骨粗鬆症関連(YSミニ辞典)

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骨折リスクの評価手法(こっせつリスクのひょうかしゅほう) : 世界保健機関(WHO)が開発した
    骨折リスク評価ツール「FRAX(Fracture Risk Assessment Tool)」による
    骨折絶対リスク(10年間の骨折危険率)を評価する手法のことで、
    骨折と明らかな相関関係がある喫煙と飲酒の2つに加え、
    年齢、性別、身長、体重、骨折の既往歴、ステロイド摂取などを入力すると、
    10年以内に骨粗鬆症による骨折がおこるリスクがインターネット経由で判定できる。
    日本骨粗鬆症学会も、この手法を使い、骨折のリスクが15%以上で75歳未満の人を
    薬による治療の対象とする見込みである。
    WHOの調査によると、1990年に150万人だった大腿骨頸部骨折患者数は、
    2050年には450〜650万人にまで膨れ上がるという。将来的に骨粗しょう症患者が
    爆発的に増加すると予測されているなかで、「簡便でかつ精度の高い骨折リスクを評価する手法」の
    必要性が高まってきつつある。FRAXは、こうした背景から開発されたツールである。
    参 : FRAX計算ツール(HP)、日本骨粗鬆症学会(HP)
骨粗鬆症(osteoporosis)こつそしょうしょう : 英訳は「穴だらけの骨」という意味。
    年をとって骨量が異常に減少して、骨の成分であるカルシウムが少なくなり、
    骨の中の構造が粗くもろくなって、骨折の危険性が高まった状態になる症状のこと。
    カルシウム不足、骨代謝機能の低下、女性ホルモンの分泌の低下等の原因で起こり、
    ちょっとしたことでつまづきやすく、骨折するようになる。
    高年齢になっても骨は毎日作られ、また少しずつ壊される。
    作られる骨の量より壊される骨の量が多くなると「骨粗鬆症」になる。
    人の身体には、血液のカルシウム濃度が低くなると、
    骨を溶かして血液にカルシウムを送るという働きが備わっているので、
    カルシウム不足が続くと、その働きによって、骨がスポンジのようにスカスカになる。
    「骨の習慣病」といわれ、また、自覚症状がほとんど無いことから
    糖尿病などと同じく「沈黙の病」とも呼ばれている。
    脊椎圧迫骨折、太ももの付け根の大腿骨頸部骨折、手首の橈骨(とうこつ)末端骨折などをひきおこす。
    骨粗鬆症になる割合
      骨粗鬆症は現在日本には1000万人以上の患者さんがいると推定されており、
      女性が全体の7割を占めるとされ、圧倒的に女性に多い病気で、
      女性では閉経期の40〜50歳代から急激に骨量が減少し、50代の女性の21%(5人に1人)、
      60歳代の48%(2人に1人)、70歳代の67%(10人に7人)、
      80歳代の84%(10人に8人以上)が骨粗鬆症を起こすような状態になっている。
      一方、男性では60歳過ぎから徐々に増え、70歳以上では10人に4人足らずだが、
      80代で急に増える。現在、90万人はいるとされる、
      寝たきりの原因の第3番目が骨粗鬆症による骨折で、第1番目が脳卒中、第2番目が高血圧である。
    骨粗鬆症の症状
     背中や腰が痛くなる : 最早期の症状で、始めは一部だけの痛みが徐々に全身に広がっていく。
       弱くなった腰や背中の骨が、何かのきっかけで大きくつぶれると、激しい痛みを生じる。
     ちょっとしたはずみに骨折しやすくなる : 骨格の密度が0.6/立方cm以下になった場合、
       骨折の危険が大きくなる。「骨粗鬆症」患者は骨の体積の約半分を占めている
       コラーゲンまでもろくなっているので、枯れ木のようにポキッと折れてしまう。
       骨折しやすいところは手首、大腿骨頚部、肩部及び背骨です。
     猫背になったり脊椎又は関節が変形したりする : そのため運動能力に影響がでて、体を十分に
       動かすことができず骨がいっそう弱くなり、骨折すると全治にはかなりの時間がかかるようになる。
       背骨や腰骨がつぶれてしまうと、背中が丸くなり、身長も低くなる。
       寝ている時間が長ければ長いほど筋肉の力も骨の強さもさらに弱り、最悪の場合は
       肺炎や褥倉、静脈炎を引き起こし、命にかかわる事態にもなることもある。
    骨粗鬆症の治療 : 薬物療法は骨粗鬆症のタイプによって異なり、
                  どちらのタイプにもカルシウム剤、ビタミンDは使われる。
    高齢者に多いタイプ : 骨を作る力が低下するため、骨形成促進薬が使われ、
      内服薬として活性型ビタミンD製剤、ビタミンK製剤がある。
      ただし、ビタミンK製剤は、脳梗塞や心筋梗塞で血液をさらさらにする薬を飲んでいる人は使えない。
    閉経後に多いタイプ
      ホルモンバランスが変わることによって破骨細胞の働きが過剰になるので、
      破骨細胞の働きを抑える薬が使われ、具体的には次の3種類がある。
        @エストロゲン剤(女性ホルモンの一つで、内服のほかに、皮膚に貼るタイプのものがある)
        Aカルシトニン製剤(筋肉注射として使用され、破骨細胞を抑制し、痛みをとる作用がある)
