不全)』と呼ばれる臨床的な症候群となり
死亡することもある。特に後期の妊婦では、本症に罹患すると死亡率が非妊時より上昇する。
人から人へうつることは、ごくまれで、衛生環境の悪い地域で流行を起こすが日本など先進国は少ない。
症状 : 黄疸、食欲不振、肝腫大、腹痛と腹の張り、嘔気や嘔吐、発熱などが挙げられるが、
これら症状の表出については、無症候性なものから劇症型まで重症度に幅が見られる。
E型肝炎を防ぐポイント
●豚、イノシシ、鹿などの肉や内臓は、生のまま食べない。
●豚肉などの加熱は十分にし、特に豚レバーなどは中心部まで火が通るようにする。
●生の肉や内臓にさわったら、よく手を洗う。
●手に傷がある人が肉に触れる場合は手袋をする。
●包丁やまな板を使うときは、まず先に、生で食べるものや調理済み食品などの食べる直前に
加熱しない食品を切り、その後に生の肉や内臓を切る。生の肉や内臓に使った包丁やまな板と、
調理済みの食品がふれないようにする。箸や皿も区別して使う。
●肉や内臓の汁が、生で食べるものや調理済みの食品にかからないようにする。
●生の肉に使った調理器具は、使い終わったらすぐに洗う。洗った後、熱湯をかけると消毒効果がある。
●アジアやアフリカなどのE型肝炎流行地域へ旅行する際は、
清潔の保証がない飲料水や、非加熱の魚介類、生野菜を避ける。
肝機能(かんきのう) : 肝臓病の原因は主に、
飲酒(アルコール)、
ウイルス、過食の三つがある。
わが国の肝臓病の多くは、ウイルスの感染による肝炎で、A型、B型、C型の3種に分かれ、
B型とC型は肝炎の慢性化によって、
肝硬変や
肝臓ガンに進む恐れがある。
アルコールの飲み過ぎによる「アルコール性肝障害」、過食による「過栄養性脂肪肝」は、
生活習慣とのかかわりが強く、近年増加している。その他の原因には、薬剤性、自己免疫性などがある。
GOT(AST)、GPT(ALT)、γ−GTPが三大肝機能検査で、基準値を超えていると問題になる。
GOT、GPTは肝細胞が壊れた時に血液に出てくる酵素で、
肝臓の実質細胞である肝細胞そのものが障害されたときに上昇することが多く、
肝臓の中で起きている炎症の激しさ(活動性)とある程度平行する。
その意味で、「肝実質系酵素」「逸脱酵素」などと呼ばれる。
γ−GTP、ALP、LAPは肝臓で作られる胆汁の排泄が障害されるとき上昇することが多く、
胆管系(胆汁の流出路)と関係が深く、その意味で、「胆道系酵素」と総称される。
γ-GTPのみ高い人は、週2日の休肝日(一滴も呑まない)が必要。
肝臓は自己再生修復能力があるので、節酒・禁酒のみでだいぶ数値が改善することがある。
肝機能障害の症状例…黄疸、肝腫大、右季肋部痛、
脂肪肝、出血傾向、
肝硬変、肝腫瘍、劇症肝炎など。
肝機能障害(異常)の判断基準値
GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)(KU/dl)=50以上(正常値8〜40)
…トランスアミナーゼというアミノ酸の合成に必要な酵素。
主に心筋、肝臓、骨格筋、
腎臓などに多く含まれる。GOTが高値の場合、
肝疾患(急性・慢性肝炎・脂肪肝など)や心疾患(特に
心筋梗塞)などが疑われる。
最近は「AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)」と呼ばれることが多い。
GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)(KU/dl)=50以上(正常値5〜35)
…特に肝細胞に多く、筋細胞にも存在する酵素。GPTが高値の場合、
肝臓病(急性・慢性肝炎・脂肪肝、アルコール性肝炎など)が疑われる。
最近は「ALT(アラニン・アミノトランスフェラーゼ)」と呼ばれることが多い。
γ−GTP(KU/dl)=90以上(正常値60未満)…たんぱく質を分解する酵素のひとつで、
アルコール性肝炎の早期発見に有効。アルコールや薬剤などが肝細胞を破壊したときや、
結石・がんなどで胆管が閉塞したときに、血中に出てくるもので、
肝臓や胆道に病気があると異常値を示す。胆汁の通過障害でも上がる。
アルコール摂取が少ない(特に女性)のに、高値持続の場合には、胆石も疑われる。
ALP(アルファフォイスファターゼ)(KU/dl)=350以上(正常値100〜280)
