水母関連(YSミニ辞典別掲)

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水母(jellyfish、medusa)くらげ : 海月。腔腸(こうちょう)動物門ハチクラゲ綱の刺胞(しほう)類および
    有櫛(ゆうしつ)動物門のうち、傘形あるいは鐘形でほぼ透明、体のほとんどが寒天質よりなり、
    淡水または海水中で浮遊生活を送っている無脊椎(むせきつい)動物の総称。
    クラゲはごくわずかの例外を除いて海産であり、沿岸にまた外洋に、その水表面近くに広くみられる。
    クラゲには肉眼で見えるほどの大きさのものばかりでなく、傘の直径1〜2mmという小形のものも多く、
    それらはプランクトンとしてきわめて普通にみいだされる。クラゲには人間を刺すものがあり、
    また一方で東洋では種類によっては粕漬、中華料理などの食用に供されることもあるので、
    人間にとっては比較的なじみの深い動物といえる。
    体の90%以上が水分でできているゼラチン質で、普通は触手を持って捕食生活をしている。
    クラゲといわれる動物は刺胞動物門のヒドロ虫綱、十文字クラゲ綱、箱虫綱、
    鉢虫綱 にわたって存在する。広義には有櫛動物門(クシクラゲ)も含まれる。
    有櫛動物は、かつては腔腸動物として刺胞動物と一緒にまとめられていたが、
    刺胞を持たない、雌雄同体である、刺胞動物とは全く異なる水管系を持つなど、
    全く体制が異なることから、20世紀初頭には別の門に分けられた。
    刺胞動物、有櫛動物以外にも、クラゲの名前を持つ生物が複数の門にわたって存在する。
    軟体動物門のゾウクラゲは刺胞動物と同様、ゼラチン質で浮遊生活である。
    キクラゲ、ツチクラゲは菌類、イシクラゲは藻類である。
    また、クラゲは刺胞動物における基本的体制の名としても使われる。対になる語はポリプである。
    近年は夏になると日本海側で巨大なエチゼンクラゲが大量発生して問題になっている。漁をする際に
    その毒でもって同時に網にかかった魚を売り物にできなくするなどの被害が発生している。
    ボストン大学名誉教授の下村脩は、クラゲから発光するたんぱく質を取り出す研究で2008年の
    ノーベル化学賞を受賞した。この研究にはのべ100万匹のクラゲが使用されたといわれている。
    [季語]夏−動物。 参 : [YouTube](クラゲ in 海遊館)
アカクラゲ(Dactylometra) : 赤水母。学名は「Dactylometra pacifica」。
    傘の模様からレンタイキクラゲ(連隊旗水母)ともいう。
    腔腸(こうちょう)動物門鉢虫綱旗口(はたくち)目オキクラゲ科に属するクラゲの一種。
    傘は柔らかい寒天質に富み、半球よりやや扁平(へんぺい)で、普通、直径9〜12cm、
    ときにはさらに大形になることがある。傘の外表面上に、16本の顕著な赤褐色の太い縞(しま)
    放射状に並んでいるが、これらの縞はときには薄くて目だたぬこともあり、また場合によっては
    ほとんど消失してしまっていることもある。触手は長く濃褐色で、傘縁に普通40本みられるが、
    大形のものでは56本に達することもある。口腕(こうわん)は4個、淡褐色できわめて長くリボン状である。
    触手の上の刺胞(しほう)の毒はきわめて強く、その触手で獲物の小魚などをつかまえて食べる。
    人間がこれに手を触れると強い痛みを感じ、漁師や海水浴の人々などに嫌われる。
    このようなこともあって本種は古くからよく知られ、また各地でいろいろな俗称でよばれている。
    外傘の模様が旧日本軍の連隊旗の模様に似ていることからレンタイキクラゲ、
    口腕が長いのでアシナガクラゲ、触手の刺胞が乾燥して微粉となり人間の鼻に入ると粘膜を刺激して
    くしゃみが出るのでハクションクラゲ、などがそれである。また、瀬戸内海ではアカンコとよばれて
    釣りの餌(えさ)に用いられる。このクラゲは北海道から沖縄まで日本の沿岸に広く分布しており、
    またフィリピン、北太平洋、北アメリカ西岸などからも知られている。
    
