がん関連(YSミニ辞典)

[ホーム] [索引] [前項] [次項]                                          
PDT(Photodynamic Therapy)フォトダイナミックセラピー : 光力学療法。光線力学療法。光線力学的療法。
    特定の波長のレーザーだけに反応するビスダインやフォトフリンなどの薬(光感受性物質)を
    腕の静脈から注入した後、病変部にレーザーメスの1/100という弱い低出力レーザー光線を当て、
    正常な細胞へのダメージを最小限にしつつ、悪いがん細胞のみを殺す治療法のこと。
    ただし、低出力レーザーは深いところまでは届かないので、
    すでに悪性細胞が深い部分まで及んでいる病期の方や、腺がんの方には適応とならない。
    したがって、円錐切除同様、適応範囲は高度異形成や上皮内がんがメインとなる。
    PDT自体は早期肺がんや早期胃がん、表在性食道がんなどにも利用されており、
    1996(平成8)年から初期子宮頸がんでも保険適用となっている。
    眼病の治療 : これまで病変部に強いレーザーをあて、新生血管を焼くレーザー治療(光凝固)が
     行われていたが、新生血管が中心窩(ちゅうしんか:網膜の中心にあるくぼみ)に近いところにあると
     中心窩が同時に損傷されて、視力が更に低下する危険性が高かったため、レーザー治療は行えなかった。
     しかしPDT治療では、光に反応する薬を腕から静脈に注射し、網膜の新生血管に薬が届いたところで、
     そこに弱いレーザーを照射し、薬が活性化して新生血管を閉塞する方法なので、
     新生血管が中心窩にあっても、正常な視細胞などにほとんど影響を与えずに、
     新生血管だけをたたくことができる。PDTは加齢黄斑変性症のうち、
     黄斑の中心窩に新生血管がある場合を対象に2004(平成16)年5月、公的医療保険が適用された。
     参 : 眼科PDT研究会(HP)
    PDTの原理
     腫瘍細胞や腫瘍組織内の新生血管の内皮細胞内に取り込まれた光感受性物質は、
     レーザー光が照射されることにより、活性酸素を発生さる。
     この活性酸素により、腫瘍細胞や組織が傷害を受けて腫瘍が消失すると考えられている。
     PDTは、この光線力学的反応を利用した治療法である。PDTはそれ自身毒性が低い光感受性物質と
     低出力のレーザー光を併用するため、生体への負担が少ないのが特徴である。
    予想される効果および副作用
     PDT後、腫瘍は約1週間のうちに壊死脱落するので、その後の外科処置が必要なことがある。
     治療は1回で終了することもあるが、腫瘍が大きい場合あるいは腫瘍が重要な器官(脳や目など)の
     近くに存在する場合には、数回に分けて治療をすることがある。
     副作用の出方には個体差があり、全く無症状であったり、逆に通常よりやや強く現れる場合や、
     今までに経験されていない副作用が起こる場合も考えられる。
    初回治療は2泊3日、強い光を避ける
     PDT治療で用いられる光感受性物質は、注射後に全身に行き渡る。
     この薬は光に反応するので、強い日光に当たると、副作用としてやけどに似た症状が起こる。そのため、
     治療後48時間は、強い日光を避けなければならず、初回の治療時は2日の入院が必要となる。
     退院後も5日間はできるだけ日中の外出を避け、強い光は浴びないようにしなければならない。
PSA検査 → PSA
RI内用療法(アールアイないようりょうほう) :  、非密封放射性同位元素内照射療法。アイソトープ治療。
    核医学治療とも呼ばれ、放射性物質を組み込んだ薬剤を飲んだり注射したりするがんの治療法の一つ。
    ガンマ線やベータ線などの放射線を出す放射性同位元素(RI)を注射や経口薬で体内に入れ、
    腫瘍(しゅよう)などの病巣に放射線を浴びさせて破壊する治療法である。
    RI内用療法は、投与した薬剤が病変部の特定の部位だけに集まって治療するため、
    正常部にはほとんど取り込まれないことを利用したものである。
    したがって細胞障害性の強いRIを用いれば、病変部は放射線障害に陥るのに対し、
    正常細胞には障害を与えないため副作用なく全身の病気の治療を行うことができる。
    従来はRIそのものが甲状腺や骨などに集まる性質を利用する薬剤が主流だったが、
    特定の抗原にのみくっつく抗体にRIを組み合わせた「放射免疫療法」が登場し、注目されている。    
国内で保険承認されているRI内用療法
RI(商品名) 放射性ヨウ素131:経口薬 放射線ストロンチウム89
(メタストロン):注射薬
放射性イットリウム90
(ゼブァリン):注射薬
対象となる病気 甲状腺機能亢進症
甲状腺がん 
がんの骨移転による疼痛 悪性リンパ腫 
放射線の種類  ベータ線、ガンマ線 ベータ線  ベータ線 
利点  副作用が少ない  副作用が少ない。
外来治療可。間隔を
開ければ繰り返し治療可
副作用が少ない
難点  甲状腺がんの治療の場合、
1週間ほどRI治療病室に
入院が必要。全国で160床
程度しかなく、数カ月待ち
白血球や血小板の減少 白血球や血小板の減少
2011.2.17、朝日新聞より
    参 : 日本核医学会(HP)、日本医学放射線学会(HP)
胃癌(a cancer of the stomach)いがん : の上皮から発生する悪性腫瘍のこと。
    ごく初期には全く症状がないが、次第に胃部の痛み・膨満感、はきけ・食欲不振・胸やけなど
    不定の胃症状が自覚され、吐く物や大便に血液が混じることがある。
    原因については残念ながらまだ解明されていないが、遺伝的な素因は考えられそうで、
    1944年に世界保健機構(WHO)は、ピロリ菌が胃がんの第1級因子であると認定した。
    つまり、胃がんの危険因子は大きく分けて「喫煙」「塩辛い食べ物」とこの「ピロリ菌」が挙げられている。
    2006年秋発表の厚生労働省の調査でも、ピロリ菌に感染している人は、
    感染していない人に比べて、胃がんのリスクが10倍であることが分かった。
    がんはまず胃の粘膜から発生し、年単位の時間をかけて上下左右に広がり、
    血管やリンパ管または胃の壁の外側へ進んでいき、ついには体全体に転移を起こす。
    そして際限なく増殖して正常細胞の栄養を横取りし、
    最後には栄養源である宿主(人間)まで死に至らしめ自らも死んでしまうという、
    全くもって無鉄砲な細胞の集まり、それが「がん」なのである。 参 : 萎縮性胃炎
咽頭がん(いんとうがん) : 上咽頭(じょういんとう)がん、中咽頭(ちゅういんとう)がん、
    下咽頭(かいんとう)がんとに分かれる。解剖学的には上咽頭は鼻の突き当たりで、
    上方は頭蓋骨、上外側は眼があり、外側には耳管咽頭孔(じかんいんとうこう)があり、
    前方は鼻腔になる。上咽頭がんでは頸部(けいぶ)リンパ節転移も多く、多様な症状を示す。
    中咽頭は上咽頭の下方で軟口蓋(なんこうがい)の高さで境される。
    中咽頭には扁桃腺(へんとうせん)があり、前壁は舌根部(ぜっこんぶ)で舌の付け根の部分である。
    中咽頭がんでは扁桃肥大と間違えられることもある。また中咽頭には悪性リンパ腫もしばしばみられる。
    下咽頭は中咽頭の下方で、食道入口部までが範囲で、下咽頭の前方には喉頭がある。
    中咽頭がんや下咽頭がんでは、食道がんとの重複がんが多いのが特徴である。
    上咽頭がんではEBウイルスの関与がいわれ、中咽頭がんや下咽頭がんではアルコールやたばこ、
    食物、環境因子などとの因果関係があるとも報告されている。
    症状と診断
    ●上咽頭がん : 上咽頭部にできた悪性腫瘍で、まれな疾患である。男女比は2対1で男性に多く、
     40〜70歳代に多くみられる。上咽頭部がんで耳管に腫瘍ができると、耳管閉塞、難聴、耳鳴り、
     鼻づまり、血性鼻汁などの症状が出る。腫瘍が脳神経を圧迫すると複視(二重に見えたり)、
     視力障害、三叉神経の圧迫では顔面の疼痛が起こる。
     鼻咽腔ファイバースコープ(内視鏡)検査で直接がんを観察し、腫瘍の大きさ、固さ、
     深部への拡がりなどを調べ、生検でがん細胞の有無と種類を調べる。
     CTMRIで腫瘍の周囲組織への広がりや浸潤(しんじゅん)の有無を検査する。
     遠隔転移が多いので肺転移や全身への転移を調べるため、
     肺CTやガリウムシンチ、PET(ポジトロン放出断層撮影)なども行われる。
     治療 : 放射線治療と抗がん薬治療(化学療法)を組み合わせて行うのが一般的で、
      手術が第一選択になることはない。放射線治療後に補助化学療法を行う方法や
      放射線照射に抗がん薬を併用して行う方法、全身的に抗がん薬治療を行い、
      そのあとに局所の上咽頭を中心に放射線を照射する方法がある。
      放射線治療と化学療法の2つを組み合わせることにより、治療成績は著しく向上している。
    ●中咽頭がん : 比較的まれながんで、日本では、九州、沖縄などに多く発症し、
     好発年齢は50〜60歳代の男性で3る。中咽頭がんの発症には、長期の飲酒歴や喫煙歴が
     大きな要因と考えられている。症状は、のどの違和感、しみる感じ、のどの痛み、
     飲み込みにくさがみられ、進行すると激痛、出血、開口障害、嚥下障害、呼吸困難などが出る。
     中咽頭がんも頸部のリンパ節に転移しやすいので注意が必要である。
     内視鏡を鼻から挿入して観察し、腫瘍の大きさ、固さ、深部への拡がりなどを調べ、
     生検(視診と触診)でがん細胞の有無と種類を調べる。
     MRI検査、CT検査、X線透視検査、超音波検査などの画像検査も併用し、
     がんの範囲やリンパ節転移を診断する。
     治療 : T期やU期のがんでは放射線治療か、あるいは化学療法、併用療法を行う。
      外照射では治療後の唾液腺の分泌障害による口腔乾燥症が問題となるので、
      術前照射後切除術や組織内照射により唾液腺への線量を減少させる治療法などがある。
      一方、V期、W期の進行がんでは手術治療になり、その場合には再建手術も必要になる。
      軟口蓋を大きく切除したり、舌根部を大きく切除した場合には嚥下機能障害が術後に
      生じる場合があるため、嚥下障害に対する手術が必要になる。
      また舌根がんが下方に進行している場合には、喉頭も合併切除する。
    ●下咽頭がん : 50歳以降に好発し、飲酒・喫煙が習慣の男性に多くみられる。
      症状は、嚥下時のひっかかる感じ、焼けつくような痛みがみられたり、
      中耳炎様の症状がでることもある。しわがれ声が続き、徐々に進行する。
      下咽頭がんも頸部リンパ節に転移しやすいので注意が必要である。
      直接肉眼的に見ることはできないので、喉頭鏡や内視鏡で観察し、
      生検を行って病理検査で腫瘍の有無、種類を調べる。
      食道造影検査、レントゲン検査、MRI検査、CT検査で腫瘍の大きさや場所、転移の有無を調べる。
      食道がんとの重複がんを調べるためには、
      上部消化管ファイバースコープ(内視鏡)検査が必要である。
     治療 : T期やU期では、放射線療法また化学療法と両方を同時に行う併用療法がある。
      V期以降では、手術が中心になるが、手術では、喉頭の全摘出が行われる。
      初診時にすでに進行がんが多いので、咽頭喉頭食道摘出術という下咽頭とともに
      喉頭を摘出する手術を行い、空腸などを用いた遊離皮弁や大胸筋皮弁などで下咽頭を再建する。
      その場合、喉頭がんと同様に喉頭も全摘するので、永久気管孔となり音声機能を失う。
      最近では、限られた部分の下咽頭がんでは喉頭を温存した手術方法もある。
      また早期がんであれば、放射線治療で治癒する。
がん(cancer) : 癌。悪性腫瘍(しゅよう)全般を指す。遺伝子の異常により起こる、
    細胞の異常な増殖のこと。特に、上皮性の悪性腫瘍のみをさすこともある。
    がん細胞は約60兆個もある正常細胞が変化して出てくるもので、からだ全体の調和を無視して
    無秩序に増え続けるのが第一の特徴で、がん細胞はまわりの正常な組織に侵入したり(浸潤)、
    血管やリンパ管を通って体のいたるところに定着し、そこで増殖する(転移)性質がある。
    がんが他の病気と大きく異なるのはこれらの性質による。またこれらの浸潤や転移をする性質のため、
    がんは悪性の病気であるといえる。ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全体を示す時に用いられ、
    上皮性腫瘍に限定する時は漢字の「癌」という表現を用いることが多い。
    がん(悪性腫瘍)の分類
     造血器由来のもの : 白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫などがある。
     上皮細胞からなる癌(癌腫とも呼び、英語ではcancer・carcinoma) :
          肺癌皮膚癌乳癌食道癌胃癌肝臓癌膵臓癌大腸癌直腸癌、子宮癌、卵巣癌、
          腎臓がん前立腺癌頭頸部癌(喉頭癌、咽頭癌、舌癌など)などがある。
     非上皮性細胞(間質細胞:支持組織を構成する細胞)からなる肉腫(にくしゅ)(英語ではsarcoma)
          血管、筋肉、骨のがんや白血病などがある。
     癌肉腫 : まれにひとつの腫瘍の中で両者が混在するもので、発生頻度は、肉腫に比べ
            癌腫のほうが圧倒的に多く発生する。骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、
            線維肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫などがあげられ、発生した組織名が冠されている。
     造血器腫瘍を除くとそのほとんどはかたまりをつくって増生するので、固形腫瘍(こけいしゅよう)
     一括して呼ぶこともある。
    がんを防ぐための12カ条(国立がんセンター)
     @バランスのとれた栄養をとるいろどり豊かな食卓にして
     A毎日、変化のある食生活をワンパターンではありませんか?
     B食べすぎをさけ、脂肪はひかえめにおいしい物も適量に
     Cお酒はほどほどに健康的に楽しみましょう
     Dたばこは吸わないように特に、新しく吸いはじめない
     E食べものから適量のビタミンと繊維質のものを多くとる緑黄色野菜をたっぷりと
      生野菜やくだものに含まれるビタミンCには、ニトロソ化合物といわれる発ガン物質の
      活動を抑えることができると考えられている。繊維質のものは直腸や大腸ガンの予防に
     F塩辛いものは少なめに、あまり熱いものはさましてから胃や食道をいたわって
     G焦げた部分はさける突然変異を引きおこす
     Hかびの生えたものに注意食べる前にチェックして
     I日光に当たりすぎない太陽はいたずら者です皮膚がん予防
     J適度にスポーツをするいい汗、流しましょう
     K体を清潔にさわやかな気分で
    がんにならない14条(米がん研究協会)
     @植物性食品を中心に、多種類を食べる : いろいろな種類の野菜や果物、
      豆類や精製度をなるべく抑えた穀類などを利用した献立が勧められている。
     A適正な体重を保つ : 肥満の度合いを表す体格指数(BMI)を用いて、適正体重を計算する。
     B適度な運動をする : 身体をたくさん動かすことでエネルギーを消費し、新陳代謝を活発にする。
      運動することによって、特に結腸ガンのリスクが低下することが明らかにされている。
      また、最近では、肺がんや乳がんのリスクも下げるという研究報告もされている。
     C野菜や果物をたくさん食べる : 1日400〜800g、
      または5品目以上の野菜や果物を食べることが勧められている。
      しかし、果物を食べ過ぎると肥満につながるので、要注意! 下記は、簡単な野菜の摂り方のヒント。
       毎食何か野菜を。時間がないときには野菜ジュースでもOK!
       外食のときは、少しでも野菜の多いメニューを!
       みそ汁やスープは具だくさんに弁当など外で食事を買うときは、
       惣菜パックを一品鍋料理には野菜をたっぷり
     D豆腐など植物性たんぱく質を多く含む食品を摂る : 総エネルギーの45〜60%を
      植物性食品から摂るようにしましょう。色々な種類の穀物・豆類・根菜類・イモ類などで
      精製度の低いもの(胚芽米や玄米、全粒粉のパンなど)を選んで
      1日に600〜800g食べることが勧められている。
     E酒類は控えめにする : 酒の飲みすぎは、がんのリスクを増大させるので、お勧めできない。
      1日平均で男性は2ドリンク、女性は1ドリンク内が適量。
      男女で適量が違うのは、男性の方が心臓病になりやすく、少量のアルコールは
      その予防に役立つこと、女性は、飲酒によって乳がんのリスクが高くなるから。
      下記は、アルコール2ドリンクの目安。ビール500ml(中ビン1本)、ウィスキー60ml(ダブル)、
      日本酒180ml(1合)、焼酎(25度)100ml、ワイン200ml
     F肉類は少なめにする : 赤みの肉は1日80gまでを食べる場合は、1日80gまでにしましょう。
      赤みの肉類(牛肉・豚肉など)を食べる場合は、1日80gまでにしよう。
      赤みの肉より、魚や鶏肉が好ましい。
     G脂肪や油脂分はできるだけ避ける : 特に動物性脂肪の多い食事を控えましょう。
      下記は、脂肪を控えるヒント
      炒めるときは油を控えめに、揚げ物は控えめに、できれば衣を少なくひき肉を少なく、
      脂身のない肉や魚を選ぶ。ドレッシングやマヨネーズの使いすぎに注意。
     H塩分は控えめにする : 下記は、塩分を控えるヒント
      味のついているものには、しょう油や塩の使用を避ける、インスタント食品は程々に、
      漬物や佃煮を控えめに、酸味や香辛料を上手に使う、麺類の汁は全部飲まない、
      みそ汁は、汁を少なくするためにも具だくさんに
     I新鮮な食品を食べる : かびた可能性のある食べ物を食べない。
     J食べ物は正しく保存する : 腐りやすい食品は、
      ただちに冷蔵または冷凍保存することが勧められている。
     K加工品や添加物は避ける : 食品添加物や、残留物質に気をつけましょう。
     L黒焦げになったものは避ける : 肉や魚は調理でこがさない。
     Mダイエット食品を多用しない : 栄養補助剤は不要。それぞれの項目を守り、
      がん予防に役立つ食生活を送れば、ビタミンやミネラルなどの錠剤やドリンクなどは不要。    
がんにかかるリスクと生活習慣
  がんの部位 
確実  ほぼ確実 