…肝、腎、骨、胎盤に存在し、胆汁に排泄される。成長期の小児では高い。
LAP(ロイシン・アミノ・ペプチターゼ)(KU/dl)=200以上(正常値30〜170)
…蛋白質分解酵素の一種で、肝臓や膵臓、胆道などに多く含まれている。
このため、LAP値は肝臓や胆道の病気発見の手がかりとなる。
LDH(乳酸脱水素酵素)(KU/dl)=600以上(正常値50〜400)
…すべての組織に存在する酵素で、5種類の分画があり、それにより鑑別診断する。
総ピリルビン(mg/dl)=1.6以上(正常値0.2〜1.2)
…老化赤血球が壊れて血色素が変化したもので、胆汁の成分である。
赤血球が大量に壊れたり、胆汁の通過障害があると血管に入って黄疸になる。
GOTかGPTの両方かどちらかが異常の場合
GOT数値÷GPT数値= 0.7未満…非アルコール性脂肪肝・慢性肝炎の疑いあり。
0.7以上…アルコール性脂肪肝・肝硬変・肝がんの疑いあり。
肝臓(the liver) : きも。腹腔の右上、横隔膜のすぐ下に接する赤褐色の内臓器官。
人体最大の分泌器官で、左右二葉に分かれ、その間に胆嚢
(たんのう) がある。
胆汁という消化液をつくり腸の中に送り出す他に、たん白質、糖質、脂質、ビタミンなどの
栄養素の代謝を行い、余分の炭水化物を
グリコーゲンに変えて貯蔵し、
また体外から吸収された有毒物や化学物質を分解し、無毒化する解毒作用など重要な働きをする。
主に代謝、解毒、排泄という生命に関わる機能を担い、
これらが全く機能しなくなるのが「肝不全」で、生きていくことはできない。
「
代謝」とは、食事から摂った
糖質、
蛋白質、
脂質を体に必要な物質やエネルギーに変えること。
「
解毒」とは、アルコールや薬剤などを分解して無毒化すること。
「
排泄」とは、脂肪の消化・吸収を助ける胆汁を合成し排泄することで、
胆汁の排泄が悪くなると黄疸が出る。
肝臓は予備能力が高く、一般に日常では全体の20%程度しか使われていないため、
慢性肝炎や、肝硬変になっても自覚症状が出ないことが多いことから「沈黙の臓器」と呼ばれている。
肝臓の働き
★栄養分(
糖質、
たん白質、
脂肪、
ビタミン)の生成、貯蔵、代謝。
★血液中の
ホルモン、薬物、毒物などの代謝、解毒★出血を止める因子の生成。
★胆汁の産生と胆汁酸の合成★身体の中に浸入した
ウイルスや細菌の感染を予防する。
参 :
B型肝炎
肝臓癌 =
肝臓癌(がん関連へ別掲)
肝臓病(a liver disease) :
肝臓の機能が低下した状態であり、急性と慢性がある。
急性肝炎など急性の肝臓病は、発熱、体のだるさ、疲労感、食欲不振、吐き気、
黄疸などの症状が現れ、発見されやすいが、慢性肝炎や肝硬変症など慢性の肝臓病では、
軽い疲労感程度で自覚症状のないことが多く、肝臓が「沈黙の臓器」と言われるゆえんである。
しかし肝硬変症が進行すると、黄疸、手足のむくみ、腹水、
食道や胃の静脈瘤からの出血などを来し、さらには肝臓がんを合併することもある。
病状は静かに進行するので、健康診断で肝臓の状態を知ることが大切である。
肝臓病には、ウイルスによって発症する「ウイルス性肝炎」とウイルス以外の肝臓病がある。
肝臓病の種類
種 類 |
原因・症状など |
ウ
イ
ル
ス
性
肝
炎 |
A型肝炎 |
ウイルスに汚染された食物・飲料により経口感染しておこるが、
急性のみで慢性化や再発はなく、ほとんどは治る。
ただ高齢者では重症化しやすく注意が必要。 |
B型肝炎 |
(別掲) |
C型肝炎 |
(別掲) |
D型肝炎 |
B型とともに感染し日本は少ない。 |
E型肝炎 |
(別掲) |
薬害C型肝炎 |
出産や手術の際の止血剤として1980年以降だけで約30万人に
投与された血液製剤「フィブリノゲン」などを通じ、少なくとも約1万人が
C型肝炎ウイルスに感染したとされる。通常の接触などでは感染しないが、
差別や偏見があるため訴訟を起こした原告の多くが実名を公表していない。 |
ウ
イ
ル
ス
以
外
の
肝
臓
病 |
脂肪肝 |
肝臓が脂肪を処理出来なくなり、肝細胞の中に中性脂肪が貯まった状態で、
肥満、アルコール多飲、糖尿病などが主な原因。自覚症状は少なく、
健康診断などで発見されることが多くなっている。 |
アルコール性
肝障害 |
アルコール過剰摂取が原因で、肝臓が処理しきれず、
肝細胞が破壊される障害で、脂肪肝や肝線維症のうちはまだいいが、