    アカクラゲ(大阪・海遊館)
エチゼンクラゲ(Nemopilema nomurai、Nomura’s Jellyfish)
    越前水母。越前海月。学名は「Stomolophus meleagris」。
    腔腸(こうちょう)動物門鉢虫綱根口(ねくち)クラゲ目ビゼンクラゲ科エチゼンクラゲ属のクラゲ
    1921(大正10)年12月に福井県水産試験場から当時の農商務省の岸上鎌吉(きしのうえ・かまきち)
    博士の元へ標本が届けられ、福井県で標本が取れたので、昔の国名の「越前」とつけたという。
    学名のnomuraiは、当時の福井県水産試験場長の野村貫一氏の姓から取られた。
    このクラゲは日本近海に生息する最大のクラゲで、きわめて大形となり、傘の直径2m、
    重さ200kgにも達することもあり、単に「巨大クラゲ」と呼ばれることもある。
    傘は淡褐色の半球状で、寒天質はきわめて堅く、また厚い。
    体色は灰色・褐色・薄桃色などの変異があり、体の95%が水分である。
    また、傘縁は約120の縁弁に分かれ、各8分区ごとに1個ずつ感覚器がみられる。
    8個の口腕は短く、おのおの2翼に分かれており、8個の肩板があり、
    これらの口腕や肩板には多くの小触手や糸状付属物がみられる。
    触手は有毒で、日本では人が刺されたという報告は殆どないが、漁業者が刺されることもある。
    
    海遊館のエチゼンクラゲ
    
    エチゼンクラゲ。京都府の「丹後の海の生き物」より
    中国北部および朝鮮半島南部沿岸から日本海にかけて分布し、ときには北海道沿岸にまで達する。
    本来の繁殖地は黄海および渤海であると考えられており、ここから個体群の一部が海流に乗って
    日本海に流入する。年によって発生量に大きな差があるが、その原因は化学的に解明されていない。
    2005年に大発生したときは、対馬海峡から日本海へ1日に最大で3〜5億引きが流れ込んだと
    推定され、群れの一部が黒潮にものって南周りで広がり、日本列島を包囲するように広がった。
    2ミリほどの生まれたばかりのエチゼンクラゲが、わずか半年で体重100キロを超すようになるという。
    対馬海流に乗り津軽海峡から太平洋に流入したり、豊後水道付近でも確認された例がある。
    ときに大量発生すると底引き網や定置網を破ったり、原子力発電所の取水口を詰まらせたりするほか、
    クラゲの毒に魚が触れると魚の色が変色し商品価値が下がることから、漁業関係者を悩ませている。
    福井県や京都府の一部の漁場では操業を休止しているところもあるという。
    国産の食用クラゲは産出地域の旧国名ごとに和名がつけられており、
    ビゼンクラゲ(岡山県:備前国)、ヒゼンクラゲ(佐賀県:肥前国)と命名されている。
    食用にするクラゲの多くはビゼンクラゲであるが、本種もビゼンクラゲと混獲されて
    食用とされることがある。また、タイの釣り餌(え)として用いられることがある。
    エチゼンクラゲには国内に食用加工の歴史がなく、
    出現も福井県(越前国)に限らず日本海沿岸全域にわたるものである。 参 : [Synvie
    
    最近の大量発生の原因として、地球温暖化による海水温の上昇もあるかと思うが、
    主原因は中国・韓国の排水の処理不十分やゴミなどによる海の汚染や、
    化学肥料の使用量の増加(海水の富栄養化)によるプランクトンの異常発生説だと私も思う。
    日本海に入ってくるゴミのほとんどは中国・韓国からのもので、
    日本の40〜50年前の工業排水の垂れ流しやゴミの不法投棄を、今演じているのである。
    中国は、日本も昔はやっていたではないかと言っているが、
    今は地球全体が危機状態にあるのに、そんなことを言っているばあいではない!
    一刻も早く、きれいな空気と美しい海を取り戻さなければならない。
    海流やプランクトン量などは2002〜2007年度と比べてほとんど変化がなかったのに、
    2008年はなぜか姿を見せなかったが、
    これが謎の発生原因を探る転機になるのではと研究者たちは期待している。
    クラゲは成熟する前、小さな細胞のまま変化しない時期があり、
    2008年はたまたま休眠期間にあたったのではないかとの推測もある。