る 
喫煙  肺、胃、食道  肝臓、膵臓 
飲酒  肝臓、大腸、食道   
肥満  乳(閉経後)、食道膵臓  大腸
塩分    胃 
肉食  大腸   
加工肉 大腸   






る 
運動    大腸、乳(閉経後) 
野菜・果物   食道、(果物)、 
授乳    乳 
コーヒー    肝臓 
牛乳    大腸 
厚労省研究班調べ。赤字は世界がん研究基金の主な指摘
死亡数が多い
がんの部位
(2007年)
順位 男性 女性
肺 
胃  胃 
肝臓 結腸
結腸 膵臓
膵臓 乳房
男女とも、1、2位の
原因は「喫煙」でしょう 
    がんによく効く温泉
     ★玉川温泉(秋田県) : ラジウム泉
     ★増富ラジウム温泉(山梨県) : ラジウム泉。
      湯治宿「不老閣」は、冷たい19℃の天然岩風呂がある。
     ★三朝温泉(鳥取県) : ラジウム泉。
      保養旅館「梅屋」は、温泉オンドル部屋がある。Tel:0858−43−0534
     ★ローソク温泉(岐阜県) : ラジウム、強放射能泉。
      湯の島ラジウム鉱泉保養所は、1泊2食付9000円からで、
      無農薬自家農園で育った野菜を使い、自家産の鯉料理も免疫効果を高める。
    参 : タクティールケア疫学調査日本対がん協会(HP)、がん研究振興財団(HP)、
        生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究(HP)、
        国立がんセンターがん対策情報センター(HP)、喫煙と健康被害

    喫煙や生野菜の摂取量が少ないなどの危険因子はあるが、
    私の近親者や友人・知人の「がん」を考えてみると、ガンの主な原因としては、
    定年などの「急激な環境変化」と、怒ったり悲しんだりすることが要因の「ストレス」だと思う。
    それに空気や飲み水などの「環境汚染」が加わるでしょう。
    喫煙も山間部のきれいな空気のなかでは、がん発生にはつながらず、
    都会の汚れた空気の中での喫煙や受動喫煙が、複合汚染により発生率を高くしているものと思う。
    とても元気だった東隣の1人住まいの奥さんは、ガンで亡くなる1年前から「ガスの臭いがする」と
    何度も言われ、ガス会社に点検にきてもらったが異常なしとのことだった。しかし、
    奥さんが四国の八十八箇所に参られたときに、ガス警報が出たのでガス会社に来てもらったところ、
    地下に埋設のガス管が腐食して穴が開いていたのである。日頃は奥さんの戸の開け閉めなどで
    ガス警報が出るまでにはならなかったと思うが、臭いを感じると言えば、綿密なガス検知をすべきである。
    毎日のラジオ体操を欠かさず、食べ物や健康にはとても気をつけられていた奥さんが、
    一年間も家の床下から漏れていた都市ガスを吸い続けたことにより、
    肺ガンになったと思えてしかたがない。このことなどがあって、我が家はガスを止めてオール電化とした。
    奥さんも入院前にオール電化にされたが、新品の電磁調理器を一度も使われることはなかった。
    また、西隣の奥さんは愛犬が老衰で死ぬたびに、1カ月近く塞ぎこんでしくしく泣いておられた。
    「こんなに悲しむくらいなら犬を飼うのはやめにしたら」と言うと、それからは飼われなかったが、
    すでにガンの芽は出ていて、人口膀胱などで不自由に生活をされ、今年天国に旅発たれた。
    ペットは10〜15年くらいの寿命だが、人間は80〜100年近く生きられるのである。
            
がんになる心配をしてますか?
「はい」の人の理由(71%)
予防策は?
(複数回答、12位まで)
回答
者数
(人)
「いいえ」の人の理由(29%)
なぜですか?
(複数回答)
回答
者数
(人)
定期的検診 2182 心配しても仕方がない 703
適度な運動 1159 がん家系ではない 368
塩分を控える 1138 根拠ないが大丈夫 271
食物繊維をとる 1071 ほかの病気が心配 147
ストレスをためない 983 健康に自信 108
よく眠る 907 万全の検査をしている 69
禁煙 839 その他 59
歩く 677 すでに治療中   42
お酒を控える  527
ビタミンをとる  504
紫外線を防ぐ  413
何もしていない  412    
「はい」の人が答えました
心配するがんは?
(三つまで選択、10位まで)  
がんを告知されたい?
(全員回答) 
胃がん(1484人)、大腸がん(1314)
肺がん(817)、乳がん(679)、
前立腺がん(592)、子宮がん(551)、肝臓がん(448)、食道がん(366)、
膵臓がん(310)、咽頭がん141 
「はい」が93%、「いいえ」が7% 
人類はいずれがんを克服?
(全員回答)
「はい」が52%、「いいえ」が48%
2010.12.11、朝日新聞「be」より。
「アスパラクラブ」会員によるアンケート。回答者数:4336人。
私は「はい」の一人で、毎年人間ドックで定期的検診をし、
数年に1回は脳検査を追加している。3年前にはがんに移行する
かもしれないという腸ポリープが見つかり、手術でとってもらった。
「いいえ」の理由の“万全の検査をしている”というのは、がんになる
心配をしているからだと思われ、予防策の定期的検診の範ちゅうでしょう。
    不足なき人生、しかし寂しさも
    (朝日新聞2011.11.15「声」より、大分県由布市の農業・真重 昇さん(84歳)の投稿文紹介)
     今年1月、医大病院で皮膚がんと告知された。手術したが、2カ月後転移が確認され、再手術となった。
    最近になってまた転移、患部の痛みも増し、私は生涯について決意をするようになった。
     年齢からも不足はない。日々衰えを増す体調から、妻との対話も余命に及ぶようになった。
    不足なき人生とはいえ、一抹の寂しさがある。
     摘除手術、薬物投与、放射線治療等、医療技術を傾注した治療も空しい。
    痛みによる寂寥感(せきりょうかん)から陰鬱(いんうつ)状態に陥るが、
    そんな時はハーモニカを演奏する。年代柄昭和の歌謡曲「酒は涙か溜息か」
    「湖畔の宿」「夜霧のブルース」などだが、一瞬明るさを取り戻す。
    以前はボランティアで演奏して回ったが、今はもうできない。しかし心のよりどころとなった。
     がんと無縁は不可能な現代、克服は私にとって最大の焦点となっている。
     不足なき人生との裏腹に、克服が最大の焦点と言われるように、心の葛藤がひしひしと伝わってくる。
    がん発生は、放射線被爆や過度の紫外線曝露(ばくろ:直接さらす)などの外因性によるものを除き、
    喫煙、過度の飲酒・塩分の摂り過ぎの他、心痛などのストレス(内因性)によるものが最も多いとされる。
    したがって「明日は明日の風が吹く」「なるようになるさ」のように「くよくよしない」ことが、
    がん防止には一番の薬という。真重さんは元来明るい人のように思え、
    原因は農業で肌を紫外線にさらし過ぎたためだと思う。太陽のもとで長時間働く人は、
    長袖などて皮膚を保護し、変なシミや黒い斑点が大きくなったようなら、早めの検査をしましょう。
    真重さん、気力でがん細胞を追い出し、元の体に戻られることをお祈りします。

がん拠点病院(がんきょてんびょういん) : 「がん診療連携拠点病院(旧地域がん診療拠点病院)」の略称。
    厚生労働省は、がん患者の5年生存率の20%アップという大目標(メディカルフロンティア戦略)をたて、
    2002(平成14)年3月に4都県5病院の設置から始め、都道府県推薦の135病院と、
    2006年4月1日付で加わった国立がんセンターの中央病院(東京・築地)と
    東病院(千葉県柏市)の計137病院だったが、2008年4月現在で351病院まで増えた。
    2006年4月施行の新しい整備指針で「がん診療連携拠点病院」と名称が変わり、
    都道府県で中核になる都道府県拠点病院と、地元密着の地域拠点病院の2段階になった。
    がん対策基本法に基づき、厚生労働大臣が指定する。
    医療の地域格差を無くすため、専門的な治療を拠点病院を中心に広める目的で、
    全国どの地域でもがんの専門治療を受けられるようにし、
    がんによる死亡率を2007年から10年間で20%減らすことを目標にしている。
    我が国に多いがん(胃がん肝がん大腸がん乳がん肺がんなど)について、
    がん診療情報の収集、分析および情報発信、医療機関相互の診療連携をはかり、
    最新の診療方法に関する研修会の開催など、がん医療水準の向上、「均霑化(きんてんか
    生き物が等しく雨露の恵みにうるおうように、各人が平等に利益を得ることという意味)」を図るのが
    目的である。すなわち、がん拠点病院のがん診療のいろいろな情報を集めれば、
    その病院の水準もわかるだろう。これら情報をホームページなどで広く公開、
    だれでも高い水準のがん診療を平等にうけられるようにしよう。さらにがん終末期医療に
    たずさわることも多いので、緩和医療チームによる診療体制も整備しようというものである。
    2006年度から都道府県拠点病院には1500万円、地域拠点病院は700万円の補助金が出る。
    がん患者1人2000円の診療報酬加算も新設されたが、
    整備指針では費用がかさむことばかりなので、各病院の工夫が必要とされる。
    指定
     @都道府県知事が推薦し、厚生労働大臣が指定する。
     A2次医療圏に1カ所程度を目安に推薦する。
    2008年春改定された新要件は、がん専門医の確保、緩和ケアチームの組織など、
    より高度な診療体制の整備を求めている。
    高度で専門的な手術や治療が受けられる都道府県拠点病院は2008年4月1日現在で
    47(宮城、東京、福岡に各2カ所、北海道、滋賀、香川は未指定)、
    入院治療に対応する地域的まとまりである「2次医療圏」ごとの地域拠点病院は304ある。
    参 : 地域がん診療拠点病院指定一覧表(HP)、厚生労働省(HP)、がん対策情報センター
肝臓癌(liver cancer、hepatic cancer)肝がん : 肝臓に発生する悪性腫瘍のことで、
    原発性肝がんといい、肝細胞がん、胆管細胞がん、肝芽腫、などがある。
    その90%以上が肝細胞由来の肝細胞ガンで、肝がんといえば肝細胞がんを指すことが多い。
    とくにB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスのキャリアの慢性肝炎、肝硬変
    アルコール過剰摂取が原因として重視され、肝臓がんの危険性がきわめて高いので注意が必要で、
    最近とくに問題となるのは、C型慢性肝炎である。
    肝臓以外の臓器のがんから肝臓に転移したものを「転移性肝がん」という。
    大腸がん胃がん膵臓がん乳がん腎臓がん肺がん、胆嚢がん、子宮がん、
    などいろいろな臓器のがんが肝臓に転移する。肝細胞ガンは日本を含めたアジア・アフリカに多く、
    欧米には少ない病気で、男女比は7:3で男性に多い傾向にある。
    わが国の肝がん死亡者は年間3万人といわれ、平成13年の統計では男性のガン死因の第3位、
    女性では第4位で、特に男性で増加傾向にある。
    
