紙幣(YSミニ辞典)

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紙幣(paper money、a bill)しへい : 日本銀行券(日銀券)のお札(おさつ)。紙製の通貨
    政府紙幣・銀行券、兌換(だかん)紙幣・不換紙幣などがある。
    新しいお札が発行された後も、今までのお札の効力は失われない。
    ただし、1948(昭和23)年以前の旧札のほとんどは無効となっている。
    お札の印刷 : 1877(明治10)年の国立銀行券から、用紙製造、印刷ともすべて
     国立印刷局(当初は紙幣局)が行っている。日本銀行は、日本銀行法第46条により
     お札を発行する権限を与えられており、これに基づいて、印刷局から新しいお札を受け取って、
     これを本店や地方の支店から世の中に払い出している。
    現在の日本銀行発行の紙幣の単価 : 1万円札で27.8円、5千円札は25.9円、
     千円札は18.2円で、これが日銀の窓口から金融機関に払い出された瞬間に、額面の値打ちを持つ。
    お札の平均的な寿命 : 1万円札では3〜4年程度で、5千円札と千円札では、
     つり銭などのやり取りが多いこともあって、1〜2年程度と比較的短くなってる。
    これまで発行されたお札の種類 : 日本銀行は、1885(明治18)年に第1号のお札を発行してから
     2002(平成14)年2月末現在まで、50種類のお札を発行している。このうち31種類については、
     @関東大震災後の焼失兌換券の整理(1927年)、A終戦直後のインフレ進行を阻止するための
     いわゆる新円切替(19466年)、B1円未満の小額通貨の整理(1953)、
     と3回にわたって回収・廃棄が行われ、現在は通用力を失っている。    
紙幣の発行年と歴代の肖像 肖像の( )内は裏面
1万円札 5千円札 2千円札 千円札
発行
開始年
肖 像 発行
開始年
肖 像 発行
開始年
肖 像 発行
開始年
肖 像
1958
(昭和33)
聖徳太子
(平等院の
鳳凰堂)
1957
(昭和32)
聖徳太子
(日本銀行)
1999
(平成11)
守礼の門
(紫式部)
1942
(昭和17)
日本武尊
(彩紋)
1984
(昭和59)
福沢諭吉
(雉)
1984
(昭和59)
新渡戸稲造
(富士山)
1950
(昭和25)
聖徳太子
(法隆寺の
 夢殿)
2004
(平成16)
福沢諭吉
(平等院の
 鳳凰像)
2004
(平成16)
樋口一葉
(尾形光琳の
「燕子花図」)
1963
(昭和38)
伊藤博文
(日本銀行
 の旧本館)
1984
(昭和59)
夏目漱石
(丹頂鶴)
2004
(平成16)
野口英世
(富士山と桜)
    