    エチゼンクラゲ、関節症治療に有効タンパク
     東海大と理化学研究所は2009年1月30日、
    クラゲから採取した新しい糖タンパク質「クニウムチン」を使い、
    高齢者に多い変形性関節症の治療効果を高めることに、ウサギ実験で成功したと発表した。
    日本海での大量発生が問題化したエチゼンクラゲなどの有効利用にもつながるという。
     変形性関節症は、関節の軟骨がすり減るなどし、ひじやひざなどの痛みや機能障害を引き起こす。
    国内の患者数は700万人以上とされる。現在の治療では、軟骨の粘度を保つ糖タンパク質
    「ヒアルロン酸」を人工的に作りだし、患部に注射している。これに対して軟骨を保護、
    修復する糖タンパク質「ムチン」は自然界に少なく、構造が複雑で大量生産は難しかった。
     研究グループは2007年、エチゼンクラゲやミズクラゲからムチンとよく似た性質を持つ
    クニウムチンを発見。構造が単純なため高い品質で抽出でき、
    クラゲ1トンからはクニウムチン約1キロを採取できるという。
     クニウムチン0・5ミリグラムとヒアルロン酸5ミリグラムを混ぜ、変形性関節症を発症させた
    ウサギに注射したところ、従来のヒアルロン酸だけと比べ、軟骨の厚みや面積が2・6倍も修復された。
     佐藤正人・東海大医学部准教授は「大量生産を軌道に乗せ、4、5年で実用化したい」と話している。
    研究内容は、3月5日から開かれる日本再生医療学会総会で報告する。
    エチゼンクラゲが過去最高の大発生 漁船転覆、漁業被害も(MSN産経ニュースより)
     漁業に深刻な影響を与えるエチゼンクラゲが2009(平成21)年は日本海だけではなく太平洋側でも
    大量に発生している。千葉県銚子沖では、網に大量にかかり漁船が転覆するという事故も起きた。
    さらに、東京湾ではミズクラゲも近年になく大発生している。海の富栄養化や汚染などが共通の
    理由として考えられるという。漁業などへの被害も懸念されており生態の解明が急務になっている。
     エチゼンクラゲは大きいものでは傘が2メートル、重さ200キロにも及ぶ。中国・黄海沿岸などで発生、
    海流に乗って日本沿岸に大量出現するようになったのは平成14年のことである。
    
     平成17年には空前の大発生となり、漁業に大きな被害を与えた。2008年はほとんど現れなかったが、
    2009年は6月末に対馬沖で確認、10月には太平洋側の静岡県沖でも確認された。
    独立行政法人水産総合研究センターは「日本海から太平洋側に現れるのが例年より1カ月は早い。
    大襲来となった17年を上回る規模になっている」と指摘する。
     広島大学の上真一教授(生物海洋学)は「エチゼンクラゲの幼生の分身である細胞の塊『ポドシスト』は、
    海底で何年も生きることができる。昨年はこれが休眠した状態だったが、
    今年は大量に幼生となって成長した」と語る。
     一方、東京湾ではミズクラゲ(15〜20センチ)も大量に発生している。
    東京海洋大学の石井晴人助教によると、2009年は例年より約1カ月早い4月には出現、
    通常8月には観測されないが10月末になっても群れが観測されている。
    過去5年間でもっとも多かった17年規模の発生になりそうという。
     ミズクラゲの大群は昭和30年〜40年代から増え始めた。
    東京湾の護岸化がすすみ幼生が付着できる場所が増加したことや、
    エサを取るうえでライバルとなる魚が乱獲により減少したことなどが原因という。
    エチゼンクラゲも、経済成長を遂げている中国沖で大発生。
    やはり海の汚染が進んだことや魚の乱獲が大量発生の原因と考えられるという。
     千葉県銚子沖では10月30日、漁船の網に大量のエチゼンクラゲがかかり漁船が転覆し、
    3人が海に投げ出されるという事故が起きた。
    他に、定置網などに大量にかかり漁業に深刻な影響を与えているという報告も各地から相次いでいる。
     石井助教は「クラゲは環境悪化の指標になる。
    生態を解明するとともに水質浄化に努める必要がある」と話している。
サカサクラゲ(Upside−down jellyfish) : 逆さ水母。逆さ海月。学名は「Casiopea ornata」。
    動物界刺胞動物門鉢虫綱根口水母目サカサクラゲ科サカサクラゲ属の動物。
    砂の上で、通常のクラゲとは逆さになった姿で泳ぎ、砂底に付着して生活し、
    あまり泳がない変り種のクラゲで、九州以南の亜熱帯〜熱帯の海底に生息している。
    タコクラゲ(蛸蛸母、蛸海月)やエチゼンクラゲなどと同じ根口クラゲ目のクラゲである。
    笠は平らで、笠の縁に触手はない。餌はプランクトンも食べているが、褐虫藻と共生しているので、
    光合成による栄養分も得て成長しているが、藻が光合成しやすいように逆様になっている。
    大きいものでは傘径が15cmほどになる。体色は半透明の褐色〜緑褐色で口腕数は4本。
    刺胞毒があり、刺されると痛みを感じる。
    
