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草河豚(くさふぐ) : 学名は「Takifugu niphobles」。硬骨魚綱フグ目フグ科に属する海水魚。
青森県以南の各地、および黄海、東シナ海の沿岸に分布する。全長25cmに達し、
体の背面と腹面に小棘
(しょうきょく)が散在する。体の背側は灰青緑色で多数の小白色円点が散在し、
腹側は白い。産卵期は5〜7月で、大潮の前後の数日間、満潮時に大群をなして岩礁性の海岸の
小石の間に産卵する。卵巣、肝臓、腸に猛毒があり、皮膚に強毒、肉と精巣に弱毒がある。
砂に潜る習性があり、河川にも入る。
クサフグ
胡麻河豚(ごまふぐ) : 学名は「Takifugu stictonotus」。硬骨魚綱フグ目フグ科トラフグ属の海水魚。
函館
(はこだて)湾以南の本州各地、および朝鮮半島、東シナ海に分布する。
漉青色のゴマ模様と、体側中央のレモン色の線、レモン色のヒレが特徴。体は長く、
背面と腹面に小棘
(しょうきょく)がある。背側が青黒色で多数の小黒色点があり、腹側は白い。
臀
(しり)びれは黄色。体長は35〜40cm。筋肉、精巣以外は卵巣と肝臓に強毒、皮膚に弱毒がある。
免許を持った人ならば刺身などとして出すこともあるが、トラフグなどより若干水分が多い。
サバフグとよぶ地方もあるが、サバフグは別種であり、注意を要する。
ゴマフグ
縞河豚(しまふぐ) : 学名は「Takifugu xanthopterus」。硬骨魚綱フグ目フグ科トラフグ属の海水魚。
本州中部以南の各地と黄海、東シナ海に分布する。名前の通りの縞模様と、
鮮やかな黄色のヒレが特徴で、体の背面と腹面に小棘
(しょうきょく)がある。
背側は暗青色で数本の不規則な白色縦線が走り、腹側は白い。ひれはすべて鮮やかな黄色。
体長50〜60cm。有明
(ありあけ)海でも産卵する。肉、皮膚、精巣は無毒だが、
肝臓と卵巣は強毒、腸に弱毒がある。トラフグなどより味は劣るが食用とされている。
トラフグとともに皮が食べられるため、「ふぐ皮」として出回っているものには、この種類が多いという。
本種とトラフグの雑種と思われる個体が有明海などで採集され、学術上関心をもたれている。
シマフグ
潮際河豚(しょうさいふぐ) : 学名は「Takifugu vermicularis vermiculariss」。
硬骨魚綱フグ目フグ科トラフグ属の海水魚。東北地方以南の各地に分布する。
体の表面に小棘
(しょうきょく)がなく滑らか。背側は茶色の地に網目状の暗褐色紋様があり、
腹側は白い。胸びれと背びれは淡黄色。臀
(しり)びれは白く、尾びれは黄色。
胸びれ後方の体側に不定形の黒褐色の紋がある。体長30〜35cm。
肝臓と卵巣は猛毒、皮膚と腸にも強毒がある。また、精巣は無毒だが肉に弱毒がる。
比較的廉価な種類で、食用部分は、鍋物や乾物などに使われることが多い
内湾でも容易に釣れるため、素人
(しろうと)が調理してフグ中毒をおこした例もあり、注意を要する。
ショウサイフグ
白鯖河豚(しろさばふぐ) : 学名は「Lagocephalus wheeleri」。
硬骨魚綱フグ目フグ科サバフグ属の海水魚。カナトフグとも呼ばれるフグで、全長30〜35cm。
鹿児島県以北の日本沿岸、台湾と中国の沿岸および東シナ海に分布する。
体の背面と腹面に小棘
(しょうきょく)があり、背面の小棘は背びれの起部に達しない。
尾びれはわずかに湾入する。体色は背側が緑黄色で、腹側は銀白色。
産卵期は5月ごろで、卵は沈性粘着卵。沿岸の底層に生息する。
本種は従来サバフグ(L.spadiceus)とされていたが、