    伊藤公肖像入の旧千円札(第1号券)伊藤公資料館で展示のもの
    傷んだお金の交換 : 傷んだお金は、一般の金融機関でも新しいお金に引き換えることがでるが、
     傷みのひどいものについては、鑑定が難しいので、日本銀行に持参する(日本銀行の窓口受付時間は、
     平日午前9時から午後3時まで)。燃えて灰になってしまったお札や溶けた貨幣も、あきらめずに
     日本銀行で交換できる。お札は焼けてしまってもある程度までは、紙やインクの質から
     本物であることが特定できる。ただ、灰がバラバラになってしまうと特定することが難しくなるので、
     焼けたお札はなるべく原形を崩さないよう、灰などの細かい部分も集め、適当な容器に入れて
     持ち込むことが大切である。溶けた貨幣についても、模様を調べて本物だと分かれば、
     新しい貨幣に引き換えられる。他の物にくっついてしまっていたら、そのまま持参する。
     ちなみにお札が破れたり、燃えたりした場合の引換基準は、「表・裏両面があること」を条件に残っている
     面積を基準として新しいお札との引換えを行っている。引換える金額の基準は次のとおり。
      (1)面積が3分の2以上の場合は全額として引換え
      (2)面積が5分の2以上、3分の2未満の場合は半額として引換え
      (3)面積が5分の2未満の場合は銀行券の価値が無く失効
    使い勝手の悪いお札
     1万円札、5千円札、千円札の3種のお札は、縦の長さがまったく同じで、
     横が1万円札から順に5ミリずつ短くなっているだけである。
     このくらいでは視力障害者でも区別がつきにくく不満があるとのことである。
     目の不自由な人のために丸い識別マークがついているが、少し使い古すとわからなくなる。
     これに輪をかけているのが2千円札で5千円札と1ミリしか違わないのである。
     2千円札の不人気はこの辺りにもあるのかもしれない。
    偽札防止技術、すかしだけじゃない紙幣進化(2009.2.26の朝日新聞より)
     お札(日本銀行券)を太陽にかざすと、中央の白い部分に人物の姿が浮かび上がる――。
    偽札を見分ける方法と言えば、すぐに「すかし」が思い浮かぶ。
    だが、1枚のお札には、ほかにも様々な偽造防止の工夫が施されている。
     「すかし」に次いで歴史がある偽造防止技術は「超細密画線」と「凹版印刷」だ。
    1ミリの間隔に10本以上の画線を刻んで肖像を描いたり、
    特殊な方法でインクを紙にのせて印字が浮かび上がるようにしたり工夫している。
    お札を持つと、特有のざらっとした手触りがあるのは、この技術のためだ。
     カラーコピー機など、紙幣の偽造に悪用されかねないデジタル技術の普及にあわせて、
    お札はその都度、進化を遂げてきた。
     1万円札を例にとると、1993(平成5)年には肉眼で確認できないほど微細な「マイクロ文字」や、
    紫外線をあてると青色やオレンジ色に光る「特殊発光インキ」などの技術が採用された。
    2000年代以降は、パソコンスキャナーなどを用いた偽造事件が多発。
    それまでの組織型犯罪とは違って、個人が自宅で手がけるような犯罪が社会問題になった。
    このため2004年には、お札がデジタル機器に読み取りにくくなる技術として、
    光の当たり具合で紙幣のデザインや色がキラキラと変化する「ホログラム」、
    紙幣を傾けるとピンク色の光沢がうきあがる「パールインキ」が加わった。
    
     日銀が「世界最先端の技術」と自負するだけあって、発行された紙幣に対する偽札の割合は先進国中、
    最も少ない。日銀によると、発行された紙幣100万枚に対し、
    英ポンドの偽札は122枚、米ドルが100枚、ユーロが49枚なのに、日本円はわずか1枚だ。
     その秘訣(ひけつ)は先端的な技術に加え、地道な努力を積み重ねていることにあるようだ。
     日銀は本店や支店に偽札検知のための「自動鑑査機」を配備し、
    金融機関から戻ってきたお札を点検している。
    また、汚れたり、しわくちゃになったりして使えなくなったお札を裁断処理し、新札に替えている。
    2007年度は紙幣の約4分の1にあたる33億枚が新札に入れ替わった。

    日本の紙幣の主原料は「三椏(みつまた)」の樹皮と「アバカ」というパルプから造られ、
    世界でもトップクラスの丈夫な紙幣で、「はじくと、パチンと硬い音がする」と言われるが、
    クーデターなどで新政府になると、ただの紙切れになることもあり、
    その時は1万円札を古紙として売っても1円にもならないでしょう。
    
参 : 紙幣の流通枚数紙幣刷新嵯峨野古銭100円札独立行政法人国立印刷局(HP)
紙幣刷新(しへいさっしん) : お札のデザインを一新することで、日銀は「改刷」と呼ぶ。
    偽造防止や印刷技術の進歩を取り込むことが狙い。日銀が設立された1882年当時は、
    政府などが発行する複数の紙幣が併存していたが、1885年に銀と交換ができる初の日銀券が登場。
    以後日銀は、2004年11月1日に登場した千円、5千円、1万円札を含めて
    計53種類の紙幣を発行してきた。日銀法では、紙幣の発行主体は日銀だが、
    肖像画やデザインは財務相が決め、製造は国立印刷局に発注することになっている。
    参 : 工芸官独立行政法人国立印刷局(HP)、ぞうへいきょく探検隊(HP)