        Bビスフォスフォネート製剤(内服薬で、破骨細胞の働きを強力に抑える)
    特に新しいタイプのビスフォスフォネート剤 (リセドロン酸、アレンドロン酸など)は骨折を予防する
    効果があると言われ、骨折が半減したという報告があり、今後さらに効果が期待され、
    効果が高いので少量ですむが、胃を荒らしやすいので、服用の仕方を医師に確認する。
    骨粗鬆症の予防
    軽い運動を取り入れながら、日光浴(ビタミンDの生産に重要)、食事の注意(カルシウム、蛋白質、
    ビタミンD、ビタミンKマグネシウム、そしてビタミンCの摂取)のほか日常生活で転倒を
    予防する(家の中に手すりをつける、段差を無くする、外出時は両手を空けておく)なども大切で、
    簡単な検査で骨量を知ることができるので早い時期から骨量を調べ予防に努めましょう。
     (1)食べて骨を強くする(牛乳や乳製品をなるべく毎日摂る)
       日本人の食生活で唯一、不足傾向にあるのがカルシウム。成人で1日に必要な量は600mg。
       妊娠・授乳期で900〜1100mg、閉経後の女性は800〜1000mgを目安に摂取しましょう。
       カルシウムを多く含む食品は牛乳・乳製品、小魚類、大豆製品、野菜、海藻など。
       以下は1回の使用量と含まれるカルシウム量。
        牛乳・乳製品 : 牛乳(1本200ml)200mg、ヨーグルト(1個100ml)130mg、
                   プロセスチーズ(1個 20g)126mg
        小魚類 : いわし丸干し(1尾20g)280mg、煮干(10g)220mg、シシャモ(3尾50g)220mg
        大豆製品 : もめん豆腐(半丁150g)180mg、厚揚げ(1枚120g)288mg
        野菜 : 小松菜(100g)290mg、青梗菜(100g)130mg
        海藻 : 乾燥ひじき(10g)140mg
     (2)運動はカルシウムの吸収を促進する
       せっかく食事でカルシウムを摂取しても、適度に運動して骨の形成を刺激しないと
       カルシウムは骨に吸収されないので週に3回、1日20分以上のウォーキングや
       自分の好きなスポーツを定期的に続けましょう。
     (3)カルシウム吸収に欠かせない日光浴(蛋白質のほかにビタミンDも必要)
       骨がカルシウムを吸収するにはビタミンDが必要になる。
       ビタミンDは、日光に当たることによって皮膚の中の脂肪の一種から作られる。
       運動や散歩などなるべく戸外に出る機会を増やしましょう。
       また、ビタミンDは干ししいたけや、さんまやかつおなど背の青い魚、卵、
       レバー、肝油、乳製品などにも多く含まれているので、積極的に食べましょう。
     (4)ダイエットに要注意
       無理な食事制限によるダイエットは、カルシウム摂取を少なくするばかりでなく、
       女性のホルモンバランスを狂わせ、月経不順や無月経を起こす原因となる。その結果、
       若い女性の骨が閉経後の女性のようにスカスカな状態となり、骨粗鬆症になりやすくなっている。
       栄養バランスを考えないで食事の量を急に減らすようなダイエットはやめましょう。
     (5)お酒はほどほどに、タバコは百害あって一利なし
       アルコールを多量に飲み過ぎると、カルシウムなどの栄養素が腸管から吸収されにくくなる。
       タバコは胃腸からのカルシウムの消化・吸収を妨げ、女性ホルモンの分泌も抑えてしまう。
     (6)塩分・糖分を控える
       塩分や糖分を摂りすぎると、尿からのカルシウム排泄量が増えてしまう。
    害になるもの : アルコールたばこコーヒー塩分インスタント食品(カルシウムの吸収を阻害する)
    詳細は財団法人 骨粗鬆症財団(Japan Osteoporosis Foundation)のホームページで。
    参 : 生活習慣病腰痛廃用症候群骨形成不全症骨折リスクの評価手法
    
    骨形成促進のタンパクを特定、粗しょう症治療手掛かりに
     埼玉医大ゲノム医学研究センターの岡崎康司教授(分子遺伝学)の研究チームは、
    「Id4」というタンパク質が骨の形成に重要な役割を果たすことを突き止め、
    2010年7月9日付の米科学誌プロス・ジェネティクス電子版に発表した。
     岡崎教授は「Id4を活性化する物質が見つかれば、
    骨粗しょう症の治療や新薬につながる大きな手掛かりになる」と話している。
     岡崎教授によると、骨髄の幹細胞は骨を作る骨芽細胞と脂肪細胞に分化するが、
    骨粗しょう症患者は分化が脂肪細胞に偏るため、骨がもろくなるとされる。
     研究チームがマウスの幹細胞を骨芽細胞、脂肪細胞それぞれに分化させ遺伝子解析したところ、
    Id4が骨芽細胞の分化を促進、脂肪細胞の分化を抑制することが分かった。この効果は、
    Id4が「Runx2」という骨形成を促すタンパク質を間接的に活性化させて起こることも分かった。
     遺伝子操作でId4を持たないようにしたマウスは、
    正常なマウスに比べて骨量が約6割少なく、骨髄内の脂肪細胞も多かったという。





































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