    進歩を続ける肝がんの治療法
    (朝日新聞2010.12.7「声」より、熊本県菊陽町の宮本 典之さん(82歳)の投稿文紹介)
     肝臓がん治療は進歩し続けているという。私もその恩恵にあずかり、がんの摘出手術を2度、
    ラジオ波による焼灼(しょうしゃく)を3度、経カテーテル的動脈化学塞栓療法を2度体験した。
    現在、肝臓内にがんは認められず落ち着いている。しかし私としては、C型肝炎ウイルスの
    発見がもう少し早く、インターフェロンの発見も同じように早かったならという残念さがある。
     私の肝臓にC型肝炎ウイルスがすみついたのは、当時の状況からおそらく
    50年ほど前の頃ではないかと思っているが、明らかな原因はわからない。
    初めて肝臓に腫瘍が確認されたのは20年前のことだ。その間肝機能の検査は頻繁に行い、
    非A非B型慢性肝炎と診断されていたが、いかんせん治療法がなかった。
     肝臓がんを防ぐ最善の方法は、肝硬変やがんに移行する前に肝炎を発見し、
    適切な治療を受けることだそうだ。私の時代と違って今は大きく進歩した治療を受けられる環境が
    整っているわけで、肝臓がんを発症する人も少なくなってくると思う。喜ばしいことである。
     肝臓がんにかかるリスクの大きい飲酒や喫煙は、若い頃からたしなまれていたのでしょうか。
    C型肝炎の場合は、飲酒や喫煙とは直接関係はないとされるものの、
    ウイルスとの相乗効果による発がんも有りうると言われている。

がん対策情報センター(がんたいさくじょうほうセンター) : 患者家族、医療関係者らがどこに住んでいても、
    標準的で正しい情報が得られることを目指し、2006年10月1日、国立がんセンター内に設置される。
    厚生労働省と密接に連携し、「国内のがん対策の中枢機関」と位置づける。
    全国のがん拠点病院とも連携し、がん診療に関する最新の情報を収集し、
    利用者の立場で整理した「がん医療に関する情報提供」をするとともに、
    がん対策の企画立案に必要な「正確ながん統計を算出するための症例集積」としての
    基礎データの収集・蓄積・分析・発信機能を担う。 参 : 国立がんセンター(HP)    
がん患者の相談窓口
国立がんセンター 情報交換・支援
がん診療連携拠点病院
(全国179カ所)
相談(電話・対面など)
患者家族ら
がん対策情報センター 相談支援センター
        情報提供(インターネットなど)
がんワクチン治療 → ワクチン治療
抗がん剤治療の認定制度(こうがんざいちりょうのにんていせいど)
    日本臨床腫瘍学会(理事長=西條長宏・国立がんセンター東病院副院長)は
    抗がん剤治療の専門家となる「がん薬物療法専門医」の認定制度を2006年4月1日に発足し、
    初回は全国で47人を認定する。重い副作用を伴うこともある抗がん剤に関する高度な知識と、
    豊富な治療経験のある医師を認定するもので、同学会は、年1回、認定試験を行い、
    全国各地でリーダー的な役割を担ってもらい、最終的には4000〜4500人の認定を目指す」としている。
    認定医の条件
     @白血病や呼吸器のがんなど3領域以上のがん診療の経験がある。
     A抗がん剤治療の実績ある施設で5年以上、30症例以上の臨床経験がある。
     が医師が対象で、初回の認定試験は、2005年11月に行われ、内科医を中心に
     52人中47人が合格した。資格は5年ごとの更新制で、改めて筆記試験が課せられる。
    抗がん剤により、患者によっては強い副作用が表れることも少なくない。
    抗がん剤治療の専門医は、国内で3000〜4000人が必要とされているが、
    薬物療法の講座を持つ大学が少ないこともあり、現在は約1000人と不足している。
    2007年度までに約200人の認定を目指す。
    同学会は、今回の専門医とは別に、日本癌(がん)学会などと共同で、
    放射線治療など幅広い専門知識を持つ「がん治療認定医」の新設も予定している。
    看護師では、日本看護協会が認定する「がん化学療法看護認定看護師」があり、
    薬剤師も「がん治療専門薬剤師」(日本病院薬剤師会が認定)が誕生する予定である。
甲状腺がん(こうじょうせんがん) : 甲状腺の組織内にがん(悪性)細胞が発生する病気である。
    頚部(喉から首の辺り)に位置する甲状腺は、喉仏(のどぼとけ)の下にある臓器(内分泌器官)で、
    右葉・左葉の2つの葉を持ち、体の成長に欠かせない数々のホルモンを分泌する役割を担っている。
    海草などに多く含まれるヨウ素を元にホルモンを作る。
    放射性物質のうち、放射性ヨウ素をとりこむと首の甲状腺に集まりやすく、内部で放射線を浴びる。
    放射線量が高いほど、甲状腺の細胞の活動をつかさどるDNAを傷つけて修復できにくくなる。
    異常な細胞が生まれやすくなり、がんにつながる場合がある。
    ヨウ素は昆布やワカメなど海藻に多く含まれ、ホルモンの材料になる。
    子どもはホルモンを活発に作るので、ヨウ素が大人より集まりやすい。
    放射性ヨウ素も取り込んでしまう。さらに子どもの細胞のDNAは放射線で傷つきやすい。
    チェルノブイリ原発事故で、まき散らされた放射性ヨウ素を、甲状腺がヨウ素と誤って取り込んで
    集積したことが、周辺の住民に多くの甲状腺がんが発生した原因となり、
    6千人を超える子どもが甲状腺がんになり15人が亡くなった。
    放射性ヨウ素の半減期は人体で1週間程度と短いが、
    チェルノブイリ事故では高い濃度の放射性ヨウ素に汚染された牛乳が出回った。
    周辺は元々、食品からのヨウ素が不足し、放射性ヨウ素を取り込みやすかったという。
    甲状腺がんには、「分化がん」と「未分化がん」の2種類があり、
    分化がんには、「乳頭がん」、「濾胞がん」、「髄様がん」等がある。
組織型別にみた甲状腺がん
組織型 分化がん 未分化がん
乳頭がん 濾胞がん 髄様がん
好発年齢 中年、若年 高年
腫瘍の発育 穏やか 様々 激しい
周囲への浸潤 進行例以外は軽い 強い
治療法 外科治療 集学的
その他の特徴 手術時、濾胞腺腫、
のち血行転移
発生し、がんと
わかる例がある。
家族性発生がある。
血中カルトシトニンが
腫瘍マーカーである。
約半数は経過の長い
未分化がんから
発症する。
    国立がん研究センターによると、2009年の甲状腺がんでの死者数は人口10万人あたり
    男性は0.8人、女性は1.7人で、ほかのがんより少ない。9割は進み方がゆっくりである。
    甲状腺がんの中でも、乳頭がんは全体の約8割を占め、進行が遅く治療成績のいいタイプである。
    髄様がんは、原因に遺伝子の異常が考えられ、家族に、甲状腺肥大等、
    甲状腺の疾患がある場合は発生のリスクが高まると言われる。
    未分化がんは、甲状腺がん全体の約3%と、発症が少ないが、
    がん全体の中でも、最も悪性であると言われ、進行もはやい。
    甲状腺がんの発症は、男性より女性、アジア系に多く、がん全体の症例の約1%と言われる。
    甲状腺にしこり等、気になる症状が現れたら、医師に相談するのが望ましい。
    甲状腺がんの患者数は意外と多く、1000人に1人の割合で発症する。
    25〜65歳の人に多く発症し、女性が圧倒的に多く、男性の約5倍にもなる。
    乳幼児の頃に頭頸部の放射線照射を受けたことのある人は、甲状腺がんになる確率が高くなる。
    また、甲状腺腫(甲状腺肥大)がある人、または甲状腺疾患の家族歴がある場合は
    甲状腺がんの出現のリスクが高くなる。手術や放射線療法、ホルモン療法などの治療法がある。
    小さくて転移がなければ、傷の残りにくい内視鏡手術もある。
    甲状腺がんの判定のポイント : 触診で、腫瘍の有無や形、数などがある程度わかる。
     しかし、触診だけでは、がんと良性腫瘍の区別が十分とはいえず、超音波検査が必要となる。
     超音波検査は甲状腺がんを調べる際には欠かせない検査で、腫瘍の性状もわかるので、
     がんかどうかのおおよそ目安がつく。また大きさが3mm程度の微小がんも見つけることができる。
     最終的な診断は穿刺細胞診によって確定する。小さな腫瘤では、超音波で針と腫瘍の
     位置を確認しながら、甲状腺に直接針を刺して組織を採取し、顕微鏡で調べる。
     外来診療ででき、麻酔も不必要な簡単な検査で、がんのタイプまで判断できる。
     腫瘍が大きかったり、未分化がんの場合は、X線検査やCT検査、MRI検査、シンチグラフィーなどで、
     がんの広がりや転移の有無について、調べる場合もある。
喉頭ガン(こうとうがん) : 喉頭とはいわゆる「のどぼとけ」のことで、食道と気道が分離する個所に
    気道の安全装置(誤嚥防止)として発生した器官で下咽頭の前に隣接している。
    役目のひとつは気道の確保で、口と肺を結ぶ空気の通路で、飲食物が肺に入らないよう
    調節(誤嚥防止)する。もうひとつは発声で、喉頭のなかには発声に必要な声帯がある。
    またこの声帯のある部分を声門といい、それより上を声門上、
    下を声門下と呼び同じ喉頭がんでも3つの部位に分類して扱われる。
    喉頭がんは年齢では60歳以上に発病のピークがあり、発生率は10万人に3人程度で、
    男女比は10対1で圧倒的に男性に多いという特徴がある。
    病理組織学的には扁平上皮がんという種類のがんがほとんどである。
    部位別にみると声門がんが60〜65%、声門上30〜35%、声門下は1〜2%である。
    同じ喉頭がんでも3つの部位によって初発症状、進行度と症状の変化、転移率、治療法、
    治りやすさまでいろいろと違ってくる。転移は頸部のリンパ節転移がほとんどであり、
    遠隔転移は末期などのぞいては少なく、そのほとんどは肺にくる。
    人に起こるガンの中では最も早期に見つかるガンの一つで、通常、
    喉頭を自分でみることはできないが、病院などで内視鏡を用いて観察して写真をとる。
    原因としてはやはり過度の喫煙、飲酒が関与している。
    症状 : 声門がんの初発症状は、声がかれる「嗄声(させい)」が圧倒的に多いが、
     これを放置しておくと声帯が麻痺(まひ)して、声がでにくくなる。
     腫瘍が増大すると声の質が悪化し、さらに腫瘍が増大すると痰に血がまざったり、
     呼吸困難になることもある。また症例にもよるが、頸部にリンパ節が触れるようになることもあるが、
     頸部の腫れとしてのリンパ節への転移は比較的少ないのが特徴である。
     声門上がんの早期の症状は喉の異物感(部位が一定している)や、
     食事の時、特に固形物や刺激物を飲み込んだ時痛みが出現したりする。
     他の部位より比較的早期から首のリンパ節が腫れて気づかれることもある。
     進行すると声門へがんがおよび嗄声や呼吸苦が出てくる。
     声門下がんは進行するまで症状がでない事が多く、進行するとやはり嗄声や呼吸苦が出てくる。
     このように喉頭がんといってもその部位によって症状の現れ方にはちがいがでてくる。
    診断 : 耳鼻咽喉科、頭頸科を受診するとまず視診により評価され、
     次に首を触る触診によりリンパ節の転移がないかを調べる。
     転移リンパ節は通常のリンパ節より大きく硬く触れる。
     さらに視診、触診でわからない深部などがあると、ファイバースコープなどの内視鏡検査、
     症例によってはCTMRIをはじめ、小さく腫瘍の一部を取ってきて組織診断をする生検、
     超音波(エコー)、喉頭ストロボスコピー、手術用顕微鏡下の観察などが行われる。
     最終的に腫瘍の進行度と頸部リンパ節転移の有無と遠隔転移の有無を評価して病期を決める。
    治療 : 喉頭(原発)の治療は放射線、手術が中心となる。
     抗がん剤は喉頭を温存するため放射線や手術と組み合わせて使われたり、
     手術不可能な時、放射線治療後の再発などの時使われたりする。
     手術には大きく分け喉頭部切術と喉頭全摘術がある。喉頭部分切除術は早期がんに行われ、
     声帯を一部残す手術で、質は多少悪くなるが声をのこすことができる。
     喉頭全摘術は部分切除の適応を逸脱した早期がんや進がんに行われ声は失われる。
     そこで術後食道発声や電気喉頭など代用発声で補う事になり練習が必要となる。
     放射線は早期がんの治療の中心となる。喉頭はそのままの形で残るので声は自然の声が残る。
     ただし進行したボリュームのあるがんや、その部位によっては効果に限界がある。
     またまわりの正常組織に障害を残さずかけられる量にも限界があり何回もかけるわけにはいかない。
     進行がんでも場合によっては喉頭の温存の可能性を探るため行われることもある。
     施設によってはレーザー手術を早期がんの中心の治療としている所もある。
     一般に早期がんでは放射線を第一選択にその効果をみて手術を組み合わせていく。
     声を残せるかどうかの判断が重要になってくる。
     進行がんでは手術が中心となり場合により放射線、抗がん剤を組み合わせていく。
     頸部リンパ節転移に対しては手術が中心となる。右左どちらかの片側か、両側の頸部郭清術を行う。
     これは耳後部から鎖骨上の頸部のリンパ節を、脂肪に包まれたままの形で
     大事な神経や血管を残しながら切除するという手術である。
     これらの治療法はがんの進行度や部位だけでなく患者の年齢、
     全身状態、職業、社会的条件なども考慮にいれたうえで最終的に選択される。
子宮頸がん(しきゅうけいがん) : 子宮の入口付近の子宮頚部に発症するがんをいう。
    「子宮がん」の70%がこの子宮頚部がんで、40才前後の方に多く発症している。
    近年は20・30代に子宮頚部がんの増加傾向が見られので、
    若年層とはいえ年に1回の検診を受けたほうがよい。
    子宮頚部がんには子宮頚部の上皮にできる「扁平上皮がん」と線組織にできる「腺がん」がある。
    子宮頚部がんのほとんどは「扁平上皮がん」である。
    子宮頚部がんの原因の多くは、性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によるものとされ、
    患者の9割以上から見つかっている。早ければ、感染から5〜10年程度でガンを
    発症すると考えられていて、女性の約8割が一生に一度はHPVに感染するとされる。
    感染しても大半は自分の免疫でウイルスが消滅して子宮頚部がんにならない人もいるが、
    感染が長く続くとがんに変化する可能性があるので、定期的に検診を受ける必要がある。
    解剖学的に子宮の首の部分を「子宮頸部」といい、頭の部分を「子宮体部」と呼ぶ。
    またガンの発生部位が前者の場合は「子宮頸ガン」、後者の場合は「子宮体ガン」とに分けられる。
    子宮ガン検診とは多くの場合、「子宮頸ガン」の検診を意味する。
    日本ではHPVの感染が主な原因で、年間約1万5千人が発症し、約3500人が亡くなっている。
    