最近の研究によって別種であることが判明し、名が変更されたものである。
無毒なので、スーパーなどでもよく売られている種類で、一夜干しなどの干物によく加エされる。
本種に似た近縁種のクロサバフグ(L.gloveri)は、九州から北海道南部の太平洋側に分布し、
西太平洋からインド洋海域でもみられる。この種は体色が全体に暗色で、
尾びれの後縁中央部が突出するのでシロサバフグと区別できる。クロサバフグは中層に生息し、
日本近海に産するものは無毒であるが、南シナ海に産するものでは肉に弱毒があり、
中国では卵巣と肝臓に猛毒をもつといわれている。また、シロサバフグとクロサバフグによく似た
ドクサバフグは、東シナ海以南に分布し、内臓のほか肉にも猛毒があるので注意が必要。
シロサバフグ
虎河豚(とらふぐ) : 学名は「Takifugu rubripes」。硬骨魚綱フグ目フグ科トラフグ属の海水魚。
北海道以南の各地、および黄海、東シナ海に分布する。体の背面と腹面に小棘
(しょうきょく)がある。
体の背側は暗青色で小黒斑
(こくはん)が散在し、腹側は白い。胸びれ後方の体側に白く縁どられた
大きな黒い斑点が特徴。幼魚では背面に白い虫食い紋様がある。
背びれと尾びれは暗青色、胸びれは白く、臀
(しり)びれは赤い。全長は70〜80cm。
食用になるフグ類のなかでは大形種で、最も高級とされ、オスの白子は絶品だが、
メスの卵巣には猛毒があるので食べられない。皮は無毒で好んで食べる人も多い。
トラフグ
彼岸河豚(ひがんふぐ) : 学名は「Takifugu pardalis」。硬骨魚綱フグ目フグ科トラフグ属の海水魚。
北海道以南の日本沿岸各地と黄海に分布する。皮膚に柔軟な小瘤
(しょうりゅう)状物(イボ状の突起)が
密生する。体色は背側が褐色で暗褐色の小斑
(しょうはん)が不規則に散在し、腹部は白い。
体長は30〜40cm。春の彼岸
(ひがん)のころ沿岸に産卵のため押し寄せるのが名の由来で、
春の彼岸ごろが美味とされる。関東地方近海ではクサフグと同じ場所で産卵することもある。
筋肉は多くの場合無毒だが、卵巣と肝臓は猛毒、皮膚と腸は強毒、精巣は弱毒である。
ヒガンフグ(弘前のデジカメダイバーより)
河豚(a globefish、a swellfish、a blowfish、a puffer)ふぐ、ふく : 鰒
(ふぐ)。ふぐと。カトン。フクベ。
フグ目フグ科とその近縁の硬骨魚の総称。広義にはハリセンボン科・イトマキフグ科・ハコフグ科などを
含む。体は長卵形で丸みを帯びる。ひれが比較的小さく鱗を欠き、鋭い歯はくちばし状で鋭く、
外敵に襲われると腹を著しく膨張させることから、プクーと膨れた「膨る
(ふくる)」のフクが語源とされるが、
漢字発祥の中国では河や湖に棲んでいる淡水性のフグだったことと、膨れた時の豚の体形もあるが、
つかまれると豚のようにブーブー鳴くことから「河豚」と付いた名と言われる。
現在、有毒のフグを調理して食べる習慣がある国は、主に日本と韓国だが、
実は中国も、淡水性のフグとはいえ、昔は有毒のフグを調理して食べていたのである。
体は普通、太っていて腹ビレがなく、体表に棘状のウロコを持つものや、ウロコのないものがある。
口は小さいが、実は、歯は癒合しており、するどいくちばし状になっている。
また、眼の周りの筋肉が発達しているため目を閉じることができる。
食用のほかに、観賞用の種類もあり、私たちの生活に深く馴染んでいる魚だ。
肉は淡泊で美味、冬が旬で美味だが、卵巣や肝臓などにテトロドトキシンという猛毒を持つものが多い。
ふぐは別名、
鉄砲と言われ、毒に当たれば死ぬことから来ている。