    2000年に登場した2千円札から4年ぶりにデビューし、紙幣刷新としてのデザイン変更は20年ぶり
    となるお札(新札)は、1万円札が福沢諭吉、5千円札が樋口一葉、千円札が野口英世のデザインだが、
    偽造対策を詳しく説明した新技術が、日銀の隣の貨幣博物館に実物見本とともに展示してあるので、
    入館無料でもあるし見ておく価値はありそう。「偽造対策を全部公開して大丈夫か」という問いに、
    博物館の担当者は「皆さんに知っていただかないと、偽造を発見できませんからね」とのことで
    納得できました?しかし、8項目の新技術以外に、一般には公開されない技術があるとのこと。
    多分、自動販売機や紙幣鑑別機などで偽札を見破ることに用いる技術でしょうね。

紙幣の流通枚数 : 平成14年度末に流通していた我が国のお札(日本銀行券)の枚数は、
    122億4千万枚です。この内訳は、一万円札が64億6千万枚(52.8%)、五千円札が
    4億4千万枚(3.6%)、二千円札が4億枚(3.3%)、千円札が32億7千万枚(26.7%)、
    その他五百円札など16億7千万枚(13.6%)となっている。
    二千円札を除くお札のデザインが現在のものになった昭和59年においては、
    一万円札(15億9千万枚)よりも千円札(18億7千万枚)の方が多く流通していたが、
    経済成長とともに、一万円札の割合が高まってきている。
    市中で使われているお札はやがて日本銀行に還流し、損傷したり汚れたりしているものは
    裁断されているが、お札の平均寿命は、一万円札で3〜4年程度、五千円札、
    千円札は使用頻度が高く傷みやすいため、1〜2年程度となっている。
    このように古くなったお札は処分する一方で、市中に必要な量のお札を円滑に供給していくために、
    毎年大量のお札を製造する必要があり、平成14年度には、33億4千万枚ものお札が製造された。
    ところで、最近では、お札に対する信頼を揺るがすような事件が多く発生していて、
    近年のコピーや印刷技術の著しい進歩とともに、お札の偽造が増加している。
    平成10年に発見された偽造券は807枚でしたが、平成14年には20,211枚が発見されている。
    お札を偽造しにくいものとするため、一万円札、五千円札、千円札については、
    平成16年度下期にデザインを一新する予定で、今流通しているお札を入れ替えていくという
    大仕事であり、平成15年4月に独立行政法人化した国立印刷局において鋭意作業を進めている。
    財務省ホームページ(日本銀行券の改刷について
政府紙幣(せいふしへい) : 政府が直接発行する紙幣で、補助貨幣の不足を補ったり
    資金調達のために発行するが、インフレと結びつきやすい。
    日本の法律では、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第4条で
    「貨幣の製造及び発行の権能は、政府に属する」とあり、紙幣(貨幣)の発行権は
    政府にあること(政府が紙幣の発行権を独占していること)が明確に定められている。
    政府紙幣は1953(昭和28)年まで発行されていたが、
    現在でも、法律を一切変更しないままで発行可能である。
     明治維新後の明治新政府は、明治通宝などの政府紙幣を発行した。
    1883(明治16)年)に発行された旧紙幣と交換された神功皇后が描かれた各種紙幣は
    「大日本帝国政府紙幣」であった。この時代の紙幣は濫発されたためインフレーションを招いていた。
    やがて日本銀行が設立され紙幣の発行元としての地位を譲った。
     第一次世界大戦中には、戦争により銀価格が急騰したため、
    銀貨の発行継続が困難になり50、20、10銭の政府紙幣が発行されたほか、
    1938(昭和13)年以降は銭単位の補助通貨が金属物資の戦争優先使用のために発行できなくなり、
    50銭の政府紙幣が発行されたが、10銭、5銭は日本銀行券扱いであった。
    なお、50銭の政府紙幣は銭単位が1953(昭和28)年に廃止されたため、
    日本では政府紙幣は完全に廃止された。
    発行された政府紙幣
     日本が1985(明治18)年に兌換紙幣(金と交換できる紙幣)を発行するまでに
    発行されていた紙幣は政府紙幣になる。
    戦中には1938(昭和13)年6月1日と1942(昭和17)年12月8日〜1945(昭和20)年に50銭、
    戦後には1948(昭和23)年3月10日に50銭が発行されたが、いずれも濫発でインフレを招いた。
    他にも、軍票(軍用手票)も大日本帝国政府発行の紙幣である。
    