    女性生殖器の構造(教育用画像素材集HPより)
    症状 : 0〜Ta期は、目にみえないガンであるため、無症状である。Tb1期から、性交後の出血、
     おりものの増量、不正出血などの症状が現れてくる。とにかく性器からの、おりもの・出血につきる。
     V期からは不正出血に加え、腰痛、背部痛が出現する場合もある。
    予防 : コンドームはHPVの感染リスクを減らす可能性があるが、
     決定的な予防法や除去法はない。性交渉の相手が多かったり、
     相手の性活動が活発だったりすると、複数のHPVに感染し、排除が難しくなりがちという。
     子宮頚がんワクチンは性交渉の経験がある成人でも6割程度の予防効果があるとされる。
    治療 : 他のがんに比べ、放射線療法「腔内照射(くうないしょうしゃ)」に頼る割合が高い。
     腔内照射は子宮内に管を挿入し、管の中に置いたイリジウムなどからの放射線で腫瘍をたたく。
    参 : 卵巣がんグラクソ・スミスクライン株式会社(HP)
腫瘍マーカー(tumor marker)しゅようマーカー : がん細胞の目印(マーカー)になる物質の総称。
    原則として正常細胞では作られず、主にがん細胞で作られる、たんぱく質や糖鎖などを指す。
    それらの血中濃度や尿中濃度を調べることで腫瘍の有無や場所の診断に用いられ、
    (がん)などの早期発見、臨床経過の追跡、予後の判定などに役立つ。
    最近は、がん細胞に特有の遺伝子の変異も含めて「腫瘍マーカー」と呼ぶことが多い。
    腫瘍マーカーの検査によって、身体のどの部分にできた癌か、癌の細胞はどんな性質か、
    どの治療が有効か・手術後にとり残しがないか・再発がないかなどを調べることができる。
    しかし、多くの腫瘍マーカーには、癌に関係なく増えるなど不確実なところがあり、
    これだけでがんの有無を診断することはできない。
    また、腫瘍マーカーは、がんがある程度大きくならないと
    血液や尿から検出できる量にならないため、がんの早期発見には向いていない。
    多くの腫瘍マーカーは健康人であっても血液中に存在するので、腫瘍マーカー単独で
    癌の存在を診断できるものはPSA(前立腺癌のマーカーに用いる)など少数であるといわれている。
    しかし、癌患者の腫瘍マーカーを定期的に検査することは、再発の有無や病勢、
    手術で取りきれていない癌や画像診断で見えない程度の微小な癌の存在を知る上で、
    確実ではないが有用な方法である。
    採血か採尿だけで済むため、検査を受ける人の肉体的な負担は軽い。
    事前に下剤を大量に飲む大腸の内視鏡などより楽だし、X線CTPET検査のような被曝も無い。
    参 : 腫瘍マーカー.com
食道がん(Gullet cancer)しょくどうがん : 食道癌。食道上皮に発生する悪性腫瘍(あくせいしゆよう)
    食道は咽頭から下の頸部食道、胸の中の胸部食道、みぞおちから胃までの腹部食道に大別される。
    この食道に発生するのが食道がんでまだ原因ははっきりと解明されていないが、
    男性に多く、お酒を多く飲む人(とくに濃い酒、ウイスキーや焼酎の原酒など)、また最近の研究で本来、
    お酒の弱いひとがお酒をよく飲むようになった人がなりやすいといわれている。
    喫煙も食道がんの危険因子である。
    ほとんどは扁平上皮がん(食道の粘膜からできるがん)で胸部食道に多く発生する。
    近年では欧米のように腺ガン(食道粘膜が円柱上皮化して発生)も増えてきた。
    これは下部食道に好発する。いずれも初期の段階では症状が出づらく、
    嚥下障害や疼痛などの症状があった場合には進行していることも少なくない。
    したがって検診などによって早期に発見することが重要となる。
    症状
    早期の場合には無症状または嚥下時の違和感ぐらいで、病状が進むと嚥下困難(食事の通過障害)や
    嚥下時痛が起こってくる。これにともない食事量が減少し、栄養障害となり体重減少をきたす。
    時には食事に関係なく胸痛が起こったり、ひどい場合には吐血や下血(便が黒くなる)、
    喀血したりすることもある。
    診断
    早期の場合は、内視鏡検査で発見されるが、やや進行したものは食道透視でも発見可能である。
    病状の進行度を診るためには、CTMRIが必要で、状況によっては
    超音波内視鏡(内視鏡の先端に超音波装置のついたもの)などで深達度(ガンの深さ)や
    周囲臓器への浸潤、周囲リンパ節の腫大などを検査することもある。
腎臓癌(Renal Carcinoma)じんぞうがん : 腎がん。
    尿を作り、造血ホルモンや血圧調整ホルモンを分泌する臓器である腎臓にできる腫瘍である。
    腎臓に出来る腫瘍は腎細胞ガンと呼ばれ、
    尿が通過する腎盂、尿管、膀胱、尿道の一部は移行上皮ガンと呼ばれる。
    また、分類としては他にも、50歳以上に多い悪性腫瘍 と小児に発生するウィルム腫瘍がある。
    腎臓には良性の腫瘍ができることもある。
    腎臓がんでは、遺伝的に発生しやすい家系があることが確認されている。
    初期の小さいうちはほとんど症状がないため早期発見の難しいがんだが、
    最近では人間ドックや超音波検査により初期段階で見つかるようになってきたが、
    約30%は発見時転移が見られるというデータがある。
    
