毒(YSミニ辞典)

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毒きのこ(Poison mushroom) : 毒茸(どくたけ、どくきのこ)。[季語]秋−植物。
    食べると食中毒を起こしたり、死に至ることもある(きのこ)のこと。
    日本国内には未知の物も含めて5000種くらいのきのこが生息している。
    食用の約200種のうち約20種ほどが毒きのこ、残りは無毒だが食用に適さないものである。
    わずか20種ほどの毒きのこで毎年平均400人が中毒を起こし、数人が死亡している。
    その中で、最も危険なのがテングダケで、うかつに食べると激しい消化器系の障害や、瞳孔の収縮、
    心臓障害を起こす危険がある。この他には、嘔吐(おうと:吐き戻すこと)や下痢などの
    症状が出やすいツキヨタケコレラタケクサウラベニタケなどがある。
    毒きのこの分類
     毒きのこの毒は、大きく2種類に分けられる。一つは消化器系に作用するもの
     もう一つは神経系に作用するもの。一般的に神経系の毒きのこは一過性のものが多いようだが、
     消化器系に作用するものは、嘔吐や下痢で済むものから、内臓に著しい損傷を与えて
     死に到るものまである。食中毒の分類では、植物性の「自然毒食中毒」である。
    細胞を破壊し、肝臓・腎臓に障害を与え死をもたらす毒(食後8時間から10時間)
     コレラタケ、シャグマアミガサタケ、シロタマゴテングタケ、タマゴテングタケ、
     タマシロオニタケ、ドクツルタケニセクロハツ、フクロツルタケ
    主に自律神経に作用する毒(悪酔い・発汗)(食後20分から2時間)
     アセタケ類、カヤタケ類、ヒトヨタケ、ホテイシメジ
    主に中枢神経系に作用する毒(せん妄・幻覚)(食後20分から2時間)
     オオシビレタケ、センボンサイギョウガサ、テングタケ
     ヒカゲシビレタケ、ヒカゲタケ、ベニテングタケ、ワライタケ
    主に胃腸を刺激する毒(食後30分から3時間)
     イッポンシメジ、オオワライタケカキシメジクサウラベニタケ、コガネホウキタケ、
     ツキヨタケ、ドクベニタケ、ドクヤマドリ、ニガクリタケ、ニセショウロ類、ハナホウキタケ
    手足の末端の腫張・壊死・末梢神経障害による激痛(食後5日から一ヶ月)
     ドクササゴ
    主な毒きのこの種類
    オオシロカラカサタケ(Chlorophyllum molybdites) : ハラタケ科、オオシロカラカサタケ属。
     フィリピンをはじめとする熱帯地域に広く分布する毒キノコだが、
     胞子が台風によって運ばれて繁殖したとされ、国内にも広く自生している。春から秋、草地に発生する。
     外見が食用のカラカサタケと非常に良く似ていることから誤食することがあり、
     嘔吐、下痢、腹痛、悪寒、発熱などの症状を起こす。
     ・・・・・・・・・ データ ・・・・・・・・・・
     傘径7〜30cmの中〜大型で、白地に黄褐色の鱗片をつける。高さ20cm程度。
     ヒダは隔生し、幼時白いが、成熟すると緑色になる。柄の上部に可動性のツバを持ち、根本はふくらむ。
    オオワライタケ : 誤食すると錯乱状態に陥り、意味もなく笑い転げたり、わめき散らしたり、
     幻覚症状に陥る。後遺症も残らず命に別状はないといわれる。
    カキシメジ : シイタケなどと間違われる。暗褐色の食べられそうなきのこ。消化器症状。
    クサウラベニタケ : 見た目は、灰〜薄茶色でいかにも食べられそうなきのこという
     形をしていておいしそうだが、食べると嘔吐などの消化器症状が起きる。
     よく間違えられるウラベニホテイシメジ(食用)は、やや華奢である。
     茨城県などでは食用のイッポンシメジの呼び名があることから食中毒が多いといわれる。
    コレラタケ : 猛毒。誤食すると激しい嘔吐、下痢がおき、脱水症状、昏睡、死亡に至るという。
    シロタマゴテングタケ : 猛毒で死亡する例もある。
    ツキヨタケ(月夜茸) : 夜になると緑色の蛍光を発するので、この名がある。
     シイタケやヒラタケムキタケという美味しくてメジャーなキノコによく似ている上に、
     これらのキノコとよく一緒に生えていることから、日本での中毒例が一番多い。
     2005年10月23日、JA信州諏訪の農産物直売所(岡谷市)で、
     食用として販売されていた「ヒラタケ」を食べた家族3人が食中毒になったが、
     なんと毒キノコの「ツキヨタケ」と判明し、長野県諏訪保健所は直売所を4日間の
     野生キノコの販売停止処分にしたが、十何年もキノコ採りをしていたベテランが
     間違えるなんて考えられないね。