フグ料理に用いる代表的なものは、トラフグ・マフグ・ショウサイフグなどで、
日本近海では約40種が知られる。世界中の温・熱帯海域に分布している。[
季語]冬−動物。
ふぐは、
平安時代には「布久
(ふく)」や「布久閉(
ふくべ)」と呼ばれていた。
江戸時代中頃から、関東で「ふぐ」と呼ぶようになり全国へ広がったが、
現在も下関や中国地方の一部では「福」にちなんで「ふく」と呼んでいる。
一般的にふぐを食べる前に行う加工を「身欠き」と言う。ふぐの口先、背びれ、
胸びれを落として皮をはぎ、内臓を取り出す作業である。毒の部分を取り分けたけあと、
3枚に下ろす「磨き」という作業を行い、ふぐは出荷される。
スーパーなどで鍋用としてパックされているふぐは、このようにして店頭に並べられる。
フグの種類による毒の分布
種 類 |
卵 巣 |
精 巣 |
肝 臓 |
皮 |
腸 |
肉 |
血 液 |
トラフグ |
A |
○ |
A |
○ |
@ |
○ |
○ |
クサフグ |
B |
@ |
B |
A |
B |
@ |
|
コモンフグ |
B |
B |
B |
A |
A |
@ |
|
ヒガンフグ |
B |
@ |
B |
A |
A |
○ |
○ |
ショウサイフグ |
B |
○ |
B |
A |
A |
@ |
|
マフグ |
B |
○ |
B |
A |
A |
○ |
|
メフグ |
B |
○ |
A |
A |
A |
○ |
|
アカメフグ |
A |
○ |
A |
A |
@ |
○ |
○ |
シマフグ |
A |
○ |
A |
○ |
@ |
○ |
|
ゴマフグ |
A |
○ |
A |
@ |
○ |
○ |
|
カナトフグ |
○ |
○ |
A |
○ |
○ |
○ |
|
サバフグ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
カワフグ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
キタマクラ |
○ |
|
@ |
A |
@ |
○ |
|
Bは猛毒(10グラム以下で致死量)
Aは強毒(10グラム以下では致死量ではない)
@は弱毒(100グラム以下では致死量ではない)
○(1000グラム以下では致死量ではない) |
山口県では、「ふぐ」を「ふく(福)」と呼び、幸福をもたらす魚として、1989(平成元)年に
県の魚に定めた。下関市の南風泊
(はえどまり)市場は全国一の「ふく」の取扱高を誇っている。
西日本のフグ漁が盛んな地域でもそう呼ぶことが多く、
一般的には“福”を招くようにと呼ばれるようになったと言われている。
下関がふぐの本場となった3つの要素
@まずは恵まれた場所で、東シナ海、日本海、瀬戸内海という3つの海はいずれもふぐの漁場で、
下関はそれらを結ぶ交通の要所にある。しかも玄界灘や瀬戸内海はトラフグの産卵地だという。
Aまた、古くから漁港として水揚げが多い下関は、日本水産やマルハグループ本社などを産みだした
土地柄であり、水産加工業がとても盛んで、毒を持つふぐの加工には、知識・技能が必要であり、
優れた水産加工労働者を有する加工場が下関に集積していることがある。
Bもう1つは伝説となっているが、下関の料亭「
春帆楼」と
伊藤博文のエピソードがあるように思われる。
ふぐは古来より下関近辺で食されていた。ところが、朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の際に
他国より訪れた兵士の中で食べた人に中毒死することが相次いだために