    腎臓の構造と腎臓がん(がん治療最新情報サイトより)
    原因 : 国際がん研究機関や 国立医薬品食品衛生研究所の調べでは、
          塩化ビニルの軟化剤であるフタル酸化合物や食品添加物であるアカネ色素や、
          かびの一種ペニシリウムが原因の一種であると発表している。
    症状 : 主な症状は血尿、背中やわき腹の痛み、腹部の腫瘤だが、
          これらの症状は必ずしも初期ではあらわれない。
          時には体重減少、食欲不振、発熱等の全身症状で見つかる場合もあるし、
          また転移した部分の症状で見つかることもある。
          また、腫瘍が大きくなると、血尿や疼痛の症状が出る。
          貧血、体重減少などの諸症状があらわれることもある。
          しかし、腫瘍が大きくなると、リンパ節、肺、骨などの他の臓器に転移しやすくなる。
腎臓癌の病期(TNM分類)
病期
(ステージ)
腫瘍の特徴(T) 関連するリンパ節への
転移(N)
離れた場所への
移転(M)
T期 T1(大きさ7cm以下、腎に限局) N0(なし) M0(なし)
U期  T2(7cm超、腎に限局)
V期 T3(副腎などに広がるが
周囲の筋膜をこえない)
T1〜3 N1(1個の転移)
W期 T4(筋膜をこえて広がる) N0またはN1
Tがいくつであっても、
NやMの状況次第で決まる
N2(2個以上の転移)
Nがいくつであっても、
Mの状況次第で決まる
M1(転移あり)
がんの進行にかかわる三大要素
T : 最初にできたがんの大きさや広がり具合
N : 関係するリンパ節への転移有無、広がり
M : 離れた臓器への転移
膵臓癌(Cancer Of Pancreas)すいぞうがん : 膵臓から発生したがんのことを一般に「膵がん」と呼ぶ。
    膵臓は胃の後ろにある長さ20cmほどの細長い臓器で、
    右側は十二指腸に囲まれており、左の端は脾臓に接している。
    右側はふくらんだ形をしているので頭部と呼び、左端は細長くなっているので尾部という。
    頭部と尾部との間の1/3ぐらいの大きさの部分を体部と呼ぶ。
    膵臓の主な働きは、消化液をつくること(外分泌)と血糖を調節するホルモンをつくること(内分泌)で、
    膵臓がつくる消化液は膵液と呼ばれ、
    膵臓の中を網の目のように走る膵管という細い管の中に分泌される。
    細かい膵管は膵臓の中で主膵管という一本の管に集まり、
    肝臓から膵頭部の中へ入ってくる総胆管と合流した後、十二指腸乳頭というところへ開いている。
    肝臓でつくられた胆汁と膵臓でつくられた膵液はこうして一緒に十二指腸の中へ流れ込む。
    膵臓でつくられるホルモンは、血糖を下げるインシュリンや逆に血糖を上げるグルカゴンなどで、
    これらは血液の中に分泌される。外(消化液)分泌腺組織由来の膵ガンには、
    膵管上皮(外分泌に関係した細胞)から発生する「膵管がん」と、
    腺房細胞から発生する「腺房細胞ガン」があるが、90%以上は膵管ガンで、
    普通、膵がんといえばこの膵管がんのことを指す。膵臓を3等分し十二指腸側から膵頭部、
    膵体部、膵尾部というが、多く(70〜80%)は膵頭部に発生する。
    膵がんは近年増加傾向にあり、日本人のガンによる死因の、全体で肺、胃、大腸、肝に次いで第5位、
    男性では肺、胃、肝、大腸に次いで第5位、女性では胃、大腸、肺、肝、乳に次いで
    第6位を占めている(2002年統計、出所:厚生労働省人口動態統計)。
    女性よりも男性に多く、60〜70歳代に好発するが、最近では女性が増えている。
    年間発生者数と年間死亡者数がほぼ等しく、難治性のガンの代表である。
    発生原因はよくわかっていない。
精巣腫瘍(Testicular cancer)せいそうしゅよう : 、精巣に発生する腫瘍で、「睾丸腫瘍」とも呼ばれる。
    精巣には細胞分裂が盛んな様々な細胞が存在するため多種類の腫瘍が存在する。
    精巣腫瘍には良性と悪性があるが、9割以上は悪性腫瘍、いわゆるがんであることが多く、
    早期発見・早期治療が大切である。その90〜95%は胚細胞性腫瘍といって、
    子孫を残すための細胞(精子の元になる細胞)から発生するガンである。
    主としてセミノーマ(増殖が遅く、放射線療法に感受性のあるがん)と
    非セミノーマ(セミノーマよりも増殖が速く、様々な種類の細胞が含まれる)の2種類がある。
    頻度としては10万人に1〜2人のめずらしい病気だが、15〜35歳くらいの若い人に多く、
    この年代の男性にできる悪性腫瘍のなかでは最も多いがんである。
    進行が速く容易に他の臓器に転移するので、放っておくと命に関わることのある怖い病気である。
    しかし最近では、治療法の進歩により9割以上の人が完治するようになった。
    転移を起こしてしまった人でも適切な治療を行えば7〜8割の人が治るが、
    進行した状態では治療が困難な場合もあるので、
    おかしいなと思ったら恥ずかしがらずに早めに泌尿器科を受診することが大切である。
    精巣腫瘍は抗ガン剤療法が極めて有効なガンとして有名で、
    とくにシスプラチンを中心とした多剤併用化学療法の開発により、たとえ転移している進行ガンでも
    根治が期待できる。組織学的にはセミノーマと非セミノーマに大別され、
    非セミノーマの中でもとくに絨毛(じゅうもう)ガン成分を含むものの予後は悪い。
    症状 : 青壮年層に好発し、痛みもなく、熱もなく、ある日気がつくと陰嚢(いんのう)のなかの
     精巣の一部がいつもより硬くごつごつしていたり、全体的に腫(は)れて大きくなってきて気づく。
    診断 : CT検査でリンパ節転移がないかを調べる。血液検査でHGG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)や
     AFP(アルファ胎児性タンパク)といった腫瘍マーカーを調べる。
    参 : キャンサーネットジャパン(NOO法人HP)、精巣腫瘍の患者友の会(J−TAGのサイト)
前立腺がん(Prostatic cancer:P.ca)ぜんりつせんがん
    精液の一部をつくり、排尿や射精を調整している前立腺にできる癌のこと。
    前立腺がんの発生に強く関わるものは、加齢、食事(動物性脂肪)と遺伝で、
    高齢の男子に多く、骨盤や脊椎などの骨に転移しやすい。
    がんは、前立腺の細胞が正常の細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより発生する。
    がんは周囲の正常組織や器官を破壊して増殖し、他の臓器に拡がり腫瘤(しゅりゅう)を形成する。
    他の臓器にがんが拡がることを転移と呼ぶ。
    前立腺がんが、よく転移する臓器としてリンパ節と骨があげられる。前立腺がんを顕微鏡で見ると、
    そのほとんどが前立腺の中の腺細胞ががん化したものであることがわかる。
    前立腺がんの約90%は自分の身体でつくる男性ホルモンにより増殖するという特徴をもっている。
    そのため、男性ホルモンの作用を抑えることによりがんの増殖を止め、
    がん細胞の一部を死滅させることができる。
    また、前立腺がんも他の大部分のがんと同様に、早期発見・早期治療が治癒につながる。
    初期で悪性度の低いがん(A期の高分化型がん)のうちに発見できれば、5年生存率
    10年生存率ともほぼ100%だが、転移を起こした悪性度の高いがん(D期の低分化型がん)では、
    5年生存率は約20%に、10年生存率は10%未満に低下する。
    前立腺がんはA期→B期→C期→D期と進行していく。
    また、悪性度は高分化型→中分化型→低分化型と高まっていく。
    診断 : 初めに医師が肛門から直腸に指を挿入し、前立腺の大きさ、表面の状態、
     硬さなどを診察する直腸診を行う。次いで、血液を採取しPSA(前立腺特異抗原)の測定を行い、
     PSAが高値の場合は前立腺がんが強く疑われる。
     次に、経直腸的超音波検査(肛門から前立腺専用の超音波検査装置を挿入して検査する)で
     前立腺の画像から診断する。直腸診やPSAの高値だけで前立腺肥大症、前立腺炎、
     前立腺結石と鑑別するのは困難なので、最終診断は前立腺数カ所に針を刺し組織を取る
     針生検や穿刺細胞診を行い、前立腺がん細胞を見つけ診断する。
     前立腺がんと確定した場合はCTMRI、骨シンチグラフィを実施しがんの広がりや転移を調べる。
    前立腺肥大症との区別 : 早い段階では、前立腺肥大症と前立腺がんに症状の差はない。
     どちらも、血尿や尿が出にくくなるなどの症状が現れる。前立腺肥大症ではどんなに進んでも、
     骨の痛み、下肢のむくみなどはみられない。直腸診では、前立腺肥大症は、
     弾力性のある腫大(はれて大きくなる)した表面が平滑な腫瘤(しゅりゅう)として触れるが、
     がんでは、硬いしこりを触れる。血清PSA値は、前立腺がんのほうが高値を示す。
     最終的には、前立腺の針生検を行って診断する。
    病気に気づいたらどうする : 一般開業医あるいは検診センターでPSA検査を受ける。
     PSA検査の結果が4ng/ml以上だったら、泌尿器科専門医の診察を受ける。
     PSA値が4〜10ng/mlをグレーゾーンといい、針生検で20〜30%の割合でがんが発見される。
     PSA値が10ng/ml以上だったら、針生検を受けたほうがよい。
     生活での注意は、脂肪の多い食事はひかえ、繊維、穀物、豆類を多くとり、
     運動をして太らないようにする。禁煙は言うまでもない。
    治療
    1.ホルモン療法 = ホルモン療法(別掲)
    2.外科療法 : がんが前立腺内に限局している時、手術によりがんをとり除く方法で、
      下腹部を切開し、恥骨の裏側にある前立腺を摘除し、膀胱と尿道を吻合する。
      この時、リンパ節に転移があるかを調べ、がんが前立腺被膜を少し越えている場合でも、
      転移がなければホルモン治療を併用して手術をすることがある。
      手術後には
       前立腺に負担がかからないように、手術後1、2カ月は、重いものを持って力んだりしない、
      自転車やバイクに乗らない、長時間座った姿勢をとらないなどを心がけること。
      水分を取ってどんどん尿を出すと、中を洗うことになって前立腺炎の予防につながる。
      ただし、飲酒は膀胱の神経がまひして尿が出にくくなることがあるので気をつける。
    3.放射線療法 : 高エネルギ−の放射線を使ってがん細胞を殺す方法で、
      通常、身体の外から患部である前立腺に放射線を照射する。一般的に1日1回週5回照射し、
      5週間から6週間の治療期間が必要である。また、骨への転移のための強い疼痛や
      骨折の危険が高い部位に対症的に放射線治療を行うことがある。
      副作用は、排尿痛、血尿、腹部またはお尻の皮膚のただれ、直腸からの出血などがみられる。
      IMRT(強度変調放射線治療) : 従来の放射線治療、三次元照射より更に細かく
       放射線照射形状を設定することによって、できるだけ、周囲の正常組織に影響を及ぼすことなく、
       がん組織のみを狙い撃ちする放射線療法で、従来の放射線治療に比べて副作用が少なく、
       注目されている。2008年春から全面的に保険適応され、自己負担額が所得に応じて
       一定額(一般所得層で月約8万円)までに抑えられる高額療養費制度が適用されるようになった。
       対象は前立腺がんのほか、頭頸部がん、中枢神経腫瘍である。
       米国ではIMRT治療が標準治療になり、韓国や台湾などでも急速に普及しているが、
       日本でIMRTが始まったりは2000年で、高度な技術が必要なため、
       常勤医師を2名以上配置し、うち1人は5年以上の経験が必要や、
       施設でIMRTを年間10例以上実施するなどの施設基準がきびしく、
       こうした条件を満たすのは、現状では全国20〜30施設ほどとみられる。
      定位放射線照射治療(ガンマーナイフetc) : 極めて正確な位置精度を保ちながら
       精密な外照射を行う放射線治療である。小さな領域に対して、多方向からある一点に
       誤差が1mm以下の正確さで集束する照射が可能な放射線装置を用いる。
       ガンマーナイフ(コバルト60を照射する)に代表される一回照射の場合を定位手術的照射、
       分割照射の場合は定位放射線治療という。動静脈奇形、原発性良性脳腫瘍、転移性脳腫瘍、
       手術的操作が難しい頭蓋底腫瘍など、小さな病巣(3cm以下)の治療に用いられている。
       脳以外では、頭頸部腫瘍や肺がん、転移性肺腫瘍に応用されている。
       同様に直線加速器(リニアック)を用いた定位放射線照射を行う方法もある。ライナックナイフ、
       ラジオサージャリーなどと呼ばれるもので、サイバーナイフはこの方法を用いた治療法である。
      ピンポイント照射(3次元照射) : 放射線治療機を回転させながら、がんに狙いを定めて
       集中的に放射線を当てる方法。様々な方向から行うことから、「3次元照射」とも呼ばれる。
       照射量を増やすことができ、がんをたたく力が大幅にアップする一方、正常組織への影響は減少する。
       有効な放射線療法の副作用を減じる一つの方法論である。
       早期の肺がん、前立腺がん、肝がん、喉頭がん、子宮頚がん、乳がんなどに治療が行われている。
      CFIMRT(Cutting Field IMRT)カッティング・フィールド・アイエムアールティ)
       治療効果を高め副作用を減らすために考案された放射線治療技術である。
       従来の通常照射の組み合わせで、非常に高度な均一性に加え、徹底的な危険臓器への
       被曝の低減が可能になる。様々な固形癌に対して応用が期待されている。
      重粒子線・陽子線治療 : 限局性で未転移の前立腺がん、肺がん、肝臓がん、
       頭頚部がんに対して、また最近では肺・肝・骨の孤立転移巣などに対して
       光速の3分の2の速さに加速した陽子や炭素イオンを照射して治療を行う。
       陽子線に比べ炭素線の方が、質量が重いため、がんに対する破壊力が強いといわれている。
       ケースにより陽子線と炭素線を組み合わせて治療することも可能である。
      小線源治療 : 微弱な放射線を出す細く短い針状の放射線源を患部に挿入して
       がんに放射線を当てる治療法で、近年、国立病院東京医療センターで治療が始まり、
       最近では多くの病院で治療が行われるようになっている。前立腺を摘出せずに済み、
       患者の負担も少ないことから、かなりの勢いで全国に広がっている。
       平成17年5月から東大病院でも治療が行われている。
    4.化学療法 : ホルモン治療が有効でない症例や、ホルモン治療の効果がなくなった時に行う治療で、
      点滴を用いる場合は、通常2種類以上の抗がん剤を用いて、8週間以上行う。
      ホルモン療法と同じように全身に作用しますが、効果が続く期間が短く、
      有効性を認めない医師も多くいる。副作用としては、貧血、白血球の減少、血小板の低下、
      吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢、口内炎、腎障害、脱毛などがある。
    ホルモン療法を中心にして、がんが局所にとどまっていれば、
    外科療法や放射線療法を加える方法がとられている。
    前立腺がんは比較的進行が遅く、高齢者にみられることが多いことから、
    最近は前立腺内に限局していれば無治療で経過を観察し、
    がんが進行した場合はホルモン療法で対処すればよいとの治療方針を述べている医師もいる。
    事実、転移をしたがんであってもホルモン療法のみで経過をみると、がんによる死亡者より
    他の原因で亡くなる方のほうが多くなっている。いずれの治療法にも副作用がある。
    重い尿漏れ、手術で治す<前立腺摘出後の悩みに人工括約筋>
     前立腺がんなどの手術で尿道を囲む筋肉に障害が生じて、尿漏れが起こることがある。
    重度の場合は、尿漏れパッドやおむつが手放せなくなり、男性患者は精神的に大きな負担を抱える。
    有効な治療法として広がりつつあるのが尿道を締める器具を埋め込む手術で、
    取り組む医療機関も増えてきた。
     尿道をカフというリング状の器具で閉め、陰のうの中に埋め込んだコントロールポンプの
    ボタンを押すとカフがゆるんで尿が出る仕組み(イラスト参)で、時間がたつと自動的にカフが再び閉まる。
    
    尿道を開け閉めする仕組み(2011.3.3、朝日新聞より)
    効果は劇的で尿漏れは大幅に減り、パッドをつけなくてもよくなった。男性は「パッドから解放されて、
    気持ちは天と地ほど変わった。同じ症状の人にはぜひ受けてもらいたい」と声を弾ませる。
    今ではほぼ毎日、近所のスポーツジムのプールで泳いでいるという。
     男性の手術をした東北大の荒井陽一教授(泌尿器科)によると、がんなどによって前立腺を
    全摘出する人は年間2万人。尿漏れパッドが1日3枚以上必要になる重度の尿失禁が起こるのは、
    そのうちの1〜3%、150〜500人ほどと見られている。
    荒井教授は「前立腺がんができる場所が尿道の括約筋に近いため、影響は避けられない」と話す。
    軽度の場合は、骨盤の筋肉を鍛える体操や薬物療法、電気刺激療法がある。
    しかし、重度となると、人工尿道括約筋の埋め込み手術しか、事実上手段がないのが現状だ。
    入院が必要だが、手術は2時間ほどだ。
     国の「先進医療」に指定されているため、検査や入院費は公的医療保険がきくが、
    器具や手術代などで150万円前後かかる。しかし患者は尿漏れパッドやおむつを
    毎日換えなければならず、皮膚のかぶれなどの治療も必要だ。こうした費用を考えると、
    人工尿道括約筋の手術費が必ずしも高額とは言えない。また、患者の精神面での影響は大きい。
     人工尿道括約筋を埋め込んでいるのかどうか、見た目にはわからない。
    患者が救急病院などに運ばれて処置を受ける場合、尿道が人工的にふさがっている状態のために
    尿道にカテーテルが入りにくく、無理に差し込むと尿道を傷つける恐れがある。
    そのため、人工尿道括約筋を製造・販売している企業は、患者が医師らに直接伝えられなくても
    受けた手術のことがわかるように、患者がいつも携帯できる小冊子を作製、配布している。
    患者が海外旅行に出かけることも想定して、5カ国語に対応している。

    人工尿道括約筋の手術が先進医療の認定を受けている医療機関
    ★北海道大(札幌市北区)★東北大(仙台市青葉区)★北里大(神奈川県相模原市)
    ★東京医科歯科大(東京都文京区)★島根大(島根県出雲市)★原三信病院(福岡市博多区)