飲酒を続けるとアルコール性肝炎や肝硬変症に進行する。 |
肝線維症 |
アルコール過剰摂取が原因で、肝臓に線維成分がふえた状態。 |
肝硬変 |
アルコール過剰摂取が原因で、肝臓の組織がすっかり壊され、
正常とは異なった様式に改築されてしまった状態。
脂肪肝や肝線維症の人が、大酒を飲み続け、アルコール性肝炎を
繰り返しているうちに肝硬変になってしまう。肝硬変が更に進行すると、
肝不全になることもある。また、慢性肝炎や肝硬変では、
肝臓がんを合併する可能性もでてくる。 |
薬剤性肝障害 |
薬剤の副作用の一つで薬剤に対するアレルギー反応によって
肝臓に障害が起こる。原因薬剤を速やかに中止することが大切。 |
自己免疫性肝炎 |
自分で自分の肝細胞を壊してしまう慢性の肝炎。 |
原発性胆汁性
肝硬変症 |
胆汁が流れる細い胆管のまわりに炎症が起こり、
胆汁の流れが悪くなる病気。 |
肝臓がん |
(別掲) |
肝臓病を早く見つけるためのチェック・ポイント
肝臓が悪くなると、体がだるく疲れやすくなり食欲が進まなくなったり、特に脂っこいものが嫌になる。
右上腹部(肝臓のあたり)が重苦しく、うずくこともあり、腹が張ってくる。
精力が減退し
インポテンツになることさえある。尿の色が濃くなってきたり(茶褐色の尿)、
さらに黄疸
(おうだん)が現れれば肝臓が悪いことは確かです。
しかし、大酒家の場合であれば、少しだるいとか疲れやすいといった軽い症状であっても、
それが続くか繰り返し自覚するようであれば、
仕事のせいとか飲み過ぎの疲れとして軽く見たりせず、早く受診する。
皮膚の症状、特に「クモ状血管腫」といって、胸の上や首の筋や上腕といったところに、
中心にポツンと赤い血管の小さい粒を持ったクモが四方に脚を出したような形で
細い血管が拡張し蛇行したものがみられる。また「手掌紅斑
(しゅしょうこうはん)」といって、
手のひらの主としてまわりの部分がマダラにピンクに染まることがあり、
これは手のひらを横からながめるとよく分かる。また皮膚が汚い暗褐色に見えるようになることもある。
このような皮膚の症状に気づいたら、一応肝臓病を疑って受診する。
肝臓を悪くせずにお酒をたしなむには
(1)
休肝日を設けること : 仕事ばかりでなく、飲酒にも週に1〜2日の休暇が必要である。
肝臓ばかりなく、
脳、
すい臓、胃腸などもアルコールから解放され、回復する。
(2)
空腹では飲まず、酒肴を取り揃えて食べること : 空腹でお酒を飲むと、肝臓を悪くするばかりか、
胃や十二指腸にもビランや潰瘍
(かいよう)を生じやすく、また悪酔いの原因ともなる。
酒の肴も栄養を考え、おつまみ程度だけでなく、適量の肉や魚や野菜を取り合わせることが必要。
ただし、食べ過ぎは肥満を招き脂肪肝になる。
また、飲み過ぎもいけないので、日本酒で1日2合以内程度にしておく。
(3)
濃い酒を避けること : ウイスキー、焼酎、ブランディーなどアルコール濃度の高いものは薄めて
飲む。ウイスキーのダブルが大体日本酒のアルコール濃度と同じで、日本人向きと言われている。
アルコールによる恐ろしい肝硬変
お酒を飲むとその主成分であるアルコールは、そのまま胃や腸の粘膜から吸収される。
アルコールの血中濃度は30分ないし2時間で最高に達する。
血中濃度が異常に高くなり、それが長時間続くと、アルコールを分解する肝細胞の働きも低下し、
肝細胞自体も破壊されることが多くなる。
アルコールによる肝臓障害は、肝臓に脂肪が沈着する脂肪肝に始まり、アルコール性肝炎を経て、
終局的には肝硬変となる。肝硬変になると、禁酒をしても肝臓は正常な状態にはもどらない。
なので、日常的に飲酒をする人は、最低年1回は肝臓の検査を受けましょう。
肝臓病治療 : 最近著しく進歩し、肝炎ウイルスをやっつける
抗ウイルス剤(インターフェロン、リバビリン、ラミブジンなど)、過剰な免疫力を抑える免疫抑制剤、
胆汁の排泄を助ける利胆剤などの薬剤が充実してきた。
肝臓がんにも新しい内科的治療法が導入され、
さらに肝不全の患者には肝移植(主に生体部分肝移植)も可能になっている。
肝臓病とくに慢性の肝臓病は自覚症状が現れにくく、静かに病状が進行するので、
定期的な健康診断により、肝臓の状態を知ることが大切で、
肝機能に異常が認められた場合には、すぐに医療機関を受診して精密検査をしてもらい、
早期に適切な治療と生活・食事などの指導を受けるようにしましょう。