豊臣秀吉の逆鱗に触れ、
「河豚食禁止の令」が発布された。
江戸時代も長州藩などは武士が食べることを禁じていた。
明治になっても法令により禁止されていたのである。ふぐを解禁したのが伊藤博文である。
1888年に伊藤博文が「春帆楼」を訪れた際、「ふぐ」を食べて、その味に感動し、
山口県知事に解禁を働きかけたとされている。
料亭としては時化
(しけ)で良い魚が手に入らず苦肉の策だったと言われている。
参 :
ふくの日、
ソウシハギ
フグ延縄漁法(ふぐはえなわりょうほう) :
フグのはえ縄漁法には、カラスフグを対象とする「浮はえ縄」と
トラフグ・マフグを対象とする「底はえ縄」があり、基本的な方法は同じである。
浮はえ縄漁は海中に縄を浮かべ、底はえ縄漁は海底に縄を設置する。
いずれも幹縄は長さ40cmほどのカタガネ(ジャンガネとも言う)という鋼線を繋ぎ合せ、
8mごとに枝縄を付け、先端に釣り糸を取り付ける。
例えば釣り針を90本使う場合、幹縄の長さは720m。
釣り糸につけるエサはイワシで、3つか4つに分け、塩をふって前日から用意するのが一般的という。
漁師たちは深夜のうちに漁に出て、夜明け前に漁場に着くとはえ縄を海に入れ、操業を始める。
昼前には縄を引き揚げて漁を終えて港に帰る。どんなに遅くても夕方までには帰って来るという。
この山口県の徳山(現・周南市)で生まれた漁法は、今や全国各地に広がり、フグ漁として定着している。
フグ延縄の仕掛け
はえ縄漁は、明治10年頃に徳山市(現・周南市)の
粭島(すくもじま)に伝わったとされる。
ふぐ漁に延縄荒縄による延縄が用いられていたが、
ふぐの持つ鋭利な歯で枝縄、幹縄を切られることも多かったが、
島の漁師であった高松伊予作が1877年ごろ考案考案したといわれ、
縄の一部を銅線を使うなどの工夫により、1900年前後にふぐ延縄漁が確立し、
改良されて全国に伝わった。粭島には「ふぐ延縄発祥の碑」が建てられている。
また天然物のトラフグにおいては、粭島から大分県の姫島にかけて捕れるものが最高級とされる。
ふくの日(ふくのひ) : 2月9日。「ふ(2)く(9))」の語呂合せから、
下関ふく連盟が1981(昭和56)年に制定し、毎年、市内南部町の恵比寿神社で、
ふぐの豊漁と航海の安全等を願って盛大にふくの日ふく祭りを開催している。
「下関ふくの日まつり」は「ふくの日」にちなみ、2月11日の祝日に9時から行われるイベントで、
ふく鍋の無料振舞い(先着1500名)、ふく刺しやふく関連製品の物産即売会、大抽選会、
袋せりによるオークションなどが行われ、毎年多くの人出で賑わっている。
下関では、
河豚は「ふく」と発音し、「福」と同音であることから縁起の良い魚とされている。
ちなみに、ふぐ関連の記念日として「ふぐの日」の9月29日、「とらふぐの日」の10月29日がある。
「下関ふくの日まつり」の問い合わせ :
下関観光コンベンション協会(Tel.0832−23−1144)
ふぐ料理(ふぐりょうり) =
ふぐ料理(料理関連に別掲)
真河豚(まふぐ) : 学名は「Takifugu porphyreus」。硬骨魚綱フグ目フグ科トラフグ属の海水魚。
樺太
(からふと)(サハリン)以南、日本各地の沿岸、東シナ海に分布する。
体の表面には小棘
(しょうきょく)がまったくなく滑らかであるため「ナメラフグ」とも呼ばれる。
体の背側は暗褐色で腹側は白く、体側下方に黄色の縦線が1本走る。
胸びれ後方の体側と背びれ基部に黒紋がある。幼魚や若魚には背側に多数の小白斑
(はくはん)がある。
臀
(しり)びれは黄色。体長は約40cm。筋肉と精巣は無毒だが、肝臓と卵巣は猛毒、皮膚と腸は強毒。
マフグ