    日本人の男性は、やせ形でも肥満形でも前立腺がんになる危険性は変わらないとの疫学調査の結果を、
    厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)が
    2006年3月13日付の英医学誌に発表した。前立腺がん発生率が日本の約10倍の欧米では、
    肥満がリスク要因との報告がある。日本人には必ずしも当てはまらないことを示す調査結果で、
    研究班は「食生活やホルモン濃度の違いなど他の要因が関係しているのではないか」としている。
    2020年には患者が7万8千人と、2000年に比べて約3倍になると予測される。
     前立腺がんによる死亡者数は2006年で9527人と、男性のがん死亡原因の7位である。
    高齢化や生活様式の欧米化の影響で、今後、患者はますます増加すると見られる。
    参 : ザクロ
大腸がん(Colorectal cancer)だいちょうがん : 「結腸がん」とも言い、大腸(盲腸、結腸、直腸)の
    組織内に悪性(がん)細胞が認められる病気で、肛門管に発生するものを含めることもある。
    部位別に盲腸癌(cecum cancer)、結腸癌(colon cancer)、直腸癌(rectum cancer)とも言われる。
    大腸は消化吸収された残りの腸内容物をため、水分を吸収しながら大便にするところで、
    多種、多量の細菌の住みかでもある。約2mの長さがあり、結腸と直腸、肛門からなる。
    上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸の大腸粘膜のある部位に発生するがんで、
    このうち、「S状結腸がん」、「直腸がん」が8割を占める。大腸がんは、文明国の病気といわれ、
    日本も、食生活が欧米化するに従って、ここ数年来、大腸がんが急増している。
    欧米型の食生活とは、動物性の脂肪が多く食物繊維が少ない食事をいう。
    大腸がんは早い時期に発見すれば、内視鏡的切除や外科療法により完全に治すことができる。
    少し進んでも手術可能な時期であれば、肝臓へ転移(これを遠隔転移と呼ぶ)しても、
    外科療法により完全治癒が望める。つまり、外科療法が大変効果的だが、発見が遅れれば、
    肺、肝臓、リンパ節や腹膜などに切除困難な転移がおこる。こうした時期では、
    手術に加え放射線療法や化学療法(抗がん剤治療)が行われる。
    大腸がんの早期の大部分は症状がなく、初期のほとんどは肉眼では見えない微量の出血(潜性出血)
    なので、進行がんになってから血便・腹痛・便通異常などの症状がでる。早期発見には、
    市区町村で行っている年1度の検便のみの簡単な大腸がん検診や精密検査の受診が必要になる。
    デノボーは、最近問題になっている「陥凹型」の大腸がんの一種で、“新しくできる”の意があり、
    発見した時点では早期がんのはずだったのに、最悪の場合、2、3カ月で急速に進行がんとなり、
    腸閉塞やがん性腹膜炎を起こして死に至るタイプである。通常の大腸がんは腺腫(ポリープ)が
    何年もかけて大きくなりがんになるが、デノボーは、ポリープを経ず平らな腸粘膜にいきなりがんが発生、
    どんどん増殖するので、内視鏡検査でも早期発見が難しい。昭和大学の工藤進英教授が発見し、
    世界中で問題になっているがんで、へこんだかいよう状態で見つかったときには、
    すでに進行がんになっていることが多い。デノボーの治療法として、がんが粘膜にとどまっている場合は、
    「内視鏡的粘膜切除術」(EMR)といって、生理食塩水でがんを持ち上げて切除する。
    がんが粘膜下層まで入っている場合は、腹腔鏡下の手術を行う。
    「陥凹型」でも早く見つければ内視鏡で切除できるが、がんが他臓器まで浸潤した場合は開腹手術となる。
    この場合、60〜70%は助かるが、30%は死に至る。    
大腸がんの病期 : がんの大きさではなく、大腸の壁の中にがんがどの程度深く入っているか、
              及びリンパ節転移、遠隔転移の有無によって進行度が規定されている。
ステージ分類 デュークス分類
0期

がんが粘膜にとどまるもの

( )内は各病期の手術後の5年生存率
T期

がんが大腸壁にとどまるもの

デュークスA
(95%)
がんが大腸壁内にとどまるもの
U期

がんが大腸壁を越えているが、
隣接臓器におよんでいないもの

デュークスB
(80%)
がんが大腸壁を貫くが
リンパ節転移のないもの
V期

がんが隣接臓器に浸潤(しんじゅん
周囲に拡がること)しているか、
リンパ節転移のあるもの

デュークスC
(70%)

リンパ節転移のあるもの

W期

腹膜、肝、肺などへの
遠隔転移のあるもの

デュークスD
(25%)

腹膜、肝、肺などへの
遠隔転移のあるもの

大腸がん深達度(がんの深さ)
腸壁内側
から順に
漿膜を有する部位 漿膜を有しない部位



粘膜層 大腸がんが
粘膜内にとどまる場合
大腸がんが
粘膜内にとどまる場合
粘膜下層 SM 大腸がんが
粘膜下層にとどまる場合
SM 大腸がんが
粘膜下層にとどまる場合



固有筋層 MP 大腸がんが
固有筋層にとどまる場合
MP 大腸がんが
固有筋層にとどまる場合
漿膜下層 SS 大腸がんが
固有筋層をこえているが
漿膜表面にはでていない場合
A1 大腸がんが
固有筋層をこえているが
さらに深くは浸潤していない場合
漿膜層 SE 大腸がんが
漿膜表面に露出している場合
A2 大腸がんが筋層を超えて
さらに深く浸潤しているが、
他臓器に浸潤していない場合
SI 大腸がんが
直接他臓器に浸潤している場合
Ai 大腸がんが直接他臓器に
浸潤している場合
    大腸がんの治療 : 内視鏡的治療、腹腔鏡下手術、開腹手術、化学療法、放射線治療などがある。
     治療方針は癌の病期によって変わってくる。早期大腸癌の(浸潤がわずかな)場合は根治可能である。
     しかし発見時の病期が後期であるならば(遠隔転移がある場合)根治の見込みは少なくなる。
     肝臓への転移等については原発巣が根治できる場合に肝臓の合併切除も行われ
     治療成績も比較的良い。外科療法が第一選択で、化学療法、
     放射線療法が個々の患者の病期や医学的な諸要因により併せて実施される。
     内視鏡手術 :  がんの深達度が深すぎない早期癌に対して行われる。
      従来は良性のポリープ、早期癌に内視鏡によるポリペクトミーや粘膜切除術(EMR)が行われ、
      良性や早期癌でも大きな腫瘍は内視鏡で切除できず手術を行っていたが、
      最近は消化器内科を中心に粘膜下切除術(ESD)も行われている。
      この新規治療導入で手術が回避できた症例が増加している。
     手術 : 早期癌と進行癌では手術の内容がやや異なるが、
      早期癌ではリンパ節転移が少ないので治癒率も高く腹腔鏡を用いた手術が行われている。
      進行癌ではリンパ節転移率が高くリンパ節の切除を高め、腹腔鏡の手術を行う。
      心機能、呼吸機能に大きな問題があったり、癌が大きい場合は開腹手術になることが多く、
      大腸を切除する範囲は結腸では半結腸切除、S状結腸切除が行われる。
     抗癌剤治療 : 内服治療、点滴治療、局所(肝臓など)への注射などいろいろな方法で投与される。
      多数の抗癌剤が開発されており、腫瘍に対する効果が向上し、副作用も少ないクスリが
      多数登場している。アバスチン(一般名ベバシズマブ)という薬を他の抗がん剤などと組み合わせ、
      約2週間ごとに点滴するのが標準的になっている。
    大腸がんの生存率 : 一般に、大腸がんはがんの中では悪性度が低く、
     がんが大腸壁内にとどまるものなら5年生存率は95%、大腸壁を貫いていても
     リンパ節転移のないものなら80%、リンパ節転移のあるもので70%、
     腹膜、肝臓、肺などに遠隔転移のあるもので25%となっている。
    大腸がんの予防
     ●日光にあたると体内でビタミンDは造られるので、
      直射日光を手の平や足の裏に30秒〜1分くらい当てるとよい。
     ●運動をすることで腸内環境を整え、体内のリトコール酸の増加を抑えることができる。
      特に腹筋は腸を刺激して、腸内環境を整えてくれる。
      腹筋を鍛える運動
      朝起きた時と寝る前に、あお向けに寝たまま、両足のひざを伸ばし、
      床から足を15〜30cmくらい持ち上げ、5〜10秒その姿勢をキープする。これを3〜5回くり返す。
    大腸がん予防食
     ●ビタミンCは大腸がんの粘膜を守り、細胞の突然変異を防ぐので、
      イモ類の中ではビタミンCの含有量がトップクラスのサツマイモは、食物繊維との相乗効果がある。
      夕食後はあまり動かないので、大腸がんの原因となるリトコール酸(消化液)が多く分泌されやすい。
      そこで、夕食時にビタミンDが多く含まれ、また抗がん作用のあるβ-グルカンも
      豊富に含まれているキクラゲを摂るとリトコール酸の増加を抑えることができる。
     ●繊維質の多いブロッコリーと鶏肉を一緒に摂ると大腸がんを予防する効果が13倍も高まり、
      さらに効果を高めるにはケチャップ(リコピン)で味付けするとよい。
     ●キクラゲにはビタミンDが多く含まれている。また抗がん作用のあるβ-グルカンも豊富に
      含まれている。キクラゲを摂った後にビタミンCを摂っておくと、大腸がんの原因となる
      リトコール酸の増加を抑えることができる。
     ●タケノコには大腸がんを予防するキシロオリゴ糖が含まれていて、
      特に根元の部分に多く、すりおろして食べるとさらに効果が高まる。
     ●キムチに含まれる乳酸菌が悪性の大腸がんの発生率を約3割抑えた。
                                   (以上、NTVおもいッきりテレビより)
    参 : 便秘内視鏡による大腸がん治療(医療関連に別掲)
直腸癌(Rectum cancer)ちょくちょうがん : 大腸の直腸部に生じる悪性腫瘍のことで、
    大腸癌全体の約半分を占めている。直腸癌は肛門からその奥約20cmくらいの範囲に発生し、
    治療法には手術、化学療法、放射線、温熱、免疫療法などがあるが、まだ、手術に優るものがみられない。
    早期の直腸癌であれば、内視鏡的切除や肛門から癌だけを切除するだけで治るが、
    切除した組織を検査して癌が予想以上に周囲に浸潤していたときには病巣を大きく切除することになる。
    進行癌では癌を周りの直腸や肛門、さらに周囲のリンパ節とともに一塊として切除してしまう
    直腸切断術が一般的な手術法として今世紀初めより行われている。
    この場合、S状結腸の断端は臍左下の腹壁の皮膚に縫合され、永久的な人工肛門となる。
    この人工肛門は今までの肛門のように自由に排便をコントロールすることができない(排便障害)。
    現在ではできるだけ肛門を残す手術(直腸切除術)が行われるようになり、
    直腸進行癌でもほぼ半数の人が人工肛門を免れるようになってきた。
    症状
     直腸癌は肛門に近いところにできるため、比較的早い時期から便通の異常、
     粘血便の排出がみられ、腫瘍の中央が崩れて潰瘍になると、便表面に筋状に血がつく。
     下痢、便秘、残便感などがあらわれ、がんが進行すると貧血、体重減少、衰弱がおこるようになる。