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     カサ:8〜25cm、形は半円形で幼菌は黄褐色、成菌では紫褐色〜暗褐色
        カサを裂くと根元の部分に黒いシミがある。
     ヒダ:暗闇で青白く発光する
     柄:割ってみると黒紫色の斑点がある。太くて短くカサの横につく。
     症状:30分〜3時間後に嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状。死亡することもある。
     季節:9月〜10月頃
     場所:ブナ・ミズナラ・カエデなどの立枯れ木に群生
     特徴:ヒダの付け根部分を裂いくと、黒褐色のシミがある。暗いところではヒダが青白く光る。
    テングタケ(天狗茸) : 毒きのこの王様。テングタケ科担子菌類ハラタケ目のきのこ。
     夏から秋にかけ、松林内の地上に発生。独特の形をしているが、色は地味。
     食べると、腹痛・下痢・嘔吐など、コレラ様の激しい消化器症状や呼吸困難・視力障害などを起こし、
     まれに死亡する。
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     初め饅頭形、のち傘は平らに開き、径5〜25センチメートル、高さ5〜35センチメートルとなる。
     傘面は褐色で白色の小さい疣(いぼ)が付着、茎は白色で中間に膜状の鍔(つば)があり、
     根元は壺状にふくらむ。
    ドクササゴ : 誤食すると3〜5日後に手足の指先が激痛におそわれ、1カ月以上も続くという。
    ドクツルタケ(毒鶴茸) : 全身真っ白な美しいきのこ。形はテングタケと同様で、
     食用のシロマツタケモドキと間違いやすく、地味目な色で間違って食べてしまう人が多いが、
     1本まるごと食べると、大人でも死亡することがあり、国内最強の毒キノコといわれる。
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     力サ:6〜15cm
     柄:14〜24cm、白色でささくれがあり、上部に膜質のツバがあり、根元には袋状のツボがある。
     場所:広葉樹林、針葉樹林の地上
     時期:夏〜秋
     症状:おう吐、腹痛、激しいコレラのような下痢などの消化器症状、肝臓や腎臓の機能障害。
    ニガクリタケ : 小さいわりに猛毒。誤食すると激しい嘔吐、下痢にみまわれ死亡に至るとこともあるいう。
    ニセクロハツ(偽黒初;Russula subnigricans Hongo) : ハラタケ目ベニタケ科ベニタケ属のキノコ。
     主に夏、シイ・カシ林などの地上に発生する。クロハツは傷つくと赤変後、
     しばらくすると黒変するので区別できる。ニセクロハツをクロハツと誤って食べ、死亡することもある。

     愛知県豊橋市内の60歳代の男女2人が2005年8月24日、市内の山林で食用の「クロハツ」と
     間違えてニセクロハツを採取し、その日の夜、女性が自宅でみそ汁に入れて2人で食べたところ、
     約30分後におう吐、下痢、血尿、呼吸困難などの症状が現れ、26日深夜から27日未明にかけて、
     市内の病院で多臓器不全のため相次いで死亡している。
     ・・・・・・・・・・ データ ・・・・・・・・・・
     傘:5〜12cmで灰褐色。
     ひだ:クリーム色で傷つくと赤変する。
     柄:ほぼ傘と同色で、生長すると長さ3〜6cm、太さ1〜2.5cmで傘より淡い同色。
    ハナホウキタ : かるい食中毒を起こす。
    ベニテングタケ(紅天狗茸) : 白樺林に生える、赤いかさに白い点のある美しいが、猛毒のきのこ。
     夏〜秋に白樺の周りに円を描いたように発生。
     ・・・・・・・・・・ データ ・・・・・・・・・・
     カサ:6〜15cm、赤色〜赤黄色で白色のイボをつける。
     柄:10〜20cm、上部に膜質のツバがあり、根元はふくらみ、リング状のツボがある。
     
     北海道美瑛の色鮮やかなベニテングタケ(フリー写真素材集「旅Photo」より)
     症状:腹痛、おう吐、下痢、けいれん、精神の一時錯乱などの神経症状がでる。
毒々しい(どくどくしい) : @(poisonous−looking)いかにも毒を含んでいるようである。
     (例)毒々しい色の蛇。
    A(spiteful、venomous)憎々しい。憎たらしい。言葉や態度が悪意を含んでいる。
    B(heavy colors、glaring、gaudy)色などが濃厚過ぎる。けばけばしい。
     (例)どくどくしい化粧。【類語】●どぎつい
毒見役(Poison Taster)どくみやく : 主君(王様や藩主など)の食事を前もって
    食べて毒が無いかどうかを調べるお役目のこと。
    銀は、化学変化を起こしやすい貴金属で、毒素に対して黒くなったりして
    敏感な反応をすることで知られている。そのために、西洋では早くから銀食器が使われていたが、
    日本でも殿様や大名の毒見役は、銀の箸を使ったと言われている。
毒薬条項 = ポイズンピル
毒を食らわば皿まで(どくをくらわばさらまで) : 毒を喰らわば皿まで。
    既に罪を犯してしまったのだから躊躇(ためら)わずに最後まで悪に徹しようという考え。
    また軽く、どうせここまでやったのなら最後まで遣り通そう、という使われ方もする。
    【類語】●毒を舐めれば皿まで●毒を食わば皿を舐(ねぶ)
        ●Over shoes,over boots.(どのみち靴が泥に浸(つ)かるなら、長靴の上まで浸かってしまえ)
毒を以って毒を制す(resort to an evil measure to destory other evils.)どくをもってどくをせいす
    悪を除くために、悪を利用すること。悪人を退治するのに、悪人を使って退治する。

    「良薬口に苦し」のことわざのように、毒のようににがい薬も少量なら
    薬効が期待できるということもあるが、毒には毒の方は、治すより壊すに近いものでしょう。





































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