    1938(昭和13)年の富士桜50銭券(政府紙幣)

    景気対策財源:与党内に「政府紙幣」案<国債増回避狙う>(毎日JPより)
     政府が日銀に代わって紙幣を発行する「政府紙幣」案が与党の一部から浮上している。
    景気対策の財源として赤字国債の代わりに充てる案だ。
    だが、実態は財政法が禁じる「日銀の国債引き受けと同じ」(杉本和行財務事務次官)で、
    財政規律喪失や急激なインフレを招く弊害が指摘されている。
     構想が持ち上がったのは、2009年度の成長率が2%以上のマイナス成長になると見込まれる中、
    与党内で10兆円規模の追加対策を求める声が高まったのが背景。
    財源が必要だが、特別会計の埋蔵金にも限界があり、赤字国債増発を回避する手段として浮上した。
     政府紙幣は「麻生政権1万円券」などと印刷した紙幣を、政府が日銀券と同等の価値と保証。
    これにより増えた歳入を公共事業の財源などに回そうという発想だ。ただ、麻生太郎首相は
    2009年2月2日「今のところ、とても(検討の)段階じゃありません」と慎重な見方を示している。
偽札(にせさつ、ぎさつ) : @にせの紙幣。偽造された紙幣のことである。
     一般に使用を目的として通貨を複製・偽造し、肉眼・機械その他の方法での
     判別を困難にしたものをいう。贋札(がんさつ)とも呼ばれている。
     偽札を「行使の目的」で作ることや、偽札と知って行使することは、法律によって罰せられる。
     刑法における通貨偽造の罪(148条以下)はよく知られているところである。
     このほか、実際に使用する目的がない場合、例えばコレクションを目的として無許可で偽札を作ることも
     法律で禁じられている。通貨及証券模造取締法では通貨を模した物を作成することは禁じられ、
     また、偽札製造を防止するため、偽造防止手段の一つである「すかし(『透かし』、正しくは『漉かし』)」に
     似た文様の「すき入れ紙」を許可なしに製造することも禁じられている(すき入紙製造取締法)。
     刑法、第16章 通貨偽造の罪
     第148条(通貨偽造及び行使等)

      1.行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、
        又は変造した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
      2.偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、
        又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
     第149条(外国通貨偽造及び行使等)
      1.行使の目的で、日本国内に流通している外国の貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、
        又は変造した者は、3年以上の有期懲役に処する。
      2.偽造又は変造の外国の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、
        又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
     第150条(偽造通貨等収得)
      行使の目的で、偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を収得した者は、3年以下の懲役に処する。
     第151条(未遂罪) 前3条の罪の未遂は、罰する。
     第152条(収得後知情行使) 貨幣、紙幣又は銀行券を収得した後に、
      それが偽造又は変造のものであることを知って、これを行使し、又は行使の目的で人に交付した者は、
      その額面価格の3倍以下の罰金又は科料に処する。ただし、2000円以下にすることはできない。
     第153条(通貨偽造等準備) 貨幣、紙幣又は銀行券の偽造又は変造の用に供する目的で、
      器械又は原料を準備した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
    Aぎさつ。にせの書類。





















































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