    癌の進行状況により自律神経を積極的に温存し、
    手術前と変わらない排便、排尿、性機能を維持することも可能となってきた。
    しかし、最も重要なことは、できるだけ早期に直腸癌を発見して治療することで、
    そのためには排便時の肛門出血に十分に気をつけなければならない。
    痔による出血、と自己診断をしないで早めの検査を受けましょう。
転移と再発(てんいとさいはつ)
    転移 : 癌細胞(がんさいぼう)が、最初にできた場所(原発巣)から血管やリンパ管を通して
     離れた場所に移動し、ほかの組織や臓器で大きくなることをいい、
     転移がんは原発がんと同じ種類のがんである。
     がん細胞は酵素の力で血管の壁を溶かして中に入り込み、
     血流に乗って移動し、他の臓器に付着するという一連のプロセスをへて、転移が起きる。
     癌細胞は、血液の流れに入ってしまうと、身体のどこにでも転移する可能性があり、これを
     「血行性転移」という。これに対してリンパの流れに乗って転移するものを「リンパ行性転移」といい、
     リンパ節(リンパ腺)に転移する。また、肺癌のように胸にある臓器の場合には、
     癌細胞が直接肺の外に出て胸腔内に散らばることがあり、これを「胸膜播種(きょうまくはしゅ)」といい
     血性胸水が貯まる。腹部の臓器の場合には、同じように癌細胞が直接腹腔内に散らばることがあり、
     これを「腹膜播種」という。癌の血行性転移は一般的には、
     血流量の多い肝臓、骨などに起きることが多いが、身体中どこにでも起きる可能性もある。
     一般に胃がん大腸がんは肝臓に転移しやすく、脳腫瘍は肺に、
     乳がんは肝臓や肺・骨に転移しやすいと言われている。このように、癌の種類によって、
     転移・接着する臓器に「好み」があるといわれている。その理由のひとつが、血流の方向と臓器の近さで、
     たとえば大腸がんの場合、大腸から出ている血管は、肝臓の中にダイレクトにつながっており、
     その血流にがん細胞が乗りやすいので、肝臓転移を起こしやすいのである。
      いつから転移していたかの時期にもよるが、一般には転移がんの方が原発がんより治療は難しくなる。
     がん細胞はあちこちに流れ、条件のいい育ちやすい場所(免疫力の及びにくい、など)で
     増殖すると考えればもとのがんより早く大きくなっても当然である。
     原発がんを抗がん剤でたたいた後で出た転移がんは薬の効かない耐性のがんの可能性もある。
      転移は、癌の進行度が早くなっていることを意味し、
     その後の経過の見通しを測るうえで重要なポイントとされている。
    再発 : 手術などで取りきれなかった癌細胞や、すでに他の臓器に転移していたがん細胞が、
     再び増殖し、目に見えるかたちで現れてくることをいう。だから、一般には「転移」のケースも含めて
     「再発」と呼び、再発のなかでも恐ろしいのが、癌が全身に広がる転移なのである。
     「再発」のしかたは、癌が最初にできた場所に残っていて、同じ場所にでてくる場合(局所再発)と、
     離れた別の場所に癌がでてくる場合(転移)とがあり、どちらか区別がつかない場合もある。
     最初の手術の時点で、リンパ節転移があっても、手術で取ってしまえば治る場合もある。
     今のところ、「早期発見、早期治療(手術)」が癌を治すために最も有力な方法でしかない。
頭頸部がん(とうけいぶがん) : や脊髄などの中枢神経を除く頭部や、顔面、頸部、
    さらに気道や消化管の上部にできるがんの総称をいう。口腔、唾液腺、咽頭、喉頭、鼻腔、
    副鼻腔、頸部、頸部食道、甲状腺、リンパ節に発生するいろいろな部位のがんがあり、
    その症状や治療法も多彩である。これらの部位は、さらに細かな部位に分けられ
    そこに生じた腫瘍はその部位の名称をとって喉頭がん、舌がんなどとよばれている。
    頭頸部の発生頻度は、全がん約5〜7パーセントで、診断、治療する主役は、耳鼻咽喉科である。
    種類が多いので、原因・進行の仕方・治療方法もさまざまだが、
    一般的に、頭頚部がんは中高年の男性に多く、喫煙 ・ 飲酒が発症に大きくかかわっている。
    頭頸部がんの種類 : 頭頸部のあらゆる場所にがんは発生し、がんの発生場所によって喉頭がん、
     下咽頭がん、舌がんなどと区別されます。頻度の高いものとしては舌がん、喉頭がん、下咽頭がん、
     甲状腺がんなどがあり、中咽頭がん、上咽頭がん、上顎がんなどがこれにつぎ、
     耳下腺がん、顎下腺がんなどは比較的頻度の少ないがんといえる。
      組織学的には扁平上皮がんと呼ばれるタイプが最も多い(約90%)が、腺がんと呼ばれるものもある。
     また、悪性リンパ腫が発生することもある。組織の形によって、放射線や抗がん剤に対する効果、
     腫瘍の進展様式が異なり、治療法も異なってきます。頭頸部のあらゆる場所にがんは発生し、
     がんの発生場所によって喉頭がん、下咽頭がん、舌がんなどと区別される。
     頻度の高いものとしては舌がん、喉頭がん、下咽頭がん、甲状腺がんなどがあり、
     中咽頭がん、上咽頭がん、上顎がんなどがこれにつぎ、
     耳下腺がん、顎下腺がんなどは比較的頻度の少ないがんといえる。
    頭頸部がんの特徴 : 頭頸部は摂食、会話などに直接関与する部位であり、
     また常に人目にさらされる場所である。頭頸部がんの治療では、
     これらの形態機能に多かれ少なかれ障害をもたらすことは避けられないが、
     腫瘍が進行していればいるほど、発声機能、そしゃく嚥下(えんげ)機能障害、顔面の変形など、
     治療後の障害は大きくなり、社会生活に大きなハンディキャップを負うことになる。
     治療には、がんの根治だけでなく、これらの機能の保存や再建も考慮する必要がある。
     もちろん、早期発見早期治療が非常に重要なことはいうまでもない。
    頭頸部がんの診断・治療 : 一般にがんの診断は病変部から組織を一部とって
     病理診断をすることで確定する。頭頸部は他部位と比べて体表に近い部位であり、直接や、
     内視鏡での観察や、組織検査(生検、細胞診)も行いやすく、がんの診断は比較的容易である。
      がんと診断された場合、CTMRIやシンチグラムなどでがんの進展範囲や、
     転移の有無を調べ、病期の進み具合を調べた上で治療方針を決める。
     治療は、早期のものでは放射線治療か、比較的小さい範囲の手術でコントロールできるが、
     進行したものでは手術を主体に、放射線治療と抗がん剤を適宜併用することになる。
      頭頸部がんの治療では食べる、話す、息をすることへの影響が避けられないことがあるが、
     食べ物を飲み込む嚥下や味覚、発声など生活の上で重要な働きを持つため、
     治療ではできるだけ機能を残すことが必要になる。
     舌がんでは、太ももの皮膚や皮下脂肪を使い切除部分を再建する場合もある。
     喉頭がんでは、声帯を含む喉頭を全部摘出した後は、気管と食道がそれぞれ独立してしまう。
     そこで食道へ呼気を送り込み食道の粘膜を振るわせて発声できるよう、
     気管と食道に粘膜で「通り道」を形成する。
トモセラピー(TomoTherapy)ともせらぴー : 放射線治療の新機器。
    放射線を使ってがん病巣を治療する最新鋭の放射線がん治療機(放射線治療装置)の名称で、
    断層写真の“トモ”(Tomo=tomogram)に、治療の“セラピー”(therapy)を合わせた造語である。
    CTスキャンのような、大きいドーナツ型の照射装置と寝台で構成された機械で、
    患者は寝ているだけで、『画像の撮影』と『放射線治療』の両方を受ける事ができるという
    1台5億円もする画期的ながん治療のハイテク装置である。
    従来の放射線治療では、画像撮影と放射線治療が別室で行われている為、
    放射線照射の位置が病変患部から外れる可能性があっが、
    トモセラピーは、従来の放射線治療に比べて、正常な組織への影響を最小限に抑え、
    病変患部への照射の精度が格段に高い治療が可能となった。
    放射線照射量・範囲をコンピュータで制御(IMRT:強度変調放射線治療)で、
    360度すべての方向から患部を狙え、複数の患部へ同時に照射する事が出来るのが最大の特徴で、
    通常の手術では危険が伴う方や余病のある方、年齢的に不安な方も治療が受けられる。
    治療回数も1回の治療時間も短くて済むし(治療は20分程度、照射は3〜5分程度)、
    基本的には通院治療で、治療には保険も適用される。
     トモセラピーで行う「強度変調放射治療」とは、がん腫瘍の形状に合わせて照射野を作成し、
    照射野内の線量強度を変えることによりがん腫瘍への線量集中度をさらに高め、かつ、
    周囲正常組織の照射線量を減らす事を目指した照射方法で、
    専用のスーパーコンピュータを持ち、高精度コンピューター制御により、強度変調放射治療を行う。
    こうした特長を持つため、がんの早期発見時の根治治療から
    ターミナルケアにおける痛みを制御する治療まで、幅広く効果的な放射線治療を行える。
日本対がん協会(Japan Cancer Society:JCS)にほんたいがんきょうかい
    食生活など生活習慣の改善や、がんの早期発見・早期治療によって、
    民間の立場から「がん」による死亡を極力なくそうという「がん征圧運動」の推進母体として、
    1958(昭和33)年8月1日に設立された。1957(昭和32)年の日本癌学会総会で、
    癌研究会会頭だった塩田広重博士が提唱したのがきっかけで、
    医学界、日本医師会、厚生省、政界、財界の支援を得て、
    朝日新聞社の創刊80周年記念事業の一つとして活動を開始した。
    民間によるがん征圧運動組織としてはわが国で最も古い歴史と実績がある。毎年9月の
    「がん征圧月間」に、正しいがん知識の普及と検診を推進する「がん征圧全国大会」を開いている。
    東京都千代田区有楽町2−5−1有楽町センタービル(マリオン)13階に本部、
    46道府県に支部があり、支部ではがん検診などの事業を行っている。
    患者・家族向けに電話相談「がんホットライン」(03−5218−4776、平日午前10時〜午後4時)も
    開設している。 参 : 日本対がん協会(HP)
乳癌(breast cancer)にゅうがん : 乳腺に発生する(がん)で、乳房内に痛みのないしこりができ、
    変形やくぼみなど外見上の変化を起こす。皮膚と癒着し、進むと潰瘍(かいよう)を形成。
    腋の下、鎖骨の上などのリンパ節への転移が、割合早い時期からみられ、離れた場所にも達する。
     全乳ガンの1%と稀ではあるが男性にも乳ガンはあり、月経状態との関連がないこと以外、
    ガン細胞や治療法などのほか生存率も女性と全く変わらない。
    ただし、男性乳ガンの方がよくない経過をたどるような印象を受けるのは、
    検診の機会が少ないことなど、発見・診断されるのが女性より遅くなる傾向があるため、といわれている。
    参 : ハーセプチン乳房再建

    日本でも発売されている骨粗鬆症の治療薬「塩酸ラロキシフェン」(商品名エビスタ)に、
    乳がんの発症予防効果が認められた。米国立がん研究所の大規模臨床研究で分かり、
    2006年6月、米臨床腫瘍(しゅよう)学会で発表された。
    女性ホルモンを調整することで予防効果を発揮しているらしい。
乳がん検診 : 1987年の老人保健法の改正以降、乳がん検診は法律で義務づけられており、
    30歳以上を対象に主に問診と医師が見て触って診断する「視触診」という方法で実施されてきた。
    しかし最近、厚生省研究班が行った「がん検診の有効性評価」では、「視触診による乳がん検診は、
    無症状の場合は死亡リスク低減効果が認められるが、有効性を示す根拠は必ずしも十分でない」
    ことから、乳房X線撮影(マンモグラフィ)の導入に関して、早急な対応が求められるとの結論が示され、
    厚生労働省は1998年から法的な義務をはずすと同時に、補助金を廃止した。
    現在は各市町村の判断で実施され、半数近い市町村で視触診のみの検診が続いている。
    2001年度の受診率は12.3%にとどまっているが、乳がんにかかる人は1998年度に
    年間3万6000人に達し、女性では胃がんを抜いてトップになっている。
ハーセプチン(Herceptin) : 一般名を「トラスツズマブ」といい、
    これまでの抗癌剤とは全く違った仕組みで癌を抑える、新しいタイプの薬剤で、
    癌細胞表面のHER2が作り出すタンパク質の働きを抑え、癌細胞の増殖を抑える分子標的薬である。
    日本では2001(平成13)年6月に転移性乳癌を対象に発売された。
    ハーセプチンを他の抗癌剤と併用してHER2陽性乳癌の術後(腫瘤摘出や乳房切除術)の
    治療にも適応され、乳癌治療の個別化つまりオーダメイド治療が可能になった。
    副作用 : 他の抗ガン剤に比べ副作用は少ないが、悪寒と発熱でいずれも3人に1人くらいにでる。
     通常はハーセプチン投与中か投与後24時間以内に多く出現する。
     また吐気や頭痛、倦怠感なども出る場合があるが、頻度は多くない。
     これらの症状は初回投与時のみで、2回目以降のほとんどはなくなる。
     頻度は少ないが、約3%に心臓機能の低下や呼吸器の障害が出ることが報告されている。
     したがって、投与前を含めて定期的に心臓機能検査を行い、これらを予防する。
肺癌(lung cancer)はいがん : 肺にできるがんの総称。大部分が気管支の粘膜上皮から発生する。
    頑固な咳・痰(たん) ・胸痛などが見られるが、癌の部位によっては進行しても
    かなりの期間無症状のことがあり、また末梢にできると見つけにくく、広がりやすく、
    転移しやすいのが特徴である。がんにかかる患者は胃がんが多いのに、
    がんで亡くなる患者はなぜ肺がんが多いのか、その理由は肺がんが胃がんより治療が難しい、
    治しにくい「がん」だからである。早期発見のためには定期的な検診が重要である。
    肺がんの分類
     肺がんはその性格、悪性度、今後の見込みを考えるため、また治療法を決定するために
     小細胞肺がん、非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)に分類されている。
     また、発生する部位によって
     肺門型肺がん(中枢型肺がん)と肺野型肺がん(末梢型肺がん)に分類される。
     肺門型肺がんとは気管支の比較的太い場所より発生した肺がんのことで、「中枢型肺がん」とも呼ぶ。
     一方、気管支の奥から発生した肺がんは肺の外側に発生するのが「肺野型肺がん」で、
     肺の末梢に相当するので「末梢型肺がん」ともいう。    
小細胞
肺がん
小細胞肺がん 顕微鏡的に細胞が小さく丸く見える肺がん
燕麦(えんばく)細胞がん 顕微鏡で見ると細胞が燕麦のように見えるがん
非小細胞
肺がん
扁平上皮がん
(類表皮(るいひょうひ)がん)
扁平上皮細胞から始まるがんで、
魚のうろこに似ていて薄く、平らな細胞である
腺がん 胃腸や肺などの、臓器の内側に
並ぶ細胞から始まるがん
大細胞がん 顕微鏡で見ると細胞が大きく見える肺がん
    診断
      肺がんにはこれといった特有の症状はないので、発見されるきっかけは、
      検診によることが多いのが普通で、検診で異常影が指摘されると、次に精密検査を受けることになる。
      精密検査の目的は2つあり、1つは存在診断といって、
      本当に異常な影があるのかを確かめることで、存在診断は通常CTで行われる。
      次に質的診断といって、実際にあった異常影が一体何なのか確定する。
      質的診断にはまずは気管支鏡、CTガイド経皮針生検などで、細胞診や組織診が行われる。
      それでも確定診断ができない場合には、胸腔鏡などを用いて、開胸肺生検が行われることになる。
      精密検査で肺がんと確定診断されると、
      治療を検討するために「がん」の広がりを調べる検査(staging:ステージング)をしする。
      MRI、超音波、CT、RI検査などで、がんの転移の有無を確認し、治療の適応を決定する。
    肺がんの原因
      肺がんの原因で最も重要なのはタバコで、肺がんを防止する最もよい方法が、
      禁煙すること、または決して喫煙しないことである。早く禁煙するほどよい結果が得られる。
      たとえ長年喫煙していても、禁煙するのに遅すぎることはない。
      また、若いときから喫煙するのは非常に危険である。
      タバコ以外にも葉巻きやパイプ喫煙は問題で、自分が吸っていなくても、
      周囲がタバコを吸うことによる受動喫煙も原因になる。
      鉱山などにあるガスのラドンや、各種産業で使用する石綿(アスベスト)も肺がんの危険がある。
      その他、大気汚染も原因とされている。
      結核や肺がんになったことのある人は肺がんになる可能性が高い。
    参 : 喫煙と健康被害E4
発がん性分類(はつがんせいぶんるい) : WHOの一機関であるIARCが判断する、
    人間への発がん性の危険度を以下の5つに分類している。    
WHOの発がんリスク分類
ヒトに対する発がんリスク 主な物質 職業
ある(発癌性が認められる)
(carcinogenic to himan)
たばこ、紫外線、B型・C型肝炎ウイルス、
放射線、アスベスト
 