    サカサクラゲ(大阪・海遊館)
ハナガサクラゲ(Flower hat jelly) : 花笠水母。学名は「Olindias formosa」。
    腔腸(こうちょう)動物門ヒドロ虫綱ヒドロイド目ハナガサクラゲ科に属するクラゲの一種。
    ヒドロクラゲとしては大形で、傘の直径は普通4〜5cmであるが、ときには10〜15cmほどに
    達することもある。傘は低い円蓋(えんがい)状、4本の放射管のうち相対する2本は
    2分岐して計6本となっている。10〜15本の細長い糸状の傘縁触手のほかに、
    棒状の短い触手が傘縁のほか上傘上にも多数みられ、その総数は200以上に達することがある。
    上傘上の触手は求心管でつながっている。また、傘縁には多数の傘縁瘤(りゆう)や平衡器がみられる。
    十文字型の生殖腺(せん)は放射管上にひだをつくって発達する。
    口柄(こうへい)は赤褐色、生殖腺は褐色、上傘上の触手は紅色と紫色で、全体としてきわめて美しい。
    本州中部から九州沿岸のやや深い海に春から初夏にかけてみられる。
    また、地球の反対側のブラジルやアルゼンチンにも分布している。種小名の「formosa」は、
    ラテン語で「美しい」という意味であり、その泳ぎの美しさは名前の如く花笠踊りにたとえられる。
    人に激痛を感じさせる程の刺胞毒により小魚を捕らえて丸のみしてしまうが、人での死亡例はない。
    底生性のため海上からその姿をみる事はできないが、底引き網にかかったものが水族館へ
    持ち込まれることがある。しかし飼育下では餌の魚を自分で食べないため給餌時には水槽から揚げて
    一匹ずつ引っ繰り返し、口へ餌を押し込んで与えなければならない。
    昼間は岩場でジッとしていることが多く、触手に小石を持って身体を沈ませる行動をとることもある。
    
    ハナガサクラゲ(大阪・海遊館の説明板)
    
    ハナガサクラゲ(大阪・海遊館)
ミズクラゲ(Moon Jelly) : 水海月。学名は「Aurelia aurita」。
    鉢虫綱(ハチクラゲ綱)・旗口クラゲ目(ミズクラゲ目)・ミズクラゲ科に属する腔腸(こうちょう)動物で、
    寒天質は柔らかい。傘に透けて見える胃腔、生殖腺が4つあることから、「ヨツメクラゲ」とも呼ばれる。
    本種の生活環はよく知られており、受精した卵が、プラヌラ幼生→幼ポリプーストロビラ→
    エフィラを経て、成体となっていく過程は実験室で容易に観察できる。
    成体の傘は円盤状で平たく、直径15〜30cm、それ以上のものも稀に見られる。
    傘には、縁辺部に中空の細く短い触手が一列に無数に密生している。
    傘の下側の中央に十字形に口が開き、その4隅が伸びて、
    葉脈の位置で二つ折りにしたヤナギの葉のような形の4本の口腕となる。
    体は四放射相称で、口腕の伸びる方向を正軸、その中間の軸を間軸という。
    間軸の方向に4つの丸い胃腔があり、馬蹄形の生殖腺に取り囲まれる。
    このため、4つの眼があるように見える。まれに五放射、六放射になっているものも見られるが、
    基本的な体の作りは同じである。寒流域を除く全世界の海に分布し、
    日本近海に最も普通に観察できる種類で、冬〜夏に湾内などによく出現する。
    [YouTube](ミズクラゲ in 江ノ島水族館)
    
    ミズクラゲ(大阪・海遊館の説明板)
    
    ミズクラゲ(大阪・海遊館)










































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