2A ある可能性が高い
(probably carcinogenic
to humans)
ディーゼルエンジンの排ガス、鉛化合物  石油精製業、
美容師
2B 可能性がある
(possibly carcinogenic
to humans)
携帯電話の電磁波、超低周波の電磁波
(家電製品など) 、コーヒー、
ガソリンエンジンの排ガス、殺虫剤や
人工着色料に含まれる化学物質(約240)
消防士、
ドライ
クリーニング業
発がん性があると分類できない
(not classifiable as to its
carcinogenic to humans)
カフェイン、髪の染料、水銀、タンニン、茶  
ない可能性が高い
(probably not
carcinogenic to humans)
ナイロンの原料カプロラクタム   
Gはグループ。2Bのコーヒーは膀胱(ぼうこう)がんとの関連。携帯電話は
脳腫瘍の一種であるグリオーマや、耳の神経のがんについてはリスクを高める可能性がある。
2011.6.4、朝日新聞などより 
    携帯の長電話、WHOが警鐘
     世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は2011年5月31日、携帯電話の電磁波と
    発がん性の関連について、限定的ながら「可能性がある」との分析結果を発表した。
    耳にあてて通話を長時間続けると、脳などのがんの発症の危険性が上がる可能性があるといい、
    予防策としてマイク付きイヤホンの使用を挙げている。
     フランス・リヨンで5月31日まで開かれた作業部会で、発がん性分類で上から3番目の「可能性がある」
    に位置づけた。IARC分類は、各国が規制措置をする際の科学的根拠となるため、今後、
    規制論議が始まる可能性がある。ただ、動物を対象にした研究では明確な関連性がないとした上で、
    今後、長時間携帯を使う人などを対象にした研究を重ね、さらに分析を進めるべきだとした。
     31日記者会見した作業部会のサメット委員長(米南カリフォルニア大学)は、
    「(脳のがんの一種である)神経膠腫(こうしゅ:グリオーマ)や、耳の聴神経腫瘍(しゅよう)
    危険を高めることを示す限定的な証拠がある」とした。
     一方で、同じく電磁波を出す電子レンジやレーダーを職業上使う場合や、ラジオやテレビ、
    各種無線通信に日常生活で触れる場合も同様に検証したが、発がん性との関係はないとも結論づけた。
     IARC幹部は、メールなどの文字を打つ使用は、発がん性との関連はないと説明している。
    ただ、音声通話の際は「長期的な人体への影響を考えるならば、
    イヤホンを使うなどの予防策がある」と述べた。(2011.6.2、朝日新聞より)
皮膚がん(skin cancer、melanoma)ひふがん : 皮膚癌。皮膚組織中に悪性細胞(がん)が
    認められる病気で、全身のあらゆる部分に生じる可能性があるが、
    顔、頸部、手部、腕など日光露出部皮膚に最も多く生じる。
    紫外線によるダメージが蓄積して、あるいは強力な紫外線に当たり過ぎて、
    一部の細胞の遺伝子が傷つき、がん細胞になって増殖する。
    皮膚に発生するがんで最も一般的なタイプは基底細胞がんと
    有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんで、これらは非メラノーマ皮膚がんと呼ばれる。
    日光角化症はひとつの皮膚状態で、時に有棘細胞がんに進展することがある。
    日光角化症 : 前がん状態で、60代から増加する。皮膚の表面がかさかさして赤みを帯び、
     触ると少しでこぼこしている。
    有棘細胞がん : 日光角化症などが長い年月をかけて皮膚の深くまで進行した状態のがん。
     比較的大きく、盛り上がってごつごつしている。全身に移転する危険がある。
    基底細胞がん : 基底部にできるがん。真っ黒で光沢がある。移転はしない。
    メラノーマ : メラノーマに別掲。
末期がん(まっきがん) : 肝臓ガンや肺ガンなどのがんの症状が最終段階まで進行し、
    手術、放射線治療、化学療法のいずれの現代医療を持ってしても、もう治療の見込みがない状態をいう。
    がんとの闘病を続けた患者にとっては、末期ガンは闘病の最終段階になる。
    末期がんとしての定義はなく、余命(予後)についても、1カ月以内、3カ月以内、6カ月以内と
    意見は分かれるが、生存期間が予後2〜3カ月とされる人とする場合が多いという。
    末期ガンの症状 : 末期ガンの状態になると、どんな種類のがんでも相当な痛みと苦痛をもたらす。
     末期ガンに伴う全身倦怠感や食欲不振、吐き気や便秘などの症状も出る。また、歩いたり
     話したりすることも難しくなるため、寝たきりの生活を強いられ、日常生活を送ることが難しくなる。
    末期ガンの治療 : 末期ガンの状態になると、いかなる治療も効果がなくなる。
     そのため、麻酔の投与などによる末期ガンに伴う痛みの緩和や、ガン細胞の増殖を
     少しでも食い止めるようなくすりの服用など、少しでも余命を伸ばす治療に重点が置かれる。
    末期ガンと介護保険 : 介護保険を利用できるのは原則65歳以上だが、2006年以降、
     「がん末期」と診断されれば、40歳以上が利用できる。申請から認定までは平均31.3日。
     急を要する末期ガンなどの人たちは、申請直後に暫定のケアプランをたて、
     認定が出る前に介護サービスを受けられる。
      厚労省は2010年4月、制度の周知を図ろうと自治体あてに事務連絡を出し、
     迅速なサービス提供を促した。●なるべく早く暫定プランを作る
     ●申請当日にも訪問調査を終え、間近の「介護認定審査会」で認定する
     ●「主治医の意見書」の診断名欄に「末期がん」と明示する、などである。
陽子線治療(ようしせんちりょう) : 水素の原子核である陽子(+)を加速する加速器から得られる陽子線を、
    電磁石とコンピュータの操作によって生体内の癌(がん)等の悪性腫瘍の標的領域に高精度に照射し、
    治療する方法で、放射線療法の一つである。従来のX線治療と違い、
    身体の深部でエネルギーをピンポイントで放出するため、病巣部に効果を集中させることができ、
    正常組織を傷めずに副作用が少ない。また、外科手術に勝るとも劣らない高い治癒率であること、
    患者に苦痛を伴わないこと、勤務しながらの通院治療が可能であることなど、際立った特徴を備えている。
    炭素の原子核を使った重粒子線治療とあわせて「粒子線治療」と呼ばれる。
    陽子線は、1954(昭和29)年に米国で初めてがん治療に応用されて以来、
    多くのがん治療でその有効性が認められている。
     陽子線は、陽子を加速して得られる放射線だが、一定の深さで急激にエネルギーを放出し、
    消滅する「ブラッグピーク現象」というX線にはない特性を持っている。
    このため、照射された陽子線の線量は、体の表面に近い入射部分は低く抑えられるが、
    「ブラッグピーク現象」によって、ターゲットで急激に増し、最大になるというわけである。
    このように照射された陽子線は、標的となるがん病巣の部分に限って、集中的にエネルギーを放出する。
    しかも、陽子線が周囲へ散乱したり、標的よりさらに深部の正常組織が被曝することはゼロに近い。
     陽子線治療の生物学的効果(がん細胞殺傷力)そのものは、X線とあまり変わらないが、
    X線のこれまでの研究結果や作用効果を、治療に利用できるメリットがある。
     現在、陽子線治療が受けられるのは、国立がんセンター東病院(高度先進医療)、
    静岡県立静岡がんセンター、兵庫県立粒子線医療センター、筑波大学陽子線医学利用研究センター、
    若狭湾エネルギー研究センター、放射線医学総合研究所(炭素線による治療)の6カ所あるが、
    近く南東北がん陽子線治療センター(2008年10月開設)、
    群馬大学(炭素線による治療、2009年4月開設)、福井県陽子線がん治療センター(2010年3月開設)
    の3カ所の開設が予定され、ほかにも計画されている。
    現在、陽子線治療は高度先進医療として認められているが、この治療法自体には医療保険が利かず、
    治療には約300万円の高額費用を自己負担する必要がある。
卵巣がん(らんそうがん) : 卵巣は子宮の両わきに各ひとつずつある親指大の楕円形の臓器で、
    そのいずれかの卵巣の表層細胞から発生する悪性の腫瘍のことをいい、
    卵巣がんの90%を占めているが、卵巣にできる腫瘍の80%は良性である。
    卵巣に発生する腫瘍はその発生母地によって、上皮性の卵巣腫瘍、
    ホルモン分泌細胞に由来する性索間質性腫瘍、卵子に由来する胚細胞腫瘍に大別される。
    胚細胞腫瘍の中にも悪性腫瘍はあり、小児や若い女性に稀にみられる。
    しかし、最も多いのは卵巣の表面を覆う表層上皮細胞から発生する上皮性腫瘍であり、
    その中に、良性のいわゆる卵巣嚢腫、卵巣がん全体の90%を占める悪性の上皮性卵巣がん、
    そして良性と悪性の中間型の境界悪性腫瘍がある。
    年代別にみた悪性腫瘍には、若い世代(10〜20才代)を中心に発生する「卵巣胚細胞腫瘍」と
    中高年女性(40〜60才代)を中心に発生し、卵巣がんの大多数を占める「上皮性卵巣がん」がある。
    前者は、頻度はかなり低く、弱年発症という性格から子宮温存を求められるなど、
    後者とは治療体系が全く異なる疾患であるといえる。
    卵巣がんはある程度腫大するとか腹水が貯留するなどがんが蔓延してから、
    初めて自覚的な症状がでるため早期診断しにくいがんであり、
    半数以上が進行がんで診断されている悪性腫瘍である。
    また卵巣がんと良性の卵巣腫瘍との鑑別は難しく、手術で摘出・検査してから
    初めてがんと診断される場合も多くあり、卵巣がんの診断や治療は難しいとされる。
    治療方法には外科手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤)がある。
    初期症状
     @腹部膨満感 : 肥満・妊娠等、理由がないのにお腹が膨れてきた場合。
     A腹部腫瘤自覚 : 自分で触って下腹部にしこりが触れる場合。
     B検診異常 : 検診で下腹部に腫瘍があるとか卵巣が腫れているといわれた場合。
    卵巣がんの進行と治療成績 : 卵巣がんの新規患者数は推定で年約8千人。
     死亡数は2007年で約4500人(厚生労働省の調べ)で増加傾向にある。
     進行によって1から4期に分けられ、がんが卵巣内にとどまる1期と2期は「早期がん」に位置づけられる。
     がんが腹腔(ふくくう)内に広がるほか後腹膜リンパ節移転がある3期と、
     遠隔移転がある4期は「進行がん」といわれる。
      国立がんセンター中央病院によると、1980〜97年に治療を受けた
     卵巣がん患者323人の予後を2000年4月までみると5年生存率は1期で72人(91%)、
     2期23人(72%)、3期163人(31%)、4期65人(12%)である。    
卵巣がん治療に使われる抗がん剤の日米での承認状況
薬剤名 米国 日本 他のがん治療での承認状況 
カルボプラチン 
(1989)

(1990)
子宮頸がん、肺小細胞がんなど 
パクリタキセル 
(1992)

(1997)
非小細胞肺がん、乳がん胃がんなど 
トポテカン 
(1996)
×  小細胞肺がん 
ドキシル 
(1999)
×  カポジ肉腫
ジェムザール 
(2006)
×  非小細胞肺がん、すい臓がん、胆道がんなど 
カッコ内は承認された年(2009.3.1、朝日新聞より)
    厚生労働省はなぜ新薬の承認が遅いのだ。官僚の怠慢ではないのか。
    欧米で危険性があるから禁止となった薬はすぐにストップせず、
    同じ人間が使って効果のある薬は長期にわたり認めないとは・・・
    欧米では10年も前から承認され、標準的に使われて効果も高いという「ドキシル」は
    いまだに承認されないため、保険がきかずに月20万円もの自己負担になるという。

粒子線治療(りゅうしせんちりょう) : 荷電重粒子線治療(かでんじゅうりゅうしせんちりょう)
    高速の重粒子(炭素イオン)や陽子(水素の原子核)等の粒子放射線のビームを
    病巣に照射することによって、主にがんを治す放射線治療法の総称をいう。
    利用する粒子の種類によって、陽子線治療、重粒子(重イオン)線治療、パイ中間子治療等に分けられ、
    世界の各地で臨床応用や研究が行われている。例えば陽子線治療では、
    水素原子の原子核であり、正の電荷を持つ陽子を加速して高速にしたものを体内に照射する。
     従来のX線は、標的のがんにたどり着くまでに弱くなってしまうのに比べ、
    粒子線は、体の中をある程度進んだあと、急激に高いエネルギーを周囲にあたえ、
    そこで消滅するという性質を持っている。その性質を利用すると病巣部周囲のみにより高い量の
    放射線を照射することができ、通り道に与えられるエネルギーを少なくするように調整することができる。
    粒子線治療の場合にはがん病巣と同じ高い放射線量が照射される範囲を狭くすることができるので、
    副作用が少なく痛みもないため、手術に代わる治療法として期待され、
    全国20カ所近くで新設計画が持ち上がっている。
     粒子線治療の対象部位は、頭頸部、肺、肝臓、前立腺、骨盤部、骨軟部などだが、
    照射範囲に制限があり、原則としてがんの大きさが最大15cm以下(照射部位で異なる)で、
    遠隔転移がないことが治療条件となる。現在、日本には治療用の粒子線がん治療施設が5カ所、
    治療研究用施設1カ所ある(国立がんセンター東病院、若狭湾エネルギー研究センター、
    放射線医学総合研究所、静岡県立静岡がんセンター、兵庫県立粒子線医療センター、
    筑波大学陽子線医学利用研究センター)。なお粒子線治療は先進医療の認定を受けているが
    健康保険の適応とならず、約300万円の高額治療費は自己負担となる。
     一方、X線を用いた放射線治療においても近年の照射技術の発展により、
    多方向から病巣に限局して照射する方法が可能となってきており、
    代表的なものに、強度変調放射線治療(IMRT)、定位放射線治療などがある。























































inserted by FC2 system